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各国情報・国際関係

欧州諸国石綿関連一斉検査実施結果報告

2009年12月25日

EU OSHA News 2009年9月7日 別ウィンドウが開きます

欧州委員会(上級労働監督官委員会)は、2006年において欧州全域で実施した石綿に関する一斉検査の報告書を受理した。

この一斉検査は、

  • 欧州連合の石綿に関する規制を強化する指令の発効
  • 上記指令の履行のために開催されたドレスデン会議によるドレスデン宣言

に沿って実施することが決定されたものである。

この報告の内容は、上級労働監督官委員会欧州石綿キャンペーン2006(SLIC European Asbestos Campaign 2006)のページに、 背景などと共に、下記の3つの資料が掲載されているが、 この中の要旨の全文及び最終報告書と付属資料の中の重要と考えられる部分を紹介する。

原資料の題名と所在

上級労働監督官委員会欧州石綿キャンペーン2006のページ 別ウィンドウが開きます

欧州委員会(上級労働監督官委員会)−石綿キャンペーン実施結果−最終報告−要旨

背景

「石綿は、致死的に危険であり、ばく露を防止しよう!」のスローガンのもとに、 EU各国は2006年10月から12月にかけて一斉監督を実施した。
2003年と2004年の会議において、上級労働監督官委員会は2006年に石綿に関する一斉監督を実施し、 安全衛生諮問委員会との協力により石綿障害防止に関する手引きを作成することとなった。
労働監督機関の石綿に係る主な課題は、保全、除去及び解体作業に関するものである。
次のような実際的な問題点がある。

  • 石綿の確認(石綿かどうか。石綿の種類)
  • 石綿含有物にリスト(場所、量、状態)の作成
  • 改修及び保全作業における不測のばく露
  • 作業方法が適切かどうかのリスクアセスメント
  • 個人の建物からの固化石綿の除去と廃棄
  • 廃棄物処理と安全衛生
  • 石綿除去及び廃棄業者の免許と認証
  • 一般公衆への通知及び監督官、事業者並びに労働者の教育訓練

石綿及びその取扱いに関する歴史的及び政治的差異により、 EU各国の労働監督機関はそれぞれ異なったアプローチを採用してきている。 石綿の取引及び取扱いが長期間禁止されている国では、石綿除去及び廃棄物処理を優先事項としているが、 他の国では免許を受けた会社の監督指導に重点を置いている。

○ 労働者、事業者及び監督官のためのすべての公用語による手引き

石綿を含み又は含んでいる可能性のある作業に関する「石綿によるリスクを最小限にするための実施手引き」は、 下記事項に焦点を当てている。

  • 石綿へのばく露の発生、関連分野及びリスクの程度
  • 石綿が含まれる可能性のある事例及び石綿が含まれる物を確認する事例
  • 石綿が使用されている構造物、設備及び石綿を含んでいる可能性のある物の事例
  • 解体、保守及び改築作業並びに廃棄物処理の過程での石綿へのばく露のリスク
  • リスクアセスメント
  • 石綿の廃棄作業に従事する労働者の安全対策
  • 防護対策
  • ばく露状況に応じたリスクの分類

実施手引きは、次のことを目指している。

  • プラント、設備、建築物の使用、保守及び稼動中に石綿及び石綿製品を確認し、石綿の存在の認識を高めること
  • 石綿の除去に関する好事例(粉じんの抑制、覆い、保護具などの事例)を掲載すること
  • 人的要素及び個人の多様性を考慮した防護具及び防護衣の採用を促進すること

いくつかの国(ポルトガル、チェコ、スロベニア)は、専門家及び石綿使用工場用として手引きを発行し、 他の国ではすべての監督官に配布している。

○ 労働監督官の研修

ほとんど全ての国において石綿専門監督官に対する研修が行われ、 いくつかの国においては全ての安全衛生監督官に対して研修が行われ、一斉監督にこれらの監督官が参加した。

