このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > EU 欧州安全衛生機構ニュースレター

EUにおける展開



■化学製品

1997年10月7日に行われた大臣会議において、労働者の健康と安全を職場の化学製品に関する危険からまもることに関する指令についての共通の立場を採択した。これは、1997年6月に開かれた社会問題会議(Social Affairs Council) での政治的合意に続くものである。

この提案は第118 A条に基づくものであり、今日の職場にみられる数多くの危険な化学製品にさらされることから労働者をまもるための最低限の基準を設定することを目的としている。 提案の重要な特徴の一つはは、暴露許容限度を明示的で拘束力のある暴露許容限度数値として設定している一方で、拘束力のある生物学的許容限度としても設定していることである。それは、この段階で明示的な生物学的許容限度の設定はまだ早すぎることを考慮してのことである。 (訳注:この部分は念のため原文を添付します):A key feature of the proposal is the setting of exposure limits in the form, on the one hand, of indicative and binding occupational exposure limit values and, on the other hand, of binding biological limit values. It was considered that the introduction, at this stage, of indicative biological limit values would be premature.


■発がん物質

さらに会議は1997年6月27日、評議会指令 (Council Directive)の修正案を採択した。この修正案には、初めて修正された、職場において発がん物質にさらされる危険から労働者を保護 することについての指令90/394/ECCも含まれている。修正案の原則的な目的は二つある。その第一は、発がん物質を含む製品が 指令90/394/ECCから除外されているのを止めること、第二は、発がん物質としてよく知られているベンゼンにたいする暴露許容 限度を設定することである。


■Bovine Spongiform Encephalopathy (BSE):

労働者の健康と安全の保護 欧州委員会は、職場において生物学因子にさらされる危険から労働者を保護することに関する指令90/679/ECCの既存条項を強化した指令を採択した。新しい指令は、Bovine Spongiform Encephalopathy (BSE;牛の海綿状脳症) やその他の関連した伝染性spongiform encephalopathy(海綿状脳症)にさらされることで生じる状況にも適用される。 欧州委員会が指令を強化するという決定を行ったのは、最近の科学的証拠を考慮してのことである。その証拠とは、人間に影響を与えるクロイツフェルトーヤコブ病(CJD)の新しく発見された種類はBSE因子に関係しているというものである。新しい指令は、農民、肉体を酷使する場所での労働者、実験室で働く病理学者など特に危険な職場にいる人々を含むすべての労働者に適用される。 新しい指令に含まれるすべての条項は、1998年6月30日までにメンバー国の国内法に記述されなければならない。


■EUの拡大と安全衛生

欧州委員会は1997年7月16日、“Agenda 2000-For a Stronger and Wider Union”(2000年の課題:より強力で広範なEUを目指して)を発表した。これはEUをより拡大するための鍵となる戦略書である。同時に発表されたAgenda 2000の第2卷“Reinforcing the preaccession strategy”(今後の戦略を強化するために)では、特定の拡大事項について更に詳しく述べられており、それらの項目のなかには 安全衛生関連の事項が含まれている。

「内部市場」と「社会政策」観点から安全衛生は重要な役割を果たすであろう。「内部市場aquis(訳注:application of existing body of EU legislation and legal obligation, 既存のEU法規制や義務をacquisと称しているようである)」が十分に適用されないと『市場のゆがみ』が生じるだろう」とAgenda 2000は予測する。この点で幾つかの分野は「要注意」として記載されているが環境・安全衛生保護に対する要求事項もその一つである。職場の安全衛生もまた、 “Community aquis.” 分野の一つとして記述されている。「EU加盟国がCommunity aquisを管理できるかどうかが重要な要素となるだろう。」とAgenda 2000は述べている。同様に「Community aquisに適合させるプロセスとは、長期間を要しまた費用もかかり、重要な投資が必要である。」とも述べている。「Community aquisを採用するためには、加盟候補国はかなりの財政的、行政的な努力が必要であるが、、特に安全衛生部門においてしかりである。あまりにも時間がかかったり不適切に適合すると、aquisそのものの性質を傷つけ、内部市場の機能をゆがめることになる。」とも述べている。さらにAgenda 2000は、「Community aquisを様々な政策分野に採用する際に重大な問題が解決されないまま残されるならば、EU加盟後に内部市場全体の機能が低下することになるだろう。」と警告をしている。

安全衛生はまた、EU社会の政策の重要な要素の一つにも挙げられている。Agenda 2000の社会政策の項目では、欧州委員会が安全衛生分野を重要視することが次のように述べられている:「高度な雇用と社会的保護を目的とした社会の進歩、生活の基準と質の向上、経済と社会を密着させることが、社会正義と経済効率の間のバランスという点に特徴があるヨーロッパ型社会の重要な要素である。」 Agenda 2000から明らかなことは、安全衛生政策は新しいメンバー国が変化していくプロセスにおいて重要な役割を果たすだろう、ということである。安全衛生政策は、社会範囲におけるCommunity aquisの最大部分を含み、EU内部での等しい競争条件という点で根本的的な影響を及ぼす。 さらにAgenda 2000は、加盟希望国が「技術的にCommunity aquisを採用する準備ができるように支援すること」がEU内の各機関の役割であるとし、「加盟希望国をEU内の機関に仲間入り させるための特別な努力が必要である。」と述べている。


■情報化社会における安全衛生

欧州委員会は1997年7月23日、Communication on the Social and Labour Market Dimension of the Information Society “People First - The Next Steps”(情報化社会の社会・労働市場的観点についての通信−人から次のステップへ)を発表した。その中で 欧州委員会は「もし、EUが新しい情報技術、通信技術が、新しい仕事を創り出すこと、繁栄、生活の質という点にもたらす恩恵を フルに享受しようとするつもりなら、情報化社会のソーシャルな側面をもっと強化する必要がある。」と述べている。通信はまた、 労働安全衛生にとって重要である職業生活の最重要な面に言及し職場における近代的な組織のベースとして、企業の柔軟性と労働者 の安全との間の新しいバランスの概念を紹介した。欧州委員会はまた、次のような意見を持っている:加盟国は、在宅勤務のため 情報を利用する人が、職場で働く人と同じ安全衛生条件を受けられることを確実にするための手段を講じなければならない。 さらに通信は、情報及びコミュニケーションテクノロジーは、安全衛生政策のための手段として発展すると述べている。


■職場の安全衛生のためのヨーロッパ週間

第二回「職場の安全のためのヨーロッパ週間」が1997年10月20日から25日まで行われた。この週間は、職場における危険(リスク)を評価すること(とりわけ中小企業)に焦点が置かれた。ヨーロッパ週間の主な目的は、以下のことを通して危険(リスク)を減らし、職業生活の質を向上させるための努力を強化することである:職場における危険(ハザード)に対する労働者と事業者の意識をさらに高める;企業内での効果的な安全衛生管理を奨励する;具体的な問題を解決しリスクを低減するために考案された対策を促進する;この分野におけるすべてのEUの対策を促進する。 メンバー国は、各々の国の優先事項に関する国内キャンペーンを連動させることでヨーロッパ週間に参加した。なかでも特に会議や情報キヤンペーンのような向上面及び、解決策を提供するために考案された基本的なプロジェクト重点が置かれた。欧州委員会は、メンバー国によって選ばれた34のプロジェクトに共同で資金を提供した。