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ゼロ災プログラム(ZAP)

フィリピンの労働雇用省が中心となって取り組んでいる、ゼロ災プログラムについてご紹介いたします。

資料出所:労働安全衛生センター発行パンフレット「ZAP」
(訳 国際安全衛生センター)

ZAP

ゼロ災プログラム(Zero Accident Program , ZAP)は、労働雇用省(DOLE)の代表的プログラムの一つで、労働安全衛生センター(OSHC)が中心となって取り組んでいます。

労働安全衛生センター(OSHC)は、事態を改善する機会を提供します。センターはフィリピンの職場の安全衛生確保を任務とする政府機関で、1996年にゼロ災プログラム(ZAP)を開始しました。

ZAPは、フィリピン労働者の労働安全衛生を促進するための長期戦略として構想された国家的プログラムで、政府、労働者、事業者の各セクター、非政府組織、学界、専門家グループが立場を超えて協力しています。プログラムは、宣伝普及、能力構築、関係機関ネットワーク、生産性向上との結合という4つの活動を統合したものです。

ZAPの目的

  1. 労働安全衛生の専門家、事業者、労働者が、安全衛生に対する認識を高め、取り組みを強化すること。

  2. フォーマル・セクター、インフォーマル・セクター、政府部門のなかに、労働安全衛生の基準、概念、実践を広めること。



ZAPの構成

ゼロ災プログラムは以下の項目で構成されています。

1.宣伝普及(Advocacy)

ZAPは、政府、労働者、事業者の各セクターが労働安全衛生に対する認識と取り組みを強めるよう、広報キャンペーン、全国的・地域的な事業展開、安全表彰への参加を求めています。

宣伝普及活動の重要な一環として、Gawad Kaligtasan at Kalusugan(GKK)賞を設け、労働安全衛生で抜群の実績をあげた企業と個人を表彰しています。最初の表彰は1997年に行なわれ、第2回は2年後の1999年最終四半期末に、労働安全衛生センターが表彰式を行ないました。GKK関係の資料のなかに、表彰基準とこれまでの受賞者名簿を掲載しています。

2.遵守(Compliance)

関係するすべてのセクターの関心を高めたうえで、もたらされた知識と自覚を、労働安全衛生基準の自主的な遵守という具体的行動に転化します。そのために労働安全衛生委員会の強化、安全パトロールの創設などの積極的な取り組みを進めています。

「遵守」の項目中の「自主的保護プログラム」では、労働安全衛生の重要性を強調するため、プログラムの実施で優秀な成績を収めた参加企業を公的に表彰しています。

表彰の具体的な目的のひとつは、職場の安全衛生プログラムの効果的実施を促すとともに、労働安全衛生の「最良の」実践と理念を適用すれば、生産性と効率が向上することを証明することです。

3.「研修」

労働安全衛生の遵守を促進するため、プログラムを支援または実施する企業の能力構築にも力を注いでおり、労働監督官(labor inspector)、工場管理者、労働者向けの研修資材を開発しています。

4.ネットワークによる連携

ZAPはまた、国内と国外の各種の労働安全衛生機関との連携構築も進めています。労働安全衛生センターを国内ポイントとするPHIL-OSHインフォネットの運営開始は、その重要な出発点になると思われます。

最近、労働安全衛生センターの公式出版物としてPHIL-OSHが刊行され、同センターと労働安全衛生一般の最新動向についての情報ネットワークが拡大される予定です。

5.生産性向上との結合

ZAPが成功するための条件の一つは、工場内の効果的な労働安全衛生プログラムと、生産性の向上が、どれだけ密接に結びつくかという点にあります。

このための具体策として、品質向上サークル(Quality circles)を労働安全衛生委員会と効果的な労働安全衛生プログラムに統合する方法があります。


ZAPの啓発

労働安全衛生センターでは、次のようにZAPへの参加を呼びかけています。

今こそ行動のときです。今、立ち上がらなければ職場の災害をなくすことはできません。それは以下のような事実が示しています。

  1. 毎日、フィリピン労働者48人に1人の割合で職場の負傷者が発生しています。1998年の負傷者合計は86,727人にのぼります。このうち15人に1人が身体に障害を負っています。

  2. 建設現場での転落、危険な機械による死亡と切断事故、煙による人的・物的被害など、最近激増している悲劇的災害は、予防可能という意味から、不必要で無益なものです。

  3. 労働災害は高くつきます。1995年だけで、のべ141,582日の労働日と約960万ペソ(注1)のお金が浪費されたと推計されており、フィリピン経済に負担を強いています。

  4. 毒性化学物質に対する人体の未解明の反応を原因とする特殊な疾病が増加しています。恐るべき「奇病」とされるスティーブンズ・ジョンソン症候群(注2)により、台湾、パンパンガ州で48人のフィリピン人労働者が犠牲になり、労働現場の危険性があらためて認識されました。


今こそ立ち上がろう。ZAPに参加して次の活動に積極的に取り組もう:

  1. 21世紀の職場を、安全で衛生的な環境に変える。

  2. ZAPのウェブサイトと出版物を通じて、労働安全衛生の最新の情報と動向をつかむ。

  3. 職場と地域社会に最も深くかかわる労働安全衛生の問題について、積極的に発言する。

  4. 職場を指導し、人命救助、コスト削減、生産性向上を保証するZAPの原則を取り入れる。


(注1)2000年3月1日現在1フィリピンペソ=2.85円
(注2)高熱を伴って全身の皮膚、眼、口および陰部に緒種病変が現われる病気