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中国における労働安全衛生の現状
および新世紀の展望

中国労働安全代表団 団長 金磊夫

(2001年全国産業安全衛生大会 安全衛生部会 国際分科会 講演原稿より)



お集まりのみなさま:
 中国労働安全代表団は、日本中央労働災害防止協会の招きで、今回の勉強と交流の機会をいただいて、心から感謝しております。また、各国みなさまの労働安全領域で得られた豊富な成果に心からお喜び申しあげます。
 これから中国労働安全の現状と新世紀の展望および今後の重点をポイントに紹介させていただきます。

労働安全の現状
  1. 現在における中国労働安全の実態

    中国政府は従来から、ずっと「人々を根本に」および「安全は第一、予防が重点」という方針を基本にして、労働安全に係わる法律の策定、政府の指導、安全の教育、科学技術への投資および企業への管理を強化しており、たいへんよい成績が得られました。
    工場や鉱山における各種労災による死亡人数は、1994年の20,315人から、2000年の11,681人に減少しました。塵肺発病の患者数も、1990年の毎年15,000人あまりから、1999年の毎年7,000人あまりに減少しました。
    このように、中国の労働安全は全般的には職業病の予防は大幅に改善され、労災事故の発生件数および労災による死亡人数とも、年毎に減少の傾向を示しました。とくに、2000年における労災事故の発生件数および労災による死亡人数は、前年に比べて大幅に減少しました。その中で、石炭業の減少傾向が明確で、30%ほど減少しました。
    今年1月から9月までの全国労働安全の実態をみても、ひきつづいて良好であり、重大な労災事故の発生件数は、前年同時期より18.5%減少し、また死亡人数は23.3%減少しました。
    しかしながら、重大な労災事故が、依然として発生しており、労働安全のきびしい情勢になお悩まされております。

  2. 中国における労働安全の管理体制

    中国政府は、従来から、労働安全の管理を重視しており、管理制度の改革および管理方式の革新について、継続的に検討および実施しております。2000年における国家管理機構の改革機会を利用して、政府の労働安全に関する管理職能を大幅に調整しました。これによって、国レベルの労働安全に関するマクロ的な管理、指導および監督をさらに強化しました。
    2001年2月に、新たに国家安全生産監督管理局を設置しました。これは、中国のこれまでの、労働安全のために設置した最高レベルの行政管理部門であり、中国の労働安全を省、市、県レベルごとに管理します。
    2001年3月に、国務院安全生産委員会が設置され、全国労働安全の監督および管理を調整します。委員会の主任は、呉邦国副総理により担当し、委員会は、国務院所属の22部門から成る職能大臣により構成されます。
    現在、中国政府の労働安全に関する職能配置は、次のようです。

    • 衛生部は、労働衛生監察の職能を担当します。
    • 国家品質技術監督検査総局は、ボイラーと圧力容器などに対しての監察の職能を担当します。
    • 労働・社会保障部は、労働災害と保険に対しての監察および管理の職能を担当します。
    • 国家安全生産監督管理局は、主に次の職能を担当します。

      • 労働安全に係わる総合的な法律草案および行政法律の策定。
      • 法律に基づく、労働安全に対しての監督および管理。
      • 全国労働安全情報の統計および提供。
      • 国務院から委任を受けて、重大事故の調査および処理作業に対しての組織と調整。
      • 全国労働安全に係わる測定および検定作業に対しての指導、調整および監督。
      • 全国労働安全に係わるプログラムの策定、労働安全に係わる重要な科学技術研究および新技術応用に対しての指導など。

