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資料EU機械指令付属書 I
機械類の設計と製造に関する必須健康安全要求事項

仮訳<機械指令 (9.6.2006) Annex T: Essential health and safety requirements relating to the design and construction of machinery >
(資料作成 国際安全衛生センター)

掲載日:2008.02.15

4.持ち上げ操作による特定危険を軽減するための補足的な必須健康安全要求事項(SUPPLEMENTARY ESSENTIAL HEALTH AND SAFETY REQUIREMENTS TO OFFSET HAZARDS DUE TO LIFTING OPERATIONS)

持ち上げ操作による危険を有する機械類は、本章に記述されているすべての必須健康安全要求事項を満たさなければならない(一般原則の4事項を参照せよ)。

4.1  一般(GENERAL)

4.1.1 定義(Definitions)
  • (a)「持ち上げ操作(Lifting operation)」とは、任意の時点で高さの差があるとき必要となる、物品および/または人で構成される一単位の積荷の移動をいう。
  • (b)「ガイドされる負荷(Guided load)」とは、位置が固定点で決まる剛性または可とう性のガイドに沿って移動する負荷をいう。
  • (c)「作業係数(Working coefficient)」とは、製造者またはその正当な代理人が保持を可能とするための構成部品に対して保証する負荷と、その構成部品に表示された最大作業負荷との算術比をいう。
  • (d)「試験係数(Test coefficient)」とは、持ち上げ機械類または持ち上げ機付属品について静的試験または動的試験を行うのに使用する負荷とその持ち上げ機械類または持ち上げ機付属品に表示された最大作業負荷との算術比をいう。
  • (e)「静的試験(Static test)」とは、持ち上げ機械類または持ち上げ機付属品を先ず検査し、最大作業負荷に適切な静的試験係数を乗じたものに相当する力を加え、その上で、一度当該負荷を外し、損傷のないことを確かめるための再検査を行う試験をいう。
  • (f)「動的試験(Dynamic test)」とは、持ち上げ機械類がすべての構成状態において持ち上げ機械類の動的挙動を考慮した、適切な動的試験係数を乗じた最大作業負荷で行う試験をいう。
  • (g)「荷台(Carrier)」とは、人および/または物品が持ち上げられるために上部にまたは内部に搭乗する機械類の部分をいう。
4.1.2 機械的危険源に対する防護(Protection against mechanical hazards)
4.1.2.1 安定性の不足によるリスク(Risk due to lack of stability)

機械類は、輸送、組立、分解、予見可能な部品故障の間、および取扱説明書に従って実施される試験の間、すべての段階において使用中も休止中も、項目1.3.1で要求される安定性が、維持されるように、設計・製造されなければならない。その目的のため、製造者またはその正当な代理人は適切な検証方法(verification methods)を使用しなければならない。

4.1.2.2案内レール上を走行する機械類及びレールトラック(Machinery running on guide rails and rail tracks)

機械類は、案内レールまたはトラックに対し脱線防止のために作動する装置を備えなければならない。

このような装置があるにもかかわらず、脱線のリスク、またはレール若しくは走行部品の故障のリスクがある場合には、機器、構成部品あるいは荷の落下または機械類のオーバーランを防止する装置を備えなければならない。

4.1.2.3機械的強度(Mechanical strength)

機械類、持ち上げ機付属品およびその構成部品は、使用中・休止中に受けるストレスに耐えることができなければならない。これは、設定された据付けおよび操作条件において、また、すべての関連する構成状態において、雰囲気の影響および人が及ぼす力をも考慮してである。この要求事項は、輸送・組立・分解の間も満足されなければならない。

機械類および持ち上げ機付属品は、意図する使用を考慮して、疲労および磨耗による故障を防止するように設計・製造しなければならない。 

使用される材料は、意図する作業環境に基づいて選択されなければならない。特に、腐食・磨耗・衝撃・極端な温度・疲労・脆化や経年劣化に関してである。

機械類および持ち上げ機付属品は、永久変形またはすぐ分かる欠陥を発生することなく、静的試験における過負荷に耐えるように設計・製造しなければならない。強度計算は、適切な安全の水準を保証するために選択される静的試験係数の値を考慮に入れなければならない。静的試験係数は、一般的な規定として、次の値が採られる:

