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事業場における安全衛生委員会のためのガイドブック2
安全の基本概念

労働社会保障省 労働安全衛生総局 / 1999年 初版発行

メキシコ労働社会保障省から発行された安全衛生委員会のためのガイドブックをご紹介いたします。 ここでは主に安全の基本概念について分かりやすく解説されています(訳 国際安全衛生センター)。

(資料出所:GUIA 2 PARA LAS COMISIONES DE SEGURIDAD E HIGIENE EN LOS CENTROS DE TRABAJO - Conceptos basicos de seguridad)


職場における安全とは?

危険を食い止め、評価し、労働災害予防措置を確立する一連の状況をいいます。



業務上の危険とは?

仕事中あるいは仕事が原因で労働者がさらされる災害、疾病を指します。(連邦労働法第473条)



労働災害とは?

勤務中に、あるいは業務に起因して、即座もしくは後に起こる身体的損傷、機能障害または急死を指します。上記症状を引き起こす場所、時間に関しては、いつ、どこにいても問題になりません。

自宅から仕事場、また仕事場から自宅への移動中に起きた災害も含みます。



「職場」の定義はどのようなものですか?


「職場」とは、単に工場やビジネスの行われる屋内だけを指すのではなく、あらゆる場所が含まれます。労働者が当該企業の業務を行う目的で使用する公道、また、会社と自宅の行き来に使われるあらゆる交通機関もこれに含まれます。



労働災害の原因にはどのようなものがありますか?

労働災害には、あらゆる要因が絡んできます。その中でも、いわゆる直接要因と呼ばれるものは、次の2つのグループに分類されます。

  1. 不安全状態:
    場所、機械、器具、工具、及び操作個所にみられる危険度に関係します。 

  2. 不安全行動:
    危険な状況を引き起こし事故に至る人間側の作用による原因。労働災害を引き起こすこの事象は、安全措置もしくは安全規準の明白または暗黙の不履行を必然的にともないます。



頻繁に起こる不安全状態には、どのようなものがありますか

  • 損傷のある建築物、店舗または不適切に設計、建設、設置された構造物、設備。

  • 防火措置ならびに火災予防策の欠如。

  • 不適切な設計、組み立て、補強が必要な機器の設置、もしくはその補強を行うとき。

  • 機器、設備における防護の不適切、欠陥、あるいは欠如。

  • 作業用工具、電気工具、エアー工具、携帯用工具の欠陥または不適切。

    • 保護具の欠陥、不適切または欠如。

    • 整理整頓、清掃などの不足。

    • 安全衛生に関する掲示・標識の不十分、欠如または不適切。




頻繁に起きる不安全行動にはどのようなものがありますか?

  • あらかじめ訓練を行わずに操作を行う。

  • 許可なしで器具を操作する。

  • 不適切な速度で仕事を行う。

  • 安全装置を作動させなくしたり、取り外す。

  • 機械の作動中に掃除したり、油をさしたり、修理する。

  • 動力をONにしたまま、スイッチを切らずにメンテナンスを実施する。

  • 許可なしに乗物あるいは機械装置で移動する。

  • 危険領域を通行する。

  • 台車、荷車、リフトなどに荷物を積みすぎる。

  • 不適切な工具を用いる。

  • 危険な場所で保護具を装着せずに作業をする。

  • 指定された保護具を使用しない。

  • 作業場でふざける。




不安全行動は何に起因しますか?


  • 当該作業に対しての不適格性もしくは訓練不足。

  • 過信による職務遂行。




安全管理は何に役立ちますか?

労働災害・職業病が発生する前に、労働者がさらされている危険を的確に知るのに役立ちます。



安全管理はどのように行われていますか?

各々企業の必要性に応じて定期的に(一日に一回、週に一回または少なくとも月に一回)、点検事項を記載した手引きに従って実施されます。手引きには、その他重要な詳細事項についての注意書きが完全な形で記されていなければなりません。

労働災害・職業病により死亡あるいは生涯に及ぶ身体障害が発生した場合、また、業務過程に変更が加えられた場合、臨時点検が行われます。



労働者はどのようにして安全管理を行うことが出来ますか?

労働環境、及び労働者が業務中に使用する機械、工具、保護具が、本人そして周囲の人にも危険を及ぼさないと当該現場で毎日確認することにより安全管理を行います。



安全衛生委員会は収集した情報をもとに何をする義務がありますか?

点検記録を作成し、法規違反、提起された勧告を記録しさなければなりません。



点検記録をその後どうしますか?

委員会の総括管理者と幹事がサインした後、事業者に提出されます。事業者はこれを12ヶ月間保存し、労働基準行政から要請があればこれを提示しなければなりません。



最も頻繁に発生する労働災害にはどのようなケースがありますか?

  • 自ら何かに衝突する、あるいは追突される。

  • 何かに引っ掛かる、または何かの間に挟まる。

  • 転ぶ。

  • 落ちる。

  • 滑って、あるいは無理をすることにより転ぶ、落ちる

  • 過度の高温あるいは低温にさらされる。

  • 感電

  • 高熱物体、あるいはその表面に接触し、やけどを負う。

  • 有害物質、毒物、その他の物質との接触により、肌もしくは粘膜に障害を引き起こす。また、呼吸器系、消化器系もしくは皮膚を通して体内に入りこみ急性中毒、または死をもたらす。

  • 潜水による窒息。

  • 動物による噛み傷、刺し傷。




労働安全衛生委員会の労働災害に対する役割とは?

