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各国情報・国際関係

イギリスHSEが単独作業のリスクに関する手引きを刊行

2009年11月30日

HSE what’s new 2009年9月18日 別ウィンドウが開きます

イギリス安全衛生庁(HSE)は、安全衛生に関する多種類の手引きなどを刊行し、 同庁ウェブサイトの手引き(GUIDANCE)のページにおいて無償で提供しているが、 単独作業の安全衛生リスクに関する手引きがこのほど刊行されたので概要を紹介する。

原資料の題名と所在

PDF Working alone
−Health and safety guidance on the risks of lone working
(INDG73(rev2)09/09)

サムネール

 

単独作業の安全衛生リスクに関する手引き(INDG 73改定2版)の概要

 

はじめに

この手引書は、単独作業を行う労働者の安全衛生をどのように確保するかの助言と指導を提供するものであり、 単独作業に労働者を従事させる事業者等及び単独作業を行う自営業者を対象としています。

本手引きに記載の助言と指導は、強制を伴うものではなく、 下記法令に基づく単独作業に係る法的義務の履行について関係者の手助けとなるものです。

  • 労働安全衛生法(1974年)(The Health and Safety at Work etc Act 1974)
  • 労働安全衛生マネジメント規則(1999年)(The Management of Health and Safety at Work Regulations 1999)

単独作業は適法か、また、それは安全か

これらの質問は、HSEにしばしば寄せられるものです。
単独作業そのものは、法に反するものではありませんし、多くの場合安全であると思われます。 しかしながら、法律は事業者及び関係者に労働者を単独作業に従事させる以前に、 安全衛生リスクについて検討することを要請しています。

事業者は、その労働者の安全、衛生及び福祉について責任を負っています。 事業者は、また、自営業者及び請負業者などの訪問者などの、 その作業の影響下にある人々の安全衛生についても責任を負っています。

これらの責任は、単独作業を行う労働者を含めて、他に転嫁できないものです。 単独作業の労働者に係るリスクを評価し、必要に応じリスクを除去し、抑制することは、事業者の義務なのです。

労働者は、自身及び彼等の作業の影響下にある人々について、合理的な注意義務を有しており、 また、事業者の行う法令順守について協力しなければなりません。

 

単独作業者とは、また、それはどんな仕事か

単独作業者とは、近接したまたは直接の監督なしに彼等自身により作業を行う者です。 それらは、広範囲の作業現場において見られますが、いくつかの例を次に掲げます。

固定事業場の労働者

  • 小さな作業場、ガソリンスタンド、売店などの小規模事業場の労働者
  • 家内労働者
  • 他から隔離した状態での作業、例えば小規模の工場、倉庫、研究・教育施設、遊戯場、催し物場などの労働者
  • 通常の時間帯に屋外で作業する労働者、例えば掃除人、警備・生産・保守担当者
固定場所から離れて働く移動労働者

  • 建設、プラント、保守、清掃、電気修理、昇降機修理、塗装及び装飾、車両修理などに従事する労働者
  • 農業及び林業労働者
  • サービス労働者、例えば家賃集金員、郵便配達人、社会福祉従事者、訪問介護従事者、医師、地域看護師、 害虫駆除従事者、配達人、技師、建築家、不動産業者、営業マン及び家庭、商店を訪問する類似の職業

 

リスクをどのように評価し、抑制するか

事業者は、単独作業者が直面する潜在的危険源について調査し、 当該作業者に係るリスク及び当該作業者の影響下の他の人々のリスクについて評価する必要があります。 事業者は、リスクを抑制し、避ける対策を講じる必要があります。

