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各国情報・国際関係

2008/2009年の安全衛生欧州キャンペーンのテーマはリスクアセスメント

2008年8月14日

EU OSHA News from Board 08.05.2008

 

毎年行われてきた安全衛生に関する欧州キャンペーンの2008/2009年のテーマはリスクアセスメントとなり、 6月13日にブラッセルで発足に際した記者発表が行われる。 これに関連するFactsheet、パワポイント教材など種々の情報が下記の欧州キャンペーンのホームページに掲載されているが、 その中の「キャンペーンの趣旨」を紹介する。

安全衛生欧州キャンペーンのホームページ 別ウィンドウが開きます
このホームページに掲載の下記のFactshet2件の和訳は、別項に掲載している
Factsheet80:リスクアセスメント−安全で健康な職場への「鍵」
Factsheet81:リスクアセスメントにおける役割と責任

キャンペーンの概要

Healthy Workplacesキャンペーンの全体的な目的は、 リスクアセスメントのさまざまなステップを考慮した総合的なマネジメントへの取り組みを促進することにある。 2年間にわたるリスクアセスメントキャンペーンは、作業が行われるあらゆる場所において、 ハザードを除くことができるかどうかにはかかわらず、 リスクを防止する手段とその実施を検討する体系的な取り組みとがリスクアセスメントであることが明確に理解されることを狙うものである。 リスクアセスメントの進め方を分かりやすく説明することを目的としている。

リスクアセスメントは、専門家のための複雑で形式を整えるためのものではなくて、参加型のアプローチを推進するものである。 リスクアセスメントにおいては、ハザードの特定が理論上の情報によるだけではなく、 作業の内容と作業者の状態に関する情報も用いて行われるために、作業者との協議とその参加が不可欠である。 作業者の参加したリスクアセスメントは、継続可能な予防的カルチュアを築き上げるための重要な要素のひとつである。

明確で簡単な指針を提供することによって、すべての事業者が効果的にリスクアセスメントを行い、 リスクを除くか、抑制する適切な対策を実施することが我々の求めるところである。

 

キャンペーンの目的

リスクアセスメントに関する欧州キャンペーンの主な目的は以下である。

  • すべてのレベルの関係者の全欧州にまたがる非中央集権的キャンペーンへの積極的な参加を求める。
  • 作業場所におけるリスクアセスメントが、法律的な責務であると共に、実務的に有効であることの認識を高める。
  • 簡単なステップによるリスクアセスメントへの取り組みを普及させる。
    (Factsheet81「リスクアセスメント-安全で健康な職場への「鍵」」を参照)
  • リスクアセスメントとそれを行う手順を分かりやすく理解させる。
  • 企業(特に小さい企業と中小企業)が自分自身で(社内で)リスクアセスメントを行うことを推奨する。
  • リスクアセスメントが包括的なものであって、事業者(または、専門家)だけでなく、 職場の全員の責務であり、参加型アプローチによって効果が得られるという考え方を普及させる。
  • リスクアセスメントを普及させるための事業者、安全代表者、作業者、安全衛生実務者、コンサルタント、 政策立案者およびその他関係者に対する支援を行う。
  • リスクアセスメントが体系的なOSHマネジメントの第一歩であることを周知させる。

 

キャンペーンの対象者

キャンペーンの主たる対象は、OSH対策が実施される作業場所レベルの関係者、事業者、労働組合、 作業者とその安全代表、OSH実務者、OSHと保険サービス提供者および作業場所レベルにおける情報提供の援助を行う者である。 中小企業と特に小さい企業が最重要な対象である。仲介的役割を果たす政策立案者(EUおよび各国)、 協力関係者(事業者団体、作業者/専門家の組織)、連絡窓口とそのネットワーク、 EUの研究機関とそのネットワークおよびNGOが二次的な対象者である。

 

メッセージ

リスクアセスメントは、それ自体が目的ではなく、 必要な予防対策を特定するための強力なツールである。
認識されたハザードのリストをチェックするだけではなく、 気の付きにくいことおよびいくつかの要素間の相互関連性をも考慮に入れる必要がある。

関係者の全員が、その作業場所におけるリスクアセスメントとそれに関する対策に関心を持ち、 これらを実施するにおいて、全員が有効な貢献をすることが必要である。 OSHリスクアセスメントを行うことは、企業とその被雇用者の両方のため有益なので、 全被雇用者が積極的に参加し、協力的な取り組みが進められるべきである。 リスクアセスメントを進めるにおいては、被雇用者の参加と協議の行われることが重要である。

 

欧州の予防的な取り組み

  • リスクを回避する
  • 回避できないリスクについて評価をする
  • リスクを発生源において取り除く
  • 個人に対して作業を適合させる
  • 技術的な進歩を取り入れる
  • 危険なものを危険がないか、危険の低いものと置き換える
  • 総合性のある予防的な方針を樹立する
  • 包括的な対策を個別的な対策よりも優先させる
  • 作業者に対して、適切な指示、情報および教育訓練を提供する

 

なぜリスクアセスメントが必要なのか?

