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法的枠組み

資料出所:「Occupational Safety and Health Laws in the United states, Mexico and Canada」
(仮訳 国際安全衛生センター)


メキシコの労働安全衛生法は、内容的には完全な連邦法である。同国憲法は、議会に法律制定の権限を付与し、立法手続きを定め、大統領に実施規則を公布する権限を与えている。

法の実施にあたっては、連邦政府が運営し、政府との業務関係があり、連邦行政区で事業を行っている21の業種および事業者について連邦政府が一元的に責任を負う。その他の業種では、連邦政府の実施当局は下位政府の補佐を受ける。

メキシコは、国際労働機関(ILO)の労働安全衛生関連の条約を、いくつか批准している。憲法には「条約」を最高法規に組み入れる規定があるため、これらは事実上、連邦労働法と同一視することができる。

1931年に制定され、その後、議会で修正された連邦労働法(LFT)は、労災補償の要件、職場の安全衛生などを、基本的な労働法にまとめたものである。連邦労働法は、事業者に職場の安全衛生を確保する義務を負わせている。労働関係当局には、規則の制定、三者諮問委員会(事業者、労働者、政府代表)の設置、問題の調査と解決策の提案、企業合同委員会の活動促進、監督の実施、法令順守の確保の責任を負わせている。

1997年、労働社会保障省(STPS)は、従来の複雑な諸規則に代わる労働安全衛生環境連邦規則(安全規則)」(RFSHMAT)を公布した。同省は、1995年に労働政策に関して国民から幅広く意見聴取を行い、「1995‐2000 雇用・訓練・労働保護プログラム」を発表したが、安全規則はこれに基づいて公布されたものである。

安全規則の目的は、労働安全衛生の規制的枠組みを近代化、簡素化するとともに、労働者の安全衛生と事業者の財産権の双方の保護を強化することにあった。労働者と事業者の責務を明示し、各種の安全衛生規則を定め、多数の新しい、または特殊な措置を規定している。主なものとしては、法令順守状況を調査し、自主的な予防プログラムを促進する民間の「認証機関」の普及がある。

「連邦標準および基準法(Standards Act=基準法)」に基づき、個別課題ごとの技術的基準が「公認メキシコ基準(NOMs)」として公布されている。そのなかには、労働安全衛生に関係のある多数の重要な基準がある。

1998年、労働社会保障省は、「労働法違反に対する監督および罰則のための一般規則(監督罰則規則)」を制定した。安全基準と同様、この監督罰則規則も、1995年の「1995‐2000 雇用・訓練・労働保護プログラム」に基づいて制定された。それまでの規則や職場の安全監督、罰則規定は廃止された。

社会保障法(LSS)に基づき、メキシコ社会保障協会(Mexican Institute of Social Security=IMSS)が運営する多数の労働者のための労災補償給付など、所得補償の制度が整えられている。社会保障法は1997年に大幅な改正が行われた。

罰則と罰則審査の手続きには、連邦財政法、連邦行政手続法、憲法に基づく上訴の規定が適用される。

関連する省庁は、労働社会保障省、メキシコ社会保障協会、労働安全衛生に関する全国諮問委員会(諮問委員会)である。

労働社会保障省は、技術的な労働安全基準を起草し、監督を実施し、罰則を定め、合同委員会の活動を促進し、危険統計を維持し、研究を促進し、情報を普及する。メキシコ社会保障協会は、主たる労災補償制度を運営し、労働社会保障省と調整して予防プログラムを実行する。諮問委員会は、研究を行い、予防対策を提案し、基準案を検討する。諮問委員会は、労働社会保障大臣が議長を務め、メキシコ社会保障協会、関連省庁、事業者団体,労働組合団体の代表で構成される。

その他の機関も副次的な役割を担う。連邦裁判所は、施行に対する不服申し立て、憲法に基づく異議申し立てを審理する。通商産業開発省(通産省)は、諮問委員会を補佐し、検証機関に監督業務を委任した企業の認可を行う。全国基準設定委員会(基準設定委員会)は、あらゆる規制問題を対象とする年次プログラムを公布する。このプログラムに基づいて、技術的な安全衛生基準が策定される。環境・天然資源・漁業省は、職場の安全衛生に関連したものを含め、環境面での危険要因を規制する。保健省も同様に、毒性物質に対する規制の面から、職場の安全衛生に関与する場合がある。調停斡旋委員会(CABs)は、政府代表を議長として、事業者、労働者の同数の代表者で構成され、安全衛生と労災補償支払いなどに関する職場の紛争を審理する。