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各国情報・国際関係

EU-OSHA報告書・ファクトシート:職場リスクの評価、除去、極限的抑制

2010年1月29日

EU-OSHA News 2009年12月7日 別ウィンドウが開きます

欧州安全衛生機構(EU-OSHA)は、リスクアセスメントに関する2年にわたるキャンペーンの成果のひとつとして、 「職場リスクの評価、除去、極限的抑制」と題する報告書を刊行した。 リスクアセスメントの主たる目的は、リスクを根源から除くことおよび極限的抑制にあるとして、 欧州諸国から提供された極限的抑制に成功した優良な事例20件及び簡易事例8件を掲載したものである。 リスクアセスメントを成功させるための要素及びチェックリストも記載されている。 この内容を要約したファクトシートも刊行されているので、併せてその内容を紹介する。

原資料の題名と所在

EU-OSHA報告書「職場リスクの評価、除去、極限的抑制」の概要

報告書目次

1.
まえがき
2.
掲載した事例の要点
3.
エルゴノミックス事例
4.
傷害防止事例
5.
粉じん、化学物質および生物学的リスク事例
6.
作業組織、社会心理的負荷事例
7.
騒音、電気および環境事例
8.
結論
8.1.
成功を得るために必要な基礎的要素
8.2.
高い成功が得られる付加的な要素
9.
成功を得るためのチェックリスト

まえがき

作業場所の安全と衛生の確保は、関係者のすべてにとって重要なことであり、 業務上傷害と疾病のほとんどは、防止することができるものである。 リスクアセスメントは、これを実現するための最初の一歩であり、リスクマネジメントの出発点である。

リスクアセスメントによって、 事業者は作業場所の健康と安全ならびに生産性を改善するために必要な事項を把握することが可能となる。 EU-OSHAは、リスクアセスメントに焦点を置いた全欧州キャンペーンを展開してきたが、 この2年間にまたがるキャンペーンの目的とするところは、リスクアセスメントのための統合的なマネジメントの推進である。

リスクアセスメントが欧州の労働安全衛生の基礎であることについては、十分な根拠がある。 リスクアセスメントおよび対処が適切に行われない場合、リスクマネジメントに前進がなく、 適切な防止対策が実施されないことになる。 体系的なリスクアセスメントによって、作業場所の安全と健康ならびに一般的な経営活動の改善が実現するのである。

1989年に欧州枠組み指令が採択されて以来、リスクアセスメントは、 作業場所の予防対策として一般的な概念となり、欧州の多くの企業が定期的に実施するようになったが、 傷害および疾病の発生に関する数字は、なお一層の改善が必要であることを示している。

本報告書は、リスクアセスメントによって特定されたハザードの除去または抑制に成功した事例の情報を提供することにより、 キャンペーンを支援するものであり、リスクアセスメントの実施および除去または抑制に関する意思決定を行う当事者を対象としている。

本報告を作成するに当たって協力いただいた関係者に謝意を表するものである。

2009年7月
欧州安全衛生機構長官 ユッカ タカラ

成功を得るためのチェックリスト

項目 チェック事項 明確に
「はい」
恐らく
「はい」
わから
ない
恐らく
「いいえ」
明確に
「いいえ」
リスクアセスメント すべての関連事項を網羅して検討したか?          
リスクの除去または他の低減対策を検討したか?          
労働者、専門家などすべての当事者が関与したか?          
リスク除去対策 リスク除去対策の入手源をチェックしたか(同業他社の例、優良事例、手引き)?          
機器メーカーの意見を求めたか?          
企業内でよい解決策を見出すことはできるか(能力、時間)?          
リスク除去対策の直接及び間接のコストは、高価でないか?          
リスク除去対策の実施によって、新たなリスクは生じないか?          
動機付け 当事者間の動機付けは高いレベルにあるか?          
不利を蒙る当事者が存在しないか?          
中期/長期にわたる効果 傷病の発生は減少するか?          
企業イメージは向上するか?          
コストは、中期/長期にわたり低下するか?          
リスク除去対策の実施により技術的な進歩は得られるか?          
作業の流れはよくなるか?          

掲載事例件名(番号は報告書目次のもの)

3.
エルゴノミックス事例
3.1.
道路工事労働者―肉体的負荷の低減
3.2.
簡単事例:プロジェクトマネジャーを対象としたエルゴノミック教育の実施
3.3.
Betterlift−半自動機器の導入による高欠勤率の低減
3.4.
レジャーボート組み立て作業の改善
3.5.
簡単事例:作業場所におけるレイアウトの改善
3.6.
Inkjet社における上肢繰り返し作業のリスク対策
3.7.
簡単事例:研磨機の固定による負荷の低減
3.8.
空気駆動工具の導入による手腕振動のリスク対策
4.
傷害防止事例
4.1.
HPD鉄道−フィンランドの鉄道会社における事故リスク対策
4.2.
Noaccident−金属包装会社における事故の徹底的減少
4.3.
針刺し事故の有効な防止対策
4.4.
指つぶし災害のリスクを除去するための保護カバーの改善
5.
粉じん、化学物質および生物学的リスク事例
5.1.
歯科技工室−発生源における捕捉
5.2.
予防接種−災害保険会社によるTBE予防接種
5.3.
Nocodust−石炭鉱山における高濃度粉じんばく露リスクの低減
5.4.
簡単事例:温水洗浄によるブレーキ清掃
5.5.
Nowodust−木材産業における化学物質ばく露、木じん及び騒音ばく露の除去
6.
作業組織、社会心理的負荷事例
6.1.
Holistic RA−総合的リスクアセスメント
6.2.
Rotowork−医学研究室の清掃作業におけるジョブローテーション
6.3.
病院におけるストレス−社会心理的リスクおよび身体的リスクの評価
7.
騒音、電気および環境事例
7.1.
簡単事例:セメント粉砕−騒音発生の少ないローラー形式粉砕機の設置
7.2.
溶接工の電磁波に対するばく露低減
7.3.
簡単事例:プレス及びパレット組立作業における騒音の遮蔽
7.4.
電磁波に対するばく露低減対策の例−糊乾燥作業
7.5.
簡単事例:室温40/28−水冷却器の設置による建物内温度の低下