  3. 中国における労働安全法律の構築

    労働安全法律の構築は、労働安全管理を強化するための重要な方策であることが、従来から、中国政府に認識されています。このために、中国政府は、様々な労働安全に係わる法律、法規及び条例を制定しました。たとえば、「中華人民共和国労働法」「中華人民共和国鉱山安全法」「中華人民共和国消防法」「炭鉱安全監察条例」「化学危険品管理条例」「塵肺病防治条例」などです。
    重大事故の発生を効果的に予防するために、中国政府は、今年に「重大事故に係わる行政責任を追究する規定」を発布し、重大事故が発生する時にいかに各レベル責任者たちの行政責任を追及するかを明確に規定しました。
    中国はもうすぐ世界貿易組織(WTO)に加入しますが、自国の労働安全に対する管理を国際的に通用するものとするため、諸外国の先進経験を参考に、それを中国の現状と結合し、また現在の情勢要求にあわせて、これまで計画経済制度に基づいて制定した各種労働安全の法律、規定、条例、標準などを修正および作成しているところです。

  4. 中国における労働安全文化の建設

    労働安全に関しての宣伝および教育を通して、企業安全文化の建設を促進し、作業者たちの安全意識を高めるために、全国規模で、もう11年間連続して「安全週間」の活動を行いました。経常的に「安全健康カップ」の知識試合(これは、テスト形式のコンペです。)及び安全知識講座を行う。各レベルに対し種々の形で労働安全トレーニングコースを行う。
    職場に隠れている危険性に常に対処し、できるだけ事故の原因を芽のうちに摘み取ります。労働安全衛生マネジメントシステムの建設を促進し、企業に段々に自己管理の体制を確立させて、安全管理の効果を持続的に推進します。

新世紀労働安全への展望

21世紀は、チャンスと挑戦に満ちている世紀であり、人類に新しい希望をもたらすばかりではなく、人類の労働安全にも、新しい課題をもってきました。
「世の中一切のことのなかで、人々の存在がもっとも貴重なものである」とある偉人が言いました。新しい世紀には、もっと効果的に働く人たちの安全と健康を守るべきである。人間と環境との調和に努力し、持続発展の目標を実現し、人類文明と共同繁栄を推進します。
このために、中国政府は、次の方面で継続的に努力すべきと考えています。
  1. 法律構築を強化します。できるだけ早いうちに「中華人民共和国安全生産法」 と「中華人民共和国職業病予防法」を発布し、法律の手段で、政府労働安全の監察を指導して、企業および労働者の行為を管理して、生産活動の過程でもっと労働者たちの安全と健康を企業に重視させ、労働安全活動を法律の軌道に乗せます。
  2. 民間用爆破器材および花火爆竹(火薬)の生産、道路および水路の交通運輸、小さい炭鉱の採鉱、化学危険品の輸送、それに公衆が集まる場所という5つ方面について、集中的に力を注ぎ、状況を改善し、重大な災害事故の発生を抑制し、労働安全情勢の好転を推進します。
  3. これまでどおり、安全科学技術についての研究および研究のための人的、物的、資金的投入を強化して、安全措置と技術措置を講じるなど多種な手段を利用し、作業環境および作業条件の根本的な改善を実現します。
  4. 労働安全管理の制度および体制を確立し、安全教育のシステムを完備し、労働安全文化の建設を強化します。労働者たちは、労働安全の参加者でもあり、労働安全の受益者でもあります。
    できるだけ「私は安全であってほしい、私は安全が確保出来る」という思想を労働者自らの行為に反映させて、みんなが快適で愉快な職場で作業または生活できるようにします。
  5. 国際間の交流と協力を強化します。進んだ国々に学ぶことは、中国政府の従来からの立場であり、長い間に、もう外国からたくさんの貴重な経験を勉強しました。

今回、中国代表団の来日の目的も、日本などの国々の労働安全領域の先進的な管理経験と成功したやり方を勉強または参考にして、中国労働安全管理のレベルをもう一歩進めたいということであります。
中国の人口は、全世界の約四分の一を占め、労働者数も何億で計ります。ですから、労働安全管理の責任は特に重大であります。
新しい世紀には、できるだけ仕事をもっと安全、健康、快適にさせることは、人類の共通の願いでもあり、われわれ共通した目標でもあります。
中国政府および人民は、世界すべての政府および人民と一緒に、お互いに団結、協力、支持しあって、そのすばらしい目標の実現に共に努力したいと決心しております。
私とわが代表団は、本会議のご成功、議長と皆様のご健康またご幸福を、心から、願います。
ありがとうございました。