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各国情報・国際関係

HSE揚重機の詳細検査に関する手引き

2010年1月22日

HSE What's 2009年11月16日

イギリス安全衛生庁(HSE)が提供している諸般の分野における手引きのひとつで、クレーン、エレベーター、フォークリフト等の揚重に用いる機器 (以下、揚重機とする。)検査に関する手引きで、HSEのウェブサイト (後記)に関連する情報とともに掲載されているものである。

原資料の題名と所在

pdf Thorough examination of lifting equipment- A simple guide for employers (INDG422) 別ウィンドウが開きます
ISBN 978 0 7176 6305 7

揚重機の詳細検査―事業者のための手引き

はじめに

あなたが揚重機を管理する事業者もしくは自営業者である場合には、この揚重機の安全を確保する責務があります。 責務者としての主な要求事項は、作業機械の備付け及び使用規則 (the Provision and Use of Work Equipment Regulations 1998 (PUWER)、以下「作業機械規則」)及び揚重作業及び揚重機規則 (the Lifting Operations and Lifting Equipment Regulations 1998 (LOLER)、以下「揚重機規則」と略称)に規定されています。

この手引書は、揚重機規則に基づく詳細検査、詳細検査以外の一般検査(以下「検査」と略称) に関する助言と詳細検査計画を策定することの利得について説明しています。 ただし、このことは操作者がその日の作業開始前に揚重機及びその付属装置を点検する必要性と代替するものではありません。

揚重機規則の要求している事項は?

揚重機規則は、揚重機の使用に伴う特定のリスクを取り扱っており、詳細検査と検査がこの規則の主要な要求事項です。

これらの要求事項に適合するために、責務者は:

  • 揚重機の構造部分などが劣化し、危険な状態になるような状況で使用される場合に、 この揚重機が有資格者による詳細検査を受け、
  • 同資格者が提言した補完的検査及び試験を所定の期間内に行わなければなりません。

劣化の原因となる状況の例としては、湿潤し、磨耗しやすい、または腐食しやすい環境があります。

揚重機規則の適用がある機械等は?

この規則の適用範囲は非常に広範囲にわたっています(表1参照)。
また、次の用語が定義されています。

  • 揚重機:荷を上下させるための装置をいう。 揚重機は、装置を固定し、取り付け、または支持する付属装置を含む(天井走行クレーンのランウェイなど)。
  • つり具:つり上げるために装置に荷を取り付けるためのものをいう。

表1揚重機規則の適用がある装置

揚重機 つり具
クレーン 玉掛けロープ
人荷共用エレベーター フック
建設用エレベーター(Construction hoists) シャックル
ダムウェイター(Dumb waiters) アイボルト
折り曲げ式昇降台 上昇、位置決めロープ
車両後部搭載昇降台  
浴槽ホイスト
エレベーター設置階段
テレハンドラー及び産業用リフトトラック
車両エレベーター

 

揚重機規則の適用がない機械等は?

揚重機規則の適用がない装置であっても、作業装置規則により装置の安全確保をしなければなりません。
これらには、

  • コンベアー、トラクターの3点リンクなどの荷の上下運搬を主たる目的にしていない装置
  • パレット、スキッド、とりべ、使い捨てロープなど、または類似の容器など荷の一部であるもの。

一般公衆の用に供される揚重機(ショッピングセンターや駅のエレベーターなど)については、 作業装置規則及び揚重機規則の適用はありません。しかし、労働安全衛生法(1974年)により安全を確保する義務があります。 また、揚重機規則の要求事項に従っていれば、一般的な義務を果たしていることとなります。

詳細検査とは?

詳細検査は、危険または危険になる可能性のある欠陥を検出するために有資格者による系統的、詳細な検査をいいます。

有資格者とは?

有資格者は、

  • 揚重機について十分、適切な実際的かつ理論的な知識経験を有し、欠陥及び弱点を検出し、装置の安全と継続使用についてこれらの欠陥、 弱点がどの程度重要か審査・評価することができ、
  • 定常的な保全業務担当者とは別の者で、
  • 決定について十分に独立でかつ公平であり、
  • そして別の企業に雇用されている者であるべきとされています。

揚重機規則の適用がある機械等は?

揚重機については、下記により詳細検査を実施します。

  • 最初に使用する前 −装置がECの適合宣言のマークが付された後1年未満のものを除く(ただし、現地で再び組立てられたものを除く。) 装置が現地組立ての場合は、組立てが正しくなされているかどうかについて有資格者による検査をうけなければなりません (建物内に設置される作業床昇降機など)。
  • 現地組立て後で使用前(タワークレーン)。
  • 稼動中のものについて定期的に−危険状態となる可能性のある劣化を引起すような条件で使用される場合。 この場合については、下表2により実施する詳細検査については、次により準備します。
    −定期的(人を運搬する場合は、6ヶ月ごと、荷のみの場合は12ヶ月ごと)
    −有資格者が決めた詳細検査計画に基づく

つり具についても6ヶ月ごとにまたは詳細検査計画に基づき詳細検査を行います。

 

表2 稼動時詳細検査期間

種別 6ヶ月 12ヶ月 詳細検査計画
付属装置  
人を昇降する装置  
その他の揚重機  

 

揚重機は、次のような例外的な状況があった場合にも詳細検査を行う必要があります。

  • 損傷、故障した場合
  • 長期間使用しなかった場合
  • 性能等に影響する大きな変更、改造が行われた場合など。

詳細検査計画とは?

