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各国情報・国際関係

Eurofound(生活労働条件改善欧州財団)の労働条件監視機関(European Working Conditions Observatory)から、オーストリア経済研究所(WIFO 別ウィンドウが開きます )が実施した「業務関連ストレスの危険に関する研究」についての報告

2013年3月29日

業務関連ストレスの危険に関する研究

仕事における心理社会的プレッシャーは、最近の職業人生の進展に伴いオーストリア及び他の欧州諸国においてもますます重要になってきている。高レベルのストレス、時間的圧迫などの健康影響は、労働条件のカギとなる要因になってきている。最近の研究においてはこれらの問題を強調するとともに仕事におけるストレスに関する事項の軽視の経済的影響が注目されるようになってきている。

背景

仕事における心理的ストレスとその結果についての研究が、2011年、オーストリア経済研究所(WIFO)により実施された。この研究は、複合的な実証分析に基づき、心理社会的職務重圧(psychosocial job strains)と健康影響の間の明らかなリンクを示している。さらに、研究において業務関連病気休暇(work-related sick leave)における仕事の心理社会的職務重圧の経済的影響を明らかにするとともに影響を受ける労働者の雇用適性(employability)についても明らかにしている。

この研究は、多くの国内及び国際的調査の二次分析を基本としている。当初のデータの多変量解析により、より包括的な実情を提供している。

この報告は、2つの国内調査に基づく結果に重点的に取り上げている: すなわち「オーストリア労働力調査」のうちの標本数19600の「労働災害及び業務関連健康問題」、及び標本数15,000の「オーストリア健康調査(2006/2007)」である。

 

時間的圧迫(Time pressure)と過重なストレス

当然のことながら、研究結果は時間的圧迫と過重なストレスがオーストリアの労働者に及ぼす最も重要な業務関連心理社会的要因であることを示し、回答者の30.2%が面接時にこのことに悩んでいると報告している。これに対して職場内のいじめと暴力は、それぞれ3.5%と1.3%であった。

労働時間の長短による男女間の差は見られなかった。時間的圧迫と過重なストレスについての報告の出現率(prevalence)は、男性及び女性の労働者のいずれにおいても週当たりの労働時間数に応じて高くなっている。

時間的圧迫に影響されることについての主観的認識は、労働者の教育レベルに応じて増加しており、高等教育レベルの者の40%超がこの影響があると報告している。

時間的圧迫と過重なストレスは特に雇用が増加している分野において広がってきている。医療及び社会福祉分野においては、回答者の45%がこのことについて報告しており、輸送、倉庫及び情報通信グループの職種においては、43%が報告している。このことは、未来志向型の分野における心理社会的職務重圧の雇用潜在力に対する特に重要な指針となっている。

また、多変量解析により年齢と時間的圧迫と過重ストレスに影響されることによるリスクとの間の相関関係が明らかになった。

50歳〜54歳の年齢階層においては、このリスクは15歳〜19歳の階層に比べて男性では42%、女性では50%高くなっている。大企業の女性労働者については、この影響を受けている者は労働者10人未満の労働者よりも62%高くなっている。男性労働者については、企業規模による違いは認められなかった。

男性女性ともに、心理社会的リスクと身体的健康リスクは、しばしば一緒に現れる。少なくとも1以上の心理社会的リスク要因に曝されていると報告した者は、非常に高い程度において1以上の身体的職務重圧(physical strains)に曝されている。

 

業務関連健康問題(Work-related health problems)

総体的に見て、女性労働者の12%、男性労働者の13%が前の年に経験した健康問題を職場の状態によると考えていた。この点に関して、年齢階層別の関係も明らかになった。若年労働者のわずか20%が彼らの健康問題を仕事に関連づけているのにたいして35歳〜39歳の年齢層が40%、55歳〜59歳の年齢層が50%である。この結果は、回答者の主観的認識を反映しており、健康問題は職業生活全体にわたる仕事による重圧の蓄積の影響であることを示している。

また、社会心理的職務重圧の発生を様々な健康問題に関連づけることにより心理社会的職務重圧の健康影響について詳細に検討することを試みた。

その結果、健康問題を持っている労働者のなかで少なくとも1つの職務重圧の影響を受けていると報告した者の比率は、特に高かった。

全労働人口の3分の1が少なくとも1つの心理社会的職務重圧の影響を受けているが、健康に問題があると報告した者のうちの(心理社会的職務重圧を受けている割合の)最小値は、40%であった。心理社会的職務重圧と筋骨格系疾患(musculoskeletal disease)の相関関係は、相対的に低かった(女性51.6%、断線58.1%)が、ストレス、抑鬱、不安(stress, depression and anxiety)の健康問題については高かった(女性82.6%、94.7%)。

心血管疾患、頭痛、疲労及び伝染疾患関係(cardiovascular diseases, headaches, fatigue and infectious diseases)に関しては、心理社会的職務重圧は平均値を超えていた。

