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中小企業におけるリスクマネジメント
(中小企業向けリスクマネジメント・ツールキットの紹介)

資料出所:VTT(フィンランド技術研究センター)ホームページ
(仮訳 国際安全衛生センター)

原文はこちらでご覧いただけます。
http://www.pk-rh.com/en/index.html



中小企業向けリスクマネジメント・ツールキットは豊富な情報を含んでおり、また、リスクマネジメントに関心を持つ中小企業向けの種々のツールもこの中に用意されている。この広範なツールキットは、すぐ利用できるもので、多くのリスクマネジメントのニーズに応えた大変役立つものである。

このツールキットは、フィンランドのVTT注) の基本概念をもとに、IOSH(労働安全衛生協会)がイギリス国内向けに修正、開発したものである。

なお、このツールキットの開発に当っては、主に欧州安全衛生機構による資金提供を受けた。


情報とツール

このリスクマネジメント・ツールキットは、中小企業がリスクマネジメントを行うに当っての実用的なツール及び読み易い情報を提供している。

これにより、中小企業はリスクマネジメントを始めるのが簡単になった。リスクマネジメントの各要素は、適度な作業量でカバーできるよう、細分化されている。それによって、ほとんど費用を必要としないでプロセスを開始することができ、結果も早く現れる。

必要に応じて、重要な問題が見過ごされることのないように、リスクはより念入りに検証されることになる。これは、職場のリスクに全体的に対処するためである。

このツールキットには次のようなツールが含まれている。
  • 小冊子(Booklets):3冊の説明書と1冊のワークブックから構成されている。説明書はトピックごとの参考資料となっている。ワークブックは、リスクをより詳細に掘り下げて検証できるもので、主要な危険有害要因が記述され、それを特定することができるシートを含んだものである。更にこれにはリスクアナリシスをより詳しく行う方策、どのようにリスクを管理することができるかの方策も入っている。この冊子には、関連するワークカード、情報カードがある。
  • ワークカード(Work cards):これには特定分野ごとのリスクマネジメントを実施するための17のツールがある。さらに、これには特定の話題情報を含んだチェックリスト及びリスク表も含まれている。
  • 情報カード(Info cards):これはリスクマネジメントの特定分野について6つに要約したものである。情報カードは、主題を把握するのに効果的である。このカードのいくつかはワークカードと関連している。
  • トレーナー用ガイド(Trainers' Guide):中小企業でのリスクマネジメント訓練用指導書である3つの情報カードが含まれている。これはグループ作業におけるトレーナー、監督者用の補助教材として使用される。

仕事に合ったツールを見つける方法

  • ツールキット内容一覧(Toolkit Contents List)を使う
  • フローチャート(Toolkit Flowchart)を使う
  • リスクチャートを利用する
  • 小冊子の中に掲げられている目次を使う
  • ワークカード及び情報カードの中の「further information(詳細情報)」を使う

どのようにして始めるか

中小企業はそれぞれ異なり、その状況も異なっている。従って、ツールキットを利用してリスクマネジメントを行う際には色々な方法がある。

直面している問題を処理する場合

実際、リスクマネジメントの必要性は、物事がうまくいかなくなってはじめて認識される。緊急の問題は、それ以上の損失が出ないように、常に最優先して処理することが大切である。

結果や現象だけではなく、問題の根本原因を見つけ、処理することからリスクマネジメントを始めるのが良いだろう。ツールキットの中に問題に関係するワークカード情報カードがあるかどうかをチェックする。問題を見分けるためには適切なワークカードに目を通すだけで十分である(最短ルートを見つけるためにはツールキットフローチャートを参照)。

リスクマネジメントに取りかかる場合


今すぐ対処しなければならない問題がない場合は、まずは大まかな脆弱性分析(rough vulnerability analysis)からリスクマネジメントを始めるのがいい。この分析では、会社内の殆どの活動、リスクが簡単にチェックできる。主要なリスクを見つけ出し、これによって最初に行うべきリスクマネジメントの領域を明らかにすることが目的である。リスクマネジメントは、すべての資源、人材が集中された時に、最も有益なものとなるのである。

主たる問題が特定され、企業がどの分野のリスクマネジメントに最初に取り組まなければならないかが決定されたら、いよいよ具体的なリスク対策に取りかかる。リスクの型ごとの情報とツールを活用することで分析が可能となり、適正な管理方法が選ばれることになる。リスクの型に応じた情報とツールの活用によって次のことができる。
  • 脆弱性分析よりも詳しく、原因と結果を明らかにする
  • 個別のリスクの管理方法を明らかにすること
このツールキットは、特に人材、仕事、製品のリスクの管理のために、リスクの型に応じた多様なツールを提供する。

特定された危険有害要因及び広く認められた管理方法はリスクコントロール方法(Risk Management Control Measures)として、シートにまとめられている。管理方法の実行計画が立てられ、責任者が任命される。そして、その運用と効果は監視され、見直される。(ツールキットフローチャートの「partial system(簡略システム)」を参照)


リスクマネジメントの実施

リスクはすべての企業でいろいろな方法で既に管理されている。従って既存のリスクマネジメントのやり方を図示してみることからリスクマネジメントを始めるのも良い。ワークカード「Assessment of a Company's Risk(企業のリスク評価)」は、良い点、悪い点を含めて、それまで企業のリスクマネジメントがどのように行われてきたのかを明らかにするための有効な手段となる。

危険有害要因の特定やリスクアセスメントでは、すべての労働者の参加が大切である。それにより、企業のすべての専門知識や経験が利用できる。しかしながら、企業に新しいやり方が導入される場合には、その機能を確実にするため、コアとなる労働者グループの活用からスタートすることが適切な場合もある。新しい手順や管理方法の採用に当っては訓練をする必要がある(トレーナー用ガイド参照)。リスクマネジメント技法は、個人的に学ぶか、外部の訓練コースの活用によって身につけられる。

ワークカードの使い方

  • チェックリスト:チェックすべき数多くのリスクを含んでいる。リストはリスクの型別である。
    • グループ作業の場合、チェックリストのリスクが会社に関係があるかないかを考える。この場合、不必要あるいは関連がないと思われるものを線をひいて消していく
    • リスク項目が十分調整されているか
    • リストには必要な事項を補足追加する

  •  リスクチャートは、中心となるテーマごとにグループ分けされたリスク一覧である。
    • リスクは思いつくままに書きとめてよい(特別の順番に従う必要はない)
    • リスクを相互に関連づける線を引いてもよい
    • リスクチャートに書き込みをしておくと、後になって思い出しやすい

小冊子「Risk Management Basics(リスクマネジメントの基本)」は、その名のとおりリスクマネジメントの明確かつ簡単な基本書である。これはすべての労働者に適したものである。一度すべての労働者がリスクマネジメントの基本を理解し、運用すれば、大きな利益が企業にもたらされるのである。リスクマネジメントによって、必要に応じて革新的な解決ができるようになるだろう。(ツールキットフローチャートの「full system」を参照)

ツールキットは、原文からダウンロードできます。


注)VTT −−フィンランド技術研究センター(Technical Research Centre of Finland)