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各国情報・国際関係

アメリカの労働リスク保険

2012年4月17日

Eurogip News:2012年3月15日

アメリカの労働安全衛生制度、労災補償制度の概要及び労働災害統計(2008年、2009年)についての調査報告が、Eurogip 別ウィンドウが開きます (欧州域内の業務災害及び業務疾病の補償及び防止に関連する事項を調査するために1991年にフランスにより設立された機関)から公表された。

原資料の所在:
米国の労働リスク保険( PDF Occupational Risks Insurance in the United States 別ウィンドウが開きます)

この報告書は、59ページの膨大なものであり、その構成は以下のとおりである。このうちの要旨(Summary)の一部について紹介する。なお、労働災害統計については、アメリカ労働省労働統計局の公表記事をすでに掲載しているので、それらを参照していただきたい。

目次

要旨(Summary)

  1. 労働リスク保険の歴史(The history of the occupational risk insurance)
  2. 関連機関(Relevant organizations)
    2.1
    関係官庁(Institutional organizations)
    2.2
    労働災害統計の作成公表(Recording and publication of occupational injuries)
    2.3
    州政府レベルの行政機構(Administrative structure of state level)
    2.4
    研究機関(Scientific institution)
  3. 労働リスク保険制度(Functioning of the occupational risk insurance system)
    3.1
    労働リスク保険(The Occupational risk insurance)
    3.2
    制度の財政(Funding of the system)
    3.3
    被災者の補償(Victims’ compensation)
    3.4
    排他的救済の原則:訴訟からの事業者の免責(The“Exclusive remedy” principle: the employer’s immunity from suit)
    3.5
    永久一部労働不能傷害に対する定額補償(Fixing compensation for partial permanent disability)
    3.6
    補償パートナーの例(2008年データ)(Compensation partners’ examples-2008 data
    3.7
    経済的インセンティブについての考察(Debate on economic incentives)
  4. 保険財政データ(Financial data)
    4.1
    一般(General)
    4.2
    支払給付(Benefit paid)
    4.3
    最重篤災害のコスト(Cost of the most serious incidents)
    4.4
    保険のコスト(Cost of insurance)
    4.5
    保険コストの異なった観点(Different perspective on the cost of insurance)
    4.6
    保険の種類(Note of different insurance)
  5. 統計手法と考察(Statistical methodology and debate)
    5.1
    労働安全衛生法に基づく労働災害記録(Recording case under the OSH Act)
    5.2
    労働統計局の統計的方法(Statistical methodology of the BSL)
    5.3
    考察(Debate)
  6. 労働災害データ(Occupational injuries data)
    6.1
    主要データ(Main data)
    6.2
    業務死亡災害(Fatal incidents at work)
    6.3
    業務疾病(Occupational illnesses-2009 data)
  7. 労働リスクの防止
    7.1
    米国労働安全衛生局(The OSHA Agency)
    7.2
    国立安全衛生研究所(The NIOSH Institute)
    7.3
    医療についての研究、サービス及び関連機関
  8. ユーロスタットデータ(Eurostat data)
  9. 参考文献及びインターネット情報源(Bibliography and web resources)

要旨(Summary)

労働リスク保険(Occupational Risk Insurance)は、州(State)レベルにおける最初の社会保険制度であった。民間企業労働者に対しては、労働者の業務上の災害や疾病に対する補償を規定した連邦法令はなく、各州が独自の労働者災害補償法を有しており、大部分は、1920年以前に整備されていた。

労働リスク保険は、テキサス州を除き、すべての州で義務化されている。この制度は、被災者による民事訴訟の免責を保証する事業者の民事責任の原則に基づいている。

保険に対する義務は、実際的にいくつかの例外を除きすべての種類、規模の事業に適用されている。仕事上の及び仕事に関連する災害及び業務上の疾病は補償されるが、通勤途上の災害は除かれている。

事業者は各種の保険機関と保険契約をすることができ、また州によって民間の保険会社又は州営の保険機関を選ぶことができる。

事業者が保険契約をしていない場合は、被災者は法的手続を行うまたは労働リスクを補償し又は保証基金(guarantee fund)を所管する州政府機関に申請することができる。

連邦政府労働者(連邦雇用労働者補償法)、鉄道労働者、商船員、核兵器産業労働者、じん肺に罹っている船渠労働者及び鉱山労働者(Black Lung Benefit Act、黒肺塵症給付法)については、特定の災害補償制度が制定されている。

保険料の徴集、計算方法は、州を通じてほぼ同等である。民間保険機関と保険契約している事業者にとっては、保険料の額を計算する基本的数値は、週給に対する100ドルあたりのドルで表される。この料率は職業に応じて固定されている。例えば、カリフォルニアでは事務労働者に対するリスククラスは1.25$であり、週給500ドルの場合は、保険料は(500/100)×1.25=6.25$となる。保険料率は、事業の既往歴に応じて変わってくる(experience rating 経験料率)。

補償給付は、現物給付(benefits in kind、金額及び期間の上限なしの医療費)及び現金給付(cash payment、労働不能の全部又は一部、または一時又は永久)である。

被災者は、最大限度の医学的改善(Maximum Medical Improvement)までの一時労働不能の給付を受ける。MMIとは、労働者が仕事に復帰できるかまたは永久労働不能の状態になる時点でそれ以上の改善が見込まれない状態をいう。

労働リスク保険は州レベルでの規制であり、計算方法及び給付額は州により異なっている。給付が行われる週数も同様である。収入損失に対する補償は、州レベル、連邦レベルにおいて非課税である。

業務災害(occupational incidents)及び業務疾病(occupational illnesses)の統計については、労働安全衛生法(Occupational Safety and Health Act, 1970)が施行された1970年以降、アメリカ労働省労働統計局(Bureau of Labor Statistics, BSL)が本格的に実施している。労働安全衛生法は、民間企業の事業者(労働者10人以下及び危険性がないとみなされた事業場を除く)は休業を伴うまたは伴わないにかかわらずすべての業務災害及び業務疾病について記録し、保管すべきことを規定している。

BSLは、無作為抽出した240,000事業場から保管記録等の報告を求め、業務災害及び業務疾病の全国統計を作成し公表している。この統計には、労働者10人以下の事業についても含まれるが、自営業世帯及び10人以下の農業事業場の労働者など一部については、含まれていない。死亡災害については、多くの行政上の情報源からデータを収集し、統計を作成し、公表している。しかし、業務疾病による死亡については含まれていない。

BSLは、2009年には約1億3000万人の労働力人口のうち、1,238,490人の民間事業場の労働者、地方自治体及び州政府労働者が休業1日以上の業務災害又は業務疾病により被災したと推計している。又、同時期に、自営労働者、連邦政府労働者も含め、業務災害による死亡者は4,551人である。

全ての働く人々に安全・健康を 〜Safe Work , Safe Life〜

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