災害・疾病の原因を調査し、予防措置を提案し、これが守られるよう監視することです。



なぜ労働災害を調査しなければならないのですか?

災害の発生原因が分かり、再発を防止することができるからです。



労働災害が発生した場合、誰が事件の告知を行わなければなりませんか?

事業者です。



整理整頓、清掃の遵守は、労働災害未然防止にどのように役立ちますか?

事業場の整理整頓、清掃不足はとくに次に挙げる事故の原因になり得るので、常に心がけることが非常に重要です。

火災、爆発、感電、落下、滑り落ち、転倒、身体への過度の負担。その上、整理整頓、清掃を行うことによって、更に快適な環境で作業を進めることができます。



どんな基本的情報を労働者に提供すると、労働災害未然防止に役立ちますか?

 労働者が労働災害未然防止を取り組むには、次に挙げる項目に関しての情報を労働者が得る必要があります。

  • 当該企業の安全衛生方針。

  • 作業の過程、使用する原料、当該企業が生産している製品。

  • 安全な作業工程に関する教育。

  • 労働者がさらされている危険及び職業病に関連する薬剤。

  • すでに存在している危険に対する未然防止措置、及び個人用保護具の使用。

  • 就業規則

  • 消火器及び消火栓の種類、設置場所、警報装置等、またその使用方法、ならびに火災発生時における対処の方法。

  • 非常口

  • 当該企業において、頻発している災害の種類。

  • 応急手当及び救急箱の設置場所。

  • 環境保護に関する法規。




個人用保護具を提供する義務があるのは誰ですか?

連邦規定には、事業者側は労働者の負傷、健康、生命の保護に必要な保護具を供給する義務があると規定されています。また、労働者は、必要である時はいつでも保護具を使用する義務があります。事業者側は保護具を選択するため、労働者がさらされる危険を分析する義務があります。(第101条)。



安全衛生委員会は保護具に関して、どのようなことを監視しなければなりませんか?

  • 危険に対して適切であるか。

  • 必要な時はいつでも使用可能か。

  • 常に衛生及び機能上、最善の状態にあるか。

  • 労働者が適切にかつ適正に使用しているか。




最も頻繁に使用されている保護具にはどのようなものがありますか?

  • 頭部保護
    • 適切な設計、材質の安全用ヘルメット。

  • 顔、目の保護
    • マスク、保護面、通常より強い光線の放射、赤外線、紫外線、機械から保護するあらゆるその他の保護具。

  • 胴体、手足の保護
    • 作業に使用する衣服は綿製で、体を十分に覆うものでなければならず、ゆったりし過ぎたものであってはいけません。

    • 手、指の動きを妨げないようデザインされた、簡単にかつ敏速に取り外し可能な同様の保護具。

    • 非常事態発生時、敏速に取り外しでき、また危険の種類に応じてつくられたゲートル。

    • 安全靴。

    • 危険の種類に応じ、作業に適した材質でつくられた前掛け、エプロン。

    • 腰の後方両側にフックの付いた安全ベルトまたはフルハーネス式安全ベルト。

    • 吊ロープ、命綱は載貨重量2,500 kg.まで耐えうる物体、あるいは構造物に取り付けなければなりません。

  • 呼吸器系の保護
    • 過度の濃度の粉じん、もや、ばい煙、水蒸気、ガス、そして酸素不足から保護するマスクを使用しなければならない。




安全に関する基本ルール10項目

  1. 指示に従って下さい。分からなければ、尋ねましょう。

  2. 危険な状況を改善、または告知しましょう。

  3. 整理整頓、清掃に協力しましょう。

  4. 適切な工具を使いましょう。

  5. けがをした時はすべて報告しましょう。可能な場合には、応急処置を施しましょう。

  6. 許可を得ていてかつ、当該機械に知識がある時のみ、修理しましょう。

  7. 指定された保護具を使用し、適切な服を身につけ、作業に相応しい条件を維持しましょう。

  8. ふざけるのはやめましょう。

  9. 重いものを持ち上げる時は、膝を曲げ背骨をいたわりましょう。

  10. すべての安全ルールに従いましょう。





勧告
  • 委員会の役員は次に挙げる法規関連文書を事業者に要請することをお勧めします。

    • メキシコ合衆国憲法(Constituci_n Pol_tica de los Estados Unidos Mexicanos)

    • 連邦労働法 (Ley Federal del Trabajo)

    • 労働安全衛生ならびに労働環境に関する連邦規定(Reglamento Federal de Seguridad , Higiene , y Medio Ambiente de Trabajo )

    • 事業場における安全衛生委員会の構成及び役割に関するNOM‐019‐STPS‐1993  (NOM - 019 - STPS - 1993 , relativa a la Constituci_n y funcionamiento de las Comisiones de Seguridad e Higiene en los centros de trabajo )

  • STPSはインターネット上のホームページ(http://www.stps.gob.mx)を通じて、労働安全衛生ならびに労働環境に関する連邦規定及びメキシコ政府規準(Las Normas Oficiales Mexicanas)を閲覧できます。 ホームページ上のオプション"Seguridad e higiene" (「安全と衛生」)を選択して下さい。




この出版物は労働社会保障省の発行物です。発行は、労働安全衛生総局の管理のもとで行われました。印刷は、出版・オーディオビジュアルメディアのDocutechシステムで行われました。発行部数は1万部。1999年5月印刷終了。