  • (a)手動操作の機械類および持ち上げ機付属品は: 1.5 ;
  • (b) その他の機械類: 1.25 。

機械類は、不具合を生ずることなく、動的試験係数を乗じた最大作業負荷を使って実施する動的試験に耐えるように設計・製造されなければならない。この動的試験係数は、適切な安全の水準を保証するために選択される:動的試験係数は、一般的な規定として、1.1 に等しい。一般的な規定として、動的試験は設定された公称速度で行われる。機械類の制御回路によって複数の同時運転が可能ならば、その動的試験は、最も過酷な条件で、すなわち一般的な規定として、当該運動を組合せて行わなければならない。

4.1.2.4 プーリ、ドラム、ホイール、ロープおよびチェーン(Pulley, drums, wheels, ropes and chains)

プーリ、ドラムおよびホイールは、取り付けるロープまたはチェーンの大きさに相応する直径を有さなければならない。

ドラムおよびホイールは、ロープやチェーンが外れることなく巻き付くように設計・製造し取り付けられなければならない。

荷を持ち上げたり支えたりするために直接使用されるロープは、ロープ端末を除いて編込み(splicing)を有してはならない。しかしながら、使用の必要性による定期的な調整をするために設計によって意図されている取り付けの場合には、編込みが許される。

完全なロープおよびロープ端末処理(endings)は、適切な安全の水準を保証するように選択された作業係数を有さなければならない。一般的な規定として、この作業係数は、5に等しい。

持ち上げチェーンは、適切な安全の水準を保証するように選択された作業係数を有さなければならない。一般的な規定として、この作業係数は、4に等しい。

適切な作業係数が達成されたことを検証するために、製造者またはその正当な代理人は、荷を持ち上げるために直接使用される各種のチェーンやロープ及びロープ端末に対して、適切な試験を実施するかまたは実施させなければならない。

4.1.2.5 持ち上げ機付属品およびその構成部品(Lifting accessories and their components)

持ち上げ機付属品およびその構成部品は、所定の用途における作業条件で指定された予期寿命に相応した作業繰返し数に対する疲労及び老化過程を考慮した寸法でなければならない。

さらに、

  • (a) ワイヤロープ/ロープ端末組合せの作業係数は、適切な安全の水準を保証するように選択されなければならない;一般的な規定として、この作業係数は、5に等しい。ロープは、両端末を除いて、編込み又はループを構成してはならない;
  • (b) 溶接リンクのあるチェーンを使用する場合には、短リンク・タイプとしなければならない。チェーンの作業係数は、適切な安全の水準を保証するように選択されなければならない;一般的な規定として、この作業係数は、4に等しい;
  • (c) 繊維ロープまたは吊り索(sling)の作業係数は、材料、製造方法、寸法、および用途によって異なる。この作業係数は、適切な安全の水準を保証するように選択されなければならない;一般的な規定として、この作業係数は、7に等しい。ただし、材料の品質が非常に高く、製造方法が意図した用途に適しているものとする。そうでない場合、一般的な規定として、同等な安全水準を保証するために作業係数は高い水準に設定する。繊維ロープまたは吊り索は、結び目・接続部または編込みを吊り索の端末以外において構成してはならない。ただし、エンドレスの吊り索は除く。
  • (d) 金属製部品で構成されるまたは金属製構成部品を併用するすべての吊り索は、適切な安全の水準を保証するように選択された作業係数を有さなければならない;一般的な規定として、この作業係数は、4に等しい;
  • (e) 多点用吊り索(multilegged sling)の最大作業負荷は、最弱の枝索(leg)の作業係数・枝索の本数・吊り形状による減少率に基づいて決定される;
  • (f) 適切な作業係数が得られたことを検証するために、製造者またはその正当な代理人は、(a)、(b)、(c)および(d)に規定された各構成部品について適切な試験を実施するか、または実施させなければならない。
4.1.2.6 運動の制御(Control of movements)

