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国からの委託事業であった 「国際安全衛生センター(JICOSH)」 別ウィンドウが開きます が2008年3月末をもって廃止されました。 永らくのご利用ありがとうございました。 同センターのサイトに掲載されていた個別の情報については、中災防WEBサイトの国別分野別情報にリンクして取り込んでおります。

 

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各国情報・国際関係

EUにおける道路運送運転者の労働災害に関する調査報告

2011年8月29日

標記の調査報告が欧州安全衛生機構(EU-OSHA 別ウィンドウが開きます )から公表されている。この報告書は、61頁の膨大な報告書で44件の業務関連の交通事故の要因について分析している。
報告書の目次は、以下のとおりである。今回のトピックスでは、第6章の「安全衛生管理と安全文化の向上(Managing health and Safety and promoting a safety culture)」について具体的に紹介し、第1から5章及び7章については要約を紹介する。

原資料の題名と所在

EUにおける道路運送運転者の労働災害に関する調査報告
PDF A review of accidents and injuries to road transport drivers 別ウィンドウが開きます
欧州安全衛生機構( EU-OSHA)

1
序言
1.1
本報告の目的
1.2
方法論
1.3
分析方法の問題
2
トピックス全体の紹介
3
道路における運送による労働災害
3.1
不安全運転
3.2
過積載及びその他の貨物の問題
3.3
道路状態及び気象条件
3.4
車両状態
3.5
制御の喪失
4
貨物及び車両取り扱いにおける災害
4.1
連結及び切り離し、不安全駐車
4.2
積み降ろし
4.3
車両の整備・保全
5
交通労働災害と心理的要因
5.1
ストレス及び作業負荷
5.2
疲労
5.3
アルコール依存及び薬物依存症
5.4
疾病
5.5
暴力
6
安全衛生管理及び安全文化の向上
7
結言
8
災害概要表
9
参考文献

1 序言

この研究の目的は、事故の原因、結果が公表されている業務関連運送事故、ニアミス及び疾病等に係る報告をするものである。今回の報告において重点を置いているのは、公道における道路運送業務であるが、軽量配送業務、バス、タクシー等も対象としている。ただし、報告には公道以外の運送業務、例えば建設現場、農場、倉庫(フォークリフト等)、空港での業務は含まれないが、積み降し業務等は含まれる。

報告は、安全衛生専門家以外の人に事故等の概要を提供し教訓としての活用を期待しているもので、事故等の詳細な原因分析を意図したものではない。また、報告は業務上のリスクに起因するものを取上げており、交通事故一般を取上げているものではない。

報告は、次の3部門から構成される。

  • 公道における業務上の運送災害
  • 貨物及び車両取り扱いに関する災害
  • 業務上の運送災害と心理的要因

2 トピックス全体の紹介

陸上輸送部門においては、貨物自動車、ライトバン、タクシー、バス、業務に使用される個人の乗用車、社用自動車、建設機械、農業機械、救急車両、オートバイ、原付自転車、自転車など、多くの種類の車両が業務に使用される。この部門には、小規模事業者が多く、男性労働者が多い。しかし、近年においてはバス運転者など一定の分野において女性労働者が増加している。

EU域内の道路貨物運送業の一般的な状況

  • 国によって差異はあるものの、小規模事業所が多く、大部分が労働者10人以下及び自営業運転者である。
  • 運送、物流部門については、特に大企業では、これらを外注化する傾向がある。
  • 大部分の運転者は常用労働者であるが、その多くは標準かつ定常的労働時間の下ではなく、夜勤及び週末労働に従事する。
  • 急激に変化する労働条件に適応するために教育が必要であり、しかも継続的な教育が求められている。
  • 高齢化が他の分野よりも急激に進展しており、若い労働者にとって魅力のないものとなっている。
  • 労働条件等が、徐々に増えてきている女性労働者とりわけスクールバスなど短距離輸送業務に従事する女性労働者に適応していない。

道路運送業界は、競争が激しく、市場におけるシェアーを維持するために会社はより効率的に、より高い品質なサービスを提供し、競争相手よりも多くのサービスを提供しなければならない。作業のプレッシャーはしばしばジャストインタイム管理(品物は、顧客が必要とするときに生産工程の所定の箇所に納入する)の結果である。

道路運送安全は、陸上運送部門における重要な問題である。アメリカ、オーストラリア、EU域内各国においては、業務上の車両衝突事故は、業務関連の死亡事故の4分の1から3分の1以上に上っている。

デンマークの交通事故分析(Carstensen et al, 2001)によれば、重量物運搬車両における次の状況が、乗用車に較べて事故のリスクを増加させている。

  • トラックの構造とサイズ等が、乗用車よりも事故になる可能性を大きくしている。
  • トラックの制動及び回避能力の削減が衝突事故に寄与している。
  • トラックの重量とサイズが衝突事故をさらに重篤にしている。

重量物運送車両の運転者の運転ミスは、車両の重量、サイズ、形状、運動能力、制動能力等のためにより重大になる。

運転者は、交通事故のリスクのみに直面しているのではない。次のようなより広範な労働安全衛生問題も含まれる。

  • 荷の積み降しによる災害
  • 車両への昇降に伴う墜落
  • 休憩及びトイレ設備
  • 車両の設計及び整備
  • 筋骨格系疾患及び振動関連疾患
  • 危険有害物への暴露
  • 運転室の寒暑
  • ストレス
  • 公衆による暴力

