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各国情報・国際関係

欧州安全衛生機構の「安全衛生活動の企業経営全般への統合における動向」に関する報告

2010年12月7日

EU-OSHA News 2010年7月6日

企業経営においては、安全衛生に関する活動を単独で運営するのではなく、企業活動全体に統合して行うことに多大な利点がある。このため、このような動向を普及、拡大することを目的として、欧州労働安全衛生機構 (EU-OSHA)が「安全衛生活動の企業経営全般への統合における動向」と題する報告を刊行したので、その全体の構成と概要及び同時に刊行されたファクトシート92 「安全衛生活動の企業経営全般への統合における動向―報告書の要約」を紹介する。

原資料の題名と所在
「安全衛生活動の企業経営全般への統合における動向」報告書本文
Mainstreaming OSH into business management
ファクトシート 92 「安全衛生活動の企業経営全般への統合における動向」―報告書の要約
Factsheet 92 Mainstreaming OSH into business management-Summary of an Agency report
1
「安全衛生活動の企業経営全般への統合における動向」報告書本文の概要
2
ファクトシート 92 「安全衛生活動の企業経営全般への統合における動向―報告書の要約」

 

1 「安全衛生活動の企業経営全般への統合における動向」報告書の概要
Mainstreaming OSH into business management 別ウィンドウが開きます

全体の構成と概要

以下の3編から成る。

1  文献調査結果
ローベンス委員会報告に始まる安全衛生規制改革の端緒から、経営全般への統合に至るまでの諸段階における、マネジメントシステムが普及した経過、得られた効果、安全文化との関連などに関する広範な文献の記述がまとめられている。
2  政策、指針、手引き
国際間及びEUにおける政策、指針に始まり、各国の国レベルまたは業界団体レベル等における指針、手引き、普及用資料及びその普及手段などが多数紹介されている。
3  実施例
企業内における詳細な事例20件及び簡略化した事例12件が紹介され、安全衛生マネジメントシステムを企業活動全体に統合することにより、安全衛生が改善するばかりでなく、生産性の向上や競争力の向上など企業経営全般においても、著しい効果が得られるとしている。

主要な目次

まえがき
 
1
全般の序説
2
文献調査結果
2.1
序説
2.1.1
調査方法
2.2
マネジメントシステムの仕組み
2.3
文化
2.4
結論
3
政策に関する概観
3.1
序説
3.2
OSHの経営全般への統合に関する国際間及び欧州内の政策及び実施の手引き
3.3
企業における体系的OSHマネジメントの推進及び支援に関する各国の国家プログラムの例
3.4
OSHマネジメントを支援するツールの開発と推進に関するプログラムの例
3.5
中小企業OSHマネジメントを支援するプログラムの例
3.6
産業部門別プログラムの例
3.7
結論
4
実施事例
4.1
序説
4.2
詳細な事例及び簡略化した事例の概観
4.3
OSHマネジメントの改善に重点をおいた詳細な事例及び簡略化した事例
4.4
OSH、品質及び環境プログラムの統合に重点をおいた詳細な事例及び簡略化した事例
4.5
従業員の健康マネジメントの統合に重点をおいた詳細な事例及び簡略化した事例
4.6
安全文化及び人的資源のマネジメントに重点をおいた実施事例
4.7
実施事例についての分析及び検討
4.8
結論
5
全般についての結論
5.1
文献調査の要約
5.2
政策に関する概観の要約
5.3
実施事例の要約
6
文献
7
略語集

 

2 ファクトシート 92 「安全衛生活動の企業経営全般への統合における動向―報告書の要約」
(一部省略)
Factsheet 92 Mainstreaming OSH into business management
Summary of an Agency report
別ウィンドウが開きます

