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各国情報・国際関係

EU-OSHA 職場健康増進(WHP)に関する記者発表及び関連動向

2010年10月29日

EU-OSHA Press Releases 2010年7月21日 別ウィンドウが開きます

欧州安全衛生機構(EU-OSHA)は、職場健康増進(WHP- Workplace Health Promotion)が重要であるとの記者発表(Workplace Health Promotion improves productivity and well-being)を行うとともに、これに関するウェ ブサイトを新設して関連情報を掲載した。

EU-OSHAが作成したファクトシートの概要及びこれに関する最近の主要な動向について紹介する。

EU-OSHAファクトシート93 「事業者のための職場健康増進」
Factsheet 93: Workplace Health Promotion for Employers 別ウィンドウが開きます

1職場健康増進(WHP- Workplace Health Promotion)とは何か?

職場健康増進とは、事業者、従業員及び関連機関が、職場で働く人々の健康と福祉を改善するために行う活動(参考資料:http://www.enwhp.org 別ウィンドウが開きます )で 、以下の各項の結びつきによって達成される。

  • 作業組織及び作業環境の改善
  • 健康活動に対する従業員参加の推進
  • 健康に結びつく手段の選定
  • 個人的な取り組みの促進
職場健康増進における実施手段の例

作業組織における手段

  • 作業時間及び作業場所のフレキシブル化
  • 作業組織及び作業環境の改善に対する従業員参加を可能とする
  • 従業員に対する生涯学習の機会の提供

職場環境における 手段

  • 談話室の設置
  • 禁煙の推進
  • 作業環境における社会心理面の支援の提供

個人面における手段

  • スポーツに関するコース・行事の提供及び費用の支援
  • 健康な食事の推奨
  • 禁煙プログラムの提供
  • メンタル面の支援、例えば外部機関における匿名の助言、カウンセリング及び抗ストレス訓練の提供

2 職場健康増進に対する投資の効果

従業員が健康的に働くことにより企業は繁栄する。 従業員が働きやすく健康的な環境を作ること(参考資料:http://www.enwhp.org 別ウィンドウが開きます )により、以下の効果が得られる(参考資料:http://www.who.int/occupational_health/topics/workplace/en/index1.html 別ウィンドウが開きます )。

  • 欠勤の減少
  • 動機付けの強化
  • 生産性の向上
  • 求人を行いやすい
  • 離職者の減少
  • 前向きで思いやりのあるイメージを得る。

ある調査報告によると職場健康増進に対する投資は、投資額1ユーロに対し、欠勤低減の効果により2.5−4.8ユーロの利益をもたらした(参考資料:PDF http://www.iga-info.de/fileadmin/texte/iga_report_3e.pdf 別ウィンドウが開きます )。

3 職場健康増進をどのように実施するか?―健康な職場への4つのステップ

職場健康増進を成功させるためには、企業内のあらゆる部門、特に経営層の継続的な参加が重要である。職場健康増進プログラムの内容は、企業及び従業員のニーズに合致したものであることが必要で、標準化されたモデルは存在せず、職場健康増進の原理に沿って、個々の企業の状況に合致する以下を含む ことが必要である。