EU域内の業務災害による死亡者数の3分の1は、輸送に関連する。これらの災害は、一般に、移動中の車両による激突され、轢かれ(特に後進中)、車両からの墜落転落、車両からの物の飛来落下、車両の転倒によるものである(EU OSHA 2001)。

3 道路における運送による労働災害

3.1 不安全運転

英国における社用車の運転者に関する調査によれば、これらの運転者は他の一般の運転者よりも:

  • 時間的切迫した状態で、
  • 疲労した状態で
  • 注意散漫となり、又は厳しい任務のもとで

運転することが多い。このため、運転者は、彼ら自身を合理的かつ安全運転者たるように心がけようとしなくなる傾向があり、交通規則に対する危険違反及び非協力について報告することが多くなっている。

3.2 過積載及びその他の貨物積載問題

3.2.1 過積載、不安定貨物及び不適当な貨物の固定

トラックに関する事故の25%は、不適当な貨物の固定によるものと考えられている。ドイツにおいては重量物運搬車両の年間2,300件の事故原因は、不適切又は不十分な貨物の固定によるものと推計されている(Deutscher Verkehrssicherheitsrat 独交通安全評議会、2008年)。オーストリアの交通安全評議会(Kuratorium für Verkehrssicherheit (KVR))の調査(2005年)によれば、特に軽トラックによる事故は、不適当な貨物の固定によるものである。KVRの分析によれば、重量物運搬車両の40%は、貨物の固定が不十分か不適切である。また、プロ運転者の70%は、貨物についての安全教育を受けたことがない。(KVR、2008)。

貨物の固定についての規則は、いくつかの域内国において定められているが、内容、範囲は区々である。貨物が適切に固定されていなければ、運転者および他の人々にも危険である、貨物が車両から落下し、障害物となり、運転者及び他の道路使用者に危害を及ぼし死傷させるかもしれない。貨物は、他の車両に直接落下する恐れもある。急ブレーキまたは衝突により貨物の落下リスクは増大する。ハンドル操作性は、貨物がどのように配置され固定されているかに影響される。

過積載、適切に積まれなかった貨物は、重篤な交通事故の原因となる。過積載された貨物の平衡点(重心)が動き、重心が高い不安定な荷は、カーブを走行するときの車両転覆の原因となる。

3.2.2 危険有害物質

タンクローリーにより運搬される危険有害物質は、様々なリスクを引起す。これらのリスクは、取り扱い方法により健康障害、爆発などが発生し、さらに通常の車両の衝突事故に悪影響を及ぼす。オランダ事故調査委員会(De Onderzoeksraad Voor Veiligheid, OVV)によれば、可燃性物質を運搬する車両の事故リスクは、通常の車両の事故リスクより70〜80%低くなっているが、定常的に起っている。可燃性物質を運搬する重量車両の運転者に対するより厳しい教育を行い、車両についてのより厳格な基準を設け道路、運送環境について差別化を図ることが要請される。

3.3 道路条件と気象条件

3.3.1 道路条件

多くの国において、山間の道路は、プロの運転者にとって付加的な問題をもたらす、特に車両は、下り坂により加速を得て、操作/制御が困難となる。留意すべきことは、連続的制動によるブレーキの過熱である。このために、安全ルートを計画し、必要に応じてより軽量な車両を採用し、運転者もエンジンブレーキを使用し、低速走行することが要求される。

IRU(国際道路輸送組合)の調査によれば、事故の5%は道路条件に関係している。重量物運送の運転者は、他の運転者よりも自動車専用道路(Highway)で事故に合う可能性が大きい。

3.3.2 気象条件

雨、霙、雪などは、スリップの原因となり、豪雨、豪雪などは霧と同様に視界を悪くする。多くの要因が運転者の視界の妨げになる;濃霧、雨滴のサイズ、吹雪、ワイパー速度、周りの光、他の車両からの飛沫などである。
カナダの調査によれば、気象条件は、以下の影響をもたらす:

  • 降雨のなかでの運転は、衝突事故のリスクを50%から100%増加させる。
  • 降雪は、降雨よりも衝突事故のリスクが大きい、しかし降雪による事故は、他の事故よりもひどくはない。
  • 事故のリスクは、降雨の種類と程度により変る。リスクは、永晶雨、シーズン最初の降雪が最も大きくなり、軽い霧雨、にわか雪などでは低くなる。
  • 降雨によるリスクは運転者の視界にも影響し、というのは、降雨が止むと衝突事故の発生は、道路が雨に塗れていても少なくなるからである。雪による事故のリスクは、道路の滑り易さから降雪が止んでも続く。
  • 風と霧は、事故の原因に占める割合は少ないが、降雨との関連等においてリスクは増加する。
  • いくつかの調査によれば、太陽光による眩しさ、暑熱及び気圧による事故のリスクは、決定的な結論となる証拠に乏しい。悪天候と他のリスク要因との相互関係についてのいくつかの調査があり、特に気象の影響は、夜間及び傾斜したり、カーブした道路において影響が大きい。

