ゼロ災運動・KY(危険予知)

ゼロ災運動に取り組む事業場紹介

日本バイリーン株式会社東京工場

~トップ・部課長が率先する全員参加の活動~

日本バイリーン株式会社は、年間20万kmに近い生産量をこなす不織布の国内専業メーカーです。茨城県にある東京工場では常時400人を越える従業員が三交替体制の下、安全第一をモットーに、日々生産活動を展開しています。今回は同工場における、ゼロ災運動の理念を盛り込んだ基本方針を定め(写真1)、「トップをはじめとする部課長の役割・行動」と「活動の基本5項目の実行」をメインとした安全衛生活動を紹介します。

写真1 安全目標掲示

写真1 安全目標掲示

写真2 ベルパトロール

写真2 ベルパトロール

部課長の役割と行動

多くの仲間を抱える工場で、ゼロ災運動をはじめとした活動を進める場合の最大の課題は「いかにして全員参加の活動とさせるか」であり、「いかにして多くの仲間をその気にさせるか」がポイントです。部下は常に上司の後ろ姿を見ていますから、最も重要な点は「トップの決意・熱意」であり、同じく「上司である部課長の姿勢であり行動」です。

メーカーは現場が命ですから、同工場では管理・監督者に、常に現場を回ることを強く指導しています。加えて、全部課長が順番で毎日午前と午後、「手振りの鐘」を持って現場を一巡する「ベルパトロール」を行っています(写真2)。ベルパトロールには鐘を鳴らすことによる「安全喚起」の意味がありますが、それ以上にデスクワークに偏りがちな部課長が現場を見ることが重要です。ものづくりをする工場では、現場に行き現物・現実を直視することが基本です。現場に足しげく通うことで、安全喚起をしながら仲間との意思の疎通が図れ、「人の動きや製品、設備、環境などの実態」が見えるとともに、問題点も解決の糸口もとらえられます。

加えて、部課長も時々、現場の3S(整理・整頓・清掃)を行い、汗を流しての改善活動を進めています。泥臭い活動といえますが、安全をはじめとしたすべてのものづくりの活動が、部課長も交えた全員参加の活動であることを、同じ働く仲間に伝える重要な意味合いを持つものと考えます。

活動の基本5項目

部課長の役割と行動に加え、工場として基本的に進めているゼロ災運動関連活動は、

  1. 「3S」の徹底:3Sがすべての基本であり出発点
  2. 「危険を予知・感知して、指差し呼称」を徹底:特に目・耳・鼻を働かせ、現場で危険を予知・感知する
  3. 「ゼロ災サークル活動」の推進
  4. 「目で見る管理・表示」活動の推進
  5. 「設備の危険度診断」:新規および改造設備の導入前のリスク分析

であり、この中で3年前から進めている「目で見る管理・表示」の活動を紹介します。

同工場には永年にわたりつくり上げてきた種々の作業標準や手順書類がありますが、大半が文章主体の記述で理解しづらく、使いにくい内容となっていました。したがって、新しい手法を駆使し、文字を減らし写真やイラスト、フロー図を用い、要点部分のみを「誰でもすぐに理解でき、使いやすい」 ビジュアル化した内容にと改善を進めているのがこの「目で見る管理・表示」の活動であり、極めて実践的なものといえます(図)。この活動は安全衛生面だけでなく、ものづくりにおける主要な管理ポイントや、設備や装置の操作方法、保守保全の仕方、さらには品質面の重要な管理ポイントや注意点など、他のすべての分野でも極めて有効な活動として、工場内で全面展開を図っています。ちなみに、過去3年間に作成した管理・表示のシートは2,500枚以上に上っています。

図 「目で見る管理・表示」の例

図 「目で見る管理手順」
図 「目で見る管理手順」

※クリックすると拡大します

基本は3S

以上がゼロ災運動の目玉となっている活動ですが、活動の基本5項目の第1に掲げた「3S」は特に、工場部門におけるすべての活動の起点であり積極的に展開しています。具体的には、各生産ラインと周辺の3S、すなわち、原材料や副資材、製品・半製品の置場や通路の明確化・区画化を徹底的に進めています。 加えて環境対策にも力を入れ、暑さ寒さ対策、給換気、臭気対策のほか、現場事務所や休憩所、ロッカー室、食堂や洗面所など、過去にあまり積極的に進めてこなかった場所も含め環境改善を進めることで、工場内が極めてきれいで良好な状態となり、整理・整頓の進んだ働きやすい工場に変わってきました。

これにより、従業員のモチベーションも大きく上がり、安全面の成果のみならず、生産性も大きく向上し、客先からのクレーム・苦情も大幅な減少傾向にあり、活動の成果を喜ぶとともに、基本的な進め方に間違いのないことに自信を深めています。