中小企業支援

中小規模事業場安全衛生サポート事業(集団支援)実施事例

労働基準監督署が提案した第三次産業(社会福祉施設と小売業)向き集団支援実施例

福岡県北九州市を中心とした関門海峡や洞海湾、周防灘の沿岸地域一帯に広がる北九州工業地帯は、太平洋ベルトの西端部に立地する四大工業地帯の一つです。
八幡と並ぶその中心地、戸畑でサポート事業・集団支援事業「社会福祉施設における労働災害防止対策研修会(平成26年12月2日)」及び「小売業における労働災害防止対策研修会(平成26年12月10日)」が開催されました。

日本の労働災害は長期的には製造業、建設業を中心に減少傾向にあるものの、近年それとは逆に第三次産業は全労働災害発生件数の4割以上を占め、その割合は年々増加傾向にあります。 平成25年の北九州西監督署管内の労働災害発生状況は、昨年に比べ全産業で57件増の583件で、製造業は昨年とほぼ同数であるものの、建設業で17件増、交通運輸で10件増のところ、第三次産業での29件の増加が目立っています。 第三次産業全体の災害件数は273件で製造業の2倍以上。そのうち商業(小売業)においては97件発生しており、これは第三次産業の36%を占めるとともに建設業全体の発生数をもしのぐ件数で、今後の増加が憂慮されるところです。 一方、社会福祉施設については、他業種に比較して腰痛災害が際立っており、安全管理体制の構築など災害防止のための特別な対応が求められるところです。

中小企業サポート事業は、昨年度まで事業対象業種を製造業に限ってきましたが、近年の第三次産業の労働災害の急激な増加傾向に応えるため、本年度から初めてその対象を第三次産業にも広げることとしました。このことにより労働災害の急増する第三次産業の事業場にとって朗報となりました。
この度の集団支援では、地元の北九州西労働基準監督署(江藤宏嗣署長)が主催者となり、「社会福祉施設」並びに「小売業」を事業対象の中心にすえ、それぞれ別個に講演形式による集団支援事業の開催を中災防に要請することとなりました。

 

1 社会福祉施設向け集団支援の実際

本サポート事業を活用するきっかけは何ですか?
  • 社会福祉施設の災害のポイントは腰痛災害の防止です。
    また、腰痛予防対策だけでなく、合わせて「危険予知活動(KY)やリスクアセスメントなどの進め方」について理解をいただくことが重要なことと考えています。
    また、安全管理体制を構築する側面から、「安全推進者」については、職場の安全活動を牽引する極めて重要な役割です。こうした機会を活用して安全の軸になる方々の養成の支援を図りたいと考えています。(江藤宏嗣署長)
  • 写真1 (左)江藤 宏嗣 署長 (右)石橋 一由 安全衛生課長

    写真1 (左)江藤 宏嗣 署長(右)石橋 一由 安全衛生課長

    介護・看護関係職員10人以上規模で、これまで同様の研修会に参加されたことのない283事業場、加えて製造業関係の事業場に対して参加を呼びかけました。
    社会福祉施設の方々は安全衛生に熱心で、積極的に作業環境の改善に取り組もうとする意識が高いと感じられ、このことが参加者数にもよく現れています。(石橋一由安全衛生課長)
  • また、高年齢者に限らず若い方にも急性の腰痛症、転倒の労働災害が発生しています。女性の就業者が多いことも特徴です。
    こうしたことから、中災防などの安全衛生の専門機関に実践的な教育を期待し、今般の集団支援の開催をお願いしました。(江藤宏嗣署長)

 

社会福祉施設関係者を中心に260人が参加
  • 写真2 ほぼ満席の研修会場

    写真2 ほぼ満席の研修会場

    12月2日(火)、北九州市戸畑区は「ウェルとばた」のホールにおいて、14時から16時までの2時間、「労働災害防止対策研修会」が開催されました。
  • すり鉢形式のホールはほぼ満席でした。

 

中災防・安全管理士による社会福祉施設向け労働災害防止の講演概要
  • 栗山繁久安全衛生管理士(中災防・九州安全衛生サービスセンター副所長)による特別講演「社会福祉施設における労働災害の防止について」が90分間行われました。
  • 講演の柱は、腰痛発生の現況と要因、介護・看護における腰痛予防対策、労働衛生管理と教育、リスクアセスメントの考え方と進め方、KY活動の進め方などでした。
  • 講演の中核となる腰痛災害防止体策では、介護者・看護者が腰痛を発症した実際例について紹介するとともに、労働災害防止活動を主導する事業主の責務や果たすべき役割についての解説に多くの時間が割かれました。
  • また、腰痛災害の無い職場づくりのために、労働衛生3管理(作業管理、作業環境管理、健康管理)に加え労働衛生教育の重要性が詳解されるとともに、これらを支えるための、事業場の安全管理体制の速やかな構築を図る必要性についても解説されました。
研修会参加者に受講の感想を伺いました。
  • 気をつけたい姿勢などを具体的に教えていただきました。施設内研修などで取り上げ、安全な環境で働くことができるようにしたいと思います。
    日々の行動の中で、人間特性を理解することで、労働災害防止をしていきたいと思います。他の職種の危険性についても知ることができて良かったです。(研修会参加者)
  • 不安全な行動と不安全な状態が重なって事故が起こりやすいことを知りました。KYTは具体的でわかり易かったと思います。職場の研修で活用させていただきます。ありがとうございました。(研修会参加者)
主催者(北九州西労働基準監督署)の今後の期待をおきかせください。
  • 今後の少子高齢化を踏まえると、腰痛発生が目立つ社会福祉施設に対する一層の支援が必要です。今後も中災防などの安全衛生の専門機関による実践的な教育や提案をお願いするところです。(江藤宏嗣署長)
  • 社会福祉施設の方々は職場の安全衛生の推進や作業環境改善に取り組もうとする意識が高いと感じました。研修会参加の応募も早く、おそろいのスポーツウエアなどで参加された方々もいました。
    労働災害防止の専門知識がさらに周知され、実際に現場で役立てられることで腰痛が減少することを期待しています。(石橋一由安全衛生課長)
安全・衛生管理士からの一言コメント
  • 写真3 (左)古賀 清 安全管理士(右)栗山 繁久 副所長・安全衛生管理士

