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国からの委託事業であった 「国際安全衛生センター(JICOSH)」 別ウィンドウが開きます が2008年3月末をもって廃止されました。 永らくのご利用ありがとうございました。 同センターのサイトに掲載されていた個別の情報については、中災防WEBサイトの国別分野別情報にリンクして取り込んでおります。

 

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各国情報・国際関係

EU-OSHA 保全作業に関する安全衛生キャンペーン用諸資料

2011年1月25日

OSHmail 102 - December 2010 2010年12月 別ウィンドウが開きます

2010〜2011年における欧州労働安全衛生機構 (European Agency for Safety and Health at Work-EU-OSHA)の安全衛生キャンペーンのテーマは、「保全作業に関する安全衛生」であり、これに関する種々の資料が刊行されている。2010年12月までに刊行された資料のリストを以下に示す。

  • 保全作業の安全の実務報告書(2010年11月24日)
  • Factsheet 96: 保全作業の安全の実務- 成功の要因―保全作業の安全の実務報告書の要約―(2010年11月24日)
  • E-fact 52: 保全作業の安全−食品飲料製造業(2010年10月22日)
  • E-fact 51: 清掃作業者の社会心理的リスク(2010年10月8日)

「EU-OSHA 保全作業に関する安全衛生キャンペーン(2010〜2011)の手引き」に関しては、2010年6月14日のJISHA海外トピックスですでに紹介しており、今回のトピックスにおいてFact sheet 96及びE-Fact 52の2件について、その概要を紹介する。なお、Factsheet 96は、「保全作業の安全の実務」を要約したものである。

Factsheet 96:   
保全作業の安全の実務- 成功の要因
E-Fact 52:     
保全作業の安全−食品飲料製造業

Factsheet 96: 保全作業の安全の実務- 成功の要因
―保全作業の安全の実務報告書の要約―
欧州安全衛生機構
2010年11月24日

1
はじめに
2
保全作業中のリスク防止を成功させる鍵
3
計画・設計を通じての災害防止−計画・設計段階での危険源の除去
4
保全作業の安全の実務報告書について

1 はじめに

建物及び構造物は、日常的、定期的に保全されなければ、そこで働く人々のみならず一般公衆に対しても安全でなくなる。保全が貧弱または定期的になされない機械類についても、それらの操作者にとって不安全な作業環境となり、また、他の労働者に対してもリスクとなることがある。保全は、安全で健康的な作業条件の確保と危害の防止に必要不可欠であるとともに、保全作業そのものは、高リスクの作業行動を伴うものである。

作業に関連するリスクから労働者を保護することは、それぞれの事業者の責任である。「保全作業の安全の実務報告書」では、欧州域内の多くの会社、保険機関及び行政当局が保全作業から生ずる危険源に対する革新的な方法を開発していることを紹介している。このファクトシートでは、「保全作業の安全の実務報告書」に記載されている事例に基づき、保全作業中のリスクを防止するための成功の要因についてまとめたものである。

2 保全作業中のリスク防止を成功させる鍵

組織内の経営者のコミットメントと安全文化

経営者のコミットメントと安全文化は、労働安全衛生一般にとっても必須であり、保全作業においては特にそうである。経営者のコミットメントは、組織内の安全文化の最も重要な決定要素の1つでもある。それは、安全衛生に割り当てるべき資源(時間、人、資金)を決定し、組織全般にわたっての高い安全衛生意欲を醸成する。

労働者の関与と参加

安全衛生マネジメントへの労働者の積極的参加は、各階層の当事者意識を形成し、労働者がその仕事に対して持っている知見を活用する上で重要である。かなり多くの場合において、当該労働者はリスクを除去し、最小限にするための実際的な方法を知っているし、または、提案をすることができる。

