このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > フィンランドの労働安全衛生諸機関

フィンランドの労働安全衛生機関

資料出所:「Occupational Safety and Health in Finland」
(訳 国際安全衛生センター)


社会保健省

社会保健省は、予防的な社会および医療政策を通じた社会および医療サービス改善と、国民の福利確保を担当する。

同省は、各行政機関に労働安全衛生に関する実務的指示を与えるだけでなく、労働安全衛生に関する立法と施行も担い、さらにこの分野の研究と国際協力を調整する。

労働安全衛生局は、労働安全衛生に関する立法と改正、研究の調整と研究情報の活用を担当する。また同局は、労働安全衛生監督署を指導し、その実務環境を改善し、監督方式を策定する。

労働衛生管理の立法は、福祉健康促進局の権限である。

労働省

労働省は、労働市場と労働組織の運営を改善し、移民の統合を促進する。政策部は同省の戦略を担当し、もっぱら法律制定、労働および移民政策の策定を任務とする。行政部は、雇用・経済開発センターを通じた労働政策の実施に責任を負う。

労働省は、労働市場組織とともに基本的な労働法を策定する。同省が作成する法律には、雇用契約法、家内労働者雇用法、労働時間法、年間休日法、企業共同決定法、職員基金法、企業管理部職員代表者法、若年労働者法、所得保険法、労働協約法、労働評議会法、労働訴訟法などがある。労働安全衛生に関する法律は、社会保健省の労働安全衛生局の管轄である。

労働省と一体で活動する労働委員会(Labour Council)は、労働安全衛生関連法のうち、労働時間、年次休日、若年労働者、労働安全について解釈を行う。

労働省が調整する全国職場改善プログラムは、各種の職場プロジェクトを支援し、生産性向上と労働生活の質の改善をはかる。また情報と経験交流のための協力ネットワークを創設、維持し、労働生活改善のための研究活用を促進する。

このプロジェクトには、労働省とともに労働市場における各組織と社会保健省も参加している。

労働安全衛生監督署

フィンランドの労働安全衛生監督署は、社会保健省が管轄し、労働安全衛生の具体的監督を実施する行政機関である。監督署は、事業者と労働者に対し、労働条件と雇用に関する規制適用の指示と助言を行い、職場での順守状況を監督する。

労働安全衛生監督署は、管轄下にあるすべての職場とその他の場所に立ち入り、労働安全衛生監督に必要な文書を閲覧する権限をもつ。必要な場合、事業者に職場の労働安全衛生上の欠陥是正を命ずることができる。

監督官は、企業秘密、労働者の健康、さらに職場から監督要求が提出された場合はこれについて、秘密を保持する義務がある。

フィンランドは、11の労働安全衛生監督署の管轄区に分かれる。監督署の職員は約450人で、うち350人が労働安全衛生監督官である。フィンランド労働安全衛生監督署は、約24万箇所の職場を監督し、そのうち3万箇所近くは毎年、監督を実施する。監督官は、立案中の職場施設と作業方式に対して意見書を作成する。

フィンランド労働衛生研究所

フィンランド労働衛生研究所は、労働安全衛生の分野の専門機関である。その活動目的は、労働者の健康維持と職場の機能改善にある。この目的を、研究、専門サービス、訓練、情報を活用して追求する。

研究の中心は、労働者の健康、良好な労働環境の要点、労働における肉体的、精神的プレッシャー、さらに化学物質、騒音、熱、放射線による危険、安全な作業方式、労働災害と職業性疾病である。毎年、約230件の研究プロジェクトが実施される。

フィンランド労働衛生研究所の専門家は、良好で、生産性と質の高い労働環境の立案のための指導を行う。具体的には、職場での有害な放射線量の測定、高度な専門職希望者の試験、労働に関する心理学的調査、職場の改善、労働安全衛生に関する行動プログラム策定についての指示などである。

フィンランド労働衛生研究所は、毎年、約300の研修講座を開設する。専門的能力を維持するための研修の継続、高度化などがあり、労働安全衛生の分野で働く人を対象にしている。

フィンランド労働衛生研究所は、独自のニュースレター、ガイドなどの出版物を通じて、新しい研究プロジェクトや最新の問題について情報を提供する。研究所には、労働衛生管理に関する最大の情報センターがあり、誰でも利用できる。

フィンランド労働衛生研究所は、社会保健省が監督する公社である。福祉健康促進部は、研究成果の利用協定の作成を調整する。

研究所の職員は約600名である。中央研究所の他、6箇所の地域研究所(クオピオ、ラッペーンランタ、オウル、タンペレ、トゥルク、ヘルシンキ)がある。

労働コミュニティと協力する労働安全センター

労働安全センターは、健康的で、安全で、収益性のある労働条件と労働コミュニティを促進する。センターの活動は、労働安全衛生、労働衛生管理、収益性、生産性、質を包括的に対象としている。これらを改善するには、経営者と従業員との協力が最良の方法であるということを基本原則にしている。

