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フランス 2003年災害統計

資料出所:INRSホームページ

(仮訳 国際安全衛生センター)

原文はこちら

2003年フランス労働災害統計に関するコメント(国際安全衛生センター)

以下に示すフランスの労働災害統計は欧州労働安全衛生機構のホームページで紹介されたものです。

これまで、フランスの労働災害についてはあまり情報がなく、その詳細もわかっていませんでした。

以下に示す統計は、その対象が約1770万人と、フランスの人口約6,000万人から見るとやや少な目です。これはこの統計がCNAMTS(仮訳:労働者職業性疾病保険全国基金)のデータであるため、その加入者に限定されているためと思われます。ただ、前述のようにEUやINRS(フランス国立安全衛生研究所)がフランスの統計として掲載していることから考えると、現在入手できる範囲では最良のデータである考え、ご紹介する次第です。

また、用語の定義についても不明な点がありますが、これはデータ提供者とのコンタクトにより明らかにしていく所存です。

他にも例えば、職業性疾病のなかで、「アスベスト粉じんによる疾患」と「アスベスト粉じんの吸入の結果発症する疾患」、或いは「重量物による腰の慢性疾患」と「振動による腰の慢性疾患」のように、違いがよくわからないもの、ほんとうにそこまで区別できるのかというものもあります。

このような疑問はありますが、前述のように、これまでになかった新情報という観点からご紹介するしだいです。この点ご了解のうえご覧いただければ幸いです。


2003年統計

2003年の労働災害、職業性疾病の統計がCNAMTS(労働者職業性疾病保険全国基金)から発表された。2003年の特徴は重大災害の増加と認定職業病件数の増加が継続していることである。これは筋骨格系障害の増加が関係している。

 
労働災害に関する主な数字

労働災害

職業性疾病

交通災害


CNAMTSは2003年の労働災害、職業性疾病の統計を発表した。2003年は、9つの全国技術委員会で1,760万人の労働者をカバーしているが、この数は若干減少している。



 労働災害に関する主な数字

2003年には、9つの全国技術委員会の担当内で発生した休業災害は5.1%減少したが、重大災害は3.8%増加した。補償の対象となった職業性疾病は、初めて増加し、2002年に比して10.1%の上昇となった。休業を伴う交通災害は7.5%減少した。

労働災害件数の推移
 

2002

2003

変化

全国技術委員会

労働者数

17,673,670

17,632,798

- 0.2 %

 

労働災害

休業災害

759,980

721,227

- 5.1 %

身体障害を伴う労働災害

47,009

48,774

+ 3.8 %

死亡災害

686

661

- 3.6 %

一時的就労不能による損失日数

35,123,699

36,097,299

+ 2.8 %

一時的就労不能の平均日数

46.2

50.0


身体障害の等級積算

478,832

488,635

+ 2.0 %

平均障害等級

10.2

10.0


頻度指標

43.0

40.9

- 4.9 %

頻度率

25.4

26.9

+ 5.9 %

一時的就労不能の重大さ率

1.17

1.35

+ 15.4 %

一時的就労不能の重大さの指標

16

18.2

+ 13.8 %

 

職業性疾病

規定された疾病

31,461

34,642

+ 10.1 %

身体障害を伴う疾病の件数

13,444

15,713

+ 16.9 %

死亡

426

485

+ 13.8 %

一時的就労不能による損失日数

5,148,497

6,347,481

+ 23.3 %

一時的就労不能等級積算

239,378

266,554

+ 11.4 %

 

交通災害

休業を伴う交通災害

89,592

82,859

- 7.5 %

身体障害を伴う交通災害

9,776

9,806

+ 0.3 %

死亡災害

615

508

- 17.4 %

一時的就労不能による損失日数

5,555,341

5,626,334

+ 1.3 %

一時的就労不能等級積算

159,021

147,365

- 7.3 %

一時的就労不能の継続期間

62.0

67.9


一時的就労不能等級の平均

16.3

15.0


■ 労働災害

休業を伴う労働災害の数は721,227で2002年より, 5.1% 低下した。この数字は、頻度指数が2002年には1000人あたり43件であったものが、2003年には40.9であったことを示している。身体障害を伴う労働災害は48,774件で、3.8%上昇している。死亡者数は661で3.6%の減となっている。

これらの災害は一時的就労不能による損失日数36,100万日及び489,000ポイントにのぼる身体障害の原因となるものである。これらの数字ははっきりした傾向を示しているとは言えない。頻度指数は低下しているが、一方頻度率は増加して、100万労働時間あたり26.9件の休業災害が発生している。
この頻度率の上昇は輸送、通信、サービス、一時的労働(travail temporaire)の業種で顕著である。

業種による災害リスク
全国技術委員会
労働者
休業災害
労働災害−
一時的就労不能
一時的就労不能日数
身体障害の等級積算
死亡
金属
2,049,023
92,609
6,557
3,912,658
58,252
57
建築及び公共工事
1,306,410
119,681
9,797
6,905,362
114,274
181
輸送、配送、通信
2,082,451
94,310
6,539
5,260,946
72,678
146
食品
2,244,554
127,054
6,307
5,691,793
56,853
51
化学、ゴム、プラスチック
510,470
18,714
1,392
851,901
13,713
20
木材、家具、紙・ダンボール
681,046
39,447
3,062
1,864,263
30,107
26
商業
2,272,957
58,727
4,310
2,997,874
41,652
54
サービス業T
3,625,801
41,328
3,021
1,835,856
27,274
35
サービス業U及び一時的な仕事 
2,860,086
129,357
7,789
6,776,646
73,832
91
全国技術委員会計
17,632,798
721,227
48,774
36,097,299
488,635
661
事務所及び特別カテゴリー
330,567
7,800
858
609,461
9,013
11
フランス
17,963,365
729,027
49,632
36,706,760
497,648
672


