ゼロ災運動・KY(危険予知)

ゼロ災運動に取り組む事業場紹介

東京地下鉄株式会社工務部

労働災害の撲滅を目指して

今回紹介するのは、都心の大動脈となっている東京地下鉄株式会社(昨年4月に帝都高速度交通営団より名称変更。通称東京メトロ)のゼロ災運動の取り組みです。

東京地下鉄株式会社の各部、特に車両・電気・工務は業務の特性を活かした独自のゼロ災活動を行っています。本来なら各部の活動を紹介したいのですが、今回は工務部のゼロ災活動を紹介します。

社員の意識改革

東京地下鉄株式会社工務部は、線路・構造物などの維持補修・改良が主な業務で、特に列車の走行場所付近での業務も多く危険と隣り合わせの仕事です。

工務部では平成6・7年と続けて死亡災害が発生したため、今までの災害防止対策の根本的な見直しを図り、平成7年後半から災害ゼロを目指す手法として危険予知訓練(KYT)を取り入れました。

平成7年以降のゼロ災運動研修会の参加者数を見てもその意気込みが伝わってきます。

  • トップセミナー(管理者)19名
  • プログラム研究会(管理・監督者)86名
  • トレーナー研修会(現場推進者)146名
  • 部内研修会(現業社員)312名

延べ563名の工務部社員が受講しており、現業社員は何らかのかたちでKYT研修にかかわり、部をあげての「災害防止」に対する意気込みが感じられます。

その結果、ゼロ災運動を導入後は触車事故災害などによる重大災害は見られなくなりました(残念ながら今年度は休業災害が1件発生してしまいました)。

全員参加のKYT

工務部の活動を振り返ってみますと、昭和61年 災害・事故防止に関する手引き(工務・土木編)

平成9年 「あぶない体験in工務!!」・「KYTイラストシート集」(写真1)

平成11年 「絵で見る触車防止マニュアル」(写真2)

などを作成し社内教育に活かすなど、日頃から日常業務に合わせた活動を行っています。

(写真1)
写真1

(写真2)
写真2

年間の主な活動としては、7月の安全推進運動期間前に社員の意識向上に向け「セフティー工務(工務部安全の日)」を設定、また12月は年末年始の輸送等に関する安全総点検および無災害運動期間中に無事故・無災害の遂行を願い「安全大会(KYT大会)」を行うなど、関係社員の資質の向上を図っています(写真3・4)。

(写真3)
写真3

(写真4)
写真4

特に安全大会はユニークで、普段職場で行っているKYTの手法を全職場・本社管理者・関連会社代表などが一緒の舞台に上がり、手法の出来を競うもので、その年によって手法のテーマも変えて、毎年新鮮な大会となっています。

大会の一番の特色は手法の出来の優劣ではなく、250名余りの社員が集まり「年末年始の輸送の安全と無災害」を確認し合う和気あいあいの雰囲気です。

この大会で実施されたユニークな手法は第61回全国産業安全衛生大会・ゼロ災運動分科会に「KYTによる鉄道保守現業事故・災害防止」の題目で事例が発表され、同業社間で注目されました。

工務部の危険予知訓練は図のような流れになっています。

図:KYT教育フォローチャート
図:KYT教育フォローチャート

このような前向きな活動に対して中災防は,平成15年第62回全国産業安全衛生大会において、ゼロ災運動30周年記念感謝状を贈り、今後もより一層ゼロ災運動を推進していただけるようお願いした次第です。