EUにおいては、3分半にひとりが業務上の原因によって死亡している。 すなはち、業務上の災害(7,500件)または職業性の疾病(159,500件)によって、 年間におよそ16万7000件の死亡災害が生じている。
休業3日間を超える災害については、4秒半ごとにひとり、 年間では700万件以上という莫大な数が発生している。

これらの災害により発生するコストには、以下があるがその負担は莫大なものである。

  • 被雇用者当事者とその家族の負担する人的コスト(統計数値には現れない部分がある。)
  • 会社・事業場が事業上において負担するコスト(病欠、保険料、生産性低下、離職、意欲低下、競争力低下など)
  • 社会が負担する保健部門のために必要なコスト

リスクアセスメントは、労働安全衛生(OSH)に関する枠組み指令および他の関連指令の大きな柱の1つである。 認識の向上とリソース、情報および優良事例の普及に対する投資については、それの実施による明確な価値がある。

リスクアセスメントに基づく予防的取り組みがOSHへの欧州におけるアプローチの礎石であることには、以下の明確な理由が存在する。

リスクマネジメントの出発点であるリスクアセスメントが、十分に行われていなければ、適切な予防対策が実施されることにはならない。

企業や組織が作業場所におけるリスクアセスメントを適切に行っていないことが、しばしば認められる。 中小企業と特に小さい企業では、難しいことかもしれないが、克服することが必要である。

リスクアセスメントは、マネジメント的取り組みにおいては、欠かせないものである。

枠組み指令を含むEUにおける規制においては、指針、情報および優良事例も示されてはいるが、 必要とされるのは、リスクアセスメントの各ステップ、個々の事業場におけるさまざまな必要性および作業の世界の変化を考慮に入れた、 統合的リスクアセスメントによる取り組みである。

本庁は、統合的リスクアセスメントの原理、効果的防止対策の重要性およびリスクアセスメントが必要であり、 かつ実行可能なものであることの周知に重点を置くものである。

 

リスクアセスメントは、リスクマネジメントによる取り組みの出発点であり、 体系的なOSHマネジメントに向かう最初の一歩である。

 

詳細については以下の資料を参照(この2件のFactsheetは別項に和訳を掲載)

  • Factsheet80:リスクアセスメントにおける役割と責任
  • Factsheet81:リスクアセスメント-安全で健康な職場への「鍵」
  • リスクアセスメントに関するウェブページ

 

EUにおいてどのような問題があるのか?

リスクアセスメントの実施において、改善が必要である事項は、 「枠組み指令と最初の5件の個別指令の実施状況に関する委員会からの報告書」 (COM(2004)62 final)において以下のように指摘されている。

  • リスクアセスメントを行うにおいて、何が必要なのかおよびどのように実行するかの認識が一般的に不足している。
  • リスクアセスメントの実務、文書および指導が一般的に普及していない。
  • リスクアセスメントは、一回限りのアクションだとされ、継続して行うものだと受け取られていない。
  • リスクの分析と評価が包括的でないため、個別的手段は実施されても、 作業場所の状況分析のための統合的なアプローチがなされていない。
  • リスクアセスメントが表面的にだけ行われるため、明白で直接的なリスクしか対象とならない。
  • 化学物質が原因であるような、長期的な影響は見落とされることが多い。
  • 心理社会的要素と作業組織的要素によるリスクが対象となることは少ない。
  • 事業者は、対策実施による効果について十分な関心を持たないことがある。

 

このため、EU指令に沿ったリスクアセスメントに取り組むにおいては、 このキャンペーンの狙いとする統合的なマネジメントの一部として実施することが必要との明確な認識を最初に持つことが必要である。

 

関連のJICOSH記事    HSEの実効あるリスクアセスメント/マネジメントに関する資料訳

  • 実効あるリスクマネジメントの趣旨
  • 実効あるリスクマネジメントの原理−実効あるリスクマネジメントと実効のないリスクマネジメント
  • 実効あるリスクマネジメントに関するよくある質問とその回答(FAQ)
  • 5ステップリスクアセスメントリーフレット(INDG163(第2版)2006年6月に実効あるリスクアセスメントを取り入れて改訂)
  • リスクアセスメント実施例:倉庫−多数の業種/職種に関するリスクアセスメントの実施例集中の倉庫に関するもの

イギリス安全衛生庁−HSEは、安全衛生に関する規制による社会の負担をできるだけ軽減するため、 形式的なものに陥ってしまいがちであるリスクアセスメント/マネジメントを、 実効が真に得られるよう実施する運動を展開している。

原資料の所在

 

速報イギリスHSEホームページにリスクアセスメント事例の追加

原資料の所在

 

EU OSHAの中小企業向けリスクアセスメント資料

  • リスクアセスメントの要点 Risk assessment essentials
  • リスクアセスメントツール Risk assessment tool

 

2007年までの安全衛生に関する欧州キャンペーンのテーマ

従来取り上げられてきたテーマは以下で、 “Campaigns”のページ 別ウィンドウが開きます に掲載のそれぞれのウェブサイトに、これらのテーマに関する多くの資料がある。

2007年:筋骨格系障害 European week 2007 別ウィンドウが開きます : Lighten the Load, Musculoskeletal disorders (MSDs)
2006年:若年労働者 European week 2006 別ウィンドウが開きます : Young people
2005年:騒音障害 European week 2005 別ウィンドウが開きます : Stop that noise
2004年:建設業 European week 2004 別ウィンドウが開きます : Building in safety
2003年:危険有害物質 European week 2003 別ウィンドウが開きます : Dangerous substances, handle with care
2002年:職場のストレス European week 2002 別ウィンドウが開きます : Working on stress
2001年:災害防止対策 European week 2001 別ウィンドウが開きます : Success is no accident
2000年:腰痛と筋骨格系障害 European week 2000 別ウィンドウが開きます : Turn your back on musculoskeletal disorders

全ての働く人々に安全・健康を 〜Safe Work , Safe Life〜

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