業種別にみた労働災害の頻度及び重大さ
全国技術委員会
頻度指標
頻度率
重大さ率
重大さ指標
金属
45.2
27.7
1.17
17.4
建築及び公共工事
91.6
56.0
3.24
53.5
輸送、配送、通信
45.2
31.0
1.73
23.8
食品
56.6
36.3
1.63
16.2
化学、ゴム、プラスチック
36.6
23.0
1.05
16.8
木材、家具、紙・ダンボール
57.9
36.0
1.70
27.4
商業
25.8
16.7
0.85
11.8
サービス業T
11.4
8.0
0.36
5.2
サービス業U及び一時的な仕事
45.2
31.3
1.64
17.8
合計
40.9
26.9
1.35
18.2


災害の主原因
原因
休業災害
身体障害を伴う災害
死亡
同一平面での転倒
162,460
9,748
19
墜落・転落
91,372
8,427
89
マニュアル・ハンドリング
249,043
14,927
15
移動物体
42,325
2,147
28
機械によるハンドリング
26,608
1,639
31
車両
21,433
2,901
201
機械
25,354
2,826
11
土木機械
970
147
4
工具
48,466
2,046
1
電気
837
87
6
各種機器
12,470
1,197
15
その他
39,889
2,682
241
合計
721,227
48,774
661

■ 職業性疾病

補償が行われた職業性疾病は、初めて前年を上回り、2002年の31.461件から2003年には34.642件となって、3.181件の増加となった。このうち、15.713件は身体障害を伴うものであり、485件は死亡であった。

職業性疾病:
全国技術委員会
職業性疾病
身体障害を伴う職業性疾病
一時的就労不能日数
身体障害の等級積算
死亡
金属
4,791
2,335
893,785
36,028
35
建築及び公共工事
3,315
1,669
708,123
24,318
19
輸送、配送、通信
1,198
537
254,645
7,141
7
食品
5,398
1,488
1,149,231
15,636
0
化学、ゴム、プラスチック
1,262
573
255,044
10,063
16
木材、家具、紙・ダンボール
2,527
1,116
561,749
16,269
15
商業
1,100
497
238,179
5,975
3
サービス業T
808
337
154,712
3,970
6
サービス業U及び一時的な仕事
2,726
914
567,293
9,193
4
全国技術委員会計
23,125
9,466
4,782,761
128,593
105
事務所及び特別カテゴリー
11,517
6,247
1,564,720
137,961
380
フランス
34,642
15,713
6,347,481
266,554
485

関節周囲の疾患が頻発しており、認定されたものの68%を占める23.672件が関節周囲の疾患である。腰痛は、第97表(421件)、第98表(2.260件)を作成する前は二義的なものであったが、それ以来は職業性疾病の第3位の要因となっている。全体では筋骨格系障害が職業性疾病の四分の三を占めている。アスベストに関係した疾病すなわち第30表、第30-2表(それぞれ4.366件、652件)も職業性疾病の重要な部分を構成しており、過去のばく露を反映して大幅に増加している。

主要な職業性疾病の推移

表番号

表の名称

2001

2002

2003

57

関節周囲の疾患

15,912

21,126

23,672

30

アスベスト粉じんによる疾患

2,984

3,939

4,366

98

重量物による腰の慢性疾患

1,798

2,251

2,260

30bis

アスベスト粉じんの吸入により発症する疾患

370

555

652

42

騒音による疾患

494

543

632

97

振動による腰の慢性疾患

383

424

421

65

アレルギーによる湿疹

304

365

364

66

アレルギーによる呼吸器疾患

255

322

309

25

珪石吸入により発症するじん肺

235

293

281

79

関節の慢性疾患

171

231

254

8

セメントによる疾患

202

190

199

69

機械工具の振動により発症する疾患

172

167

187

 

職業性疾病合計

24,220

31,461

34,642


■ 交通災害

労働者の数はあまり変わらなかったにもかかわらず、休業を伴う交通災害は7.5%減少し、2002年の89.592から2003年には82.859となった。一時的就労不能による損失日数はほぼ同じで550万日であった。一時的就労不能であった期間は労働災害の場合が50日であるのに対し、交通災害では68日であった。身体障害を伴う交通災害は2003年は9.806であった。身体障害の等級積算は7.3%低下した。障害等級の平均は交通災害の場合15であるのに対し、狭い意味での労働災害の場合は10.0であった。死亡事故は2002年の615から2003年には508となり、17.4%という顕著な減少となった。

業種別に見た交通災害

全国技術委員会

休業災害

身体障害を伴う災害

一時的就労不能日数

身体障害の等級積算

死亡

金属

8,521

1,106

584,115

18,934

77

建築及び公共工事

6,706

752

499,138

14,024

60

輸送、配送、通信

7,646

1,012

582,880

16,775

59

食品

14,024

1,434

971,631

23,494

82

化学、ゴム、プラスチック

1,634

254

120,814

4,125

16

木材、家具、紙・ダンボール

2,651

336

211,336

5,217

16

商業

9,165

1,128

583,544

14,479

46

サービス業T

12,579

1,513

653,085

16,982

46

サービス業U及び一時的な仕事

17,959

1,901

1,219,661

28,628

96

全国技術委員会計

80,885

9,436

5,426,204

142,658

498

事務所及び特別カテゴリー

1,974

370

200,130

4,707

10

フランス

82,859

9,806

5,626,334

147,365

508

www.inrs.frホームページからの抜粋