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資料EU石綿キャンペーンの標的となるグループに対する石綿ガイド(要約)に関する資料

(資料作成 国際安全衛生センター)

掲載日:2008.03.28

作業者向け

石綿の健康影響

石綿にばく露する可能性のある作業をする場合は、以下の注意が必要である。

  • 石綿にばく露することによるリスクを認識すること。
  • ばく露を最小限に留めることの重要性を理解すること。
  • 喫煙者は禁煙を検討すること。
  • 石綿を扱う場合、本指針に示す模範的作業方法に従うこと。

石綿を含有する物質

石綿を含有しているかも知れない物質をばらす作業を伴う可能性のある場合は、以下の注意が必要である。

  • 作業を開始する前に、石綿含有の有無について情報を得ておくこと。
  • 石綿含有製品かどうかを見分ける方法を知ること。
  • 石綿含有物質に遭遇したときの対処法を知ること(第5章〜第10章を参照)。

リスク評価と作業前計画

石綿を含有する物質をばらす可能性のある作業に取りかかる場合は、以下の注意が必要である。

  • リスク評価や作業計画に関する相談を受けておくこと。
  • 作業計画やリスク評価に影響を及ぼす実際上の問題について、自分の意見を述べること。
  • リスク評価書と作業計画書を、自分用に1部用意しておくこと。
  • 必ず計画書の内容を理解すること。

意思決定プロセス

石綿を含有する物質をばらす作業を伴う可能性のある場合は、以下の注意が必要である。

  • 前述の意思決定プロセスに役立つよう、リスク評価について相談を受けておくこと。

訓練研修(トレーニング)

石綿のばく露のリスクを伴う作業をする場合は、以下の注意が必要である。

  • 作業を行う前に、必要な訓練研修を受けること。
  • 再訓練研修を受ける必要性について、定期的に見直す(少なくとも年に1回以上)こと。作業の性格が大きく変化したときも同様。
  • 言葉の壁のために研修内容がよく理解できない場合は、その旨を雇用主に伝えること(雇用主は、貴方の母国語が何語なのか知っているか?)。

器具

石綿含有物質を伴う作業で、器具を使う場合は、以下の注意が必要である。

  • 作業前に、器具の正しい使い方の訓練研修を受けておくこと。
  • 研修内容と製造者の指示に従って、常に正しく器具を使用すること。
  • 呼吸用保護具の選定について、事前に相談を受けておくこと。
  • 支給される呼吸用保護具は、事前に顔面に密着させることを練習し、正しい使い方の訓練研修を受けておくこと。
  • 石綿に汚染されている可能性のある場所では、常に呼吸用保護具を正しく装着し、絶対に外さないこと。

石綿ばく露を最小限に抑えるための原則

石綿を含有する物質をばらばらにする作業を伴う可能性のある場合は、以下の注意が必要である。

  • どういう予防措置を取るべきか、十分な予防措置を取らないとどのような影響があるのかを知り、理解すること。
  • 自分の受けた訓練研修と自分に与えられた器具によって、どの程度までの作業を行うことができるかを知ること。
  • 石綿ばく露の予防のために必要な管理体制に従うこと。
  • 石綿含有物質に関連する作業を行うにあたり、与えられた作業計画、器具、訓練研修の範囲内で対処しきれない作業が発生した場合に、専門家の支援が得られるよう準備しておくこと。

石綿を伴う可能性のある作業

建物内の作業、器具への作業、車両への作業で、石綿に曝露する可能性のある場合、あるいは石綿含有物質を損傷する可能性のある場合には、以下の注意が必要である。

  • 作業の途中で、石綿含有が疑われる物質に不意に遭遇した場合、または石綿含有物質を誤って損傷した場合に、どういう措置を取るべきか知ること。
  • 不意に石綿に遭遇した場合
    • ○作業を直ちに停止し、責任者に報告すること。
    • ○疑わしい物質の試料を分析する手配(あるいは分析を依頼する手配)を行うこと、または石綿含有という前提で行動すること。