 

EU-OSHAファクトシート 85
「職場リスクの評価、除去、極限的抑制に関する報告書の概要」(一部略)

まえがき

(略)

報告書結論の要点

多くのリスクは、完全に避けるか、除去することが可能である。 残るリスクについても、著しく低減するか、ゼロに近づけることができる。 この報告書は、さまざまな分野において、このような結果が如何に得られたかの事例を示すものである。 リスクの完全な除去が得られなかった事例においても、広範な分野において、 「リスクを根源から除去するために如何に取り組んだか」が示されている。

成功を得るために必要な基礎的要素

本報告書において見出された、リスクアセスメントにおける成功を得るために必要な基礎的要素は以下である。

  • リスクの除去と低減を有効に実現するためには、リスクアセスメントの論理的、体系的な実施が必要である。
  • 重要、有力なグループ(例えば、当該部門、労働者から成る方針策定委員会、事業者)の強力な動機付け。 リスクマネジメント発議者による高度の動機付けと内部及び外部で生ずる障害の排除。
  • 経営層による支持。必要な予算・人的資源・機材の確保が欠かせない。
  • 労働者自身、労務部門、経理部門、安全衛生の専門家などの関係者の参加。 労働者の当初からの動機付け及び参加が重要である。 労働者は、リスクの分析・特定に参加するだけでなく、リスク対策の策定と実施にも参加することが必要である。 実務上の詳細な知識と能力が問題解決のために役立つことが多い。
  • 問題解決のための分析能力・知識があれば、最善の対策の実施または科学的、技術的な進歩が得られる。
  • リスクアセスメントに関与する当事者間の信頼及び協力関係。
  • 解決対策の導入に対する下記のような障害が存在しないこと。
    −予算がないこと、またはコストベネフィット分析結果が、マイナスであるなどの経済的障害
    −現状を変え、問題を解決するための技術、機械、作業方法などが見出せない。
    −他の労働者、部門などにリスクが転移するマイナスの効果が生ずる。

高い成功が得られる付加的な要素

事例のすべてにおいて存在する成功を得るために必要な基礎的要素に加え、 以下の付加的要素が得られる場合、平均的な状況を上回る成果が得られる。

  • 企業イメージまたは安全衛生担当部門イメージの向上が得られるとき、関連する部門の動機付が高くなる。
  • 当該作業場(またはリスクに関係する)の労働者が、重要な役割を果たすとき。
  • 病欠者の補充が難しいとき。
  • 内部に有効な対策を見出すことのできる能力を有するとき。
  • 高いリスクに対して容易な対策が見出されるとき。
  • 採用した対策の実施状況の適切な把握が行われるとき。(対策が実行されているか?役立っているか?適しているか?)
  • 対策が複雑または高度な場合に、外部からの支援が得られるとき。
  • リスクの大きい職種または区域において、傷害および疾病を防止することによるコスト低減効果が存在するとき。

成功を得るために必要な基礎的要素に加えて、このような高い成功の得られる付加的要素が存在するとき、 リスクの低減または除去の実現する可能性が高い。

事例の多くにおいては、いくつかの対策が組み合わせて実施されている。 (リスクの根源からの除去、個人個人の作業への適用、技術的進歩の導入、作業者に対する適切な指示)成功を得るためには、 このように対策を組み合わせて実施することが重要である。

リスクアセスメントの実施により得られる利益

適切、詳細なリスクアセスメントの実施により、職場のリスクを除いたり、 極限的に抑制を行って、利益の得られた例が、本報告書にわかりやすく記載されている。

  • 健康で安全な職場。 (例えば、騒音の低下、無理な姿勢の解消、室温が高いことなどの解決による病欠・退職の減少、 意欲の向上、苦情の減少、作業環境の改善、不快な状況の改善。)
  • 業務上の傷害と疾病の発生により生ずるコストの低減。
  • 一部の事例においては、対策の実施によって、全体的なコストが対策の実施以前に比して低下。
  • 変化の実現(新しい職場作業組織、機械、作業手順の導入)により、安全と健康が改善したばかりでなく、 効率と生産性の向上の実現。
  • 対策の導入によるその職務を処理できる労働者の範囲の拡大。
    (例えば、肉体的負荷の低減。)このように、体系的なリスクアセスメントの実施により、 職場の安全と健康が改善するとともに、一般的に経営成績にも寄与するのである。

本報告書の入手方法、詳細な情報の所在

(略)

関連情報

JISHA海外トピックス:

BAuAがリスクアセスメント支援データベースを設置 2009年11月30日

EUリスクアセスメントキャンペーン初年の中間状況 2009年10月16日

リスクアセスメント及びOSHMSに関する最近の海外動向−中災防調査研究報告書より 2009年5月26日

EU-OSHA リスクアセスメントのサイト

Risk assessment 別ウィンドウが開きます

イギリス安全衛生庁(HSE)リスクマネジメントのサイト

Risk management 別ウィンドウが開きます

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