事業者が実施すべきこと

事業者は次のことを行うことが必要です。

  • 必要なリスクアセスメントを実施する場合には、安全衛生スタッフまたは労働者代表を参加させること
  • 対策が講じられているかどうかチェックすること(指示、教育訓練、監督及び保護具の支給を含む)
  • リスクアセスメントを毎年見直すこと、また、作業場所の状態が同じであることは少ないので、 作業方法に大きな変更があったときは、リスクアセスメントを見直すこと
  • リスクアセスメントの結果、単独作業を安全に遂行することが困難であることが分った場合は、 支援またはバックアップを取るなどの必要な措置を講じることにより対処すること
  • 単独作業者が他の事業者の事業場で作業する場合には、 当該事業者は単独作業者の事業者に当該作業者に関係するリスク及び必要な抑制方法を通知すること

リスクアセスメントは、事業者が管理監督の適正水準を決めるのに役立つものです。
当該作業者の他に、もう一人の者が立会う必要がある、いくつかの高リスク作業があります。 例えば、次のような業務です。

  • 監督者がその場所におり、必要な場合に救急処置を行う、高リスクの密閉作業空間における作業
  • 活線作業または活線近接作業
  • その他二人以上の作業者を必要とする電気作業

リスクアセスメントの事例は、HSEの www.hse.gov.uk/risk/casestudies. 別ウィンドウが開きます を参照。

5人以上の労働者を雇用する事業者は、リスクアセスメントの主な結果を記録しておかなければなりません。

事業者は、また単独作業に関する関係法令に留意しておく必要があります。 例えば、潜水業務、爆発物運搬業務、燻蒸業務などがあります。

 

労働者の意見を聴く

事業者は、労働者の安全衛生について、彼らの意見を聴くことが求められております。 労働者及びその安全代表者は、情報と助言の有効な入手源ですから、彼らと話し合うことが重要です。

効果的な意見聴取は、全ての関連する危険源を確認し、適切かつ相応な管理対策を講ずるのに役立ちます。

効果的な意見聴取を実施している作業場は、結果としてより安全で健康的な職場になっていることを研究の結果が示しています。

問題解決及び法的義務について労使が共同して取組むことは、 意思決定と行動の実施についての労働者の関与を高めるという付加的効果をもたらします。 労働者が意思決定に積極的に参加することにより当事者意識を持つこととなるからです。

 

単独作業者に関係する特別な問題とは?

単独作業者に対する安全で健康的な作業環境を確保することは、一般の作業者の安全衛生の確保とは異なります。 事業者は、単独作業者の作業行動に適用する法律と基準を知り、 単独作業者の作業が法的義務に適合しているかどうか検討する必要があります。

安全作業を計画する場合に特に留意すべき事項のいくつかを次に掲げています。

リスクは、一人で適切に抑制することが可能か

単独作業者は、他の作業者よりも高リスクに暴露されないようにします。 このためには、特別なリスク抑制対策が必要になってきます。

正常な作業時及び火災、装置の故障、疾病、事故などの予見可能な緊急時の注意事項をあらかじめ考慮しておく必要があります。

  • 作業場所に単独作業者に対する特別なリスクがあるか。
  • 一人の作業者のための安全な出入り口があるか。
  • 移動梯子、架台などの必要な仮設の設備を一人の作業者で扱うことができるか。
  • 作業場所の全ての機械及び物を一人の作業者が扱うことができるか。
  • 作業者に対してリスクとなる可能性のある化学物質又は有害物質が使用されていないか。
  • 物を持ち上げる作業においてその重量が一人の作業者にとって過大でないか。
  • 装置の安全な運転のための操作及び作業場所での運搬のために2名以上必要とならないか。
  • 暴力の危険はないか。
  • 若い、妊娠しておりまたは障害を持つ労働者が単独で作業する場合、リスクに直面することはないか。
  • 単独作業者の第一言語が英語でない場合に、明確な情報伝達を確保するための適切な措置が取られているか (特に緊急事態など)。
何らかの疾患をもつ労働者について、単独作業が可能か

事業者は、単独作業者が単独作業に適当でない疾患を持っていないかどうかチェックする必要があります。 必要なら医師の指示を求めます。
身体的又は精神的な追加的負荷を労働者に与える可能性のある通常業務及び予見可能な緊急事態について考慮します。