誤って石綿含有物質を損傷した場合は、以下のようにすること。

  • 作業を直ちに停止すること。
  • 作業場を立入禁止にすること。
  • 衣類に粉塵や破片が付着していないかを調べ、付着している場合は、汚染衣類を脱いでプラスチック袋に収め、体をよく洗い(できればシャワーを浴びる)、その後、洗浄施設の粉塵を洗い流すこと。

石綿を伴う低リスク作業

石綿含有物質を扱う低リスク作業(定義は前述)を行う場合には、前述の準備や、前の数章に示す事項が整っていることを確認しなければならない。例えば、第5章で述べた指示書(作業範囲を定め、取るべき予防措置を記したもの)、第7章の適切な訓練研修、第8章の必須器具などの事項である。その上で、以下の注意が必要である。

  • 作業場所を隔離遮断し、他の者の安全を図ること。
  • 石綿含有物質をばらばらにすることを最小化またはしないようにする、作業計画を立てること。
  • 厚さ125μm(500ゲージ)ないし250μmのポリエチレンで表面を覆うこと(このポリエチレンは、作業後に、石綿汚染物として処理する)。
  • 作業は、最小限の人数で行うこと。
  • 空中浮遊石綿繊維の飛散を最小限に抑える措置(吸引機や湿潤剤噴霧など)を用いること。
  • 石綿に対応している、適切な呼吸保護対策(EN 149 FFP3など)に従うこと。
  • 石綿含有物質を破損しないよう努めること。
  • 石綿含有物質が頭上に来る状態での作業を避けること。
  • 石綿対応の真空掃除機(Hタイプ)を使用すること。粉塵抑制方法(湿った雑巾や粘着性の布などで埃を付着させる方法)のみを用いる。箒で掃く、圧縮空気で粉塵を吹き飛ばすなどのようなことは行ってはならない。
  • 頭上にある石綿含有物質を扱う場合(天井タイルを1枚だけ剥がすなど)には、空中浮遊粉塵の飛散を防ぐため、面積1平方メートルほどの簡易な囲い込みを行い、該当タイル範囲を包囲する。囲い込みは、125μm厚(500ゲージ)のポリエチレンで覆った単純な木枠とすることができる。スモークチューブを使って、ポリエチレン覆いの全周にわたりエンクロージャーの密閉性を確認すること(特に継ぎ目の部分が重要)。別の作業者が、明かりや懐中電灯を用いて、スモーク漏れがあるかどうかを確かめる。
  • 次のいずれかの方法により、粉塵があまり飛散しないよう、慎重にネジ、クギを抜くこと。
    • ○粘性の高い糊(壁紙糊)でネジ、クギを覆ってから抜く。または、
    • ○局所排気装置をネジの頭にかぶせ、排気装置を石綿対応真空掃除機(Hタイプ真空掃除機)に接続して、抜く。
    • ○抜いた後のネジ、クギは、石綿粉塵で汚染されたものとして処理する。
  • 石綿を含有したタイルや板は、無傷のまま剥がし、破損、損傷をしないようにすること。
  • 石綿含有物質は、直ちに、ラベルを貼ったプラスチック袋に丁寧に収納すること(剥き出しの廃棄物を積み重ねない)。
  • 廃棄物用の袋は、きちんと閉じることができるよう、一杯に詰め込まないこと。
  • 袋に廃棄物を収めると、袋内の空気に粉塵や石綿が含まれている可能性があるため、袋を閉じるときには、中の空気を絞り出さないよう慎重に封をすること。封をしてラベルを貼った袋は、外から内が透けて見える丈夫なプラスチック袋に収納すること。
  • 袋に入りきらない大きな品物(例えば、全体が石綿で出来た断熱板)の場合は、小さく切断せず、外からラベルがはっきり見える状態で、2層のポリエチレンで品物全体を包装すること(透明プラスチックの外層の内側に石綿・ラベルを貼り付けるなど)。
  • 廃棄物の収納袋を作業場から安全な廃棄物貯蔵施設へ運搬する際、汚染の拡散リスクを最小限に留めること(既定の通行経路を通る、袋を誤って損傷しないよう慎重に取扱う、など)。
  • 石綿含有廃棄物(収納袋に入れたもの、または包装したもの)は、現場から移動する前に、安全な収納庫(施錠可能な廃棄物コンテナーなど)に入れること。
  • 作業場を離れるときは必ず、身体をよく洗うこと。