適切なリスクアセスメントの実施

保全作業開始前には、必ずリスクアセスメントを行う。労働者が、最初からリスクアセスメントに参画するとともに、作業中にもさらなるアセスメントを行うとよい。

優先順位に基づく防止対策の実施

リスクアセスメントの結果に基づき、防止対策を確定し、実施する。防止対策順位の原理(リスクの除去−代替措置の採用−工学的対策−マネジメントによるリスクの制御−個人保護具の使用)を常に考慮することが大切である。

防止対策の連結

防止対策は、組み合わせることにより、さらに効果的となる。例えば、リスクアセスメント、安全作業手順及び安全作業システムについて、安全作業行動、教育訓練、情報によりバックアップすることなどである。

保全作業に関する安全作業手順と明確な指針

それぞれの保全作業について作業の流れを明確に決めて、安全作業手順を関係者に伝達し、理解されるよう周知徹底する。手順については、予期しない出来事にも対処できるようにしておく。予想し得ない問題又は作業者自身の能力では対応できない問題に直面したときには、作業を停止することを安全作業システムの一部とすることが必要である。

効果的、継続的情報伝達

すべての保全作業に関する情報について、関係者が共有する。これは、保全作業に直接従事する作業者のみならず、保全作業の影響を受け、または、保全作業の近傍で作業する者についても対象とする。保全作業者と生産作業者あるいは請負者との間の情報伝達も重要である。

継続的な改善

保全作業中の安全衛生状況(成績)について、リスクアセスメントの結果、事故、災害及びニアミスの調査結果並びに作業者、請負者及び安全衛生担当者からのフィードバックにより継続的に評価し、改善する。

安全衛生教育訓練

保全作業者及び保全請負者については、担当する専門分野において、必要な能力を有している者を配置する。また、安全衛生教育訓練を受けている者を配置し、その仕事に係る危険源及び安全作業手順について周知しておく。作業者(臨時作業者、請負者を含む。)に必要な安全衛生教育訓練を行い、情報を提供することについては、事業者に法的責任がある。

保全作業を総合的安全衛生マネジメントシステムに包含する

保全作業とその安全衛生(上述したすべての要素を含む。)については、会社の総合的安全衛生マネジメントシステムと一体的に実施する。また、安全衛生マネジメントシステムを継続的に改善、発展させる。

3 計画・設計を通じての災害防止−計画・設計段階での危険源の除去

保全に係るリスクを防止し、制御する最善の方法は、建物、構造物、作業環境及びプラント(機械、装置)の設計の早い段階でこれらのリスクに取組むことである。報告では、計画・設計段階でのこれらの取り組みの事例を紹介している。

4 保全作業の安全の実務報告書については、下記URLを参照

http://osha.europa.eu/en/publications/reports/TEWE10003ENC/view 別ウィンドウが開きます

 

E-Fact 52: 保全作業の安全−食品飲料製造業
欧州安全衛生機構
2010年10月22日

1
保全について−保全とは?
2
危険源及び防止対策
2-1
危険有害物質
2-2
生物学的要因
2-3
粉じん
2-4
機械災害
2-5
密閉空間
2-6
滑り、つまずき、墜落転落
2-7
重筋労働
2-8
高温・低温作業
2-9
心理的リスク要因
3
機械及び生産ラインの計画・設計
4
法令
5
保全作業における安全衛生マネジメント
6
食品飲料製造における災害防止のための資料

1 保全について−保全とは?

保全作業は、安全な作業手順が確保され、作業が適切に行われなければ、直接従事する作業者のみならず他の作業者に対しても安全衛生に影響する作業となる。

保全は、部品の交換、試験、計測、補修、調整、検査及び欠陥の発見を含む作業活動である。

保全作業には、保全作業従事者に対する特定のリスクがある。そのようなリスクは、例えば、機械又は加工工程の近くでの作業を要すること、1日の様々な時間帯での作業の実施または非常に稀な作業から起ることが多い。

2006年におけるいくつかの加盟国のEurostatの災害数は、死亡災害の10〜15%が保全作業によるものであることを示している(図1)。また、職業性疾病、業務関連健康問題(石綿肺、がん、聴力障害及び筋骨格系障害など)は、保全作業において顕著な発生を見ている。

