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韓国の業務災害補償保険

資料出所:労働部発行「Labor Administration」
(訳 国際安全衛生センター)


1. 背景

業務関連の負傷を防止することは、使用者の中心的責任のひとつである。しかしながら、業務災害の場合、民事の申立てでは手続きが複雑で費用が掛かりすぎることから、業務関連の負傷に対する災害補償が迅速に行なわれなかった。

1953年労働基準法の下で、業務関連の負傷に対する使用者の責任が明記された。しかし、こうした条文の明記でも依然として迅速で公正な補償を確実なものとすることができなかったことから、政府は、業務関連災害に対する使用者の補償と負傷した労働者の迅速かつ公正な補償金の受け取りを確実なものとするために、業務災害補償保険制度の実施に着手した。

同法によると、政府は使用者から徴収した資金で負傷に対して迅速かつ公平に補償金を支払わなければならない。また、政府は保険制度を設立・運営し、業務災害の防止に向けてさまざまな活動を行なわなければならない。これらの活動は労働者の福祉水準を向上させ、労働者を業務災害から保護するだけでなく、補償による急な負担を相殺する補完的要素としての役割も果 たしている。

1995年5月1日、政府は韓国勤労福祉公団(KLWC)の運営の専門性と効率性を高めるために、業務災害補償保険の業務を同公団に委託した。


2. 業務災害補償保険

A. 業務災害補償保険の範囲

業務災害補償保険法(IACIA)は従業員5人以上の企業にあまねく適用されている。

<業務災害補償保険の範囲>

[表7-1] (単位:人)

年度

対象企業の従業員数

事業所数

労働者数

1964

500

64

81,798

1969

50

3,696

683,377

1982

10

54,159

3,356,977

1990

5

129,687

7,563,655

1994

5

154,820

7,058,704

1995

5

172,871

7,273,132

1996

5

210,226

8,156,894

1997

5

227,564

8,236,641

1998

5

215,539

7,582,479

出典:Ministry of Labor, "1999 Yearbook of Labor Statistics"


B. 保険基金

KLWCは当該企業に保険料を請求することにより保険費用を賄っている。労働者は保険に関わる費用については一切負担の義務はない。


C. 保険給付金の種類

<業務災害補償保険給付金>

[表7-2]

給付金の種類

給付金の水準

医療

4日間以上の医療費全額

病気休暇

治療のために労働できない場合、1日当り平均賃金の70%が支払われる。

障害

労働者が治療後に障害を持つようになった場合、一括金または年金で補償金を受け取るものとする。
年金適格者:1級(平均賃金329日分)、2級(平均賃金291日分)、3級(平均賃金257日分)
一括金適格者:8級(平均賃金495日分)〜14級(平均賃金55日分)
年金または一括金の適格者:4級〜7級

遺族

労働者が死亡した場合、遺族は年金か一括金のいずれかを受け取ることができる。
一括金:平均賃金1,300日分
年金:基礎額(年間基礎賃金額の47%)に付加額(受取人1人当り5%の付加、但し最高20%)を加えた総額

疾病補償年金

治療期間が2年経過後、労働者の肺に機能障害がある場合、病気休暇給付金の代わりに、年金を受け取るものとする。1級(平均賃金329日分)、2級(平均賃金291日分)、3級(平均賃金257日分)

葬儀

葬儀給付金は平均賃金120日分とする。


<保険給付金支払額の動向>

[表7-3]

(単位:100万ウォン)

年度

総額

医療 

病気休暇

障害

遺族

葬儀

疾病補償年金

1994

998,563

249,186

303,595

268,148

144,768

13,305

20,561

1995

1,133,577

279,418

357,982

295,680

160,912

13,981

25,557

1996

1,355,337

342,974

435,729

347,751

179,502

16,598

32,782

1997

1,556,042

396,736

478,645

422,470

198,638

18,372

41,182

1998

1,451,066

379,668

399,881

435,633

168,701

15,389

51,794

出典:Ministry of Labor, "1999 Yearbook of Labor Statistics"

 

3. 負傷労働者の福祉の向上

A. 業務災害保険施設の設立と運営

政府は負傷労働者のできる限りすみやかな職場復帰を支援するために、適切で専門的な医療・訓練サービスを提供する業務災害保険施設を設立し、運営している。1995年4月7日、政府は、韓国勤労福祉公団が1977年6月2日以来運営してきた業務災害保険施設の運営をさらに効率化するために、業務災害医療サービスセンターを別 法人として設立した。同センターは負傷労働者に良質な治療を迅速に提供するために、医療施設が不足し、業務災害が多発する鉱山地区や工業団地に特別 な病院を開設し、運営してきた。また、同センターは、職業訓練施設を設立・運営し、負傷労働者ができる限りすみやかに社会復帰するために必要な技能を取り戻すのを支援している。これらの保険施設で現在運営されているものには、総合病院(6ヵ所)、医療センター(9ヵ所)、技能回復エンジニアリングセンター(10ヵ所)などがある。


B. 負傷労働者の生活安定化に向けた支援

政府は業務災害による死亡や重度障害のために働くことのできない労働者の家族を支援するために、生活安定化資金の貸付けを行なうとともに、負傷労働者の児童に奨学金を支給している。1998年は、5,495人の学生に総額40億ウォンの奨学金が支給され、748人の負傷労働者の家族が30億ウォンを受け取っており、1987年から1998年までの給付金は対象者7,521人、総額407億ウォンに上った。このように、業務災害保険制度は就業中に負傷した労働者を対象とした総合的社会保障制度として定着してきており、単に障害保険としての性格を持つものだけではなくなっている。