悪天候時の運転については、十分な注意と車両がこれらに対して適切な装備をしていることが必要である。運転者に対する特別教育と指示が重要である。

ジャストインタイム管理による作業のプレッシャーは、悪条件化での危険運転のリスクを増大させ、結果として事故のリスクが増加する。

3.4 車両状態

タイヤ、ブレーキ、ライトなどの車両部品の欠陥は、車両の運転についての運転者の操縦能力に影響し、悲劇的な事故に結びつく。警告灯などの車両の安全部品が適切に作動しないことも、重大な事故の原因となる。タイヤ、ライト、ブレーキなどの点検、整備は、運転者及び他の道路使用者の安全に取って決定的に重要である。英国運輸局の調査によれば、車両事故全体の1.5%は、車両欠陥に起因するものである。最も多い欠陥は、ブレーキシステムである。独の災害研究所は、重量物運搬車両の最も多い技術的欠陥はブレーキシステムであることを確認している。これは、保全が不十分なことによるものである。ブレーキの故障は、しばしば、重大な事故になることが多い。

欠陥タイヤもまた、運転者の制御喪失の原因となり、重大事故となる。欠陥タイヤは、主に空気圧不足(整備不良)、タイヤの許容圧を超えた過積載、タイヤの取付けまたは組み込みの欠陥である。

3.5 制御の喪失

スウェーデンの調査によれば、重量物運搬車両の制御喪失とその結果事故になる3つの決定的操作について確認した。最も多い原因は、屈曲部に沿って運転する場合であり、次いで回避操作、道路端に乗り上げ元に戻そうとした時となっている。

4. 貨物及び車両取り扱いにおける災害

運転前、運転後においても業務上のリスクが発生する。運転者は、貨物の積み降し、トレーラーの連結、切離し、貨物が的確に固定されているかどうか点検し確認する、次の運送に向けての点検及び保全などの付加的な任務が発生する。これらの全ての作業は、運転者に対するリスクに関連している。次表にドイツにおける道路運送業における業務災害報告の類型を示す。

表1 ドイツの運送業の作業場所別業務災害報告(BGF、2007)

作業場所
運転室3.5
車庫4.1
積み降しプラットホーム、貨物倉庫9.5
積み降し場所35.6
倉庫2.9
街路、幹線道路11.9
停留所20.4
その他12.1

4.1連結及び切離し、不安全駐車

連結、切離しの不良または不安全駐車は、運転者及び他の人にとって大変危険なことである。事故と危険状況は、重量物運搬車両の運転者が安全連結と駐車手順に従わなかった場合に起こる(BGF、2003)。

死亡災害、重篤な災害になる:運転者が車両とトレーラーに挟まれ、車両そのものに激突される。連結、切離しによる死亡災害は、道路上の死亡事故についで多い(BFG、2003)。

一般的な不安全駐車は、エンジンを停止せず、駐車ブレーキを掛けずに車両を放置し、または緊急ブレーキで駐車しているときに空圧系統を切離してしまうことである(HSE、2002)。

トレーラーとトラックを運転者一人で連結するときに傾斜を利用することがあるが、これは非常に危険な作業手順である。この場合、トレーラーとトラックの間に挟まれるリスクが大きく、多くの場合死亡事故となる。

4.2 積み降ろし

運転者にとって最も危険な作業の1つは、品物の積み降ろし作業である。品物は、しばしばタイムリミット寸前に配達され、迅速に車両から荷卸ろしされる。運転者は、様々な状況に瞬時に慣れる必要がある。作業条件の変化、時間的圧迫感、長距離運転後の疲労は、事故のリスクを増加させる。ドイツ国家災害保険機関(BGF、2007)によれば、運送業の災害の3分の1超は、荷の積み降ろし作業中である。

積み降ろし中の災害の3つの主な原因は:

  • 車両、荷台(車両の)からの墜落・転落
  • 動いている車両に激突されまたは轢かれ
  • 落下物または荷に激突されるなどである。

積み降し中の事故の典型的なリスクまたは危険は:

  • 車両の転倒
  • 車両の突然の横揺れ
  • 車両の急発進
  • 荷の落下、転倒、滑り
  • 不安全な踏み台、梯子
  • 密閉空間
  • 不安全、不適当な照明
  • 締め切りへのプレッシャー
4.2.1 積み込み中または、車両及びプラットフォームからの墜落転落

車両からの墜落転落災害は、骨折などの重篤災害の原因となる作業現場の最も多い事故の型の1つである。災害データの調査では、作業現場の災害の約3分の1であることを示している。また、近年、車両からの墜落転落災害による重篤な負傷者は、増加している。

運転者は、週に何百回も運転室に出入りし、車両の後部(トレーラー、平荷台、後部昇降装置など)に近づく。運送業においては、種々の物に汚染されており、これらは滑り、つまずき、墜落の原因となる。オイル、グリース、ディーゼル油漏れ、雨水、雪、氷などは、作業の危険の原因となる。早朝の積み込みなどでの不十分な照明も災害の危険をもたらす。