図1 保全作業での死亡者数
図1 保全作業での死亡者数
資料出典:Eurostat 2006

保全作業は、他の作業と同じようなリスク要因を含んでいると考えられる。しかし、特定のリスクは保全作業において増大する。保全関連リスク要因(例えば、単独作業、夜間作業など)は、緊急の修理及び故障の修理の必要性から惹起することが多い。その他の典型的なリスク要因としては、仕事の頻度、整理整頓されていない作業環境とともに装置、道具の欠陥などがある。これらの要因は、また、労働災害に結びつくヒューマンエラーのリスクを増大させる。

食品飲料製造の業種は、多岐にわたっている。それらは、果実、野菜加工、パン製造、製粉、乳製品加工、砂糖精製、食肉処理業などである。

食品及び飲料は、高度の衛生水準と安全な食品を確保するために厳密に管理された環境で加工されているが、作業者の安全と衛生に関しては低リスクの業界であるとはいえない。食品加工作業は、かなり危険有害な作業を伴っている。

イギリス安全衛生庁(HSE)によれば、食品飲料産業では2006/2007年の製造業の死傷災害の23.9%を占めている。食品飲料産業は、製造業分野における最も災害発生率の高い分野である。

また、HSEによる災害分析においては、傷害の主要な原因を明らかにしているが、最も多い災害原因は、機械及び装置によるものであり、毎年500件に上っており、最も多いのがコンベアーによる災害(30%)、次いでフォークリフト(12%)、帯のこ盤(5%)となっている。

食品製造業における(機械、装置の)保全作業においては、

  • 安全で健康的な作業環境を確保し、
  • 健康的で衛生的な食品生産を行うことが重要である。

2 危険源及び防止対策

2-1 危険有害物質

生産機械の清掃または保全作業中、作業者は危険有害物質に曝されることがある(消毒剤、潤滑材(高温または低温)など、及び冷媒としてのアンモニアなど)。
潤滑材は、保全作業従事者に健康リスクをもたらす。これらは、皮膚炎または呼吸障害などのアレルギー反応を引起す。
食品の安全も保全の欠陥、例えば、洗剤、殺菌剤の残渣による食品の汚染、保全工具、錆びた金属容器、設備、器具による汚染、またはガラス、金属片の混入など、により影響を受ける。

防止対策

危険有害物質は、出来る限り、より危険有害性の低いものに代える。保全作業者に対して教育訓練を行うとともに、取り扱う化学物質についての情報を提供する。適当な保護具を使用させる。殺菌剤、潤滑材(冷却液)または清掃剤(苛性ソーダ、硝酸など)など、目の障害のおそれのあるものを取扱う場合は、保護めがねを着用させる。応急処置をいつでも行えるようにしておく。

2-2 生物学的要因

食品製造業の保全作業者は、下記のような生物学的要因にさらされるおそれがある

  • サルモネラ菌:食肉処理、食肉加工、乳製品製造、魚介類調理工程、または有機肥料により栽培された野菜を取り扱う箇所において発生する。
  • A型肝炎ウィルス:ムラサキイガイ、牡蠣、二枚貝類または、有機肥料により栽培されたサラダを取り扱う場所に存在する潜在的危険源である。
  • 微生物学的危険源:病原菌、ウイルス及び寄生虫

保全作業従事者は、作業中、廃液に接触する。食品製造産業から排出される廃液には、澱粉、砂糖及びたんぱく質、脂肪、油、グリースなどの有機質及び一般的に窒素、燐酸のような栄養素を含んでいる、。また、これらの廃液は生物学的要因、酸及びアルカリ、殺菌剤などを含有している。

防止対策

良好な製造工程、効果的な清潔保持とともに、的確な保全により、微生物的食品安全及び作業者の健康と安全を確保することができる、例えば、作業者の清潔の保持、適切な教育訓練の実施、製造機械、設備及び環境の適切な清掃と消毒などである。生物学的危険源に対する教育訓練と情報の周知、適当な個人保護具の使用、予防注射及び健診を実施する。