1)準備段階
  • タスクフォースの設置
    適切なタスクフォースを設置し、以下の関係者を 参加させることが望ましい。
    −中間経営層
    −スタッフから構成される委員会
    −人事、労務部門
    −労働安全衛生部門・委員会
  • 全員への周知
    ポスター、掲示板、イントラネット、会合などによる周知
  • 安全衛生に関する規制のあらゆる作業場における遵守
    職場健康増進が成功するのは、労働安全衛生マネジメントが確実に行われている作業場だけである。
2)計画の策定
  • 必要性の調査
    下記について、従業員の必要性と期待とを調査することにより、職場健康増進プログラムの有効性を最大とすることができる。
    −対象のグループを絞る。
    −オンライン質問票による調査
    −既存の類似のアクションと関連付けて調査する。(例えば、リスクアセスメントに関する調査に健康と福祉に関する質問を含める。)
    −既存のデータを利用する。(例えば、従業員の年齢層等の状況、欠勤状況、離職率、健康診断及び健康状況調査データ)
  • 職場健康増進の目標及び優先順位の設定
    −ワークライフバランスの強化
    −筋骨格系障害による苦情の低減
    −一般的な健康的ライフスタイルの推進
  • リスク低減活動との結合
  • 既存の健康増進活動との統合
  • 保険会社等外部機関の利用・提携
    状況に応じて、保険会社等の提供する優遇処置を利用する。以下の事項が考えられる。
    −職場健康増進を導入している事業所への保険料率の割引
    −スポーツクラブ・コースの利用に対する割引制度
    −たばこ依存者対策に対する援助
  • 全従業員に対し均等な機会を与える。
  • 成果を評価する手段についてあらかじめ検討しておく。
3)実施
  • 全階層の経営者、管理者の積極的かつ目に見える形での参加を得る。これは、健康な職場のカルチャーを形成するにおいて、最も重要な要素のひとつである。
  • 従業員に 最大限の参加を求める。実施内容は、 企業側からで なく、従業員側の必要性に合致させる。企業の状況に合致した動機付けは、職場のカルチャーを変えるのに有効である。内容として以下が含まれる 。
    −企業外における社会的またはスポーツ活動に対する経済的支援
    −参加のための時間の確保
    −参加についての競争と表彰
  • 対象者に適した資料を選定し、資料に対する意見を求める。
4)評価及び継続的実施
  • 職場健康増進プログラムの効果の分析
    −従業員の満足度、例えば調査の実施
    −離職率、生産性、欠勤率など経済的要素への影響
  • 職場健康増進プログラムの経済的効果の評価
  • 評価した結果と成果及び今後の計画について事業場内への周知
  • 継続的に職場健康増進の計画と改善を進める。
  • 将来の計画の立案に際して 、詳細に成果を把握する。
注意の必要な事項

−職場健康増進プログラムの実施に際しては、安全で健康な作業環境が必要である。職場健康増進は、適切なリスクマネジメントを要求する健康カルチャーを基礎とする。

−職場健康増進は、法律の要求 を超える、労使双方の自発的な行動に基づくものである。

−職場健康増進は、事業所全体の経営活動に永続的要素として組み込まれなければ成功を得ることはできない。

欧州における職場健康増進(WHP)に関する主な動向

欧州においては、職場の筋骨格系障害、ストレスなどへの対策として、個別的な対策に加えて職場健康増進(WHP-Workplace Health Promotion)を取り入れる傾向が強まっているように考えられるため 、最近の主な動向について項目のみを紹介する。

1
EU-OSHAの記者発表及び職場健康増進(WHP)に関するサイトの設置
2
欧州職場健康増進ネットワーク(ENWHP)の活動
3
WHOが「健康な職場:行動のためのモデル」を提唱
4
Eurofoundによる欧州における欠勤実態調査報告
5
イギリス安全衛生資格認定委員会(NEBOSH)が職場健康増進活動管理者資格認定を開始
6
ILO-Safeworkの職場健康増進への取り組みと訓練コース

1 EU-OSHAの記者発表及び職場健康増進(WHP)に関するサイトの設置

EU-OSHA Press Releases 2010年7月21日 別ウィンドウが開きます

EU-OSHA が職場健康増進を推進するのは、健康の向上、欠勤の減少、動機付けの強化及び生産性の向上が得られることによる。事業者は、従業員のライフスタイルが健康的であるために、重要な役割を果たす。ある調査報告によると職場健康増進に対する投資は、投資額1ユーロに対し、欠勤低減の効果により2.5−4.8ユーロの利益をもたらした(注1)とし、職場健康増進(WHP)に関するサイトを設置したことを記者発表した。

(注1)WHPによる利益の根拠資料
PDF IGA-Report 3e: Health-related and economic benefits of workplace health promotion and prevention‚ Summary of the scientific evidence 別ウィンドウが開きます

2 欧州職場健康増進ネットワーク(ENWHP)の活動

欧州職場健康増進ネットワーク(ENWHP−The European Network for Workplace Health Promotion 別ウィンドウが開きます )は、欧州各国における職場健康増進担当機関の連合体である。2年ごとにテーマを変えて、キャンペーンを行っている。EUとしての取り組み方針他、ENWHPとしての指針など多数の刊行物及び各国で作成された指針、手引きなど300件以上の資料を含むデータベースなども提供している。

3  WHOが「健康な職場:行動のためのモデル」を提唱

EU-OSHA News 2010年5月4日 別ウィンドウが開きます

世界保健機関(WHO)は、世界保健総会(World Health Assembly )が2007年に承認した「世界労働者の健康活動計画」の一環として「健康な職場モデル」を策定した。健康な職場に関する文献収集及び2009年10月に開催された22ヶ国、56名の専門家によるワークショップに基づくものである。

