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各国情報・国際関係

海外の労働安全衛生統計−イギリス(2007/2008)日本とイギリスの労働災害発生率の差異について

2009年3月9日

イギリス安全衛生庁(HSE)は、安全衛生に関する諸統計を 「統計」 別ウィンドウが開きます のページに掲載しているが、2007/08年に関する概要は次のとおりである。

「Health and Safety Statistics 2007/08」 別ウィンドウが開きます

なお、今回は「イギリスの負傷、疾病および事故報告規則の概要」および 「日本とイギリスの労働災害発生率の差異」について併せて紹介する。

  • 業務上疾病
    2007/08年に現在または過去における業務に起因して疾病にかかったか、悪化したと考えている労働者は210万人である。 そのうち過去12ヶ月以内に新たに疾病にかかったのは56万3千人である。 2006年における中皮腫による死亡者は2,056人で、その他の職業性がん及び肺疾患による死亡者はさらに数千人に達する。
  • 業務上死傷災害
    2007/08年の業務上災害による死亡者は229人で、死亡10万人率は0.8である。
    負傷・疾病・事故報告規則 (RIDDOR-Report an accident or disease under the Reporting of Injuries Diseases and Dangerous Occurrences Regulations 1995)に 基づいて報告された負傷者数は136,771人で、10万人率は517.9である。 一方、労働力調査(LFS-Labour Force Survey)による負傷者数は29万9千人で、10万人率は1000である。
    ※LFS:(Labour Force Survey)四半期ごとに行われる英国の労働市場に関する5万世帯対象の全国調査。
  • 労働損失日数
    全体の労働損失日数は3,400万日であり、うち2,800万日が疾病によるもので、600万日が負傷によるものである。
  • 報告された休業災害
    2007/08年に報告された重篤災害(major injuries:骨折、手足の切断、脱臼などを伴う重篤な負傷)は27,976件であり、 10万人率は105.9であった。そのうち3分の1以上が滑り・つまづきによるものである。 重篤災害以外の休業4日以上の災害件数は、108,795件で、10万人率は411.9である。 およそ5分の2が取り扱い、持ち上げ、持ち運びに起因するものであり、4分の1が滑り・つまづきによるものである。
    表1 重篤災害と休業4日以上の負傷の数および10万人率
    表1 重篤災害と休業4日以上の負傷の数および10万人率
    年度 被雇用者 自営(労働)者 労働者数
    重篤災害 人数 10万人率 人数 10万人率 人数 10万人率
    2006/07 28,544 108.8 1,194 30.1 29,738 98.4
    2007/08 p 27,976 105.9 1,187 29.4 29,163 95.8
    休業4日以上の負傷
    2006/07 114,653 436.8 1,146 28.9 115,799 383.2
    2007/08 p 108,795 411.9 1,117 27.6 109,912 360.9

    ※p は暫定数
  • 死亡災害
    2007/08年における業務上災害による死亡者数は229人で、10万人率は0.8である。 長期的に見た死亡災害発生率は減少傾向にあるものの、過去6年においてはほとんど変化が見られない。 主要な産業部門のうち、建設業及び農業における死亡災害率が最も高い。 2部門の死亡数は、それぞれ72人と39人で、全体の約半分を占めている。
    表2 死亡災害の数と10万人率
    表2 死亡災害の数と10万人率
      被雇用者 自営(労働)者 労働者数
    年度 人数 10万人率 人数 10万人率 人数 10万人率
    2006/07 191 0.7 56 1.4 247 0.8
    2007/08 p 179 0.7 50 1.2 229 0.8

    ※p は暫定数

イギリスの負傷、疾病および事故報告規則の概要
RIDDOR(the Reporting of Injuries, Diseases and Dangerous Occurrences Regulations 1995)

原資料  RIDDOR in detail 別ウィンドウが開きます

規則に基づき報告すべきものは?

事業者、自営者または職場を管理する者は、報告規則により一定の労働関連事故を速やかに報告し、 記録しておく義務を有する。

要報告死亡災害および重篤災害

  • 死亡事故
    仕事に関連した事故が発生し、被雇用者、構内において作業している自営者または一般公衆が死亡したときには、 速やかに当局に報告しなければならない。
  • 重篤災害
    仕事に関連して事故が発生し、被雇用者、構内において作業している自営者が重篤な負傷をし、 または、一般公衆が負傷して、当該場所から病院に収容されたときは、速やかに当局に報告しなければならない。
  • 要報告重篤災害は:
    • 指、親指およびつま先以外の骨折
    • 切断
    • 肩、骨盤、ひざまたは脊椎の脱臼
    • 視覚の喪失(一時または永久)
    • 目に対する化学物質または高温金属による火傷、目に対する異物の侵入
    • 感電または電気による火傷(意識不明となり、蘇生措置または24時間以上入院治療を要する事案)
    • その他の負傷:低体温症、熱中症による意識不明であって蘇生措置を要するもの、24時間以上入院治療を要するもの
    • 吸入、摂取によるまたは皮膚からの物質の吸収による治療を必要とする急性疾患、または意識不明事案
    • 生物因子、毒物、感染物質への暴露によると考えられる治療を必要とする急性疾患
  • 休業4日以上の要報告負傷
    仕事(暴力行為を含む)に関連した事故が発生し、 被雇用者または構内で作業する自営者が休業4日以上の負傷を受けたときには、10日以内に当局に報告しなければならない。
    休業4日以上とは:重篤災害以外の負傷で4日以上仕事から離れているか又は4日以上正規の職務の全部、 若しくは一部を遂行することができないものをいう。

