ゼロ災運動・KY(危険予知)

ゼロ災運動に取り組む事業場紹介

上野キヤノンマテリアル株式会社

ゼロ災運動とOSHMSとの一体的運用 ~魅力ある職場づくりを目指して~

上野キヤノンマテリアル株式会社は、OSHMS(労働安全衛生マネジメントシステム)を導入するに当たって、ゼロ災運動を推進することが不可欠であるとの考えにもとづき、この一体的運用を精力的に進めています。

同社は、三重県北西部の忍者の里、松尾芭蕉の故郷として知られる伊賀市にあり、京都、奈良、 大阪へはそれぞれ1時間ほどで行ける距離に位置しています。 複写機やプリンタに欠かせないトナーを生産しており、 地域に愛されるしっかりしたものづくりカンパニーの実現に向け、社員一丸となって取り組んでいます。

安全衛生活動推進上の課題とOSHMSの導入

2002年、キヤノン株式会社からの分社独立を機に従来からの安全衛生活動をさらに加速させ、 (1)部門・職場単位における巡視の徹底、 (2)トップ自らの確認による新規機械・装置導入時の稼働前承認、 (3)防災総点検など様々な活動などを行ってきました。 しかし、システムとして職場の中に定着するに至らず、結果労働災害は減少傾向にあるものの、 毎年数件の労働災害が発生しています。危険の芽が潜んでいることを認識し、安全衛生活動を変革することが必要でした。

このような状況のなか、本社主導のもと、2003年よりOSHMSを導入し、2004年度から本格的な活動に入りました。同年7月には、3日間にわたる中災防のJISHA安全衛生評価サービスを受け、一定水準以上の評価は得たものの、強みと弱みが顕在化したため、会社のテーマとして、ライン化の徹底による安全衛生意識の変革が掲げられました。

ゼロ災運動との出会い

同社の安全衛生スタッフに求められたテーマはライン化徹底に向けた意識改革の手法であり、その模索に苦労しているなか、中災防評価時のアドバイス事項である「ゼロ災害全員参加運動プログラム研究会」に、製造部長とともに安全衛生スタッフが参加しました。研修を受講している中で“意識改革の手法はゼロ災運動の導入!”というスタッフの思いは確信に変わりました。

担当コーディネーターが事情を伺い、「私どもの会社でゼロ災運動をすぐに導入できるでしょうか?」との問いかけに「できますとも、それはあなたの意志次第です」とお答えしたのもスタッフの大きな励みになったそうです。一緒に参加した製造部長も同じ考えであり、早速翌週トップにビデオを見せ「ゼロ災運動は人づくりです。職場づくりです。ぜひやらせてください!」ともちかけたところ、トップも心よく承諾してくれました。

ゼロ災運動の導入

中災防教育推進部のコーディネーターを講師として、 4月に事業場内で2回のゼロ災運動研修を実施し、構内協力会社管理者、職制・職場安全衛生委員が参加しました。5月の全体朝礼では、トップ自ら社員全員に説明を行い、全員唱和をもってキックオフが行われました。そして全ての職場で始業時ミーティングにおいて全員唱和、健康KY、ワンポイントKYTを取り入れ、ゼロ災活動を本格的にスタートさせました。

7月には、同社の第一回安全衛生大会が行われ、中災防教育推進部のコーディネーターが講演に伺いました。構内協力会社の関係者をはじめ、500名以上が参加し、大成功のうちに大会を終えることができました。

ゼロ災運動とOSHMSとの一体的運用を目指して

OSHMSが、全ての職場に浸透するには、人間尊重の理念に基づくゼロの原則、参加の原則、先取りの原則を職場全員で理解し実践する職場の風土づくりが必要不可欠です。いくら良い仕組みがあっても、その目的、意図を心から理解していないとすぐに風化してしまいます。会社、職場、一人ひとりが、目標を共有し、そのプロセスを、全体でつくり込むことによって、ゼロ災害は初めて実現可能となります。

同社では、危険有害要因を特定する体系を構築しました。仕組みだけ見れば災害が起きないように思えますが、現場は常に動いており、今年は、数件の労働災害が発生してしまいました。職場での危険抽出が十分にできなかったことと、危険と思わなかった作業者の感性に起因しています。 一人ひとりの感性、管理監督者のセンスが危険有害要因抽出のキメテとなります。その感性、センスを育成する手段がゼロ災運動であり、OSHMSの仕組みによって特定した危険有害要因を低減させていくことで、はじめてゼロ災害の実現が可能となります。

ゼロ災害に向けた今後の対応

同社の安全衛生活動の仕組み(図)はおおむねでき上がりましたが、ゼロ災運動は今年スタートしたばかりです。ゼロ災の心が中心になければ安全衛生活動は何もはじまりません。プログラム研究会における安全衛生スタッフの決意表明であった「ゼロ災運動の導入で職場風土を耕すぞ!」の言葉が社内でゼロ災運動を推進する大きな力になっています。

同社では2004年は耕す年、2005年は種をまく年、2006年は良い実を収穫する年と位置づけ、「地に落ちた良い種は、良い実を結ぶ」という言葉を胸に活動を続けています。多少の時間は必要となりますが、ゼロ災運動とOSHMSの一体化した活動が、まず社員一人ひとりの意識を変え、それが全体に伝わり、企業文化(風土)として定着することを大いに期待しています。

図:意識改革手法に基づくマネジメントサイクルの確立

図:意識改革手法に基づくマネジメントサイクルの確立

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