  1. 職業関連の身体的及び社会心理的リスク
  2. 健康的行動に対する推進及び支援
  3. 広範な社会的及び環境的要因

の三つの要素を包括的に考慮して、行動を行うためのモデルである。個別の内容は特に斬新ではないが、証拠に基づいた取り組み、健康の保護と増進に関する原理を結合して、革新的に組み立てたものである。諸要素への取り組みが、従来は個別的になりがちであったところを、統合的に対処しようとすることに特色がある。

なお、社会心理的リスクマネジメントに関しては、WHOは、「PRIMA-EF Consortium の欧州フレームワークによる社会心理的リスクマネジメントの手引き」を「労働者の健康保護シリーズ」9号として刊行している。また、PRIMA-EF(Psychosocial Risk Ma nagement−European Framework)のサイトには、他の多くの関連情報が掲載されている。

PDF PRIMA-EF: Guidance on the European Framework for Psychosocial Risk Management: A Resource for Employers and Worker Representatives 別ウィンドウが開きます (WHO Protecting Workers' Health Series: No. 9)(2008)

4 Eurofound による欧州における欠勤実態調査報告

Eurofound News 2010年7/8月号 別ウィンドウが開きます

欧州生活・労働条件改善財団(European Foundation for the Improvement of Living and Working Conditions-Eurofound 別ウィンドウが開きます )が、欧州連合27ヶ国及びノルウェイから提出された「欠勤」の状況に関する情報をとりまとめた報告書である。
「欠勤」とは、一般に予定されていた勤務に就かなかったことをいうが、詳細な定義およびこの発生状況の把握手段は、各国においてそれぞれ異なるため、各国間の厳密な比較は困難である。欠勤率については、 イタリアの0.7%が最も小さく、 ノルウェイの7.7%が最大となり 幅が広い。欧州全体において、欠勤による労働時間の損失は、低下する傾向にあり、平均的には3-6%である。また、これによる経済的損失は、GDPの2.5%に達する。欠勤の主たる原因は健康上の問題によるものであり、各国の欠勤を防止する政策においては、働きやすい職場づくり、健康増進、労働者の福祉などによって、出勤率の向上をうながす施策を取り入れる国が増加しつつある。

各国の状況を調査比較した報告書(Counting the cost of absence from work 別ウィンドウが開きます )

5 イギリス安全衛生資格認定委員会(NEBOSH)が職場健康増進活動管理者資格認定を開始

NEBOSH News posted on 11 March 2010 別ウィンドウが開きます

イギリス安全衛生資格認定委員会(National Examination Board in Occupational Safety and Health-NEBOSH 別ウィンドウが開きます )は、職場健康増進活動の管理者(NEBOSH Certificate in the Management of Health and Well-being at Work)の資格認定を開始した。養成のための教育課程、学習時間なども掲載されている。
これは、イギリス政府の働く人たちの健康・福祉に関する新政策に対応する人材を育成するためのものである。イギリス政府の新政策の概要については、下記JISHA海外トピックスを参照。
JISHA 海外トピックス:イギリス政府の働く人たちの健康・福祉に関する新政策 2009年4月17日

6 ILO-Safeworkの職場健康増進への取り組みと訓練コース

ILO-Safeworkは、2010年世界労働安全衛生の日(World Day for Safety and Health at Work 別ウィンドウが開きます )のリーフレット「変動する労働の世界に新たに出現しつつあるリスクと新しい予防形態」(Emerging risks and new forms of prevention in a changing world of work 別ウィンドウが開きます )において、職場健康増進をリスクアセスメント・マネジメントと同列に取り上げている。
そのウェ ブサイト(> SAFEWORK home > Areas of work)には、職場の健康増進及び福祉(Health Promotion and Well-Being in the Workplace 別ウィンドウが開きます )並びに社会心理的ハザード及びメンタルストレス(Psychosocial hazards and mental stress 別ウィンドウが開きます )のページがある。
また、安全衛生施策への健康増進の統合(SOLVE: Integrating health promotion into OSH Policies)プログラムによる訓練コース(イタリアのILOトリノ訓練センターで実施)が掲載されている。
http://www.ilo.org/safework/lang--en/index.htm 別ウィンドウが開きます

訓練コース開催案内リーフレット(PDF SOLVE: Addressing Psychosocial Factors through Health Promotion in the Workplace‚ 15 - 19 November 2010 Turin‚ Italy 別ウィンドウが開きます )

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