労働安全センターは、労働条件改善に必要な情報とノウハウを作成、提供する。そのため、以下の方法をとる。

* 研修

毎年、約200の初級、上級、特別コースを開設し、情報キャンペーンを行う。

* 労働コミュニティ・サービス

必要な場合に個別職場での研修、向上への取り組みを行う。

* 出版

様々な活動分野や課題についての一般的なガイド、情報パンフレット、研修資材、スライド・シリーズ、研修用ビデオ。

* 情報

『Tyoyhteisoviesti-Arbetsplatsinfo』(労働コミュニティ問題を扱う雑誌)年4回発行。

* ガイダンスおよび情報サービス

顧客のニーズに合わせた情報収集と助言

* 連絡担当者名簿の維持

民間部門と自治体職場の労働安全衛生と労働衛生管理の担当者約65,000人の住所録。

労働安全センターは、持続可能な成長の原則に基づいて活動している。センターの強みは、幅広い協力基盤、専門性、顧客のニーズへの配慮、安価な製品とサービスにある。

労働安全センターは、中央労働市場組織が管理している。製造業、サービス業、自治体の各種の事業者および労働者団体と緊密に協力して業務を行っている。財源は、フィンランド労働環境基金の資金と、研修、資料の売上金で賄われている。

労働安全センターが所有するTTK-Valmennus Oyが、労働環境、労働能力、労働コミュニティに関する開発・研修サービスを提供する。サービスは市場価格に基づいて提供され、その内容は需要、経験、研究成果に基づいて開発され、個々の顧客ニーズに適合させた製品で構成されている。

労働安全センターとTTK-Valmennus Oyの活動、サービス、製品は、インターネットを通じても提供されている。

フィンランド労働環境基金

フィンランド労働環境基金は1979年に設立された。その管理には労働市場組織が参加しており、社会保健省が業務を監督している。財源は、事業者が拠出する災害保険料である。

基金は、労働環境改善のための研究、開発に資金を提供し、職場の安全性と生産性向上をはかる。また労働安全センターの運営のための資金も提供している。

資金提供の対象分野は、労働環境、雇用、労働生産性である。資金は、研究・開発費、情報・研修費、開発助成金、個人対象の交付金の形態で提供される。

これらの資金は、雇用と労働環境に関する研究・開発プロジェクトに使用し、また研究の成果をユーザーに還元するために使用する。基金は、開発助成金を通じ、この分野の研究・開発の成果を申請者の職場に適用する。その際は外部専門家の支援を得る。

個人も、労働環境に関する修士または博士論文の完成、労働環境改善に必要な研修の継続と発展、または国際会議における研究成果発表のために交付金を受けることができる。

VTT(フィンランド技術研究センター)

VTTは独立した専門機関で、フィンランドの技術水準を維持、向上させ、官民の研究および試験の要請に応えることを任務としている。VTTは貿易産業省が監督している。VTTは、技術種別の9つの研究ユニットに分かれている。

VTTの職員は2,900人以上である。労働安全に関する研究量は、年間延人数にして約140人である。

労働安全促進のための研究・開発は、競争力、品質、生産性を対象とした他の開発活動の一環として行われることが多い。

労働安全についての研究・開発を行うもっとも重要なユニットは、VTTオートメーションで、95人が安全技術とリスク管理の研究に従事しており、約4,500万マルカに相当する研究成果をあげている。

STTV(福祉および健康のための全国製品管理庁)

社会・医療製品管理センター(The Center for Social and Health Care Product Control)は、アルコール製品、タバコ、化学物質による社会的および健康上の危険性を取り扱い、製品に関する規制順守を徹底する。STTVは社会保険省が監督する。

STTVの化学物質部は、化学物質による健康への危険性防止と管理を担当する。

化学物質管理におけるSTTVの業務は、主としてコミュニティの法律に基づいて行われる。具体的には、化学物質と農薬の評価と許容度の判定、分類と表示に関する問題、市場調査、GLP研究機関の監督などである。

製品登録ユニットは、化学物質登録簿の製品登録簿を管理する。ここにはフィンランド市場に出回る危険な化学物質の情報がある。登録簿は、化学物質法に基づき製品管理当局が使用する。

福祉および健康のための全国製品管理庁には71人の職員が勤務しており、うち22人が化学物質部、12人が製品登録ユニットに所属している。同庁は社会保健省、フィンランド環境研究所、工場製造監督センター、全国医薬品局と協力している。

TUKES(安全技術局)

TUKESは、技術的安全性と信頼性を確立、監督、発展させる専門機関である。化学的および工程上の安全性、圧力装置の安全性、電気的な安全性、救出装置、測定器具、貴金属物質などを扱い、これについての監督を行う。
 TUKESの目的は、国民、資産、環境を安全リスクから守り、技術的信頼性を高めることである。監督業務は二つのユニットが担当する。ひとつは工場および施設調査(建物、施設、技術サービス)、もうひとつは製品の安全性の徹底(製品と測定)である。