墜落転落する車両の部位別では、トレーラー(39%)、平荷台(21%)、後部昇降装置(7.5%)及び屋根等(7.5%)となっている(HSE2007)。災害が最も多い3つの作業は、積降し作業(49%)、荷のシート掛け、固定及び調整(21%)、清掃及び保全作業(15%)となっている。墜落転落災害は、主にトラックの後部及びトレーラーで起っている。

4.2.2 落下物及び荷により激突される災害

積み降し中、運転者(作業者)は落下物によるリスクに曝される。適切に固定されていない荷、輸送中に動いた荷などは、落下するおそれがある。積降口を開いたとき、シートを取り外したときに荷が滑り落ち、運転者が激突される危険がある。

過重、形状の複雑な荷は、適当な取り扱い機器を使用しなければ、転倒し、作業者に激突する危険がある。適切に固定されず、不安定な荷を持ち上げることは、運転者及びその他の作業者に危険をもたらす。フォークリフトの過荷重、不適切な使用も同様な危険を生じる。適切な教育・訓練を受けていない運転者は、得に荷降ろしのときにリスクに曝される。

4.2.3 危険有害物の取り扱い

危険物を取り扱い、運搬する運転者は、様々な危険に直面する。積降し作業中、刺激性化学物質によるリスクに曝される。石油タンクローリーの運転者は、しばしば、頭痛、めまい、吐き気に悩まされる。生コン車の運転者は、アレルギー反応、化学熱傷のリスクに曝される。瀝青運搬車両の運転者もアレルギー反応、熱傷のリスクに曝される。

化学物質のコンテナー運送の運転者もリスクに曝される。コンテナーは、船舶によりまたは道路上、膨大な量が世界中で運搬されている。貨物の取り扱い者は、コンテナーを開け、中身を使用し、再配達する。殺虫剤が、害虫から貨物を保護し、望ましくない種が輸入されることを防止するため、コンテナー内に散布される。このことは、しばしば、これらを開けたときに作業者に危険なレベルになっていることが多い。これらの物質は、ガス状であり、吸入の危険がある。また、凝固した液滴への接触危険もある。

4.3車両の整備・保全

事業者は、車両を整備・保全するとともに、整備・保全された車両を常に確保するようにすべきである。運転者または査察者(inspector) 運転前に車両を点検し、車両が安全な状態にあることを点検する必要がある。整備・保全が不十分な車両により運転中の事故になるおそれがあるとともに、道路で車両整備不良による故障修理作業中に交通事故に遭い負傷する危険もある。作業場が点検、修理のための設備が整っていないと、整備不備による重大な事故となる恐れがある。また、墜落転落災害の15%は、車両の清掃、整備作業中に発生している(HSL、2007)。

車両を安全な方法に留意することなく持上げることは、しばしば、重大なまたは死亡災害となることがある。間に合わせのまたは不適切なジャッキの使用は、また、激突され、押しつぶされなどの災害の原因となる。整備、修理中に機械が不意に作動すると事故となる恐れがある。タイヤの破裂の危険性、ブレーキの清掃液の爆発危険性、空気圧縮機器の破裂危険性等がある。

運転者は、道路脇で荷の点検、修理中に他の車両に激突される危険がある。

5.交通労働災害と心理的要因

5.1ストレスと作業負荷

欧州労働条件調査(European Survey on Working Condition, 2005)によれば、運送業の運転者は平均的な労働者よりもより多くのストレスを有している。EU27カ国において、22%の労働者がストレスに関しての健康影響があると報告しているが、陸上運送業においては、より多く32%のストレスがあると報告
している。

表2:EU27カ国内労働者のストレス報告状況(ESWC、2005)

陸上、パイプライン 32.2%
水上 30.6%
航空 38.2%
EU27カ国合計22.3%

運転者は、長時間労働、不定期の交代制勤務、新たな場所への運転業務、家庭を離れての長期間の勤務など様々な事由によりストレスを経験している。運転者は、時には、積降し前に長時間待たされ、荷主または荷受者から不当な不親切な扱いを受けることがある。その他のストレスを受ける要因として、膨大な通行量、道路の不良と悪天候、強盗、暴漢に襲われる危険、乗客との衝突などがある。時間的制約もまたストレスが多い、例えば、交通渋滞のなかで厳しい配達時間に合わせるまたは、バスの定時運行を確保するなどである。

ベルギー運輸労働者組合は、2002年、運転者の運転中のストレスの原因について調査を実施した。
その結果、次の事項が貨物運送業の労働者にとってストレスが高くなることが分った:

  • 貨物についての責任
  • 意思決定への参加の欠如
  • 交通法規
  • 他の運転者と攻撃(Other traffic drivers and aggression)
  • 品質への要求
  • 不安全な労働条件

旅客業の運転者について:

  • 旅客への責任
  • 意思決定への参加の欠如
  • 人員の不足
  • 交通法規
  • 他の運転者、攻撃及び責任
  • 昇進可能性なし

5.2疲労

欧州運輸安全評議会(European Transport Safety Council)は、業務関連交通衝突事故の約20%は疲労が要因となっていると推計している。オランダの調査研究(Jettinghof et al 2003)によれば、オランダのトラック運転者における疲労は毎年18件〜44件の交通死亡事故に関係していると推計されている。