○ 社会的パートナーの参加

このキャンペーンのもう一つの重要な側面は、三者構成のアプローチである。 キャンペーンの準備段階において多くの社会的パートナーが欧州連合レベルにおいて参加した。 又、労働監督当局もそれぞれの国における研修及び広報計画に積極的に社会的パートナーを巻き込むよう要請された。

 

結果

○ 石綿は今なお重要な検討事項

EUの全ての国において石綿含有物の取扱いの健康障害が検討事項となっており、 高い労働安全衛生水準を維持し、リスクを到達可能なかぎり低く維持するために労働監督機関の継続的な活動が要請されている。

石綿関連法令に違反する事案が、現場管理面(リスクアセスメント、労働者の教育、石綿の確認など)において見受けられ、 又、特に配送工程又は生産工程の境界部分、廃棄物処理、不良包装物の再包装業務などにおいても見られた。 監督の戦略としては、効果の持続を確保するために組織上の側面に重点を置き、事業者、 現場管理者及び労働者に対するさらなる周知と教育が必要であると結論付けられた。

○ 少量取扱いの小規模零細企業

小規模零細企業において少量の石綿が含有物を取り扱う事例がしばしば見受けられる。 この規模縮小は、事業者及び労働者のリスクに対する認識、知識及び経験の低下となり、安全衛生対策が不十分となっている。 このことは、石綿によるリスク管理のための重要な要素、例えばリスクアセスメント、 労働者への周知と教育、作業計画、適合証明などにおいての法違反となって現れてきている。

○ ばく露源がよく知られていない

キャンペーン期間中、鉄道、屋根タイルのリサイクル及び輸送コンテナーに石綿ばく露の源があることが分かった。 これらは、実施手引きに加えられた。

○ 各国の法令の相違

石綿関連作業の届け出及び企業及び/又は労働者の資格認証に係る規則については、各国間で大きな相違がある。 報告は、この分野において基準が定められていないことが現場の低能力の主な原因であり、 又、労働監督機関の適切な監督の実施を阻害していると結論付けている。

○ 労働監督機関に対する支援と研修が必要

石綿関連健康障害は、労働監督機関のみでは対処できるものではない。 この分野における全ての関係者の関与が不可欠である。 監督官、社会的パートナー及び専門家への周知と研修がこの関与の形成に役立つ。 この報告から、労働監督機関を含め石綿作業関連の全ての関係者に対する周知と教育・研修が大変重要であることが明らかになった。

○ 欧州全体の手引きが必要

新たな手引きが広報資料として広く活用されている。 この手引きは、欧州共通の標準となる好実施例を示しているので、 国内外の専門家に広く受け入れられている。 又、この手引きはEUが資金援助している他の事業、企画にも活用されている。 報告においては、手引きは最新の技術を反映するようにさらに改善され、定期的に改正され、 そして最低基準及び全ての関係者の出発点としての共通のEU指針として活用されなければならないと結論付けている。

○ 新しい形の情報伝達と教育研修

多くの国において石綿作業は、「散発的作業における低濃度ばく露」に関連しており、 リスク対象労働者の多くは保守・保全作業に従事している。 より多くの情報が分かりやすい形(記号、絵など)で提供されることが大切である。 又、不測の、予想外のばく露についてどのようにしてこれを防ぎ、又はばく露があった場合に対する対策を含めることが必要である。

キャンペーンの副次的効果の一つは、最初の段階はインターネットベースの経験情報の交換であった。又、石綿フォーラムが提案された。

○ 国の石綿管理制度

上級労働監督官委員会の2006年石綿キャンペーンの枠組の中で、国の石綿管理制度に関する最新の調査が実施された。 この調査は、安全衛生監督機関が建築物、工業プラント及び廃棄物処理過程において石綿を除去する企業を選定し、 許可する制度をどのように運用しているか及びこれら機関の情報提供の方法についての各国の情報を収集するためのものである。 報告書には、概観表を掲載している。

