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フランスの安全衛生団体

(資料出所:国際安全衛生センター海外調査より)



Institut national de recherche et de sécurité (INRS−国立安全研究所)



INRSの全体機構・予算・活動等についての概要

 INRSは、1947年に設置された国立安全研究所(INS)を前身として、1968年にナンシーに労働災害および職業病防止のための研究センターの設立を機に、INRSとして発足した組織であり、国民健康保険基金(CNAM)からの指示により、策定された災害防止/職業病予防施策の具体的推進を果たす役割を担っている。

 実際の業務は、具体的な問題解決を必要とされる事案に対して、地方健康保険金庫(CRAM)と連携を取って実施されることが多く、その活動内容は

  1. 調査・研究
  2. 技術相談・技術支援・コンサルティング
  3. 情報提供・広報・安全衛生キャンペーン
  4. 教育・訓練・研修

の4つで代表され、各々の活動割合を経費で見ると下記の通りである。

  1.    調査研究 4割(約1億6000万フラン:32億円)
  2.    技術相談 3割(約1億2000万フラン:24億円)
  3.    情報提供 2割(約8000万フラン:16億円)
  4.    訓練研修 1割(約4000万フラン: 8億円)


また、これらの活動の具体的内容は、下記に示す通りである。

  1. 調査/研究

    ・ プロジェクトの調査、研究成果の応用、・科学技術的調査、研究
    ・ 災害防止器具、手法、手順の企画、検証、・科学技術出版、会議

  1. 技術相談/技術提供/コンサルティング

    ・ 技術、医療情報提供、・災害防止基準作成、・検定、依頼実験、
    ・ 化学物質、保護具、危険機械類制御に関する特別プロジェクト

  1. 情報提供/広報/キャンペーン

    ・ 国レベルのキャンペーン、・定期、不定期の出版、・データバンク
    ・ 講習会、会議の設営

  1. 訓練/教育/研修

    ・ 安全管理者のための訓練コースの設営、・通信教育
    ・ 学校における安全教育、教育機器の開発

 これらINRSの活動は、現在は1998−2002の5年間の中期計画のもとで進展中であり、これらの活動の詳細は、INRSの最高決定機関である評議会(Conseil d'administration et les commissions : Board of direction and committees)により決定される。この評議会にはINRS幹部メンバーと、経営者団体および労働者側団体の代表(それぞれ9つ)によって構成されている。

 INRSの全体組織は、総理事長の下に、パリセンター、ナンシー研究センター(ヌブメゾン研究室を包含)とが設けられており、各々のセンターで上記の4つの業務を特化した形で活動を行っている。
 パリセンターは本部オフィスを兼ね、総理事長・パリセンター理事長の指揮のもとでINRS全体の事務管理業務のほか、予防応用部門(Direction des Application Prevention)の下で、上記活動のうち2・3・4の情報提供、技術相談、訓練・研修を主な業務として行っている形になっている。実際の4.訓練・研修部門の活動、2のうちの提供情報作成部門の活動は下記のナンシー研究センターで行われている。
 
ナンシー研究センターは上記の活動のうち、専ら1の研究活動を担っており、ナンシー研究センター理事長・ナンシー研究センター研究所長の指揮のもと(参考資料4)で活動している。また、ヌブメゾン研究室は、ナンシー研究センターの配下で、1の研究活動のうち、認証・検定を主体とする業務とその関連研究業務、さらに4の訓練・研修に係る業務を行っている。

 各々のセンター・研究室の間には密接な連携と協力体制が取られている。1998年現在で、職員数は約600人おり、パリセンターに約200人、ナンシー研究センターに約400人が在籍している。



ナンシー研究センターにおける研究組織

 ナンシー研究センターでは、調査/研究を主体とした業務を行っており、現況では、下記の11〜12の研究部に分かれて研究業務を行っているようで、それぞれの研究員数は下記の通りである。

安全管理・リスク評価(GS と略称) 部員 4名
産業心理学・人間工学(EPI 〃 ) 部員15名
  2−1:労働現場における人間工学研究グループ(EPTと略称)、
  2−2:組織・システムにおける人間工学研究グループ(EDSと略称)、
  2−3:マンマシンシステムにおける人間工学(EFOと略称

化学災害の管理・評価(EPR 〃 ) 部員60名
電気システム安全  (ESS 〃 ) 部員10名
響・振動 (MAV 〃 ) 部員18名
機械・保護具 (MDP 〃 ) 部員32名
境心理学(PE  〃 ) 部員21名
実験産業中毒 (TIE 〃 ) 部員30名
産業化学物質の代謝 (TMPC 〃 ) 部員25名
10 熱・換気(TV  〃 ) 部員15名
11 疫学(EE  〃 ) 部員11名


 2−1の研究グループでの「建機やトラックのオペレータの視野に関する研究」、2−2の研究グループでの「交替勤務を伴う現場における作業グループ間のコミュニケーションに関する研究」など産業安全研究所において現在進行中の研究課題と共通するものも多く、大変興味深かった。

 上記のコミュニケーションに関わる研究課題が取り上げられている背景には、フランスにおける雇用政策(雇用創出・ワークシェアリング)から「35時間/週」労働制が導入されていることがある。これらの制度導入に伴って、現場における作業の引継ぎの際のコミュニケーションに起因する安全に関わる問題など、実際の企業内で出現しつつある具体的事故事例等への対応が必要とされているためと考えられる。