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各国情報・国際関係

HSE:潜水業務における健康と安全に係る2010年までの対応戦略

2015年3月30日

要旨

この文書は、潜水業務に係る対応戦略の概要として、HSE (Health and Safety Executive: 英国安全衛生庁) 職員およびすべての関係者に提供されるものである。潜水に係る対応戦略は、HSCペーパー「英国における職場の健康および安全に係る2010年以降の対応戦略」* で概説されており、より広い観点から、その任務および目標を映し出している。なお、潜水の公認実施準則 (Approved Codes of Practice: ACOPs) は、関係業界との協議を経て改訂され、2014年12月8日に発効した。

* HSC:
Health and Safety Commission
http://www.hse.gov.uk/aboutus/meetings/hscarchive/2003/091203/c145a.pdf

原資料の題名と所在

-
All of the diving Approved Codes of Practice (ACOPs) have been revised following industry consultation, they came into force on 8 December 2014.:
http://www.hse.gov.uk/diving/acop.htm
潜水に係る公認実施準則 (Approved Codes of Practice: ACOPs) は、関係業界との協議を経て改訂され、2014年12月8日に発効した。
-
HSE Diving Health and Safety Strategy to 2010:
http://www.hse.gov.uk/diving/divingstrat2010.pdf

HSE:潜水業務における健康と安全に係る2010年までの対応戦略

この文書は、潜水業務に係る対応戦略の概要として、HSE (Health and Safety Executive: 英国安全衛生庁) 職員およびすべての関係者に提供されるものである。潜水に係る対応戦略は、HSCペーパー「英国における職場の健康および安全に係る2010年以降の対応戦略」* で概説されており、より広い観点から、その任務および目標を映し出している。

HSEの潜水業務担当部門は、危険施設総局沖合部門 (the Hazardous Installations Directorate Offshore Division) の一部であり、かつ、沖合石油・ガス産業 (offshore oil and gas industry) の操業を支援する潜水業務は、HSEの「沖合の健康と安全戦略2010年」の原則に含まれる。また、この文書は、沖合部門内におけるHSEの人的・財的等のリソースやシステムの管理に対応している。

目次:

  • HSE:潜水業務における健康と安全に係る2010年までの対応戦略
  • 潜水業界の背景
  • 点検および調査
  • 施行
  • 助言と情報
  • 規格開発
  • 技術研究
  • 潜水業務従事者(diver)の訓練と認定
  • まとめ

潜水業界の背景

潜水業務は、沖合石油・ガス産業を支える「deep saturation diving」から、プロフェッショナルなインストラクターによるレクリエーション教育まで広範囲にわたる。潜水業界は、水に潜って働く必要がある数々の職種の一つとみなすことができる。

レクリエーション部門を除くと、潜水とは原則として水中に潜って職場に辿りつく方法を指す。その部門は、一般的に、潜水業務規則(DWR97)を支援しているACOPsとともに、潜水業務に関するHSEの資格認定リストにある業務分類にも従っている。

これら部門は次のとおりである:

  • 沖合
  • 内陸/沿海
  • 科学的/考古学的
  • メディア
  • レクリエーション
  • 警察

上記の各部門はそれぞれ共有部分がないわけでなく、部門どうしの活動が広範囲に重なり得る。例えば、内陸/沿海部門は、主要な建設現場の支援に止まらず、船舶、下水道、さらにはスイミングプールの検査や修復のための潜水も含む。

危険に晒されている対象人員は、およそ53,000人と推定される。この数字は、現在、身体検査を義務づけられている約5,000人の商業もしくは営利事業に従事するdiver、約8,000の軍人(訓練の一環としての職場におけるレクリエーションとしての潜水を含む)、そして、毎年、なにかしら有料の講習を受ける40,000人を超える一般人から構成される。

潜水は、危険な職業であると多くの人々が認識しており、「高い危険性」があるとHSEは考えている。

沖合および内陸/沿海部門の潜水における死亡事故率は、10万人あたり20〜40人の範囲が通常であり、建設業や農業に比べかなり高いといえよう。就業中の潜水における総死亡事故率は、10万人あたり6〜7人と推定される。

潜水業界は、地理的な場所と活動の種類および規模の面の多様性のため、HSEに多くの課題を提起している。潜水業務従事者 (contractor) は、通常彼らを使用する石油会社をしのぐ規模の国際海洋会社と契約している者から、自宅を拠点に活動しているレクリエーション活動の講師として契約している者までにわたっている。

潜水業界に向けるHSEの継続的な目標は次のとおりである:

  • 潜水業界全部門での致命的および重大な事故数を、大幅かつ持続的に削減することを確実とすること、
  • 業務におけるdiverの健康および安全を脅かすリスクを軽減するため、業界全部門と協働すること、
  • 業務でなくレクリエーションとしての潜水も含め、業界全部門での内部部門どおし、また部門を越えての連携を奨励し、ベストプラクティス (best practice) を開発すること。