上図用語の訳(上から):伝染性疾患、心血管疾患/問題、頭痛・過重圧・疲労、ストレス・抑鬱・不安、聴力(聴覚問題)、皮膚問題、呼吸または肺の問題、その他の健康問題、合計、男性、女性
図1:少なくとも1の職務重圧を抱えていると報告した者の業務関連健康問題の有所見率

資料出所:オーストリア経済研究所(WIFO)

多変量回帰解析により、職務重圧による疾病または健康問題の発生の可能性について検討した。男性労働者に関しては、疾病に罹患しまたは健康問題に関するリスクは、身体的職務重圧を受けている労働者はそうでない者よりも50%高かった。

同様に時間的圧迫及びいじめのような心理社会的職務重圧は、疾病及び健康問題のリスク増加との相関関係が49.3%と66.5%の間であった。

全体的に見て身体的または心理社会的職務重圧への暴露は、疾病のリスクを男性では50%、女性では80%高めていることが分かった。

研究は、多変量解析により心理社会的及び身体的な職務重圧と疾病及び健康問題の発生の可能性との間に相関関係があることが明らかになったと結論づけている。

 

様々な職業グループにおける影響

オーストリア健康調査に基づき、研究においては、

  • 不眠症の程度(frequency of insomnia)
  • 慢性的不安症または抑鬱症(chronic medical anxiety or depression)
  • 疲労消耗(frequency of dejection and exhaustion)
  • 負の感情(frequency of negative feeling)

により示される労働者の心理社会的健康状態に関する結果を提供している。また、研究結果において健康状態を回答者の労働形態に関連付けている。

不眠症については、研究は低熟練職の労働者に高い発生率となっていることを示した。特に低熟練のサービス型職種における女性労働者に、また夜間勤務及び交代勤務が多い工業分野における男性労働者において顕著である。また、教師も不眠症に大きく影響を受けている。

慢性的不安症または抑鬱症の影響は女性において5.5%、男性において2.4%であった。しかしながら、精神疾患をもつ労働者に対する極端に長期の病気休暇(平均37日)のためにこれらの状態の影響は有病率をはるかに超えるものがある。

ブルーカラー労働者は、抑鬱症に平均以上に影響されており、男性で3.3%、女性で10.2%であった。また、人とかかわりの多いサービス職種及び管理職の女性労働者が影響を受けており、また男性については非学術的教育職(non-academic teaching occupations)及び管理サービス職において影響を受けている。

職場におけるストレスの指標と考えられるアルコール摂取量について、教師グループの高い割合が危険レベルのアルコールを摂取していると報告している。研究結果は性と資格の間の興味深い違いを示した。アルコールの過剰摂取は、高学歴の男性教師に広がっており(30%)、また女性の非学術的教育職においても平均を超えている(19%)。

 

業務関連健康問題の経済的影響

研究においては、業務関連健康問題の経済的影響に特別の注意を払っている。仕事が原因のまたは仕事により悪化した健康問題を報告した者の半数以上(54%)が、前の年の間に病菌休暇でを取っている。病気休暇については、4日〜13日は16%、2週間〜1か月が16%、1か月超〜3か月が10%、3か月超〜6か月が4.5%であった。3日以下はわずか7%であった。

病気休暇は総計900万日であり、労働者1人当たり2.6日であった。

上図の用語の訳(上から下、左から右):平均病気休暇(日)、職務重圧に影響されない、1以上の心理社会的職務重圧、1以上の身体的職務重圧、心理社会的職務重圧と身体的職務重圧
図2:職務圧迫(job pressure)による病気休暇の長さ

資料出所:オーストリア経済研究所(WIFO)

職務重圧に影響されない労働者の病気休取得は0.8日、1以上の心理社会的職務重圧による病気休暇は3.3日、1以上の身体的職務重圧による病気休暇は2.6日そして身体的心理社会的職務重圧による病気休暇は5.9日であった。

多変量解析により、以上のことを確認した。性別、年齢階層別、教育レベル、分野別に詳細に分解検討しても、職務重圧と病気休暇の可能性との間には明確な相関がある。

1以上の身体的職務重圧及び心理社会的職務重圧の暴露課下にある労働者については、当該週に病気であった可能性は、職務重圧下にない労働者よりも2.5倍高くなっている。

 

注釈

研究では健康問題と職場の要因との間の因果関係を確立することは困難であったが、複合的な実証解析に基づき心理社会的職務重圧と関連する健康問題について印象深い結果を提供している。

研究の結果は、職業人生における心理社会的重圧の重要性が将来ともに増えていくことが予想しており、これらの重圧にともなう業務関連健康問題は、単に個人の健康問題だけでなく、重大な経済的影響を伴うことを明らかにしている。現下の経済情勢において、このことは行動を起こすための重要なとなる論点である。

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