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各国情報・国際関係

ファクトシート100−レジオネラ菌及レジオネラ症:欧州の政策と作業管理

2011年10月31日

EU-OSHA News 2011年8月28日

通常、レジオネラ症は、たとえ、レジオネラ症の発生する危険性の高い場所(冷却塔、噴霧器のある建物、生物廃水処理設備、洗車工場、医療施設、温泉及びホテルを含む)において、レジオネラ症に労働者がしばしば罹患していても、労働衛生の問題というよりもむしろ公衆衛生の問題として考えられる。このファクトシートは、レジオネラ菌への職業性ばく露にかかるレジオネラ菌とレジオネラ症に関連する欧州政策の概観に基づいており、またレジオネラ菌のリスクを管理する事例についても紹介している。

原資料の題名と所在
Factsheet−Legionella and legionnaires’ disease : European policies and good practices 別ウィンドウが開きます
同 pdf 別ウィンドウが開きます
Publishing Date : 28. 08. 2011

本文の概要

レジオネラ症は、バクテリアレジオネラニューモフィラ菌及び関連するバクテリアにより生じる肺炎の一種である。あまり重症化しないレジオネラ症は、ボンティアック熱と呼ばれる呼吸器感染症である。

レジオネラ病は、通常、レジオネラ菌で汚染された水(エアロゾル)の飛沫を吸入することにより、罹患する。しかしながら、ほとんどの人がレジオネラ菌にばく露されても、病気にならないし、当該疾病が人から人へと感染した事例は、確認されていない。

一部の人々は、レジオネラ症の罹患に対し高いリスクを持つ。例えば、45歳以上の者、喫煙者、大酒飲み、慢性呼吸器疾病、腎臓疾病及び免疫抑制の人々である。レジオネラ症は、ホテルに滞在する旅行者等の一般人だけでなく、空調及び給水システムの保守管理技術者等の労働者にもまた罹患する。

ミスト発生器が設置される場所の労働者、歯科医、海洋石油及びガス施設の労働者、溶接工、戦車作業者、鉱山労働者、医療労働者、数多くの産業の産業廃水処理施設の労働者(例えばパルブ及び製紙工場)がレジオネラ菌にばく露される可能性がある。

欧州では、レジオネラ症の疫学及び微生物学的側面に関する知識向上のために、ネットワーク(EWGLI)が設置された。しかし、そのネットワークの設置において、職業上のリスクをほとんど考慮していなかった。これは、職業環境におけるレジオネラ症に関する信頼できるデータの欠如を意味する。

2010年4月1日に、EWGLIネットワークは、欧州疾病対策センターへ移され、そして、レジオネラ症監視ネットワーク(ELDSnet)に改名された。

レジオネラ菌が成長する条件

  • 20−45℃の水温
  • よどみまたは、ほとんど流れていない水、滞留水に近い水
  • 藻類、アメーバ、ヘドロ、他のバクテリアを含む、高微生物濃度
  • バイオフィルム(biofilm)、湯垢(scale)、堆積物、スラッジ、さび、または他の有機物質
  • バクテリアの成長を高める栄養素を提供するであろう、ゴムフィッティング(rubber fitting)のような劣化した配管材料

レジオネラ菌のばく露リスクを持つシステム

  • 冷却塔に組み込まれている水システム
  • 蒸発凝縮器に組み込まれている水システム
  • 冷温水システム
  • 温泉プール(泡風呂、熱い風呂、及び温泉浴として知られている)
  • 加湿器及び水の噴霧システム
  • 歯科用機械への送水管
  • 生物処理プラント及び産業廃水処理プラントの曝気池(aeration ponds)
  • 高圧水洗浄機械
  • 温度で20℃を超える可能性があり、そして、噴霧またはエアロゾルを放出する他のプラント及びシステム

前述のシステムの洗浄と保守管理は、レジオネラ菌へのばく露のリスクと関連している。

レジオネラ菌のばく露リスク管理

レジオネラ菌へのばく露リスクは、通常、システム中のバクテリアの増殖を防ぐ手段及び飛沫、エアロゾルへのばく露を減少させることによって管理されている。

注意点は:

  • 水噴霧の放出を管理すること
  • 20−45℃の水温を避けること
  • バイオフィルムの成長を助長させる水滞留を避けること
  • バクテリア及び他の微生物の棲家となる物質または、微生物の成長要因となる栄養素の供給となる物質の使用を避けること
  • システムとそれに使用する水を清潔に維持すること