詳細検査計画には、詳細検査の他、詳細点検日程、適当な詳細検査技術及び試験に関する要件を含みます。 詳細検査計画は、

  • 詳細に詳細検査されるべき揚重機の部分を明確にします。
  • 同じ操作条件にある多くの類似の事項(工場内における使用年数、 使用程度がほぼ同じようなつり具など)をカバーすることができます。
  • 定期的詳細検査間隔(6ヵ月または12ヶ月)と異なる期間(より短いまたはより長い)期間を特定することができます、 ただし、間隔を長くする場合には厳密なリスクアセスメントに基づかなければなりません。
  • 必要な能力を有する使用者、所有者、製造者または他の独立した者が決めることができます。

揚重機の検査時期は?

揚重機規則に基づき、揚重機についても、また、詳細検査と次の詳細検査の間の適当な時期と間隔で検査をしなければなりません。 これは、通常、事業場のリスクアセスメントにより、装置の使用による相当程度のリスクを確認した場合に実施します。 もし、検査が必要とされるなら、

  • 範囲と頻度は、有資格者の意見により決定します。
  • 多くの揚重機の製造者は、検査をどの程度の頻度で実施するかの指針があります。
  • 検査は、通常、目視点検と機能点検とからなります。
  • 検査は、定期的(週次、月次、四半期)に実施し、通常は機械部分(クレーンの)に対して実施します。 チェ−ンや玉掛けロープなどのつり具については、使用開始前とその後、適当な間隔で詳細検査を実施していれば、 通常は行う必要はありません。
  • 検査日程についても詳細検査計画に入れておく必要があります。

揚重に関係ない部分も検査する必要がありますか?

危険状態になる可能性のある劣化の原因となる状態にさらされる装置は、作業装置規則により、検査を行うこととされています。 フォークリフトなどの装置については、揚重部分とそうでない部分の両方を検査しなければなりません。

フォークリフトの例

  • 詳細検査及び補完的検査(必要なら)を揚重機規則により揚重機構 (チェーン、フォーク等の荷物を持ち上げる機構)について実施します。
  • 作業装置規則に基づき、ブレーキ、照明器、転倒保護機構などの検査を実施します。
  • 車両の揚重部分とそれ以外の部分の保全については、作業装置規則により実施します。

上記のような場合には、揚重機規則と作業装置規則による検査をうまく組み合わせて行うことができます。

詳細検査または検査は、定期保全と同じですか?

違います。保全は点検及び磨耗部品または破損具品の交換、潤滑、期限切れ部品の交換、油圧液面の確認・補充、 及び定期的各部調整が主なものです。保全は、装置が想定期間稼動し、磨耗や劣化によるリスクを除去するものです。 詳細検査は、保全のよくない部分を指摘するもので、詳細検査の結果を待って保全を行うというものではありません。
保全は、作業装置規則による要求事項であり、揚重機を含めて実施することとなります。

記録を保管する必要がありますか?

全ての詳細検査と検査の記録は保管しなければなりません(表3参照)。 有資格者は、詳細検査及び全ての検査または実施した試験についての報告書を事業者に提供しなければなりません。 この報告には、欠陥の有無と補修等について記載されます。揚重機規則の別表1に報告書に記載する情報が決められています。
有資格者は、詳細検査及び全ての検査または実施した試験についての報告書を事業者に提供しなければなりません。 この報告には、欠陥の有無と補修等について記載されています。揚重機規則の別表1に報告書に記載する情報が決められています。

 

表3 検査の種類と記録の保管期間

詳細検査または検査の種類 記録の保管期間
最初の使用の前の詳細検査 揚重機−使用を廃止するまで
つり具−2年間
装置の安全が設置条件に依存する場合の使用前詳細検査 設置または組立て場所での装置の使用を廃止するまで
稼動時詳細検査(6ヶ月、12ヶ月)または詳細検査計画) 次期詳細検査まで、または2年間のうちの長い期間
稼動時検査/試験 次期報告まで

 

  • もし、有資格者が詳細検査または検査中に欠陥を発見し、それらが労働者等に危険を及ぼすおそれがあると当該有資格者が判断した場合には、 直ちに事業者に報告し、詳細検査または検査の報告書にこれを明示しなければなりません。
  • もし、有資格者が欠陥を発見し、それが重篤な傷害をもたらすリスクを含んでいる場合には、直ちに事業者に報告し、 さらに報告書の写しを関係当局(HSEまたは地方当局)に報告しなければなりません(欠陥が直ちに是正されても同様)。
  • 欠陥の報告を受けた事業者は、これを是正しなければなりません。もし、重大または相当重大な欠陥の報告を受けた場合には、 直ちに使用を中止し、欠陥を是正しなければなりません。これを怠ることは法違反を犯したこととなります。
  • ある時間内に修正することが必要な欠陥に対しては、その期間内に修理し、または欠陥部分を交換しなければなりません。 また、欠陥が完全に是正されるまで使用してはなりません。

その他の義務事項/関連情報等については略

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