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韓国の女性労働政策

資料出所:資料出所:労働省(現地呼称労働部)発行「Labor Administration」
(訳 国際安全衛生センター)

1. 女性雇用の現状

韓国では経済活動への女性の参加が着実に増加傾向を示してきたが(1980年の42.8%、1990年の47.7%から1997年には49.5%へ)、他の先進国に比べるとまだ低い状態にとどまっている。特に、出産・育児期(25〜34歳)の女性の経済活動参加は他の先進国より20〜30%低い。

<韓国における女性の経済活動参加の動向>

年度

1980年

1990年

1995年

1997年

1999年9月

経済活動参加率

42.8%

47.7%

48.3%

49.5%

48.9%

出典:Women Worker's Policy Bureau, Ministry of Labor


<1998年の韓国女性の年齢層別参加率>

年齢層

20〜24

25〜29

30〜39

40〜54

55

経済活動参加率

61.0%

51.8%

53.1%

60.6%

36.1%

出典:Women Worker's Policy Bureau, Ministry of Labor

労働省はこうした韓国人女性の低い参加率を何とかしようと、女性労働者を対象としたプログラムや施策を立案し、実施してきた。これには、就職斡旋などの雇用サービスの推進、女性の雇用拡大を目的とした職業能力開発の強化、募集から退職にいたる雇用全般 において女性に対する性差別を撤廃するための女性労働者の労働条件改善、女性失業者の特定ニーズを対象とした失業対策の実施などが盛り込まれている。


2. 雇用における性の平等の改善

均等雇用法は1987年に制定された。この法律では、募集、採用、賃金、教育、配属、昇進、退職、解雇、職業訓練などにおける性差別 を禁止している。


A. 募集・採用における性差別の撤廃

1991年、銀行と大企業は、雇用規則に対して自己監査を実施し、規則に性差別 条項がないかどうかを確認するように政府の指導を受けた。それ以来、こうした政府の指導は中小企業をも対象にするようになってきた。性差別 的な慣行を行なっていたことが明らかになった企業は、違反事項を改善するように指示を受けてきた。1999年は、正社員30〜49人の企業が政府の指導の対象となっている。

募集・採用における性差別の撤廃に向けたもうひとつの活動が、国内の主要日刊紙に掲載される募集広告を対象とした年二回の監視活動である。政府は広告中の性差別 表現に対して是正命令を出している。

同一労働に対する同一賃金という原則が法律に盛り込まれた1995年以降、仕事を行なう上で必要とされる技能、関与度、責任、労働条件などの要素を用いて仕事の価値を評価するようになってきた。企業は仕事について評価を行う際に、社内苦情処理機関の労働者代表の意見を聴取することが義務付けられている。


B. 女性労働者の不当解雇の禁止

均等雇用法では、性別にかかわりなく労働者を解雇する際に客観的で妥当な基準を用いること、また解雇基準を決定する際に女性労働者の代表が参加することを定めている。また、この法律では、婚姻状況、妊娠、出産を根拠とした解雇または強制退職を禁止している。

全国46ヵ所の地方労働事務所は、「雇用上の女性差別 を通報する専用電話」(1588-7878、市街局番なし)を運営してきた。さらに、女性労働者が雇用削減の対象となりやすい事業所や従業員全体に対して女性が著しく高い比率を占める事業所では、年に二回、特別 雇用均等調査が実施されている。


C. 就業中のセクハラ防止

1999年の均等雇用法改正に伴い、事業者は職場でのセクハラ防止に向けて履行すべき新たな義務を負っている。これらの義務には、労働者を対象にセクハラ防止に関する教育プログラムを年一回実施すること、セクハラを行なった者に対して懲戒措置を取ること、セクハラ犠牲者に対して雇用に不利となる措置を取らないことが含まれている。さらに、政府は就業中のセクハラ防止の重要性に対する労働者と事業者の意識向上を目的に冊子やビデオを制作し、配布してきた。