運動を制御する装置は、装置を取り付けた機械類が安全であるように作動しなければならない。

  • (a) 機械類は、その構成部品の運動の大きさが指定限度内に納まるように設計・製造し、または装置を設置しなければならない。そのような装置の運転は、適切な場合、運転前に警告を出さなければならない。
  • (b) 複数の固定またはレール取り付けの機械が同時に同一場所で操縦され、衝突の危険がある場合、そのような機械類は、これらのリスクを回避するシステムを装備できるように設計・製作しなければならない。
  • (c) 機械類は、負荷がずれて危険になったり、自由に不意に落下することのないように設計・製造されなければならない。これは、電源供給の一部若しくは全体が故障した場合、または操作者が機械の操作を止めた場合でも、そうである。
  • (d) 正常な操作状態では、負荷を摩擦制動だけで降下させてはならない。ただし、機能上そのような方法で操作する必要がある機械類の場合を除く。
  • (e) 保持装置は、負荷の不意の落下を回避するように設計・製造されなければならない。
4.1.2.7 取扱い中の負荷の運動(Movements of loads during handling)

機械類の操作位置は、人・装置・同時に操縦されるその他の機械類と衝突する危険を回避するために、可動部の軌跡が最も広い視野で見えるように配置されなければならない。

ガイドされる負荷を有する機械類は、負荷・荷台・カウンターウエイトの運動による傷害から人を守るように設計・製造されなければならない。  

4.1.2.8 固定した着荷場所を扱う機械類(Machinery serving fixed landings)
4.1.2.8.1 荷台の運動(Movement of the carrier)

固定した着荷場所への扱いを行う機械類の荷台の運動は、着荷場所へ確りとガイドされなければならない。鋏システム(scissor system)は、又固定されたガイド機構とみなされる。

4.1.2.8.2 荷台への接近(Access to the carrier)

人が荷台へ接近しなければならない場合は、機械類は、接近する間は荷台が静止することを確保するように設計・製造されなければならない。特に、荷積みまたは荷降ろし中はそうである。

機械類は、荷台と扱われる着荷場所との間での位置レベルの差がリスクを生じないように設計・製造されなければならない。

4.1.2.8.3 運動中の荷台との接触によるリスク(Risks due to contact with the moving carrier)

項目4.1.2.7の第2パラグラフで規定される要求事項を満たす必要がある場合には、移動領域は、通常操作中は接近不可能にしなければならない。

点検・保守中に、荷台の下または上に位置する人が荷台と固定部品との間で押し潰されるようなリスクがある場合には、十分な自由空間が物理的避難場所によるかまたは荷台の運動を妨げる機械的な装置によるかどちらかの方法によって設けられなければならない。

4.1.2.8.4 荷台からの負荷の落下によるリスク(Risk due to the load falling off the carrier)

荷台からの負荷の落下によるリスクがある場合は、機械類は、このリスクを防止するように設計・製造されなければならない。

4.1.2.8.5 着荷場所(Landings)

着荷場所における人と運動中の荷台またはその他の運動中の部品との接触によるリスクは、防止されなければならない。

荷台が着荷場所に存在しない時に、移動する領域の中へ人が落下することによるリスクがある場合には、このリスクを防止するためにガードが設置されなければならない。このようなガードは、移動する領域の方向に開いてはならない。ガードは、次の状態を防止する荷台の位置によって制御されるインターロック装置を具備しなければならない:

  • −当該ガードが閉じられ施錠されるまで荷台の危険な運動の防止
  • −荷台が対応する着荷場所に停止してしまうまでガードの危険な開放の防止
4.1.3 目的適合性(Fitness for purpose)

持ち上げ機械類または持ち上げ機付属装置が市場出荷されまたは最初に使用されるとき、製造者またはその正当な代理人は、適切な手段を講じてまたは講じさせて、次のことを確認しなければならない。すなわち、使用しようとする持ち上げ機械類又は持ち上げ機付属部品が、手動であれ動力駆動であれ、指定の機能を安全に満たすことができることである。

項目4.1.2.3に規定される静的および動的試験が、使用しようとするすべての持ち上げ機械類に実施されなければならない。

機械類が、製造者の所でまたは正当な代理人の所で組立てることができない場合は、使用場所において適切な手段を講じなければならない。あるいは、適切な手段は、製造者の所かまたは正当な代理人の所で講じることができる。

4.2 動力源が人力以外の機械に対する要求事項(REQUIREMENTS FOR MACHINERY WHOSE POWER SOURCE IS OTHER THAN MANUAL EFFORT)

4.2.1 運動の制御(Control of movements)

ホールド・ツウ・ラン制御装置は、機械類またはその機器の運動を制御するために使用されなければならない。しかし、負荷または機械類が衝突するリスクがない部分的または全体的な運動の場合には、当該装置の代わりに操作者がホールド・ツウ・ラン制御装置を手放した位置を停止位置に設定している自動停止制御器を使用できる。

