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各国情報・国際関係

Eurofound(生活労働条件改善欧州財団)の労働条件監視機関(European Working Conditions Observatory 別ウィンドウが開きます )から、ドイツにおける「業務関連メンタルストレスに関する研究と政策論議」についての報告

2013年3月29日

業務関連メンタルストレスに関する研究と政策論議

ドイツの労働者に関する研究によれば、変形労働は労働者のストレスの度合い(levels)に影響を及ぼしているとされる。業務関連ストレスを取り扱うことについての労働安全衛生法改正の政策論議の過程においてこれらの研究が実施された。健康基金「AOK」による欠勤に関する年次報告によれば、就業時間と配置の柔軟化(flexibilisation)は精神的歪(Mental strain)と大きく関係していることを示唆する証拠を提供している。

背景

欠勤に関する年次報告書(Annual Absenteeism Report)は、労働者のストレスと健康リスクの度合いに関する変形労働制(flexible working)の影響に注目している。2012年の調査研究報告書は、健康基金の科学研究所(Wido)とビーレフェルト大学の共同編集により刊行された。労働安全衛生法の政策論議の過程でこの研究結果が発行されたものである。ドイツ連邦の4つの州による構想(Initiative)は、労働安全衛生法が業務関連の精神的歪み(mental strains)を取り扱うことができるように改正することを提案している。

 

変形労働制の健康への影響に係る調査

同研究所による調査結果は、変形労働が業務関連の精神的歪みに大きく影響していることを示している。この調査は、フレックス労働時間及びフレックス就業形態並びにこれらによる仕事と生活の不安定に注目している。業種横断的に抽出した2002人の労働者に対しての電話調査を2011年に実施したものであり、結果は次の通りである。

  • 筋骨格系苦痛に感じている:26.4%
  • 疲労を感じる:20.8%
  • 余暇の時間においても心を休めることができない:20.1%
  • 退屈で疲れる(uninspired and burned out):16.1%
  • 不眠症になった:15.3%
  • 仕事中の怒りに悩んでいる:15.1%

調査では、夜間労働、交代勤務または一般的な超過勤務を伝統的な変形労働と定義し、フレック労働時間と待機業務などの新たな労働形態を明確に区別している。

新たな労働形態についての調査結果は次表に示す。

表:変形労働の新たな形態

変形労働形態回答率(n=1,994)
フレックスタイム22.67%
就業時間計算59.34%
直前の4週間・・・・
就業時間を労働者が決定36.56%
家庭へ仕事を持って帰る11.43%
2以上の場所での仕事13.79%
就業時間以外に電話またはメールでの連絡33.80%
呼び出し待機業務48.04%
会社は休暇取得の機会を与えているか
育児58.07%
家族の世話32.75%
有給休暇29.64%

表は新たな形態の変形労働のもとで働く回答者の%を示す

福祉に関しての変形労働の影響を調べるための要因分析が実施された。筋骨格系苦痛のようなすべての健康への歪みを示す回答事項は、精神的歪みとしてまとめられている。業務関連のストレス、時間的圧迫(time pressure)、過重労働、管理的事項に関する回答事項は、仕事上の歪み(job strain)を分類される。仕事に対する満足、雇用の安定、健康、余暇、家庭生活に関する回答事項は、全体的満足(overall satisfaction)に分類される。

2変量及び多変量解析により変形労働制は精神的歪み、仕事上の歪み及び全体的満足をそれぞれ影響していることが明らかにされた。しかし、これら3つの要因はすべて下記事項によりマイナスの影響を受ける。

  • 時間外労働の形態
  • 労働時間の決定に対する発言権
  • 通勤時間と距離

精神的歪みは、仕事と生活の不安定に最も大きく影響される。介護休暇をとる機会がないことは精神的健康に最悪の影響を与え、次いで余暇時間、通勤時間及び時間外労働となっている。

総体的にみて伝統的変形労働は、フレックスタイムの欠如、労働時間の決定についての発言力の少なさ、仕事を家に持って帰ること及び余暇時間中の電話またはメールによる連絡などの精神的歪みの原因と見られる。

報告書は、健康へのリスクを減らすためには、雇用者は時間外労働の要求を避け、遠隔通勤を避けるために在宅勤務を促進することを提案している。また、労働者に労働時間の決定についてより多くの発言権を与えることが健康問題を防止するために必要であるとみられている。

 

労働安全衛生法に関する議論

欠勤に関する年次報告書は、労働安全衛生法に関する国民的議論が行われている時期に刊行されたので特別な関心を引き起こした。

欧州社会パートナーの業務関連ストレスに関する枠組み協定における評価報告によれば、EU13か国とノルウェイ及びアイスランドでは法令において心理社会的リスクを取り扱っている。

しかしながら、ドイツの労働安全衛生法(1996年)は、精神的ハザードに関して明確な言及はしていない。そのかわり、これらのことは労働監督官及び産業医の概念と教育を通じて、またリスクアセスメントの実施指針及び管理者と被雇用者の教育訓練において取り扱われている。

2011年に業務関連負荷に対する健康確保と促進についての情報シートがドイツ労働安全衛生戦略5か年計画(2013年〜2018年)に組み込まれた。今後の活動は、各種安全衛生資格、健康リスクアセスメントの改善、好事例の周知普及、会社のおける設計計画に関連付けられることとなる。

 

構想に対する批判

しかしながら、5か年計画は労働組合及び反対派からは不十分と見られている。

2012年、緑の党からの独連邦政府内閣への書簡は、精神的歪みに対するリスクアセスメントを実施している企業は全体の20%のみであることを明らかにしている。この数値は現在の5か年計画の評価のための6,500社に対する調査結果によるものである。

2012年7月、ドイツ金属工業労働組合は反ストレス規則に関する報告書において、業務関連ストレスのリスクアセスメントの実施の法制化を要請した。2012年秋には、4連邦州が共同して連邦州議会にこれらについての労働安全衛生法改正の法案提出を行った。これら4州においては、労働安全衛生法に精神的歪みの健康リスクの解析についての特定の規定を含めるべきであるとし、同法において業務組織、労働者の参加及び制裁規定を取り扱うべきであるとしている。2012年12月現在、これらは進行中である。

 

注釈

現在の公開(国民的)議論に対して、健康基金科学研究所の研究は労働時間と企業内を超えた時間と空間に業務関連ストレスの調査範囲を広げるべきことを強調している。このことが5か年計画により取り扱われるかどうか、政府機関等が具体的な提案をするかどうかも未定である。一方、労働安全衛生法の改正構想は継続されるものと期待されている。

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