ゼロ災運動・KY(危険予知)

ゼロ災害全員参加運動推進計画

ゼロ災害全員参加運動推進計画本文

平成30年3月

1.推進計画の趣旨

(1)ゼロ災運動を推進するために

ゼロ災害全員参加運動(以下「ゼロ災運動」という。)は、「カケガエノナイ一人ひとりを、誰一人ケガをさせない」という人間尊重の理念に基づき、労働災害をゼロにすることを究極の目標に、全員参加で安全と健康を先取りして、明るくいきいきとした職場風土づくりを目指す運動であり、中央労働災害防止協会(以下「中災防」という。)が、昭和48年(1973年)に提唱して以来、多くの事業場で導入され、労働災害の防止に役割を果たしてきた。

ゼロ災運動を推進するためには、経営トップのゼロ災害・ゼロ疾病を目指した揺るぎない経営姿勢とリーダーシップ、ラインの管理監督者による安全衛生管理の徹底、リーダーを中心とした自主的な職場小集団活動の活発化により現場力を向上することが求められる。

(2)ゼロ災運動をとりまく環境の変化

近年の高齢化、産業・就業構造の変化、技術革新、雇用・労働の多様化などが進展する中、合理化・世代交代によるベテラン作業員の不足や、業務のアウトソーシングによる協力企業の増加を始めとした事業場が直面する諸情勢の変化により、ともすればトップ、ライン、職場というゼロ災運動の基本的な推進体制が形骸化し、トップのリーダーシップが発揮されていない、管理監督者による職場小集団活動への指導・援助が活発に行われない、というような例が少なからず見られるようになった。

労働災害の発生件数は、長期的には減少傾向にあるものの、平成29年における死亡災害の発生件数(速報値)が、前年比4.9%増となっているとともに、第三次産業の死傷災害が増大しているといった極めて憂慮すべき事態となっている。また、製造業の死亡災害の多発を踏まえ、平成29年3月に官民連携のもと設立された「製造業安全対策官民協議会」においても、経営トップが安全衛生管理に直接関与していない、団塊世代のリタイアにより災害防止のためのノウハウが継承されていない、労働安全衛生マネジメントシステム等が普及していない、労働者の高齢化に伴うリスクの増大、若年層の危険に対する感受性の低下等の問題が指摘されている。

これらの問題を解決するには、死亡災害を含め一切の労働災害の撲滅に向けた不断の努力を惜しまず、経営トップをはじめ、ラインの管理監督者、一人ひとりの作業者が、それぞれの立場でゼロ災運動への取組みを見直すとともに、その人づくりと推進体制を点検し、ゼロ災運動のより一層の活発化を図る必要がある。

(3)新たな動きに対応して

ゼロ災運動にアジアやヨーロッパ諸国が関心を示すとともに、ISO45001の発行を契機に、我が国で定着している安全衛生活動をベースとし、ISO45001と一体で運用できる日本版マネジメント規格(JIS規格)の制定に向けた準備が進められるなど新たな動きが進展している。折りしも国においては、「第13次労働災害防止計画」が策定され、働く人一人ひとりが、かけがえのない人であり、一人として被災者を出さないという基本理念のもと、労働災害を減らし、誰もが安心して健康に働くことができる社会の実現に向け、重点的に取り組む事項や方向性が示された。

これらを踏まえ、中災防ではゼロ災運動を、時代の変化・動きに応じた実効あるものとし、ゼロ災運動の一層の普及・促進を図るため、「ゼロ災害全員参加運動推進計画」を策定し、事業場の取組事項及び中災防の重点実施事項を示すものとする。

2.運動スローガン

「 ゼロ災害へ全員参加 」

3.期間

2018年度から2022年度まで

4.事業場の取組事項

(1)トップの経営姿勢

事業場のトップは、ゼロ災運動の推進を表明するとともに、作業者自ら安全な作業をするために自主的に行う職場自主活動及びそれを指導・援助するラインの管理監督者を積極的に支援する。

(2)管理監督者の積極的な参加と率先垂範

ラインの管理監督者は、トップの意向を踏まえ、職場の機械設備や作業方法等の改善を進めるとともに、ゼロ災運動の意義及び安全先取り手法等の理解に努め、ミーティングへのアドバイスや作業者への問いかけなどを率先して行う。