HSEの潜水担当部門は、潜水業界内での健康と安全性の向上に、これまで幅広くアプローチしており今後も継続するつもりであるが、リスクに基づく優先順位付けにさらなる焦点を絞っていくつもりである。すなわち、人的・財政等リソースを、点検、調査、施行、助言、規格および技術研究等、広範囲にわたり、かかる活動に割り当てるつもりである。

HSEは、英国を拠点とする訓練校の認可、海外の資格の承認とdiver資格データベースの保守管理を通じて、diverの訓練と認定に今後も関与していく所存である。

点検および調査

HSEの潜水担当部門の点検と調査活動は、以下を含む:

  • ダイブスポットへの点検訪問 (事前通知もしくは予告なし)、
  • 潜水業務契約者の拠点や顧客企業の点検、
  • 事件・事故、苦情の調査、
  • 沖合安全の事例での潜水状況の評価。

点検への取り組みは、少なくとも毎年見直されている優先順位により、一層リスクの高い活動や部門に向けられる。また、潜水点検チームは、現場の知識と経験に基づいて、その区域内の検査プログラムの優先順位を決定する。

点検プログラムの重要な部分として、特に、マネージメントシステム、とりわけリスク領域がどのように評価され、制御され、潜水計画がどのように立てられているかについて点検することになろう。必要に応じて、検査官は正式な強制措置を取る場合もある。

施行
潜水検査官は、HSC施行管理モデル (Enforcement Management Model: EMM)という、検査官がHSCの施行方針声明 (Enforcement Policy Statement: EPS) に沿った公正かつ一貫性のある施行措置の意思決定を行うことを確保するフレームワークを採用する。

EPSは、健康と安全法規の違反に応じて、どのような施行措置をとるべきかについて決定するとき、検査官が適用すべき原則を定めている。施行措置は、健康および安全のリスクと違反の深刻さに比例させることとしている。

HSEは、潜水業務に適用される法令を、所管している他の規制当局と密接に連携している。海事沿岸警備庁や地方自治体などである。HSEの潜水検査官は、他の規制当局へ専門家としての助言や支援を提供する場合もある。

助言と情報

助言と情報の提供は、従来どおりHSEの潜水担当部門にとって主要な活動となる。業界全部門にわたって有益な実践活動を推進するとともに、いかにして法律を遵守するかに関して行う、義務保有者(duty holders)への助言を含む。

この分野でのHSEのより幅広いアプローチに加え、業界の作業部会、事業者団体や他の代表機関を通して交流を図ることで、助言と情報の提供はさらに広めうる。一方で、HSEは、リーフレット、情報シート、ビデオやDVDを含め、適宜ガイドラインの作成を続けるであろう。

HSEは、適宜、潜水関連の見本市に参加するなどして、関係者に対して助言を与えるとともに、情報リーフレットやその他メディアを配布する。事件・事故等に関連する統計を含む情報は、HSEのウェブサイトを通じて入手がさらに可能となっている。事故の傾向は強調され、点検・助言・施行等については必要に応じて適宜焦点が絞られていく。この取組の一環として、HSEは、危険発生状況と軽微な事故の報告率を高めるよう努めている。

規格開発

HSEは、diverの健康および安全、福祉を維持・向上させるため、英国、欧州や国際社会の標準とガイドラインの開発および支援に引き続き貢献していく。最近・現在の活動は、自蔵式リブリーザー (self-contained rebreathers)、送気式潜水機器 (surface-supplied diving equipment)、潜水服 (diving suits) やレクリエーションの際の業務のための訓練計画に関する基準開発などがある。

技術研究

HSEは、近年、多種多様な潜水関連の研究プロジェクトを委託している。潜水が及ぼす長期的な健康面への影響、潜水機器の性能と信頼性および減圧手順のモデリングなど広範囲にわたる。
研究プロジェクトは、将来、特定の問題もしくはHSEのより広範な戦略的計画への支援に対して明確な必要性が生じた場合に、その活用について考察される。

潜水業務従事者(diver)の訓練と認定

HSEの潜水担当部門の活動において重要なことに、英国の潜水訓練所の認可や海外および他の潜水資格の承認がある。世界共通の潜水能力を継続的に発展させることを確実にするため、欧州および国際政府の代表と一丸となって、diverのためのHSEの能力規格の維持、見直しなどを行っている。
また、HSEの潜水事業戦略チームは、EU加盟国潜水能力基準の見直し、およびEU理事会指令92/51/EECによる英国窓口として、そのような能力を承認することも担当している。

まとめ

潜水業務は、きわめて危険性の高い職種ではあるが、計画性をもってリスクを適切に管理することで安全に就業することが可能である。HSEは、事故率を削減し、関係するすべての人々の健康と安全を向上するために、業界全部門と引き続き協働していく。
HSEの潜水担当部門の特別検査官は、正式な点検と調査から助言や情報の提供に至るまで、さまざまな形で介入していくことを継続するつもりである。また、規格開発と技術研究を支援するため、人的・財政等リソースも適宜投入していくつもりである。

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