中小企業支援

中小規模事業場安全衛生サポート事業(個別支援)実施事例

実施事例3 今治造船株式会社広島工場協力会

わが国の造船業の現状は、円安による輸入資材の上昇や中国・韓国勢の生産能力の拡大による造船市場の需給ギャップの影響などを受け、業績の改善には徹底したコスト削減と高度な工程管理、高付加価値船の開発を進めることが各社の解決すべき最大の課題となっています。
広島県広島市から東に70キロ、関西と中国地方を結ぶ海運・造船の歴史的航路である瀬戸内海は三原市に、今治造船株式会社広島工場があります。
当工場では、タンカー、大型コンテナ船、バラ積み運搬船といった大型船舶の建造を行っており、専門特殊技術を集積する造船業を反映し、同工場には61社で構成される協力会があります。
今回は、協力会が担当する作業や作業場状況などを現場確認し、アドバイスを行う中災防の安全管理士による「個別支援」の結果について、協力会の会長、安全衛生委員長並びに元方の今治造船広島工場の担当者に伺ってみました。

写真1 建造中の大型バラ積み運搬船

写真1 建造中の大型バラ積み運搬船

この事業を利用したきっかけは何ですか?

  • 平成25年3月、三原労働基準監督署を訪れた際、同監督署長から新事業としてスタートする「中小規模事業場安全衛生サポート事業」の導入の意義を伺い、協力会に同事業を紹介しました。(濱田孝己さん・今治造船(株)広島工場安全管理グループ長)
  • 常々、協力会としても元方からの押し付けの安全衛生管理ではなく、協力会として独立した自主的な安全管理を進めたいと考えていました。協力会の安全委員会に諮り、個別支援を中国四国安全衛生サービスセンターにお世話になりました。(宗川真三さん・協力会会長)

写真2 左:宗川真三さん(協力会会長)右:池本憲俊さん(協力会安全委員長)

写真2 左:宗川真三さん(協力会会長)右:池本憲俊さん(協力会安全委員長)

利用してよかったと思う点は何ですか?

  • 中災防の安全管理士から改善すべき多くのアドバイスがありました。
    安全管理士は、当現場の現状確認にあたり、造船業に限った安全管理だけではなく、これまで多くの機械・設備の安全管理についての知識・経験を踏まえた上で、安全のあるべき姿を具体的に示されました。
    指摘の中には「そこまで気が付かなかった」とするものもありました。(池本憲俊さん・協力会安全委員長)
  • 協力会で志向していた独自の安全衛生が実現できてよかったと思います。
    元方会社の目だけでなく、外部の専門家による幅広い視野からアドバイスしていただいたことに大変な意義を感じています。(宗川真三さん・協力会会長)

写真3 好事例「通路と作業場の段差部」

写真3 好事例「通路と作業場の段差部」

  • 協力会には、こうした安全活動を積極的にすすめてもらうことで、今後、日々の安全管理がさらに徹底・定着してもらえばうれしいことであり、何もいうことはありません。元方としても喜ばしく、できる限りの支援・協力を行うこととしています。(濱田孝己さん・今治造船㈱広島工場安全管理グループ長)
  • サポート事業は、無料、短時間、具体的報告と、中小規模事業場にとっては大変よい支援をしてくれると思います。
    また、「造船業だけを見る目」として固まっている私たちにとって、新鮮な指摘をいただくことは、見落としていた危険の発見につながり、大変有意義な制度と大歓迎です。(岩本孝雄さん・今治造船㈱広島工場理事)

写真4 構内に設置されている「安全体験教育センター」

写真4 構内に設置されている「安全体験教育センター」

本事業の利用をきっかけに、今後どのような安全衛生活動に力を入れたいですか?

  • 今般のサポート事業を下敷きに、協力会の新たな安全教育の実施に力を入れることを打ち出しています。
    それは、これまで新入者教育については各社ごとにOJTによる安全指導が実施され、その内容は各協力会社の方針や指導的な立場にいる個人によって異なっていました。
    そこで、協力会61社から140名ほどを対象に、現場で適切な安全を指導するための「OJT指導者養成教育」を5回に分けて行うことを予定しています。(池本憲俊さん・協力会安全委員長)
  • この教育により、工場全体の安全衛生の統一メソッドが構築できるとともに、合わせて安全衛生の資質の一層の向上が期待できると思います。(濱田孝己さん・今治造船㈱広島工場安全管理グループ長)

写真5 安全体験教育センターの内部:感電災害に注力した体験器具、墜落・転落体験器具ほか

写真5 安全体験教育センターの内部:感電災害に注力した体験器具、墜落・転落体験器具ほか

  • 今後、「OJT指導者養成教育」を受講した指導者を通して、安全確保のために手探りで指導することなく、統一した基準のもとに適切な安全作業を推進してゆきたいと思います。
    また、その実現のためには多くの持ち場・立場の方々に同教育を受けてもらいたく、継続した活動としてゆきたいです。そのためには、元方(今治造船)や中災防にも協力をお願いするところです。(宗川真三さん・協力会会長)