労働安全衛生(OSH) に関する取り組み方は、企業による違いがあり、一部のOSHに関する知識の足りない企業は、業務上災害、業務上疾病、欠勤問題などが発生したとき、それぞれに対する措置を行うだけに終わっているが、体系的なOSHのマネジメントを実施するか、さらに進取的には、OSHのマネジメントを企業経営全般のマネジメントへ統合して組み入れている企業もある。
本報告書を作成した目的としては、OSHのマネジメントの企業経営全般のマネジメントへの統合は、如何にして実現されるか、統合により得られる職場環境の安全と健康の向上及び企業の全体的経営成績の向上に関する証拠と情報を提供することにある。
本報告書の主体となる部分は、文献調査結果、政策、指針、手引き及び実施事例の3編から構成されている。

文献調査結果

企業においてOSHマネジメントがどのようにして有効に実施されるか及び企業経営全般のマネジメントと経営の仕組みに、どの程度組み込まれるべきであるか、に関する証拠についての文献調査結果の概観を記載している。OSHの経営マネジメントへの組み込みに関し、特に重点を置いている。
また、昔からの方法と体系的OSHマネジメントとの差異及びOSHマネジメントシステムの適用と有効性についても論じ、品質マネジメント及び健康プログラム(例えば、職場健康推進プログラム)とのつながりについても触れている。
企業が複数のマネジメントシステム及びマネジメントシステム規格を同時に導入しようとするとき、(例えば品質、環境及びOSHに関し)これらを統合する必要性は、一層高まるため、統合マネジメントシステム(Integrated Management Systems (IMS))に関する問題についても検討している。
これらの調査結果においては、OSHマネジメントは、経営全般のマネジメントの構成の一部と見るべきで、別個の経営活動と見るべきではないことについて、全体における合意が成立している。
OSHの企業経営の中核への結びつけを強化しようとする時期は、企業活動において経営の悪化、合併、合理化、技術革新などの変化が生じた際に行うことが適しているとされている。
文献調査によって明確となった事項を以下に示す。

  • OSHマネジメント及びこれの経営全般のマネジメントへの統合に関するトピックス的情報は、極めて多数存在する。
  • しかし、OSHマネジメントの有効性に関して論じた文献は、いまだ数が少なく、また、実施における難しい問題の指摘もなされている。
  • OSHマネジメントシステムの実施事例において、対象の主体は安全(事故防止)であって、それ以外の業務関連健康影響は、ほとんど対象となっていない。
  • OSHマネジメントシステムの対象が、経営的なリスク及び社会心理的健康影響(例えば、職場における暴力、葛藤、交代勤務、長時間労働)であることは、極めて限られている。
  • OSHマネジメントに挑戦することが今後必要な分野は、一般的にいえば、非正規雇用(臨時、パートタイム、在宅勤務など)及び中小企業における雇用の二つである。
  • 今後の研究の対象とすることが必要なのは、OSHマネジメントの戦略・手順の効果及び質並びに欧州理事会による枠組み指令(89/391/EEC of 12 June 1989)による要求事項へ如何に適合させるかである。

政策に関する概観

OSHマネジメントの策定、実施及び統合された積極的な推進は、国際間、欧州及び国ごとのレベルで確立された政策及び実施の手引きにより支援されている。
本報告書には、これらのOSH問題のマネジメントに関し、統合を推進、支援する政策及び実施の手引きも掲載されている。
また、国際機関、欧州連合、政府、事業者及び労働者の団体、労働基準監督官、保険機関などの関係機関が作成した戦略、法的条項、基準、手引き、プログラム、キャンペーン資料についても検討を行っている。
OSHマネジメントに関する政策には、義務であるものと任意であるものとがある。欧州においては、体系的にOSHマネジメントシステムを実施する法的な枠組みは、枠組み指令によって確立されている。
この指令は、OSHマネジメントの基本的目標及びこの目標を達成するために必要な手段を定義している。 法的規制の実施は、OSHの改善に向けたさまざまな任意の活動によって支えられている。