2-3 粉じん

食品飲料製造業においては、可燃性粉じんにより爆発火災災害の危険があり、壊滅的、回復不可能な結果をもたらすことがある。小麦粉、穀物、カスタード粉末、インスタントコーヒー、砂糖、乾燥ミルク、ポテト粉末及び粉末スープは、高燃焼性粉じんの例である。適当な点火源、例えば電気プラグの引き抜きによる火花、300度から600度の高温物体などがあれば、爆発災害が発生する。

粉じん爆発防止対策

粉じん爆発のリスクは、次の対策により排除し、または最小限にすることができる

  • 潜在的点火源として、該当箇所にあるすべての電気機器が粉じんの存在下で適切に防護され、使用されるよう設計する。
  • 粉じん爆発のリスクのある電気機器については、計画的に清掃と保全を実施し、粉じんが5ミリメートル以上堆積しないようにする。
  • 高リスク箇所には、防爆型の電気機器、電灯、スイッチ、プラグ、ソケットを使用する。
  • 火気作業、溶接作業等については、作業許可制により管理する。

粉じんは、また、職業性喘息のような呼吸器疾患、目、鼻、皮膚などの炎症の原因となることがある。

粉じんばく露防止対策

  • 設備の適切な設計。
  • 設備の効率を高め、作業順序を効率的にする。
  • 粉じんの発散を削減するために排気装置を設置する。
  • 排出系統を定期的に点検し、検査し、保全する。
  • 排出系統の清掃、保全に当っては、適当な呼吸用保護具を使用させる。
2-4 機械災害

作業者は、保全作業中に不十分なまたは不良保全の結果として機械により負傷するおそれがある。典型的な機械災害としては:

  • 機械の可動部分により激突され、または挟まれる。
  • 機械の可動部分に巻き込まれる。
  • 機械から飛来する加工物または部品により激突されるなどがある。

機械の保全作業を行う作業者は、機械の不意の起動により負傷するおそれがある。特に、保全中にガードを取り外している場合や時間的に切迫していてショートカットをした場合に被災の危険がある。

災害事例

  • 機械による押しつぶされ: パレット機械の危険領域で作業中の技師が、当該機械の可動部分に挟まれ死亡−機械が不意に起動した。
  • 砂糖菓子工場で甘味製造機の詰まりを清掃中、作業者が巻き込まれた。

防止対策

最良の防止対策は、機械・設備の計画・設計段階において危険有害要因について検討することである。リスクを除去できないときは、立入禁止、施錠措置、または作業許可方式などの安全作業措置を取る。

2-5 密閉空間

食品飲料産業の保全作業者は、貯槽、樽、発酵槽、ブドウ圧搾・粉砕機、その他の類似装置の内部に保全、検査、清掃及び修理を行うために入る必要がある。密閉空間での作業は、非常に危険である。すなわち、酸素欠乏、毒性ガス、空間を突然飲み込む液体又は固体、粉じん(粉末サイロ)及び高温・低温環境などの危険が生じるおそれがある。

防止対策

第一の対策は、密閉空間へ入ることを避ける、例えば、外部から作業を行うことである。密閉空間内での作業を避けることが出来ない場合には、作業を開始する前に安全作業方法と、適切な緊急処置を定めておく。

作業者を教育訓練し、密閉空間内の危険源についての情報を周知する。入る前に気中有害物の有無を検査する。空間を冷却し、加温する十分な時間を確保する。次の適当な設備を供給する:

  • 個人用保護具(呼吸用保護具など)
  • 照明装置(防爆保護認定品)
  • 連絡用機器

さらに、開口部、覆い、締付け具などを含む装置の良好な設計に留意する。

2-6 滑り、つまずき、墜落転落

滑り、つまずき、墜落転落災害は、食料品産業の主要な原因である。すべりによる災害は、他の産業に比べてより高い頻度で災害が発生し、これらの大部分が濡れた、汚染された、または油脂が着いた床が原因となっている。