    写真3 (左)古賀 清 安全管理士(右)栗山 繁久 副所長・安全衛生管理士

    社会福祉施設で働く皆さんは、使命感や責任感が強い方が多く、利用者の安全を優先し、自分たちの安全は二の次と考えがちです。
    しかし、働く人が安全に作業することは利用者の安全にもつながりますから、利用者の安全対策も作業者の安全対策も根本は同じことになります。職場で何をどのように取り組んでいくか、安全衛生活動の手がかりとしてサポート事業を活用していただくようお願いします。(栗山繁久)

2 小売業向け集団支援の実際

サポート事業を利用したきっかけは何ですか?
  • 行政が行う安全衛生に関する法律や規則の解説は重要なことですが、働く方々の日々の作業の安全の進め方について、安全衛生の専門家である中災防の安全管理士による具体的な労働災害防止の手法(4SやKYTのすすめ方)を学ぶことも有効であると思いました。(江藤宏嗣西監督署長)
  • こうした研修会や説明会を繰り返し開催することで、各業種の災害発生の特徴に応じた有効な災害防止対策に取り組んでもらえればと思っています。
    小売業の10人以上就業する約800事業場に研修会参加を呼びかけるとともに、一般製造業にも参加を勧奨し、合わせて237名の参加をいただきました。(石橋一由安全衛生課長)
会場はほぼ満員
  • 写真4 熱心に受講する参加者の方々

    写真4 熱心に受講する参加者の方々

    12月10日(水)、北九州市戸畑区は「ウェルとばた」のホールにおいて、14時から16時までの2時間、「労働災害防止対策研修会」が開催されました。
  • ホールは定員近くまで埋まり、参加された小売業関係者の作業安全にかける関心の高さがうかがえました。
  • 研修会は、冒頭で北九州西労働基準監督署の監督官から、事業者が労働者を採用する際の雇用契約書面交付について、労働条件通知等を明示するとともに、書面を確かに公布する必要性があることなど、労務管理のポイントが20分間説明されました。

 

中災防・安全管理士による小売業向け労働災害防止の講演概要
  • 古賀清安全管理士(中災防・九州安全衛生サービスセンター)による特別講演「小売業における労働災害の防止について」が90分間行われました。
  • 講演の柱は、労働災害発生の現況、4Sの有効性とやり方の実際、危険予知活動の進め方、安全の見える化、災害事例紹介などです。
  • 労働災害発生の現況では、平成25年の小売業における労働災害発生状況(12,808人)について、発生主因(転倒34%、動作の反動・無理な動作=腰痛12%、交通事故12%)と近年増加基調にあることが説明されました。
  • とりわけ転倒と腰痛に焦点を絞り、労働災害防止の基本は4S(整理、整頓、清掃、清潔)にありと、その有効性、目的さらには職場における具体的な展開の方法についての解説がなされました。
  • 引き続き「危険予知活動」の考え方についての解説が行われ、その中ではKYT(危険予知訓練)、指差し呼称、職場の安全上の問題を解決するための問題解決手法の有効性が紹介されました。
    合わせて、「安全の見える化」の例として、バックヤードにおけるダンボール荷のはい積み、階段や通路標識の配置などについて、安全に実施するための具体的なコツや手法が紹介されました。
研修会参加者に受講の感想を伺いました。
  • 作業安全について、日頃あまり考えていなかったので参考になりました。(研修会参加者)
  • 明日から整理整頓を行いたいと思います。(研修会参加者)
主催者(北九州西労働基準監督署)の今後の期待をお聞かせください。
  • 働く現場だけの改革だけでなく、まず経営トップがより一層の安全意識を強く押し出され、さらに安全活動が大きく前進することを期待しています。(江藤宏嗣西監督署長)
  • 小売業関係の皆様が研修会を通して、ひとたび災害が発生すると場合によると死に至ることをご理解いただき、本研修会が作業の前には必ず安全対策を取ってもらえるきっかけになればと思います。(石橋一由安全衛生課長)
安全管理士からの一言コメント
  • 小売業の仕事の動作は、日常生活における動作と大きく違いません。そのため、作業動作そのものに慣れが生じていて、職場に潜む危険に対する感度が低下しがちです。
    店のオーナーや店長などの管理者の方は、災害防止の知識を習得され、作業者(店員)に仕事をしながらその知識を直接教えることが肝要です。(古賀 清)

中災防は、働く人の安全と健康づくりをサポートします。

中央労働災害防止協会
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