監督業務の他に、TUKESは国内的、国際的な協力、法律制定、各種の研究・開発プロジェクトにも参加する。また技術的安全性と信頼性に関する情報を積極的に提供する。

TUKESの主たる業務は貿易産業省の分野だが、その他の各省の問題にも取り組む。

STUK(放射線および核安全局)

STUKは放射線および核に関する安全の監督権限をもつ専門機関である。放射線機器、放射性物質、原子力発電所、核物質、核廃棄物の分野を担当する。主たる任務は、放射線の有害な影響の防止および制限である。

STUKは、労働、家屋、居住環境での自然界の放射性物質、これに基づく放射線への暴露、さらに他の機関が扱わない非イオン化放射線の抑制も担当する。

法律には、放射線の監視、労働者の暴露の限界値と健康管理が規定されている。暴露に関する情報は、STUKが保管する線量登録簿に登録される。

STUKは、1,300箇所の職場の約1,2000人の労働者の放射線暴露を監視し、安全に関する指示を出し、放射線を使用する労働者を訓練する。

STUKは、全国的な放射線測定基準を設定する。これにより、国内の放射線測定の厳密性を保ち、国際的な比較を可能にする。

STUKは、国内顧客向けに放射線量測定、放射能の判定などの専門的サービスを提供する。国外での専門サービスは、主としてフィンランド内務省と欧州連合の要請で行う。

STUKの業務で重要なのは、研究、環境における放射線管理、緊急事態対策である。研究成果は科学雑誌、出版物、センターの発行物に発表する。新しい研究プロジェクトについては、機関誌である『Alara』、インターネットのホームページ、小冊子、ガイドで明らかにする。

STUKの職員は290人である。

全国消費者局

全国消費者局の任務は、消費者の資産、健康、法的な地位を保証し、消費者が官民での方針決定と市場に参加する可能性を高めることである。

また、製品安全法の順守状況の監視も担当する。抜き取り検査方式による市場調査を通じ、消費者製品とサービスの安全性を確保する。

多様な管理方式を採用することで、市場調査の有効性を確保している。具体的には、製品の安全性調査、関税研究所と合同での市場調査標本の試験、苦情と通告への対応、監督機関と合同での市場調査プロジェクトなどがある。

製品が危険、または安全性に欠陥があると判断された場合、全国消費者局は企業と交渉して欠陥の是正、または製品の販売中止を求める。また販売禁止を決定し、違反した場合の罰金を科し、いわゆる回収手続きを命じて市場から危険な製品を排除することができる。

主たる管理対象製品は、個人用保護具、玩具、子供向けアクセサリー、織物、香水、スポーツ・レジャー用具、さらにフィットネスセンター、アミューズメントパーク、スキー場、公園などの各種消費者向けサービスである。

製品安全法は補助的な性格のもので、特別法(医薬品、食品などを対象)が適用される製品には適用されない。これらの製品は、それぞれ独自の監督機関が管理する。

市場調査は、消費者と企業への情報提供で完了する。また州政府は、全国消費者局と締結した調査結果に関する協定に基づき、独自の市場管理を行う。

全国消費者局が市場管理を行う際に協力する州政府、自治体の衛生監督官は、販売現場や、製造業者と輸入業者の倉庫で監督を実施する権限をもっている。

災害保険機関連盟

災害保険機関連盟は、法定災害保険を販売する保険機関同士の協力が必要な業務、その他、法律が定める業務を行う。またフィンランドが締結した国際協定の結果、個人の居住場所の保険業務を引き受ける保険機関のための業務にも携わる。

連盟の中心的任務は、保険制度適用の統一性確保、法定災害保険の収益確保、労働安全衛生に関する情報作成、欧州保険市場開放に伴なう法定災害保険業務への影響調査、法定災害保険の内容に関する情報提供である。

連盟が行う業務上の死亡についての調査は、中央労働市場組織、保険会社、労働安全センターの各代表者で構成する調査委員会が指示する。年間、30件から40件の業務上の死亡を調査している。調査報告書は、職場の労働安全衛生担当者とその他の専門家に提出する。

業務上の死亡報告書は、部門別調査グループによる職場訪問、労働安全衛生当局と警察が作成した書類に基づいて作成する。定期的な調査報告書に基づき、産業部門分析と概要が作成される。

連盟の労働安全衛生に関する活動は、労働市場組織、保険業界で構成する労働安全衛生委員会が指導する。委員会は、保険業界の労働安全活動を調整する。また、連盟が作成した労働災害と疾病の統計(SAMMIO統計)に基づき、最新の研究と、報告書のニーズについての方針を決定する。

労働環境勲章法に基づき、災害保険機関連盟は労働環境勲章委員会の事務局の業務も担っている。具体的には同勲章などの受賞者の情報、勲章の申請者および受賞者との連絡、年間特別功労勲章の授賞式の準備などである。