D. 男女雇用均等思想の普及

1995年以来、毎年10月が男女雇用均等思想の普及に向けた雇用均等月間に指定されている。男女の雇用均等の向上に貢献した人々に賞が授与され、雇用均等に関する政策課題を討議する会議が開催され、こうした思想の普及に向けたPR活動が行われている。


3. 女性の雇用拡大に向けた条件づくり

A. 就業時の育児施設の設立・運営に対する支援

育児の負担を軽減することにより経済活動への女性の参加を促進し、育児の責任による退職を防止するために、就業時の育児施設の設立・運営に対して支援が行なわれている。

育児施設を必要とする中小企業に対しては、雇用保険基金を通 じて年に10ヵ所の育児施設が選定され、各施設に最高2億3,500万ウォンが無償で支給される。施設設立資金が不足している企業に対しては、低利の貸付け(年率3%)が行なわれている。また、保母1人当り月額55〜60万ウォンを支給することにより、育児施設の運営を支援している。

さらに、政府は企業や労働者が集中している地区に公営育児施設を設立することにより低所得労働者の育児費を軽減するなど、女性の雇用拡大に向けてあらゆる努力を行なっている。


B. 育児休暇に対する支援

均等雇用法第11条に基づき、1歳未満の幼児を持つ働く女性には育児休暇が与えられるとともに、育児休暇の終了後、引き続き女性労働者を30日以上雇用した事業者には、労働者1人当り12〜15万ウォンの補助金(退職準備金、健康保険、休暇中の昇給など、事業者の労務費を対象としたもの)を支給することにより、休暇期間中でも女性労働者が継続して雇用されるように支援している。


C. 女性雇用促進に向けた補助金の支給

女性が妊娠、出産、育児などで退職した後5年以内に再雇用した事業者に対しては、労働者1人当り120〜200万ウォンの補助金が支給される。また、雇用安定局に求職を登録した女性世帯主を新規採用した事業者に対しては、6カ月分の賃金の半分(大企業の場合は三分の一)を支給し、女性の雇用を促進している。


4. 女性職業能力開発事業の実施

A. 「働く女性の家」の設立と拡張

全国主要都市に置かれた女性専門訓練機関「働く女性の家」の数を(1998年の35ヵ所から1999年の44ヵ所に)増やすことにより、育児や家事で正規の訓練講座に参加することが困難な主婦に、おもに調理、美容、製パンなど、女性が就職しやすい分野の職業訓練を提供し、高失業率時代の女性の雇用拡大を図ることで女性の雇用を推進している。


B. 無職の女性世帯主を対象とした特別訓練

家族の世話で正規の訓練機会への参加が限られた無職の女性世帯主には、訓練費ばかりでなく最低生活費(月間訓練手当のうち3〜40万ウォン相当)に対しても経済的支援が行なわれる。


C. 公共職業訓練所への女性の参加促進

工芸学校などの公共職業訓練所に通う女性訓練生の比率を徐々に高めるために(1998年の20%から1999年の22%に)、(i)女性応募者に最高10%の特別 ポイントを追加、(ii)ホームインテリア、ファッションデザイン、貴金属細工、コンピュータアニメなど、女性に適した職域の拡大、(iii)フレックス訓練時間制(1日当り4〜6時間)の導入と仮設育児施設の設置・運営を行なっている。

さらに、政府は政府後援の職業訓練(失業者を対象とした再雇用訓練、雇用促進訓練など)に参加する女性に対して、6歳未満の幼児を対象に月額5万ウォンの育児費を支給し、職業訓練への女性の参加を促進している。


D. 女性に対する雇用サービスの強化

失業中の女性を対象としたインターネット・ホームページの運営、女性のための有望就職情報を掲載した各種の情報小冊子の配布、女性求職者を対象とした就職フェアの開催、全国的規模の人材バンク20社における女性専用雇用窓口の運営を通 じて、女性を対象とした就職情報、訓練情報、就職斡旋相談業務が強化されている。