作業が終了したら、Hタイプ真空掃除機、湿らせた紙タオルなどを用いて掃除し、作業場を元の清浄な状態に戻す。使用済み紙タオルは、石綿汚染物として処分する。

身体保護具や呼吸用保護具を外すときは、衛生手順を守り、自分も他の者も、作業衣に付着している石綿に曝露することがないように注意する。作業衣は、使い捨てのものを用いて、使用後に石綿汚染廃棄物として処分するか、洗浄可能なものを用いて、脱衣する前にシャワーで洗い流すこと。作業衣から粉塵を除去するため、Hタイプ真空掃除機を使う。作業衣の背中に手が届くよう、作業者同士で相手の作業衣を洗浄し合うのもよい。呼吸用保護具は、最後まで装着していること。

  • 長靴を洗浄すること。
  • 作業衣を脱ぐこと。使い捨ての作業衣は、残留粉じんが逃げないよう裏表にして丸める。
  • 湿らせたタオルを用いて、呼吸用保護具の外面を拭くこと。
  • 個人用呼吸用保護具を外す前に、必ず身体などを洗い流し、できればシャワーを浴びること。
  • 作業着を自宅に持ち帰らないこと。作業着は、使い捨てのカバーオールにするか、そうでない場合には、専門クリーニング店で石綿汚染物としてクリーニングする。

低リスク作業の例

低リスク作業を行う場合には、以下の注意が必要である。

  • 警告テープや警告標識などを使用して、他の者の通行を制限すること。
  • 破片は、常に湿らせておくこと。ただし、水が多すぎると汚染拡大の抑制が難しくなるので注意。
  • 破片を、適切な廃棄物用容器(ポリエチレン袋にラベルを貼ったものなど)に収める。
  • 強風時には、注意すること。風が強いと、汚染拡大のリスクが悪化し、屋根の上での作業が危険になるため。
  • 作業後は、丁寧に清掃すること。

作業の全体を通じて、雇用主による作業計画書に従うこと。高所作業では、安全手順を守ること。

届出義務のある石綿取扱作業

準備

届出義務のある石綿含有物質取扱作業(用語の定義は、本ガイドの第12.1.1節)を行うために雇用されている場合には、前の数章で述べた準備を済ませておかなければならない。以下の事項を確認すること。

  • 該当する訓練研修(有効な受講証明書を持っていること)。
  • 自分が使う呼吸用保護具の顔面密着性テスト。
  • 過去2年以内に石綿検診を受診済みであること。

石綿除去を行う場合には、身体保護具と呼吸用保護具を用いなければならない。その際、必ず、器具の設計目的に沿った通りに使用し、また訓練研修の内容に従っていなければならない。身体保護具や呼吸用保護具について、個々の作業への適合性を確認し、使用する際に、正常に機能していることを確認すること。このような確認事項については、雇用主と協力の上、適切な記録に残すこと。

石綿除去

石綿を除去する場合は、以下の注意が必要である。

  • 一度清浄にした表面を再汚染する可能性を最小限に抑えるよう、作業工程を組むこと。例えば、最初に天井と梁、次いで壁、最後に床というように。
  • フィルタを濡らさないようにすること。フィルタが濡れると、濾過効率が下がる。
  • 整理整頓を心がけること。廃棄物は、出たらすぐに片づけること。石綿天井用の支持材にはクギが打ってあることが多いので、他の者による踏みつけを防止するため、クギを残しておかないこと。
  • 石綿含有物質の除去に当り、破損を最小限に抑えること。例えば、AIBタイル1枚にクギが4本打たれている場合は、クギの打たれている角は傷むが、それ以外の角は無傷にして剥がすこと。クギを抜くときは、69〜70ページの「低リスク作業」に示す粉塵抑制方法に従い、1本ずつ抜くこと。
  • 作業計画書内に指定していない方法は用いないこと。
  • 石綿含有物質に対して、電動工具を用いないこと。ただし、リスク評価書と作業計画の中に、特定の限定的な用途が記載してある場合には、その用途に限り例外とする。