(3)職場自主活動の活発化による現場力の強化

作業者一人ひとりが、安全と健康を自分たちの問題としてとらえ、日々の朝礼などのミーティングでKYT等を行うことによって職場自主活動の活発化につなげ、職場の問題を自分たちで解決できる現場力を強化する。

(4)安全衛生スタッフによる支援

事業場の安全衛生スタッフは、機械・設備、作業の方法や職場の自主活動など事業場の安全衛生活動について、PDCAサイクルが回るように、積極的に支援する。

(5)活発なコミュニケーションのとれる良好な職場風土づくりを通じた安全衛生活動の活性化

KY活動により、上司、部下との双方向の活発なコミュニケーションが取れる良好な職場風土を築くことにより、メンタルヘルス等の対策も活性化する。

5.中災防の重点実施事項

(1)ゼロ災運動に関する研修会

トップ、ライン、職場というゼロ災運動の推進体制を強化するため、ISO45001にKY活動が加わる予定となっている日本版マネジメント規格(JIS規格)の動向を踏まえ、トップ、管理監督者、安全衛生スタッフなどの各層を対象として、チームワークによるKYTの体験学習等を通じて、各層の役割、職場の問題解決力を高めるための方法について理解を深める「ゼロ災運動トップセミナー」、「ゼロ災運動プログラム研究会」、「危険予知活動トレーナー研修会」などの研修会を開催するとともに、危険体感教育とKY手法を組み合わせたメニューを提供するなどにより、ゼロ災運動の活性化につなげる。

(2)事業場などへのゼロ災運動の相談・支援等

事業場の企業内研修の実施にあたり、KY活動の進め方の指導や管理監督者の養成等を行うための専門家を派遣するなど、必要な支援を行う。また、新規にゼロ災運動に取り組もうとする事業場に対しても、積極的にその相談に応じる。
大規模事業場及びその協力会社、中小規模事業場、工業団地等に対するゼロ災運動の普及と定着化のため、地域の事業場からなる安全衛生に関する懇談会等に対して相談対応・指導を実施する。
ゼロ災運動の一層の推進を図るため、ゼロ災運動の推進を内外に宣言する「ゼロ災運動推進宣言事業場」の拡大を目指すとともに、当該事業場の指導・支援を充実させる。

(3)第三次産業の事業場への普及

医療機関、社会福祉施設、小売業、飲食業等の第三次産業については、業種、業態に応じたプログラムの検討やイラスト集等の整備を図るとともに、危険感受性向上のためゼロ災運動の普及に向けて、継続的に相談対応・指導の実施や研修会の開催を行う。

(4)時代に応じたゼロ災運動の展開

ISO45001と一体で運用できる日本版マネジメント規格(JIS規格)の制度の動きを踏まえ、KY活動と労働安全衛生マネジメントシステムを関連させ、職場自主活動の継続的な活発化を目指すため、中災防で独自に開発したツールにより、事業場としての職場KY活動の仕組みを確認し、それに基づいた職場KY活動の現状を把握するとともに、事業場のKY活動が活発に進められるよう、その改善の支援・指導を実施する。

(5)関係団体との連携等

ゼロ災運動の推進団体である「全国ゼロ災運動推進協議会」や各労働基準協会などに対して、製造業安全対策官民協議会の成果等の情報の提供などの支援を積極的に行うとともに、これら推進団体との連携のもと、事業場においてゼロ災運動を推進する人材を育成しサポート体制を図る。あわせて、全国産業安全衛生大会において、他企業、他業種の取組みを学ぶ機会を与えるなど、関係事業場のゼロ災運動の活発化を図る。さらに、社会人・企業人になる前から、リスク認識を身につけてもらうことは、ゼロ災運動の普及につながるとの観点から、製造業安全対策官民協議会での検討を踏まえ、学校等の関係機関との連携のもと、必要な支援を図る。

(6)ゼロ災運動の国際化への対応

ゼロ災運動のアジア地域への広がりやヨーロッパ諸国の関心の高さを踏まえて、それら安全衛生関係団体等へのゼロ災運動のグローバルな発信に努める。