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職場外における安全対策を推進して労働災害を撲滅する(ジョン・ディア社)

(マーキサン・ネイソー編集員)
資料出所: Safety + Health
August 2005

(仮訳 国際安全衛生センター)


 米国のジョン・ディア社においては、職場外における災害への安全対策活動の成果は、始めから終わりまで数字で評価される。米国イリノイ州モリーン市を拠点とする建機、農耕具メーカーのジョン・ディア社は、過去20年間、自家保険をかけた事業部門の業績評価に統計を効果的に利用している。このような業績評価を用いることで、同社の多くの施設では、職場外災害への安全対策イニシアティブへの取り組みがスムーズに進められている。同社海外労働安全担当マネージャのゲイリー・コップスは、「当社は統計を多用しています。統計のおかげで、またとない機会に照準を合わせて取り組むことができるのです」と語っている。

ジョン・ディア社では各事業部門別に、職場外における傷害を発生率、重篤度、経費に基づきランク付けする労働安全指標を毎月作成しており、各事業部門の対前年比データが、図入りグラフで従業員に示される。コップスは、「ある部門の2、3年間の安全対策の成果が優れているように見えれば、他の部門はその成果を手本として採用するか、またはそのような成果を挙げるために今後すべきことを少なくとも検討をすることができます」とコメントしている。

ジョン・ディア社の経営陣は、職場外における災害の安全対策に従業員が関与できるよう熱心に取り組んでいる、とコップスは語っている。経営陣は、安全対策に取り組んでいる部門を支援し、各部門が基準作りと職場外における災害の安全対策の目標設定を併せて実施できるようにしている。各部門の指導者たちは毎月の統計データと職場外における傷害の年別分析に基づき、年間の安全目標用紙へ記入することが要求されている。

またジョン・ディア社は統計報告書に基づき各部門に助言も与えている。コップスによると以下のような提案に多くの部門が従っているという。すなわち、職場外における災害の安全対策をプラント内の定例安全会議に組み入れたり、各部門の安全対策委員会と協力して、電気関連、手工具関連などの災害への安全対策を推進したり、聴力保護計画や腰痛の予防対策と認識のための対策など、職場外における災害安全対策プログラムの教育訓練を実施したりすることである。

職場外における災害への安全対策イニシアティブおよび提案の実施に当たっては、ジョン・ディア社はさまざまな地域で、情報提供のための種々の催しを努めて開いている。同社は複数の自社施設で、地域テレビ局のレポーターを講師に招いての悪天候対策研修、シートベルト点検、CPR(心肺蘇生法)研修を主催したり、自社の健康推進担当と連携して、健康とウェルネスフェアへ参加したりしている。ジョン・ディア社モリーン工場の安全・環境・セキュリティ管理担当、グレン・ウィリアムズは、「私がアイオワ州ダビューク市の工場にいたころは、毎年医療部門と合同で安全フェアを開催していました。工場従業員は大講堂に参集し、展示物を観覧し、血液中のコレステロール検査値や、糖尿病検査などをしました。また社内にハイウェイパトロールを招き安全運転の習慣について話し合いました。また、地域の安全保護対策委員を招き、銃や狩猟の安全性についても話し合いました」と語っている。

コップスにようると、ジョン・ディア社の従業員は、職場外における災害安全対策プログラムに非常に高い関心を示しているという。「たとえば、木の枝の刈り込みについて話し合ったとき、その場の全ての従業員が身を乗り出したのに気づきました。登るべきではなかったはしごに乗って木に登り、枝の方に手を伸ばして枝を刈りそろえようとしている自分自身の姿を従業員たちはまっさきに想像していたからです。職場外における災害への安全対策情報に従業員が関心を示す理由のひとつは、彼らが職場外における災害の安全対策に関連を持っているからだと思います」

ジョン・ディア社では全社的に職場外における災害安全対策への関心が高まっている。ジョン・ディア社商用民生機器事業部の安全環境事業部長ラルフ・エリングセン(Ralph Ellingsen,divisional manager,safety and environment for John Deere's Commercial & Consumer Equipment Division)は、従業員の関心が高い理由は優れたコミュニケーションにあるとし、次のように語っている。「当事業部では、従業員が職場外における災害の安全対策に集中して取り組み、関与するために、事業部のウェブサイトを利用しています。このウェブサイトには職場外における災害の安全対策にかかわる多くのリンクが張られています。さらに、あらゆる従業員会議においてビデオ研修を行い、職場外における災害の安全対策を議題とする会合を毎月持ちます。また、電子メールで職場外における災害の安全対策の話題を配信しています。」

ジョン・ディア社では、これらの取り組みが従業員のみでなくその家族、友人、顧客にまで浸透することを願っている。モリーン市のジョン・ディア本社の、製品安全・マーケティング部門プロジェクト・マネージャであるゲイリー・ミルズ(Gary Mills,project manager,product safety,marketing,at John Deer's corporate headquarters in Moline)は、人はときおり無分別なことをしたり、習慣で物事を行ったりすることがあります。ですから、私たちの仕事は、機器を操作する人と近くに居合わせた人の双方が安全に製品を使用できるように働きかけることなのです」と語っている。

ミルズによれば、同社は製品の安全対策として、操作説明書の指示をわかりやすくする、安全対策のビデオを製作する、農機具ショーで安全推進キャンペーンを実施するなどさまざまな方法を講じているという。また同社は、子供たちに安全を啓蒙ために「レディ・ルースター(レディという名の雄鶏)のさらなる冒険(The Further Adventures of Ready Rooster)」というぬり絵の本を作成し、ディーラーに配布している。ミルズは「安全を認識してもらうための非常に簡単なぬり絵です。このぬり絵で、農機具の周囲に近寄ってはいけないことを子供たちに教えます」とコメントしている。

同社は2年前にも啓蒙のために子供向けの安全ツールを紹介している。それは、キッズコーナーという対話型のウェブサイト(www.johndeerekids.com/home.html)で子供たちはゲームを楽しみながら安全について学ぶことができる。

コップスは、ジョンディア・社の家族、顧客、従業員への対応は、社員の生産と士気向上に良好な影響を及ぼし、職場外における災害を低減すると考えている。コップスは次のように言い添えている。「予防できないこともあります。しかし、予防の手助けとして多くのことができるのです。例えば統計を見ると、職場外における災害への安全対策への認識を高めるスタート地点となる好機があることに気づきました。これは従業員への恩恵となることでしょう。世界規模で見たジョン・ディア社の第一の安全目標は災害をゼロにすることです。これは、職場内、職場外のいずれでも達成すべきことです。この目標をいつ達成できるかは未知数ですが、わたしたちは毎年その目標に近づいているのです」