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中央労働災害防止協会(中災防)
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国際課
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E-mail: kokusai@jisha.or.jp

 

お知らせ

国からの委託事業であった 「国際安全衛生センター(JICOSH)」 別ウィンドウが開きます が2008年3月末をもって廃止されました。 永らくのご利用ありがとうございました。 同センターのサイトに掲載されていた個別の情報については、中災防WEBサイトの国別分野別情報にリンクして取り込んでおります。

 

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各国情報・国際関係

イギリスHSEによる美容院リスクアセスメント実施例

2008年9月1日

HSE what’s new Wednesday‚ March 12th‚ 2008 別ウィンドウが開きます

イギリス安全衛生庁(HSE)のHPには、リスクアセスメント実施例が多数掲載されている。 (下記URLに目次) サービス業、店舗など広範な業種が掲載されているが、 このほど「美容院」についてのものが掲載されたので紹介する。 JICOSHのサイトに掲載のリスクアセスメントに関する資料のリストを末尾に掲載した。
http://www.hse.gov.uk/risk/casestudies/index.htm 別ウィンドウが開きます

美容院の経営者がリスクアセスメントを実施した。 このサロンのスタッフは8人で、フルタイムやパートタイムなど、労働の状況はそれぞれのシフトによって異なる。 サロンの営業時間は週6日の10時〜22時で、サロンに付帯して、倉庫とスタッフルーム(椅子、湯沸し、冷蔵庫を設置)がある。

どのようにリスクアセスメントを実施したか

HSEガイダンス「5ステップリスクアセスメント“Five steps to risk assessment”のリーフレット」に沿って実施した。
PDF 原文   PDF 邦訳

  1. ハザードを特定するために
    • ハザードがどこに存在するのか、下記の資料を参照した。
      • HSEの出版物“Essentials of health and safety at work”
      • 薬品の納入業者より提供された安全衛生のガイド「A Guide to the Health and Safety of Salon Hair Product」
      • 皮膚炎に関するHSEのサイト「Skin at work」(下記)など。
    • HSEガイダンスに沿い 店内や倉庫他を隈なく点検し、リスクの要因となりうることを確認した。 集配物の受け取りや、資材の積み上げなど日常動作も検討した。
    • スタッフとの間で、サロンにおける安全衛生についての問題点を話しあった。
    • 事故記録書に目を通し、以前にどのようなことが生じたかを理解した。
  2. 誰がハームの被害者にどのように成り得るかを書き記した。
  3. 一つ一つのハザードをどのようにして防止できるか、防止する方法が存在するときはその内容を書き記し、ガイダンスと照合した。 既存の防止方法が不十分であるときは、他のリスクを防止する手段が必要であることを書き記した。
  4. リスクアセスメントの実施で見出された事項について、スタッフと話し合いを行い、 リスクアセスメント結果をスタッフ全員に見せるために掲示をした。
  5. 今後においては、毎年リスクアセスメントの見直しと更新を行うこととした。 サロンで大きな変化があった場合は、これを直ちに行う。

重要な注意点

このリスクアセスメント実施例は、小規模事業場が実施するのに適したひとつのアプローチを示している。 この実施例を指針として、自社の事業場におけるハザードについて検討して、リスクを防止するのに必要なステップを検討していただきたい。 このリスクアセスメント実施例は、事業場名を単純に自社名に置き換え、 何も考えずに全部引き写せばそれで済むような汎用的なリスクアセスメントではない点に十分注意していただきたい。 そのような行為は法律に違反することになるし、従業員を守るうえでもまったく効果がない。 どんな事業場もそれぞれに異なる部分があるので、 事業者は自分の事業場に存在するハザードと必要な防止措置を自分自身で考えることが必要である。

HSEによる美容院リスクアセスメント実施例
企業名:ヘアサロンスミス  実施年月日:2007年7月1日

どんなハザードがあるか? 誰がどのような危害を受ける可能性があるか? 現在すでに行っていることは何か? さらに必要な措置は何か? 担当 期限 実施日
水仕事
例 洗髪
濡れた髪の取り扱い
スタッフが皮膚炎、過敏症になり、極度の皮膚乾燥を引き起こす可能性がある。 希望者に非ラテックスの手袋を支給する。
水仕事後に完全に手を乾かし、保湿するようスタッフを指導する。
スタッフに無香料のハンドクリームを支給する。
水仕事においては手袋を着用する。 経営者
スタッフ
2007年
7月15日
2007年
7月11日
経営者は多種類のサイズの手袋を用意する。 経営者
スタッフ
2007年
7月15日
2007年
7月11日
手に着けたアクセサリーを取り外す。 経営者
スタッフ
2007年
7月15日
2007年
7月11日
HSEのHPの関連サイトを経営者が参照する。 経営者
スタッフ
2007年
7月15日
2007年
7月11日
整髪用の美容製品、薬品
全美容製品
(例:ブリーチ
カラーリング、パーマ溶液、殺菌液、洗浄液)
種類ごとの注意事項については下記を参照
スタッフ・客が目や皮膚の炎症を起こす可能性がある。 スタッフは美容製品取り扱い注意書記載の指示を守る。
美容製品取り扱い時、容器洗浄時に非ラテックス手袋を着用する。
店内と倉庫の十分な換気をする。
客ごとにタオルを使い分ける。
薬品が跳ねて目に入った際に洗眼を行う器具を常備する。 経営者 2007年
7月31日
2007年
7月25日
スタッフは客に不快感が無いか頻繁に確認する。 スタッフ 2007年
7月31日
2007年
7月25日
薬品類を目より高い場所に置かない。 スタッフ 2007年
7月15日
2007年
7月15日
ブリーチ製品

