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2013年5月7日
北欧のデータに基づく研究(Dreyer et al, 1997)のレポートを用いて、異なる職業集団でのがんの発生率(incidence)について新しい観点から解明した。その結果、肺がん、中皮腫、鼻腔及び副鼻腔がん、膀胱がんと喉頭がんの発生率が、建設業及び技能職の間に特に上昇することが分った。また、上昇リスクは、製造業とサービス業でのいくつかの職業でもみられた。男性の間では、配管工が特に、中皮腫のリスクを増加させていた。女性は、機械及び乗客貨物輸送会社(motor carriers)だけでなく、女性の塗装及び壁紙を貼る労働者に、特に、肺がんリスクの増加を示している
原資料の題名と所在
http://www.eurofound.europa.eu/ewco/2013/02/NO1302029I.htm
EWCO:(European Working Conditions Observatory:労働条件監視機関)
http://www.eurofound.europa.eu/ewco/about.htm
レポートは、ノルウェーの異なる職業集団でのがんの発生率(incidence)について新しい観点から解明した。レポート"職業とがん"は、肺がんを含む特定の種類のがんが建設業、製造業及びサービス業でのいくつかの仕事に蔓延していることを示している。
女性の間では、肺がんの高リスクが塗装及び壁紙を貼る労働者に見られた。乳がんの増加するリスクは、高学歴の資格を必要としている仕事に従事する女性に見られた。
がんは、かなり一般的な疾患であり、男性の33%、女性の27%が75歳前にがんを発症する全体的に見れば生涯リスクである。2007年には、26,000の新しい症例がノルウェーで報告され、その内、14,000の症例が男性であった。
いくつかの研究は、作業に関連するがんの推定を試みており、北欧のデータに基づく研究(Dreyer et al, 1997)では、2000年に、北欧の国での男性ですべてのがんの約3%、女性で0.1%未満が職域での既知の発がん性物質に起因すると推定されている。
職業がんは、最も一般的に、職場での化学物質へのばく露に起因しているが、それはまた、あるタイプの放射線のような作業環境における他の因子へのばく露によることもある。
レポート"職業とがん(スウェーデン語、657Kb PDF)"でのばく露とがん発生率に関する情報(Eggen, T., et al, 2010)は、主に職業がん研究プロジェクト(the Nordic Occupational Cancer Study (NOCCA) project)から得た。研究は、北欧地域での従業員の間のがんの発生率と発がん物質へのばく露を調査している。
アスベスト、シリカ、ベンゼン、クロム、ニッケル、ホルムアルデヒド、木粉及び電離放射線は、人に対して発がん性であることが示されており、ノルウェーの作業場所でいくらかのばく露がある。多環式芳香族炭化水素類(PAHs)、ディーゼル排ガス、いくつかの塩化炭化水素、夜勤作業は、おそらく人に発がん性があるとみなされている。
これらの因子へのばく露は、いくつかの職場で調査された。プロジェクトからのデータは、Kauppinen et al (2009)によって記載された方法に基づき、国のばく露レベルを計算するために使用された。ばく露は、ばく露された者の人数のおよその推定を提供するために、種々の職業での従業員の数によって集計された。職業は、北欧の職業分類(NYK-1958)に従ってコード化された。
がんの多くの形態が職業ばく露とリンクさせることができるが、相関関係がどれくらい良く文書で証明することができるかで大差がある。このレポートでの重点は、症例のかなりの部分が職業ばく露に起因しているがんに置かれた。これは、肺がん(18%)、中皮腫(胸膜と腹膜(83%))、鼻腔及び副鼻腔がん(30%)、膀胱がん(2%)と喉頭がん(6%)が含まれている。
このレポートで調査された職業がんは、建設労働者と技能職(craftsman)の間で一般的であるが、しかしまた、製造業、サービス業、第一次産業及び運送業(shipping)での職業も多少の程度(varying degrees)存在している。調査からのデータはまた、一般的にこれらの職業の労働者が他の職業カテゴリーでの労働者と比較して、一つまたはいくつかの因子へより一般的にばく露されていると思われる。
肺がん、中皮腫、鼻腔及び副鼻腔がん、膀胱がんと喉頭がんの発生率が、建設業及び技能職の間に特に上昇することが分った。また、上昇リスクは、製造業とサービス業でのいくつかの職業でもみられた。男性の間では、配管工が特に、中皮腫のリスクを増加させていた。
女性は、伝統的に、職業選択(career choices)と労働力への参加の低さ(lower labour force participation)によるジェンダーの社会規範(gendered norms)により、職業性ばく露が少なかった。
たとえそうだとしても、NOCCA研究は、機械及び乗客貨物輸送会社(motor carriers)だけでなく、女性の塗装及び壁紙を貼る労働者に、一般集団に比べて、特に、肺がんリスクの増加を示している。しかし、これらの調査結果に関連していくらかの不確実性がある。
中皮腫のリスク増加は、女性専門職(female professionals)の間で、一般には流布していないが、女性での乳がんのリスク増加は、伝統的に高等教育資格を有する人々が従事する種々の仕事でみられる。例えば、行政運営(administration and management)及び学術研究機関(academia)での女性のマネージャで増加している。このリスク増加は、主にこれらの女性の間での出産パターンによって説明された。
がんの原因となる因子についての多くの知識(increased knowledge)は、当局と事業者が危険物質に対して労働者を保護するためのいくつかの対策を始めるように導いた。アスベストの使用は禁止されており、シリカ及びベンゼンのような物質の使用は、強く規制されている。このような規制は、ノルウェーでの職業ばく露の減少につながっているが、特に、建設業、技能及び製造業の一部の労働者では、まだがんを誘発するような因子にばく露されている。