国際労働機関(ILO)は、OSHマネジメントシステムの任意の導入と実施の推進において、重要な役割を果たしている。ILOによる取り組みは、いくつかの国における国別の実施の手引き、推進プログラムにより支持されている。

本報告に記載した例によって、EU各国において成功した活動について、明確となった事項を以下に示す。

  • OSHマネジメントに関する政策の策定と確立においては、政府、保険機関、事業者団体、労働組合などの間の協力を必要とする。協力は成功を得るための重要な要素である。
  • 企業の部門別に、OSHマネジメントを進展させるための動機付けには、無料の講習会、ツール、教育などさまざまな手段が必要である。
  • 活発な推進の持続は、この政策の効果を保つための重要な要素である。
  • この政策及び実施の手引きを更に進展させるためには、すべてのOSHに関連する問題を経営全般のマネジメント及び経営上の手続きと統合することが必要である。

実施事例

多くの企業は、OSHの状態を改善するために、体系的、継続的な努力を行おうとしている。また、一部の企業は、単に規制を守るだけでなく、安全文化を企業文化の中に組み込むことを目的とした活動を行っている。このような企業においては、OSHマネジメントは、経営全体のマネジメントに組み込まれている。
本報告書に記載の実施事例には、OSHがどのように全般のマネジメントと経営上の手順に組み込まれたかの事例、優良事例への助言が含まれており、EU12カ国における詳細な事例から20件を選定したものである。
これらの事例は、OSHマネジメントにおいて以下の効果が得られたことを示している。

  • リスクアセスメント手順の強化とOSH改善の評価に加え、従業員の動機付けが向上する。
  • 作業条件と福祉の向上に加え、その効果により、業務上傷害の発生率、傷害による損失日数、業務上疾病による損失日数並びに関連費用が低下する。

本報告の多くの例が、企業が継続的に作業条件と労働者の安全と衛生の継続的改善に努力している状況を示している。これらは、単に道義的な理由によるものではなく、安全で健康的な作業環境を作り出すことによって、損失が抑制され、生産性と競争力が改善されるからである。
有効なOSHマネジメントは、企業の全体的経営成績を向上する戦略との間に密接な関連性がある。

報告書及びファクトシートの入手方法How to get the report

報告書の英文本文は、EU-OSHAの下記サイトから無料でダウンロードすることができる。

ファクトシートについては、EU全言語で作成されたものを下記サイトからダウンロードすることができる。

 

関連情報

本報告書の「6文献」の項には、177ページから185ページまで多数の文献等のリストが掲載されている。

国際標準化機構(ISO- International Organization for Standardization)は、2010年11月にISO 26000:2010社会的責任に関する手引(Guidance on social responsibility)を刊行した。企業・団体が諸般の分野で、社会的責任を遂行するための手引きで、安全衛生に関する事項も含まれている。2009年に刊行されたISO 31000:2009 リスクマネジメント(Risk management)に続くものである。

ISO 26000の刊行により、ISOによる 「マネジメント及びリーダーシップに関する規格」 (Management and leadership standards 別ウィンドウが開きます )に含まれるものは、以下の4件となった。

  • ISO 26000−社会責任(Social responsibility)
  • ISO 31000:2009−リスクマネジメント(Risk management)
  • ISO 9001:2008−品質管理(Quality management)
  • ISO 14001:2004−環境管理(Environmental management)
JISHA海外トピックスの下記2件の記事において、リスクアセスメント及びOSHMSに関する情報を紹介しているが、この中の「2 イギリス (1) イギリスIOSHが設置のリスクアセスメントルートファインダー (RISK ASSESSMENT ROUTEFINDER 別ウィンドウが開きます )」においては、 職場における安全衛生面にとどまらず、企業経営において存在する諸般のリスクが対象となっている。

  • 2010年5月21日
    欧米におけるリスクアセスメント、OSHMSの動向−中災防調査研究報告書より
  • 2009年5月26日
    リスクアセスメント及びOSHMSに関する最近の海外動向−中災防調査研究報告書より

 

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