トラック運転者の睡眠障害に関するベルギーの調査研究(A four-year research project by the Katholieke Hogeschool Kempen)では、運転者の疲労における重大な原因は閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS, obstructive sleep apnea syndrome)に関係しているとしている。また、この調査研究は、トラック運転者の疲れは、交通事故の重大な原因となっていることを明らかにしている(事故の20%)。

OSASと肥満度指数(BMI)の間には、相当な相互関係があることが分ってきている。OSASの大部分は、BMIが30以上、胴囲が94cm以上、年齢が45〜54歳であることが判明した(Wuyts, 2007)。

アメリカでは、長距離トラック運転者の25%が、前年に運転中居眠りをし、47%が過去に居眠り運転した経験があると報告している。オーストラリアでは、トラック運転者が運転前に睡眠時間が6時間以下の場合に居眠り運転などの危険な事案を報告することが多いという報告がある。

5.3アルコール依存及び薬物依存症

長時間運転は、心理的ストレスの原因となり、運転者に依存症になる可能性がある刺激性薬物の使用に導く可能性がある。EUの法令では、道路運送業の運転者の運転時間を規制しているが(規則561、2006年)、運転者は40時間を超えて運転することがある。このような作業負荷に対応するために、運転者は覚せい剤を使用することがある。

運転中に医師に相談する機会がない運転者は、運転行動に影響する市販薬を服用する。多くの一般的な薬は、集中力、注意力、反応力を低下させることにより運転能力に影響を与え、事故を引き起こす原因となる。

5.4疾病

通常、一般の人々は健康に問題がある場合にはいつでも医師に見てもらうことができる。しかし、長距離運転者は、長期間道路上におり、配達計画に縛られるために医師に見てもらうための休み時間をとることができないことから、いつでも医師に見てもらうことができない。そのため、運転者は健康問題を軽視し、頭痛、その他の健康障害を押して運転を続け、または痛みを緩和するための市販薬を服用する。このことは、運転者と他の道路使用者にとって非常に危険なことである。

5.5暴力

暴力は、運輸産業の職業リスク発生源の1つである。欧州労働条件調査(ESWC)によれば、運輸産業(水運を除く)の労働者は一般的な労働者に較べてより身体的暴力という点においてより弱い立場にあると考えられる。陸上貨物運送労働者の11%は、一般の労働者が4.3%であるのに較べて、暴力の被害を受けていると報告している。

表3あなたは、仕事において他者から身体的暴力を受けていますか(EU27カ国、ESWC 2005)

陸上、パイプライン 11.0%
水上 2.0%
航空 10.8%
全体 4.3%

運輸産業労働者は、様々な暴力を受ける。公共輸送労働者は、泥酔、薬物中毒または、怒っている乗客または犯罪者による暴力の犠牲となる。運転は単独(タクシー運転者、バス運転者など)であるので、車両内の現金は強盗をひきつけ、また乗客と直接接することから、他の労働者に較べてより多くのリスクに曝される。

怒っている乗客に攻撃されるリスクは、午後または夕刻に多くなる、というのは、乗客は家に帰る途中であり、特に長い間バスを待たされた場合に多くなる。夕方から夜には特に酔っているまたは薬物服用した客に攻撃される。

トラック運転者の71%は、他の運転者、乗客からの攻撃を余計な負担と考えており、69%の運転者が他の運転者からイライラさせられていると考えている。

暴力関連の特別な事項としては、トラック窃盗の増加である。トラック窃盗の80%は、その貨物に目を付けている。この増加する問題に対処するには、防止対策が必要となる。

  • 窃盗に遭わないために何をすべきか、窃盗に遭ったときにどうすべきかを記述してマニュアルを準備する。
  • 荷をどのように取り扱うか、安全装置(システム)をどのように使用するか、どのような場所に駐車するかについて明確に指示する。

6.安全衛生管理及び安全文化の向上

6.1 安全管理の向上

輸送業の経営と雇用条件は、業務関連の道路安全に影響する重要な要因である。賃金、労働条件、教育、手順、計画、事故管理、フィ−ドバック及び情報伝達は、業務関連の道路リスクに関する企業組織上の要因である。管理体制の不良は、運転者のストレスと疲労を増大させ、結果的に道路リスクを増加させる。

アメリカ安全衛生研究所(NIOSH)の推奨する防止対策

事業者は、道路条件をコントロールすることは出来ないが、使用ルートを決定し、運転者に安全情報を提供し、安全方針を定め運転者に示すことにより安全運転を促進することができる。NIOSHは、衝突事故は経営上避け得ないことではなく、基本的な対策を講じることにより雇用する労働者と会社を守ることができると強調している。

基本方針

  • チームの管理責任の鍵となる要員を配置し、その者に総合的な運転者安全方針を定めこれを実施させる。
  • シートベルトを確実に着用させる。
  • 不規則な時間または正規の労働時間を大幅に超えて運転させない。
  • 運転中に携帯電話での連絡等を行わせない。
  • 労働者が制限速度を順守し、適用される労働時間規則に従うことができる作業計画を立てる。
  • 経営方針を道路交通規則、運転時間規則及び道路法規に合わせる。