最終手段として、保安要員は、個人用保護具(防塵マスクのような)の使用が必要な場合がある。

EU-OSHA報告書:レジオネラ菌及びレジオネラ症:政策の概要

このEU-OSHA報告書は、EU加盟国及びEU非加盟国におけるレジオネラ菌及びレジオネラ症についての規制枠組み及び規則の実際の適用に関連するその他の模範的な文書を示している。また、この報告書は、WHOまたはISOのような国際機関及びCENのような規格化団体の政策を要約している。

国別にみると、ほとんどの欧州諸国では、レジオネラ菌に対する公衆衛生対策を採用し、数カ国が、労働安全衛生関連法にレジオネラ菌について特別な問題として、言及している。ほとんどのEU諸国で、レジオネラ菌の職業リスクは、「作業中における生物学的因子へのばく露に関連したリスクから労働者の保護」に関しての指令(Directive)2000/54/ECに基づく法律、命令等によりカバーされている。

船舶におけるレジオネラ菌のばく露リスク管理

レジオネラ菌の大発生は、積荷と関連しており、船上の水システム(On-board water systems)は、リスク因子である。オランダの輸送及び水管理にかかる検査官は、このリスクを管理するためにガイダンスを作成している。

水システムにおけるレジオネラ菌の予防に関する情報は、船舶で使用されるリスクに関して提示される。また、さまざまなタイプの船積み実施機関及びレジオネラ菌リスク分析及び管理計画についての情報が存在している。

ハンガリー製薬工場でのレジオネラ菌リスクの最小化(minimising legionella risk)

ハンガリー製薬工場(Hungarian pharmaceutical plant)は、世界的な製薬グループに属している。グループ本部は、フランスにあるため、レジオネラ菌問題に関してはハンガリーより厳格なフランスの法律の規定により規制されている。会社は、ハンガリー工場にもまた、レジオネラ菌に関連するフランスの規定を適用することを決定した。

レジオネラ菌のモニタリングにより、熱水循環システムでの高いリスクのある場所を明らかにした。会社は、配管を清掃し、定期的な熱ショック処理を導入した。また、会社は、冷却水を含む、新しい社内水マネージメント計画を設立した。これを標準とする会社のアプローチは、これまでのところ、レジオネラ菌リスクに対する取り組みに役立ち、疾病を予防している。

2004年アテネオリンピック大会期間中のレジオネラ症の予防のための環境健康調査プログラム

環境健康調査プログラムが、2004年オリンピック大会のために開始された。このプログラムには、給水システム、冷却塔、人工噴水のレジオネラ症の予防のために一連の検査も含んでいる。標準化された審査報告書が、検査のために設計され、そして、評価システムが定性的な評価を実施できるよう制定された。

環境衛生検査官は、レジオネラ菌に対し一貫性があり標準化された検査と水採取を実施するための訓練を行った。レジオネラ症予防のためのガイドラインが発行され、検査官及び施設所有者に配布された。

イタリアにおける列車のレジオネラ菌の汚染防止の補助としてのリスクアセスメント

ISPESL、トレニタリア(イタリアの国鉄)及びRFIからの専門家グループを設定し、列車における労働者及び旅行者に対するレジオネラ菌のばく露リスクを評価した。イタリアの法律(DLgs 81/2008)に従い、鉄道での生物学的なリスクアセスメント及びマネージメントに関する専門的なガイドラインに詳しく述べられている。すべての鉄道職員は、レジオネラ菌のばく露リスクに対する訓練を行った。

仕様書「列車の水タンク内のレジオネラ菌spp.(菌種)汚染防止及び管理のためのガイドライン」が、鉄道員及び保守管理職場の労働者、特に、水供給、油圧回路、清掃及び修理を扱う者向けに出された。

消毒、殺菌のために使用されるすべての化学品、消毒剤、洗浄剤または添加剤のための安全データーシート(SDS)は、作業手順の説明とともに、事業用に当該化学品を利用する者に活用できるになっている。

ブリュッセルの聖ルカ大学病院(Saint-Luc)の有効なレジオネラ菌の管理

ブリュッセルの聖ルカ大学病院(Saint-Luc)は、1980年以来、成功度合が大幅に違うさまざまな管理手法を組み込み、テストを行うことで、温水供給システムのレジオネラ菌の増加を防ぐためのノウハウを持っている。

最近では、二酸化塩素を使用した化学消毒法の運用が大成功をおさめ、レジオネラ菌は温水においてもはや検出されない。二酸化塩素の自動投与装置は、容易に設置でき、メンテナンスできる。二酸化塩素濃度は、フランドル法(Flemish law)の法的要求事項を遵守している。

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