各国からの報告によりキャンペーンの結果と石綿指令の受入れと実施状況の評価が実施される。 いくつかの国(イギリス、スウェーデン、デンマーク)では、 キャンペーンは特定かつ長期の石綿プログラムの出発点になり、又、 国民的議題として再び取り上げられた(オーストリア、ドイツ)。

本報告は、仏語及び独語によるものも欧州委員会で入手できる。

 

最終報告書及び付属資料の表の一部抜粋

国別検査対象件数

国別検査対象件数
  計画 実績
オーストリア 60 104
ベルギー 50 76
チェコ 30 57
サイプラス共和国 10 28
デンマーク 40 40
エストニア 50 32
フィンランド 100 67
フランス 500 770
ドイツ 300 496
ギリシャ 50 38
ハンガリー 50 -
アイスランド 5 -
アイルランド 60 55
イタリア - -
ラトヴィア 200 71
リトアニア 50 39
ルクセンブルグ 20 12
マルタ - -
オランダ 100 184
ノルウエー - -
ポーランド 114 117
ポルトガル 32 40
スロヴァキア 60 8
スロヴェニア 50 61
スペイン 500 433
スウェーデン 200 234
イギリス 250 250
合計 2881 3127
計画対実績   108%

 

検査対象3127件の事業場の規模別内訳

検査対象3127件の事業場の規模別内訳
事業場の規模別内訳 従業員数 1-5 6-20 21-50 >50
件数 2657 374 80 16
比率 85% 12% 3% 1%

 

検査対象3127件の作業の種類別内訳

検査対象3127件の作業の種類別内訳
作業の種類別内訳 種類 解体 保全 除去 廃棄
件数 878 440 1622 454
比率 28% 14% 51% 15%

 

欧州連合石綿に関する規制を強化する指令遵守状況
(検査対象3127件における遵守レベル別の比率と国別の比率の範囲)

番号 指令の項目 遵守レベル1(最高)の比率と(範囲)% 遵守レベル4(最低)の比率と(範囲)%
1 労働者及びその代表者との協議を含むリスクアセスメント 59(24-100) 32(0-76)
2 作業実施の行政機関への届出 72(12-100) 23(0-88)
3 解体または保全作業前の石綿含有量の推定 67(20-100) 26(0-78)
4 解体または除去作業前の作業計画策定 63(25-100) 28(0-75)
5 石綿を取り扱う作業区域の明確な表示 62(18-99) 19(0-80)
6 石綿であることを表示した容器へ廃棄物を収納する手順の確立 68(35-100) 17(0-55)
7 施工業者の石綿の除去、解体を行う能力に関する証拠 70(8-20) 27(0-93)
8 石綿を含有する粉じんにばく露する労働者の適切な教育訓練 58(13-100) 31(0-88)
9 施工業者の種類と経験期間の表示を含む免許制度 57(8-98) 34(2-93)
10 石綿を含有する粉じんにばく露する労働者の特殊健康診断 61(5-99) 33(1-95)
11 石綿含有材料から発生する粉じんに対する労働者のばく露の種類と程度に関するリスクアセスメント 61(16-100) 28(0-85)
12 石綿含有粉じんの飛散を防止する手順の適用 58(5-100) 21(0-95)
13 呼吸用保護具及びその他の個人用保護具の使用 65(8-96) 20(0-93)
14 作業場所の空気中石綿濃度の定期的測定 51(2-100) 33(0-96)

 

関連情報

旧JICOSH記事の主要なもの

その他、労働安全衛生対策に関する情報の充実しているサイトの例としては、以下がある。

全ての働く人々に安全・健康を 〜Safe Work , Safe Life〜

中央労働災害防止協会
〒108-0014 東京都港区芝5-35-2 安全衛生総合会館

  • 厚生労働省
  • 安全衛生マネジメントシステム審査センター
  • 安全衛生情報センター