なぜ特に単独作業者に対する教育訓練が大切なのか

教育訓練は、不確実な状況においての管理、指示及び支援のための監督が限られている場合に、特に重要です。 また、異常事態においては、人々が恐慌状態になることを防止するために、きわめて重要なのです。

単独作業者は、十分に経験を積み、かつ、リスクとその事前注意を完全に理解していなければなりません。 事業者は、単独作業において何ができ、何ができないかの限界(制限事項)を設定しておく必要があります。 事業者は、単独作業者が新たな状況、異常事態及び教育訓練を受けた範囲を超える状況に対処する能力 (作業を中止する時期、監督者の指示を得ること、攻撃・侵害への対応など) を有していることを確認しておかなければなりません。

単独作業者の管理監督の方法等

単独作業者を常態として監督下におくことはできないが、 当該労働者の作業中の安全衛生を確保することは事業者の責務です。 適切な監督により、当該労働者が作業から生じるリスクを理解し、 必要な事前注意を払うことに対して、手助けをすることができるのです。

監督により不確実な状況における指導を行うことができます。 安全衛生についての監督は、しばしば進行状況及び品質のチェックの時にあわせて実施できます。 この監督は、安全衛生事項を取上げての討議を含めた、定期的な現場巡視の形式をとることも可能です。

必要となる監督の程度(範囲)は、関連するリスク及び単独作業者が安全衛生に係る事項を認識し対処することができる能力によります。 新規就業、教育訓練中、特別なリスクのある業務を行う、又は新たな状況に対処することとなる労働者は、 最初は、同僚又は監督者の下で従事する必要がある場合が多くなります。

監督の程度(水準)は、管理者側の決定事項です、その決定はリスクアセスメントの結果に基づき、 リスクが高くなればなるほど、監督の程度も大きくなります。 支援が必要かどうかの決定を、個々人に任せておくことはできません。

単独作業者の安全衛生の確保のために、当該作業者を監視(モニター)する方策を講じなければなりません。 これらには、次のようなことがあります。

  • 単独作業者の作業場所を定期的に監督し、当該作業者を観察する。
  • 携帯電話、電話、無線またはメールにより、単独作業者と監督者の間で定期的に連絡を取る。
  • 単独作業者から定期的に合図がない場合に、自動警報が作動するような方法(例えばスタッフ安全確認システム)を講じる。
  • 活動が停止したときに、手動または自動で作動する緊急警報装置を設置する。
  • 単独作業者が仕事を終了した場合に、当該作業者が所定の場所に戻りまたは帰宅したことを確認する。
単独作業者が病気になり、事故に遇い、または緊急事態が起きた場合には

単独作業者は、緊急事態が起きた場合に、これに正しく対処できなければなりません。 リスクアセスメントは、予見可能な事案を確認することから始まります。 緊急事態の対処の方法を確立し、労働者を教育訓練することが必要です。

事業場の緊急対応及び危険区域についての情報を、単独作業者に知らせておく必要があります。 単独作業者が、適当な救急設備を利用できるようにし、 また移動作業者には、軽度の怪我に対処するために救急キットを携行させるようにします。
リスクアセスメントの結果により、場合によっては、単独作業者に救急処置の訓練を行うことが必要となります。

労働者災害保険について

労働者災害保険法(1969年、強制保険)により、大多数の事業者は法により業務上の死傷災害、 疾病に対して労働者に保険をかけることが要求されています。 単独作業者も、この強制保険によりカバーされなければなりません。

 

その他の関連資料の所在

手引き、法規、相談窓口、図書(省略)

関連情報

イギリス安全衛生庁(HSE) 別ウィンドウが開きます ウェブサイトには、イギリスにおける安全衛生に関する情報が多く掲載されている。

この中の手引き(GUIDANCE) 別ウィンドウが開きます のページに、多くの手引きが掲載されていて、 テーマ別及び産業別のプルダウンメニューから、探してダウンロードすることができる。(無償)

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