過酸化水素
(顕色剤/中和剤)

酸化性着色剤
スタッフ・客が目、皮膚、呼吸器の炎症またはアレルギーを生ずるおそれがある。 飛散しにくいブリーチ剤の使用。 経営者が3ヶ月ごとにスタッフの皮膚の状態や、アレルギーの状況を確認する。 経営者 2007年
8月1日
と3ヶ月毎
2007年
8月1日
スタッフ・客が、目や皮膚の炎症を生ずるおそれがある。 指定された濃度で使用する。光・熱を受けない場所に、他の薬品と離して貯蔵する。 なし      
スタッフ・客が、目や皮膚の炎症を生ずるおそれがある。(深刻なアレルギーの可能性は低い) 着色剤、その他の処置に対する客のアレルギー歴を確認し、 医師の意見を得ていないときは処置を避ける。 着色剤メーカーごとの指示に従い処置の48時間前にアレルギーテストを行う。 管理層
スタッフ
2007年
5月31日
2007年
5月25日
滑る 転ぶ 物や、床のケーブルにつまずいたり、床の髪の毛や液溜まり、濡れた床で滑り怪我をするおそれがある。 店内の整理整頓を行う。
切り落とした髪を速やかに清掃する。
こぼした液体を速やかに清掃する。
店の入り口にマットを敷く。
ケーブルを床上に引きずらない。
仕事に適した靴を着用する。
スタッフは定常的に液こぼれのチェックを行い、拭き取りは濡れたモップではなく、紙タオルや乾いた布を用いる。 管理層
スタッフ
2007年
5月31日
2007年
5月25日
床の状態を点検し、必要に応じて滑りにくい材質のものに変更する。 経営者 2007年
5月31日
と毎年
2007年
5月25日
電気 濡れた、あるいは欠陥のある電気器具の使用により、スタッフの感電、やけど、あるいは火災のおそれがある。 プラグやケーブルが損傷したとき、スタッフが管理層に報告をする。
スタッフがヒューズボックスの所在と、非常時の電源の切り方について把握する。
▪経営者自身が6ヶ月ごとに実際にプラグ、ソケット、ケーブルを目で見て確認する。 経営者 2007年
5月11日
と年2回
2007年
5月7日
ドライヤーや他の電気器具が水周りから離れていることを確認し、乾いた手で使用する。 全ての電気器具が水周りから離れていることを管理層が確認する。 管理層 2007年
5月11日
2007年
5月4日
    電気器具を信頼の出来る業者から購入する。 5年に1度の電気技師による店内の電気器具の点検と、 1年に1度の水温自動調節器の点検を行う。 経営者 2007年
6月30日
2007年
6月20日
長時間におよぶ立ち仕事 筋骨格系傷害、腰痛、首、肩の障害、あるいは脚や足裏の痛み、不快感を生じるおそれがある。 客の身体に合わせて調整可能な椅子を使用する。
身体のひねりを最小限に抑える設計のシンクを設置する。
カット時に、ホイール付きのスツールをスタッフが使用する。
経営者はスタッフ全員が定められた休憩時間をとっていることを確認する。 経営者 2007年
5月31日
2007年
5月25日
経営者が、個々のスタッフの状況をチェックし、労働環境の確認をする。 経営者 2007年
5月31日
2007年
5月25日
火災 スタッフや客が店内、倉庫、スタッフルーム内に閉じ込められた場合に煙を吸ったり、あるいはやけどをするおそれがある。 火災に関するリスクアセスメントの実施。
www.fire.gov.uk/
workplace+safety
別ウィンドウが開きます
窓際に置いたエアロゾルや可燃物質を除去する。 経営者 2007年
6月1日
2007年
6月6日
刃物や鋭利な道具 スタッフや客の切り傷や擦り傷、あるいは流血による血液感染のおそれがある。 鋭利な道具の毎使用後の殺菌をする。
殺菌液の毎日の取替えと、メーカーの指示に従った希釈をする。
使い捨ての刃物を使用後、専用ボックスに速やかに収納する。
救急箱を準備する。
スタッフの殺菌手順に誤りが無いか確認するために、経営者が抜き打ち的な点検を実施する。 (クリッパーの刃のスプレー殺菌も含む) 経営者 2007年
6月30日
 
切り傷のあるスタッフには、手袋を着用させる。 スタッフ 2007年
7月15日
2007年
7月15日
家具の移動
重い物の持ち上げ
スタッフにおいて筋骨格系傷害の発生するおそれがある。 むやみに持ち上げず、事前に重さの確認をする。 なし      
独り作業 店内で独り作業をする際においては、言葉によるものや、肉体的な暴力を受けるおそれがある。 独り作業時にはドアロックを行う。 独りで作業をする際には、経営者や、管理層に報告することをシステム化する。 経営者
管理層
2007年
7月3日
2007年
7月3日

関連情報

イギリス安全衛生庁の美容院等における職業性喘息、呼吸器系疾病と皮膚炎に関する調査報告書RR623
“Occupational diseases in hairdressers and nail bars”

イギリス安全衛生庁:ネイルサロン従業員の安全衛生調査報告RR627
“Health and safety in nail bars”

イギリス安全衛生庁:美容院のミニサイト
“Hairdressing”

イギリス安全衛生庁:皮膚炎のミニサイト
“Skin at work”

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リスクアセスメント実施例:倉庫−多数の業種/職種に関するリスクアセスメントの実施例集中の倉庫に関するもの

[ 原文 ]

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