要報告疾病

医師がある労働者が要報告疾病に罹患していることを当該労働者を雇用している事業者に通知したときには、 当該事業者は所管当局にこのことを報告しなければならない。

  • 要報告疾病は
    • 一定の中毒
    • 職業皮膚炎、皮膚がん、クロム性潰瘍、毛嚢炎などの皮膚疾患
    • 肺疾患:職業性喘息、農夫肺、じん肺、石綿肺、中皮腫等
    • 感染症:レピトスピラ症、肝臓炎、結核、炭疽病、レジオネラ症、破傷風等
    • その他:職業がん、筋骨格疾病、減圧症、振動症候群等

要報告事故(危険発生事案)

要報告の死傷災害に該当しないが、要報告災害になる蓋然性が明らかにある事案が発生したとき、 これを要報告事故(危険発生事案「Dangerous Occurrence」)といい、直ちに所管当局に報告しなければならない。

  • 要報告事故は
    • 昇降機および揚重装置の荷重支持部分の崩壊、倒壊または破損
    • 密閉容器および関連配管の破裂、崩壊または焼損
    • 貨物コンテナーの荷重支持部分の破損
    • 施設、装置の架空電線への接触
    • 火災または爆発の原因となる短絡若しくは過負荷
    • 故意でない爆発、失火、解体の失敗、境界から物がはみ出ること、爆発に起因する負傷
    • 重篤な疾病の原因とはるような生物的因子の放出
    • 工業用放射線透過撮影の失敗
    • 使用中または試験中の呼吸保護部の故障
    • 潜水装置の故障または危険発生、潜水者の閉じ込め事故、潜水者の近くでの爆発、盛業されない降下
    • 5メートル以上の足場の崩壊(部分崩壊)、墜落による溺れに危険のある水面付近の足場の崩壊
    • 車両との意図しない列車の衝突
    • 井戸(水井を除く)での危険発生事案
    • パイプラインでの危険発生事案
    • 催し物設備の破損、自動車または列車の脱線もしくは衝突
    • 危険物を積載しているタンク自動車の転倒、ひどい破損、引火、危険物の漏洩
    • 道路上を運搬中の危険物の火災へ巻き込まれ、または漏洩
    • 建設中、改造中または解体中の建物または構造物の崩壊 (海上施設を除き、5トン以上の鉄筋等の落下または床、作業場所の落下)
    • 24時間以上の作業停止を伴う爆発
    • 建物内での突然の制御されない漏洩:500キログラム以上の可燃性液体、沸点を超えた 10キログラム可燃性液体の漏洩、10キログラム以上の可燃性ガスの漏洩、500キログラム以上のこれらの物質の屋外への放出
    • 健康被害をもたらす可能性のある物質の偶発的放出

日本とイギリスの労働災害発生率の差異

  • 日本とイギリスの労働災害発生率の差異
    イギリスにおける労働災害による死亡災害発生件数は、少ないが、休業4日以上の死傷災害件数においては、非常に多くなっている。
    2006年の死亡と休業4日以上の労働災害をそれぞれ年10万人率と年千人率で比較すると、 わが国では、それぞれ2.9と2.4であるが、イギリスでは、それぞれ0.8と3.8である。
    2006年 死亡災害(年10万人率) 休業4日以上の災害(年千人率)
    日本 2.9 2.4
    イギリス 0.8 3.8

    我が国の死亡率はイギリスより3.6倍も高くなっているが、一方、 休業災害についてはイギリスの方が1.6倍も高くなっている。イギリスの休業災害発生率が高いのは、 基本的には両国の労働災害報告制度の違いが大きいと思われる。 すなわち、我が国では労災保険給付データより休業4日以上の死傷災害についての統計数値であるのに対し、 イギリスでは、「4日以上仕事からはなれているか、 若しくは4日以上正規の職務の全部若しくは一部を遂行することができないものをいう。」 とされているからである。
  • 参考資料
    RIDDOR 1995に関する指針
    同リーフレット
    医師のための手引き
    業種別の解説(航空、軍隊、ケータリング、教育、海上採掘、農薬、鉄道)

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