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調査・研究

調査研究概要

飲食店の安全衛生活動好事例集

飲食店における安全衛生活動について8企業(おでん店、うどん店、そば店・喫茶店他、コーヒーチェーン店、総合レストランチェーン、ファーストフード店、ファミリーレストラン他、社員食堂他)に直接お話をお伺いし、事例集としてまとめたもの。

飲食店の労働災害の状況

飲食店における休業4日以上の労働災害による死傷者数は、ここ数年4,000人を超えている(図1)。

平成18年3.896人 平成19年4,055人 平成20年4,055人 平成21年4,015人 平成22年4,021人 平成23年4,170人

図1 飲食店での労働災害による死傷者数の推移(休業4 日以上)
(労働者死傷病報告:厚生労働省)(中災防HP 労働災害分析データより)

労働災害の状況を事故の型別でみると、「転倒」が最も多く、次いで「切れ・こすれ」、「高温・低温の物との接触」となっている(図2、図3)。

転倒28% 切れ・こすれ26% 高温・低温の物との接触15% 動作の反動・無理な動作8% 墜落・転倒6% その他17%

図2 事故の型別労働災害発生状況
(労働者死傷病報告:厚生労働省) (円グラフは6年分(平成18~23年)のデータより作成。中災防HP 労働災害分析データより)

図3 飲食店に多い災害事例

なお、厚生労働省では平成24年11月には「飲食店における労働災害防止対策の徹底について」(基安安発1122第3号)を発出し、特に注意を要すべき事故の型として、「切れ・こすれ」災害について分析結果とその留意点を示している。

また、厚生労働省が平成25年度を初年度として策定した第12次労働災害防止計画においても、飲食店は労働災害件数を減少させるための重点業種として上げられており、労働災害による休業4日以上の死傷者の数を5年間で20%以上減少させることが目標に掲げられている。

安全衛生管理体制の事例

  • 安全衛生専門の担当者を配置し、各店舗の労働災害のデータ収集を継続している。
  • 労働組合の代表で衛生委員会に出席していた従業員がその後、店舗の中核メンバーになることで店舗の安全衛生への意識が向上する効果がでている。
  • 安全衛生の情報を定期的に入手し、他者の事例を学んだりしながら季節ごとに実施している安全衛生教育に活かしている。

事故の型別対策事例

転倒災害の対策事例

  • 駅の構内という限られた空間の店舗であるが、床を滑りにくいタイルに張り替えるなど、本質的な安全を追求することを優先している。
  • 安全衛生担当者が描いたイラストや社内で撮影した写真を入れたリーフレットやマニュアルを作成している。

切れ・こすれ災害の対策事例

  • 店舗で使用しているバースプーンで指を刺してしまったことがあり、それ以降フォークの部分を丸めたものに全て切り替えた。
  • 「野菜を切ろうとして、手を切った」というような労働災害の報告は、「カウンターでレモンを切っている際に、誤って包丁で左薬指を切った」と内容をできるだけ具体的に書かせ、再発防止につなげている。

やけど災害の対策事例

  • 配膳時の衝突防止のため、店舗内で通路が死角になっているところには、カーブミラーを取り付けている。
  • 狭い厨房内で作業者同士がすれ違う場合は、右側に寄るというルールで、ぶつからないようにしている。

リスクアセスメントの事例

  • けがをしてからの対策だけでなく、自主的で先取り型の安全衛生対策の一つとして各業界でも展開しているリスクアセスメントにこれから取り組む予定である。
  • 工場などの施設側がすでにリスクアセスメントを展開している場合、そこにモデル事業所を設け、できるところから取り組んでいく方法などを考えている。

健康づくりの対策事例

  • 本社では毎日午後3時に、オリジナルのリフレッシュ体操を行っている。

コミュニケーション、メンタルヘルスの事例

  • 年に2回は店主と従業員が個人面談をする機会を設けている。
  • アルバイト店員が多い店舗の社員にとって数ヵ月に一度ある集合研修は、社員同士が情報交換したりするコミュニケーションを図る重要な機会になっている。