防止対策

設備の計画・設計の段階からの滑り防止、歩行・作業面を清潔かつ乾燥した状態に維持などの適当な保全による滑り防止、また、必要なら滑り、つまずき防止の履物を着用させることなどがある。

2-7 重筋労働

食品飲料産業での保全作業では、しばしば肉体的に負荷の大きい労働を必要とする。保全作業者が、機械設備の保全のために複雑な密閉空間へ入らなければならない場合、困難な姿勢を取る必要があることから、筋骨格系疾患を発症するおそれがある。

防止対策

人間工学的な面を考慮して、機械装置を計画・設計することにより、筋骨格系疾患を防止することに資することができる。作業者は、教育訓練コースに参加し、作業手順等の変更についての計画及び実施に参画することにより、筋骨格系疾患の防止について積極的な役割を果たすことができる。

2-8 高温・低温作業

食品飲料産業においては、しばしば、極端な温度条件下での作業を必要とする。高温下の作業としては、パン製造、業務調理場、燻製場などがある。

低温で湿気の多い作業場としては、獣鳥肉加工、乳製品製造があり、極低温作業場としては、冷凍、冷蔵工程、冷凍乾燥工程などがある。コーヒーの冷凍乾燥抽出工程では、生産を中断しないようにするために集中保全と製造が必要となる。

防止対策

極端な温度条件下での作業におけるリスクについてはばく露期間を制限し、定期的に休憩を取り、特殊な個人保護衣を着用させることにより、これらを最小限にすることができる。

人が入ることができる冷蔵庫、冷却装置、冷凍装置には、適当な出入り口を設ける。ドアは、内部から開けることができ、ドアを閉じた場合でも、ドアが見えるように照明設備を備える。

2-9 心理的リスク要因

保全作業者は、しばしば、時間的制約の下、規定外時間(交代制)に、十分な指示がなく、やりにくい条件下で、または、外部委託の保全作業では、慣れていない環境で作業することが多い。このような作業条件下では、作業者は業務関連ストレスを受けることが多い。

防止対策

保全作業には、現実的な時間と要員を確保する。作業者を教育訓練し、作業内容と安全作業手順について周知しておく。

3 機械及び生産ラインの計画・設計

多くの災害は、機械の保全作業中に発生している。特に食品加工工程では、生産の流れを維持するため、ラインの詰り、物のこぼれを除去し、清掃を実施するために、しばしば機械に接近する必要がある。安全な保全は、機械・装置の設計・計画が最初の段階であり、機械・装置はそれらが安全に保全され、清掃されることが出来るように設計されなければならない。

安全保全に関する機械設計者の課題は、例えば、機械部品を容易に検査でき、交換することができるようにし、安全ガードを取り外すことなく給油し、調整できるようにし、例えば、動力ケーブル、施錠及び安全防護システムの重複の排除など複雑な構成部品の配列を簡単にする。

機械が安全に保全できるように設計製作されていても、作業場がきちんと保全されていなければその効果はなくなってしまう。したがって、適切な作業場の設計は、災害防止と安全保全には必須である。

4 法令

次の各種のEU指令が掲げられている。

最重要な指令として
指令89/391/EEC (枠組み指令):作業時の作業者の安全および健康の改善を促進するための手段の導入に関する指令

枠組指令を補完する指令(Daughter directive)として

  • 指令89/655/EEC:作業において作業者が使用する作業装置の最低限の健康および安全要求事項
  • 指令90/269/EEC:手動での荷扱いについての最低限の健康および安全要求事項
  • 指令98/24/EC:化学薬品によるリスクからの作業者の保護
  • 指令2004/37/EC:作業における発がん性及び変異原性物質へのばく露リスクからの作業者の保護
  • 指令1999/92/EC:爆発可能性雰囲気によるリスクからの作業者の保護
  • 指令2000/54/EC:生物学的要因へのばく露リスクからの作業者の保護
  • 指令2003/10/EC:物理的要因(騒音)によるリスクからの作業者の保護
  • 指令2006/42/EC:機械の安全衛生を確保するための設計・製造に係る必須安全衛生要求事項