車両管理

  • しっかりした車両整備計画を立てる。
  • 搭乗者保護について最高水準の車両を備える。
  • 仕事に応じた正しい車両を確保する。

安全プログラム

  • 疲労と車両内で注意散漫させる要因を認識し、管理する方法を運転者に教育する。
  • 特殊装備車両の操作について教育する。
  • 業務上でも業務外でも安全運転の実施を行う必要性を教育する。

運転者に関する事項

  • 運転担当者は、運転免許証を所有し、運転する車両の種類に合うものであることを確認する。
  • 雇用予定の者の運転暦を調べ、雇入れ後も定期的にチェックする。
  • 運転者の運転実績を完全かつ正確に記録しておく。

整備不良の車両を運転させることは、危険な機械を操作させることと等しい。

事業者は、したがって

  • 明確な車両整備計画を立てる、
  • 責任者を指名し、
  • 車両修理(サービス)計画を立てる、
    • 修理の必要性を決め、
    • 車両が使用される条件に応じた整備頻度を設定し、
  • 毎日の車両の状態をモニターし
  • 各車両の修理暦を保存し、
  • 車両を賃貸会社、車所有運転者及び請負者に対し、その車両を適切に整備し定期的に修理するよう要請する必要がある。

定期車両検査においては、次のことを留意する。

  • ブレーキ
  • ステアリング
  • タイヤ
  • 運転者が明瞭に見るための鏡と関係部品
  • フロントガラスのウォッシャー、ワイパー
  • 梯子、階段、歩道
  • 警報器(警笛、後進警報器、ライトなど)
  • 配管、油空圧ホース、油圧ラム、アウトリガー、揚重装置、その他の可動部品又は装置
  • 特定の安全装置(不意の可動を防止するためのインターロック装置、ラック、ロープ固定点など)

運転者に対し、

  • 使用中に遭遇した問題点について決められた管理手順に基づき報告するよう指示し
  • 仕事の開始前にタイヤ、ライト、指示計器を点検するよう働きかけ
  • 業務終了における車両の日常及び週次点検のリストを提示する。

運転者の能力、協力及び参加

道路交通の安全管理について、次の事項が運転者に関係している。

  • 運転者の能力、車両の型式に応じた免許、採用時の態度
  • 運転技量、車両操作、車両についての知見に関する教育・指導
  • 運転外のリスクについての教育・指導
  • 緊急時の対処方法
  • 手続き、手順の明確化、運転者の責任の明確化と周知
  • 運転への適応性
  • 態度、振る舞い
  • 知識と経験の活用によりリスクの同定と管理への参加

運転者は、車所有運転者、雇用される運転者であろうとにかかわらず事業者または契約会社に協力し、安全衛生管理手順、安全規則・勧告に従わなければならない。運転者は、シートベルト着用の義務があり、運転中の携帯電話、飲食、不必要な車両機器の調整など注意を散漫にさせる行為をしてはならない。運転者は、事業者の指示に基づき、車両を点検しなければならない。事業者は、運転者の責任について周知し、道路安全に関する意見をきくようにする。運転者は、事故防止戦略の立案と実施を含め、十分に知らされ、参加するようにする。運転者は、問題点と事故等の事案について報告する。

会社が車所有運転者と契約する場合においても、会社は車両整備、安全機能、シートベルト着用、携帯電話の使用、教育・経験等についての基準を決めることができる。運転日程、経路等及び安全手順は、多くの場合、会社の管理下にある。

道路安全管理のリーダーシップ−安全文化と積極的アプローチ

  • 管理監督者は、率先垂範する。自分自身が運転し、そのパターンを示す。
  • 職員と話し合い、その意見を聞く。
  • 経験からの教訓を分かち合う。
  • 安全運転の向上にフィードバックする。
  • 安全運転について、認定し、褒め、表彰する。
  • 道路交通に係る違反等の報告を求める場合においては、懲戒ではなく第一義的に支援、援助を考慮する。
  • 会議、内部文書、ブリーフィング、職員評価などにおいては、道路交通安全のテーマに重点を置く。

作業時間及び時間的圧力

疲労が交通労働災害の主要な原因であることが世界的に認識されてきている。作業時間及びタイムスケジュールについては、特別な注意が払われるべきである。道路運送事業では、激烈な、増大する競争圧力に直面している。小企業、フリーランサーに対する競争ストレスは、道路運送業者の雇用条件とりわけ労働条件に影響している。運転者は、企業と顧客間の距離がより長くなるなど長時間・長距離運転をし、ジャストインタイム方式と要求多い顧客にあわせるために厳しい配達スケジュールに直面している。このことは、運転者に時間的圧迫感を与え、常に急がなければという感じを与えている。ジャストインタイム方式は、正確、迅速、柔軟な配達についての顧客からのより高い要求の結果である。(ESWC、2005)

競争から生ずる時間的圧力は、運送業における多くの危険源(事故のリスク)に関与している。

時間的圧力
作業時間
(長時間労働、夜間作業、不十分な休憩時間)
教育
(教育の欠如)
整備
(不十分な保全整備)
組織
(ジャストインタイムの原則)
疲労    
事故への影響
ストレス、作業負荷過負荷車両条件ストレス、作業負荷
連結・切り離し連結・切り離し装置の状態道路状態(経路の計画)
積み降ろし積み降ろし危険有害物質の取り扱い積み降ろし
不安全運転不安全運転  
注意散漫   