身体の除染

石綿除去作業を行う場合には、以下の注意が必要である。

  • 事前に、除染装置の使用方法についての訓練研修を受けておくこと。
  • 汚染物質が囲い込みから漏れ、除染装置の清浄な部分まで飛ばないようにするため、防止手段を知ること。また、身体除染中に石綿に触れないよう、どのようにしたら除染手順を正しく守れるかを知っておくこと。
  • 除染装置の故障(シャワー圧不足、温水不足、換気不良など)の場合には、即刻責任者に通知すること。

建物の解体

石綿含有物質が存在する解体現場で作業する場合には、以下の注意が必要である。

  • 石綿にばく露するリスクを認識すること。
  • 石綿含有物質かどうかを識別する方法を知ること。
  • 解体作業の危険を避けるための手順を理解すること。
  • 石綿を扱う場合には、本ガイドに示す模範的方法を守ること。

作業者と作業環境

石綿にばく露する可能性がある上、身体的に過酷な条件(温度、作業の物理的性質などによる)を伴う作業を行う場合は、以下の注意が必要である。

  • 石綿へのばく露防止対策の持つ重要性を認識すること。
  • 高い温度の影響に注意し、防護のための器具(断熱材、防護服)や措置(換気装置の増設、定期的な休憩、作業前や休憩時の水分補給など)を用いること。
  • 低い温度の状況では、防護器具(ヒーター、必要に応じて防寒着)や措置(必要時に休憩など)を用いること。
  • 石綿にばく露するリスク防止のため、常に本ガイドに示す模範的方法に従うこと。

廃棄物の処分

石綿含有廃棄物を扱う作業の場合には、以下の注意が必要である。

  • 訓練研修を通じて、石綿にばく露するリスクを認識すること。
  • 石綿ばく露を最小限に抑えることの重要性を理解すること。
  • 石綿のばく露リスクを最小限に抑えるため、指示書を遵守すること。
  • 石綿を扱う場合には、本ガイドに示す模範的方法に従うこと。

その他の関係者

石綿取扱作業に関連する作業を行う場合には、以下の注意が必要である。

  • 自分や他者の石綿ばく露の防止・低減を図るための役割を理解すること。
  • 石綿含有物質にばく露する作業を行う場合には、本ガイドに示す模範的方法に従うこと。

モニタリングと測定

石綿除去の作業を行う場合には、以下の注意が必要である。

  • 雇用主および選定した監視機関と協力して、個人モニタリング装置を装着すること、装置が正常に作動すること、サンプリング中の作業手順が通常と変らないことを確認する。
  • パーソナル・サンプリング中に行った作業や手順について、正確な情報を提出すること。
  • 囲い込み部の弱点と思われる個所について、監視機関が漏れ試験で判断でき るよう、作業を支援すること。
  • 除去テストの際、監視機関が囲い込みの精密目視点検を行うことができるよう、作業を支援すること(アクセス用機器を用いるなど)。
  • 空気モニタリング装置について、移動、調整などを一切行わないこと。
  • 監視機関の検査で、作業場の内部や周辺に繊維濃度の高い個所が見つかった場合には、雇用主や管理者の指示に従い、緊急是正措置を取ること。

医学的検査

定期的に石綿にばく露する可能性のある作業の場合には、以下の注意が必要である。

  • 医学的検査を受けること。検査が行われていない場合には、雇用主に要請すること。
  • 石綿作業に関わることが多い状況(例えば、高温下で呼吸用保護具を装着しているような場合)で、安全に作業を行う健康状態であることを確認するため、健康診断の重要性を認識すること。
  • 石綿ばく露が健康に及ぼすリスクについて説明を求める場合には、医師に質問すること。
  • 石綿の影響がレントゲン写真で検知されるまで、10〜15年以上を要するため、
  • レントゲン写真に異常がなくても、必ずしも作業方法が安全とは限らないと認識すること。
  • 医師からの助言は、健康を第一に考えたものであると認識すること。

疫学的研究を行う目的で医療外データを収集することについて、選択権が認められている場合がある。医療外データの収集を認めるよう希望したい。このようなデータ収集により、健康保護プログラムの有効性の確認に役立つからである。

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