5 保全作業における安全衛生マネジメント

保全作業の細部については、産業分野間で異なっており、また、仕事により変わってくる。しかしながら、作業者の安全衛生を確保するにあたっては、安全衛生マネジメントについてのいくつかの共通の原則がある。

  • 安全衛生マネジメントと保全マネジメントとの一体的実施
  • リスクアセスメントに基づく組織的計画的実施
  • 役割と責任の明確化
  • 順守すべき作業の安全システムと明確な指針
  • 適切な教育訓練と適性能力
  • リスクアセスメントと保全マネジメント過程への作業者の参加
  • 効率的な情報伝達

安全な保全作業については、従うべき5つの原則がある。

  1. 計画
    保全は、まず、適当な計画作りから始める。リスクアセスメントを行い、作業者もこれに参画する。
    計画段階で取り扱う事項は、
    仕事の範囲−何がなされるべきか、また、それが他の作業者及び当該作業場の活動にどのように影響するか
    • リスクアセスメント:潜在的危険源を同定する(例えば、危険有害物質、密閉空間、機械の可動部分、気中粉じんなど)、及びリスクを除去しまたは最小限化する対策
    • 作業の安全システム(作業許可制、立入禁止・施錠制など)
    • この活動に要する時間、要員、予算
    • 保全担当者、生産担当者及びその他関係者との連絡調整
    • 適性能力と教育訓練
    • 指針には、保全対象とその保全頻度を明確にしておく。
  2. 作業区域の安全化
    作業区域には、柵、標識などを設け、関係者以外の立入を禁止する等の措置を講じる。また、作業区域を清潔で安全にしておき、動力源を遮断、施錠し、機械可動部分の安全を確保し、仮設換気装置を設置し、作業者の安全な出入り口を確保する。
  3. 適当な装置等の使用
    適当な道具及び装置を使用する。また、リスクを除去できないときは、個人保護具を使用させる。
    事業者は、次のことを確実に行う。
    • 仕事に対する正しい道具と装置を準備する(必要に応じ、使用指示書も含める。)。
    • 適切な状態に保持する。
    • 作業環境に応じ、適切なものとする。
    • 人間工学的配慮をして設計製作したものとする。
    すべての個人用保護具は、
    • リスクに対して適切で、リスクを増加させないものであること。
    • 作業場の既存の条件に対応していること。
    • 人間工学的要求事項と作業者の健康状態を考慮したものであること。
    • 必要な調整をし、着用者に合ったものであること。
  4. 計画通りの作業の実施
    安全作業手順を作業者及び監督者に周知し、その内容を理解させ、正しく適用する。みんなで合意した作業の安全システムと現場のルールが守られているかどうかモニターする。このことは、保全が下請け業者により行われる場合に特に重要である。たとえ時間的に切迫していても、安全作業手順は必ず守らなければならない。ショートカットにより災害が発生し、物損事故が起ったときには、非常に高くつくからである。作業手順は、想定外の事案にも対処できるようにする。作業の安全システムの一部として、予想外の問題が発生し、または、作業者自身の能力を超える問題が起ったときの作業停止について定めておく。
  5. 最終点検の実施
    保全過程は、その仕事が完了し、保全対象が安全かつ必要な機能を保持している状態であることを確認することによって終了となる。プラント、機械、装置などの保全対象の所定の機能を試験する。最終段階として、実施した作業内容及び作業中にあった困難な事項についてのコメントと改善のための提案を含む報告書を作成する。

6 食品飲料製造における災害防止のための資料

欧州各国で作成された手引き、優良事例、ソフトウェアなど26件の資料のリストが掲載されている。

関連情報

全ての働く人々に安全・健康を 〜Safe Work , Safe Life〜

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