長時間労働、夜間作業、不十分な休憩時間は、疲労の主な要因であり、注意力、集中力の喪失、緩慢な反応をもたらす。疲労は、道路運送業における増大する安全衛生問題である。疲労は多くの交通死傷労働災害を生じさせる事業場の主要な危険源である(ILO、2005)。疲労は、常に避けることはできないが、これを良好に管理することはできる。EUの労働時間規則(規則No.561/2006)では、作業時間、運転及び休憩時間を規定している。しかし、作業時間規則、タコグラフは無視されることが多く、運転者、乗客及びその他の道路使用者は危険に曝されることになる。

積み降ろし作業は、疲労の原因となるので、可能なら積み降ろし専門の作業者を配置する。積み降ろし及び運転作業計画において、休憩時間についても考慮する。

スピードの出しすぎの運転は、業界における過激な競争の結果である、というのは、運転者はスケジュールを維持するために制限速度を超えて運行せざるを得ないからある。

欧州委員会は、行程(出発時間、走行時間等)の管理と計画は、交通労働災害を減少させる鍵となる要素であると主張している。行程は前もって事業場内で計画し、直前または道路上で決めるべきではない。出発前の行程計画には、アポイント日時、通行ルート、日程計画の選択、距離の見積もり、休憩、緊急時、遅延の場合の時間管理等を含める。運転作業を計画するに当っては、緊急時及び遅延時の管理に特に留意する。

事業者は、運転者が不規則な時間における作業及び通常の労働時間をはるかに超えて作業日の延長をしなくともいいように、顧客及び配達先における契約において現実的な時間枠を提示する必要がある。事業者は、運転者が制限速度を順守し、適用のある労働時間規則を守ることができる時間表を作成しなければならない。事業者は、従って、運転作業の計画に当って請負者、常連の顧客、供給者の参加を要請する必要がある。顧客も運転者が運転中に携帯電話を使用しないように配慮する。集荷、配達経路で安全について関係者が協力する。

欧州委員会は、道路交通リスク防止の関係者における効果的な協力は、効果的な巡回経路、顧客の時間的制約をよく理解して巡回経路を決めること、締め切りを設定するに当って安全を考慮すること、品物の受け取りまたは配達においてよりよい連携などを可能にすると指摘している。

毎日の距離、運転時間を昼間、夜間ごとに決めておく。運転時間と休憩時間の規則を順守する。

運転者が速度超過で運転しないことを明確にする。不可能な日程計画締め切りを設定しない。運転者に速度超過させるような作業方法(ジャストインタイム配達、出来高払い賃金、直行直帰(Job and finish)、非現実的な出勤命令と配達時間等)は排除する。

教育、指導及び安全文化

道路運送事故に関するもう1つの大きな事項は、運転者が遂行しなければならない多様な任務に関して運転者に対する教育、指導の欠如である。運送車両は、その種類に応じて多様な特徴を持っており、運転者には特定の能力が必要となる。技術は常に進歩することから、運転者に対しても新たな技術及び最新の装備を有する車両の操作についての教育が必要となってくる。年間、かなりの長距離を恐らく、困難な状況下で運転することから、運転者には特別の技能が要求される。

運転者は多くの場合、積み降ろし作業を行う任務を持ち、また、荷を安全に固定することにも責任があることから、これらの任務を安全に遂行するための教育が必要である。このため、安全積み降ろし、安全運送についての教育を行うことが必要である。
荷の安全、運転者及び他者の生命は、適切な荷の拘束に依存している(オーストラリア全国運輸委員会、2004)。

軽トラックの運転者は、特に積み降ろし、安全運送(荷の締め付け)についての教育を受けていないことが多い。これらの運転者は、ときには非常に重い、危険な、壊れやすい品物を運ぶことがあっても、特別な教育をうけることは少ない。教育は、運転リスク、防御運転技術、運転外のリスクについて行われるべきである。

広い意味でのリスク管理の一環としての業務上の運転者に対する適切な教育は、事故を減少させることに資することは明らかである。しかしながら、作業者が自己の仕事を行う能力を開発し、安全に係る適切な作業行動を開発する安全文化の効果的管理が必要となってくる。

  • 採用に当って、運転者としての態度、能力を考慮し、その後も必要に応じて留意する。
  • 運転中または、オンラインツールにより運転者を評価する。事故暦と違反点数について調べる。
  • 運転者への追加教育の実施、特に業務中に道路交通のリスクに曝される者、若年労働者など教育ニーズの高い者に実施する。
  • 運転者の能力をチェックするためのリストを作成する。
  • 追加的教育の必要性を決める−車両の型式、走行距離、貨物固定技術、重量物積載車両の運転、機動的運行など
  • 教育計画及び計画後のモニターを設定する。
  • 運転者教育には補完項目として、救急処置を加え、事故の結果を最小限化する。
  • 定期的にモニターを行い、運転者の能力向上を図る。
  • 若年労働者や新規雇入れ労働者に指導、助言することができるように年配の経験ある運転者に対して教育を行う。
  • 教育は、運転以外のリスク、例えば、重量物取り扱い、運転台、荷台からの墜落転落の防止などを含める。