4.2.2 負荷制御(Loading control)

最大作業負荷が1000kg以上、または転覆モーメントが40000Nm以上の機械類は、以下の場合に運転者に警告し、負荷の危険な運動を防止する装置を具備しなければならない:

  • −過積載の場合、超過した負荷によって結果的に最大作業負荷または最大作業モーメントとなる場合
  • −転覆モーメントを超過した場合
4.2.3 ロープによってガイドされる据付(Installations guided by ropes)

ロープキャリヤ、トラクタまたはトラクタキャリアは、カウンタウエートまたは張力を常に制御する装置によって保持されなければならない。

4.3 情報および表示(INFORMATION AND MARKINGS)

4.3.1 チェーン、ロープ及び帯ひも(Chains, ropes and webbing)

組立品の一部でない、各長さの持ち上げ用のチェーン、ロープおよび帯ひもは、表示を付けなければならない。これができない場合、製造者または正当な代理人の氏名・住所、および関連証明書の参照番号を記載したプレートまたは取り外せないリングを付けなければならない。

上記の証明書は少なくとも以下の情報を示さなければならない。

  • (a) 製造者および適切な場合は正当な代理人の氏名及び住所;
  • (b) 下記の事項を含むチェーン又はロープの説明;
    • −公称寸法、
    • −構造、
    • −材料、
    • −材料に加えられた冶金処理;
  • (c) 使用された試験方法;
  • (d) チェーンまたはロープが使用できる最大負荷。意図された用途に基づいて与えられた数値の範囲。
4.3.2 持ち上げ機付属品(Lifting accessories)

持ち上げ機付属品は、次の詳細を示さなければならない。

  • −当該情報が安全な使用のために必要である場合の材料の証明、
  • −最大作業負荷。

その上に表示することが物理的に不可能な持ち上げ機付属品の場合は、第1パラグラフに規定する詳細は、プレート上に表示するかまたは他の同等の手段で表示し当該付属品に確実に貼付しなければならない。

詳細は、読み易く、磨耗により消えない場所か、付属品の強度を低下させない場所に配置しなければならない。

4.3.3 持ち上げ機械類(Lifting machinery)

最大作業負荷は、当該機械類の上に目立つように表示されなければならない。この表示は、読み易く消えない符号化されていないものでなければならない。

最大作業負荷が機械類の構成によって異なる場合には、各々の各構成に対して許容される最大作業負荷を、できれば図または表の形で明示した負荷プレートを具備しなければならない。

人への接近ができる荷台を備えた、持ち上げ物品のみ扱うためとした機械類は、人の持ち上げを禁止する明確で消えない警告を記載しなければならない。当該警告は、接近が可能なすべての箇所で見えなければならない。

4.4 取扱説明書(INSTRUCTIONS)

4.4.1 持ち上げ機付属品(Lifting accessories)

各持ち上げ機付属品またはその営業上分割不可能な単位は、少なくとも次の事項記述した取扱説明書を添付しなければならない。

  • (a) 意図する使用;
  • (b) 使用の制限(特に、項目4.1.2.6(e)を完全には満たしていない磁気パッドまたは真空パッドのような持ち上げ機付属品など);
  • (c) 組み立て・使用・保全に関する取扱説明書;
  • (d) 使用した静的試験係数。
4.4.2 持ち上げ機械類

 持ち上げ機械類は、以下についての情報を含む取扱説明書を添付しなければならない。

  • (a) 機械類の技術的特性、特に
    • −最大作業負荷および、適切な場合には、負荷プレートまたは項目4.3.3の第2パラグラフに規定された負荷の表の写し、
    • −支持台またはアンカーにおける反力、適切な場合は、トラックの特性、
    • −適切な場合は、バラスト取付け(installation of the ballast)の定義と手段;
  • (b) ログブック(logbook)の目次、ログブックが機械と共に供給されていない場合;
  • (c) 使用上の助言、特に操作者が負荷を直接見ることができないことを補うためである;
  • (d) 適切な場合、製造者または正当な代理人により実施されたまたは実施させた、静的または動的な試験の試験報告書;
  • (e) 使用される形に製造者の所において組み立てられない機械類については、最初に当該機械類を使用する前に、項目4.1.3に規定された対策を実行するために必要な取扱説明書。

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