6.2 安全文化向上対策

業務関連道路交通安全は、安全文化の向上により向上させることができると英国(Bomel Ltd., 2004)の調査研究は示唆している。報告では安全文化をどのように向上させるのかについて多くの提言をしている。

報告では、政府、会社、その他関係者が、道路交通安全問題に取り組むに当って、特に教育、手続き、企画立案、事故事案管理/フィードバック、管理監督、安全情報伝達などに取り組む場合には、安全文化を考慮すべきであると提言している。業務関連道路交通安全は、特に、企業文化(教育、手続き、企画立案、事故事案管理など)がどのように安全運転において適用され、会社自身にそれらの弱点及び強みを評価し、安全文化における改善手法と同様に検討し促進されるべきである。運転中の事故事案の原因から教訓を得るために、社内の報告、フィードバック体制を改善する。リスク情報をすべての運転者と共有する。中小企業に対しても、道路交通リスクの検討の重要性と安全文化の醸成の便益をよく説明する。

この報告書の提言を下記に示す。

  • 会社のすべての関係者が、問題点について相談し、効果的な運転リスク管理対策を見出す。従業員代表組織についてもこの過程を活用する。
  • 会社の安全文化を向上させるために、政府は優良(good practice)会社を表彰し、業界の安全衛生水準向上の基盤とする。このことは、運転者の専門性(優良運転者の教育、認定、表彰制度など)の価値を高めるための戦略も含めるべきである。
  • 業務関連道路交通リスクに関する一般の認識向上のための広報活動も重要である。
  • 安全向上のためのてことして、道路交通リスク管理に財政的便益も強調されるべきである。
  • 政府としては、負傷者を減少させるための法令について考慮すべきである。

多くの関係者が果たすことができる役割がある。例えば、

事業者協会は、会員会社の優良事例(good practice)を推進する立場にある。欧州化学物質輸送協会の「レスポンシブルケア」計画は、その事例の1つである。

安全協会、安全専門家協会は、その専門性を通じて、トラック、大型商用車両に係る道路交通安全認識について一般公衆が共有するのに資することができる。これらの情報は、運転者教育コース、運転者マニュアル、事業場の運転者教育に組み込むことができる。保険協会でも、成績向上の要求事項を設定し、動機付け施策を実施し、指針を作成し、安全意識の向上を図ることができる。

より高い安全性、より低廉な費用、環境への配慮

  • 道路部門は、EUの運輸産業の93%を占め、EUの温室効果ガスの20%を排出している(乗用自動車は、12%)。
  • 1990年から2004年の間に道路関連の排出は、26%増加した。

特に高速運転は、道路交通の環境影響(environmental impact)を増幅する。従って、運転速度管理は炭素減少政策の効果的な方法である。EUにおいては、交通死亡事故の3分の1が高速運転によるものである。制限速度の規制及び自動速度制御装置(Intelligent Speed Assistance)による速度制限は、人命を救うとともに温暖化を軽減する。

  • どの瞬間においても、運転者の50%は制限速度を超過している(OECDデータ)。
  • 高速道路上での速度は、最適燃費を大きく上回っている。
  • 貨物輸送が増加している今日、大型車両、バン、軽トラックの速度を制御することは、CO2削減のために重要である。
  • 自動速度制御装置の装備は、犠牲者の削減に大きく貢献しているのに加え、炭酸ガスの発生を軽減することを示している。

7.結言

運送業の運転者の交通労働災害及び交通災害以外の労働災害は、今なお、多く発生している。この報告の災害事例は、運送車両に係る災害の要因は多岐にわたっていることを示している。さらに、事例は業務上の運転者の運転外での被災例を示している。

運転者に対する災害、健康問題は、業界を通じての安全衛生管理の改善と安全文化の向上に留意することによって、減少させることができる。道路交通リスクを安全衛生管理に組み込み、安全衛生管理を企業の経営管理に組み込むことが必要である。特に、配送経路のすべての関係者が安全について協力し、事業者は契約配送サービス業者または車所有運転者についての基準を定めることが重要である。

事故が発生した場合には、事業者はできる限りこれらから教訓を得ることが大切である。防止対策を決めるリスクアセスメントの一環として、過去に発生したすべての交通労働災害について詳細な分析を実施すべきである。この分析において、物的損害、人的損害、実施されていた防止対策、間接費用、直接費用に留意する。すべての交通労働災害、ニアミス事故を含め、運転者から報告させ、必要に応じて既存の対策を改善する。

会社にとって、その運転者の安全衛生を向上させる活動は有益である。物的事故を減らし、燃料消費、車両の損耗を減少させ、特に重大な人身事故を削減する。会社は、生産性と高品質を確保することが基本である。さらに、燃料の節約、災害の削減により道路交通安全が改善され、このことは持続的発展に関係している。

運送関連災害は、道路災害及びその重篤性の大きな部分を占めている。このことは、多くの関係者が事案の明確な理解を得るために、目的を設定して、活動のための戦略を決定するために参加することが継続的に必要であることを明確に示している。

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