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国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > フィリピン 労働安全衛生の現状

1.  はじめに

安全衛生は人権の不可欠な要素だが、われわれのすべてがこの権利をよく認識しているわけではない。 フィリピン人は日常生活でも、リスクや危険を軽視する傾向がある。一例を挙げると、ジープニーのバンパーの上に乗って町を 走ったりするし、運転手は定員以上のお客を乗せることが多い。 われわれは、事故に遭うのは他人であって、自分には危険は及ばないという誤った考え方を、容易に克服できないでいるかに見える。

昨年7月に労働雇用相注1)に就任したビエンベニド・E・ラグエスマ氏はこのことをよく認識し、就任に際しても 「労働者を保護するために基本的安全衛生基準を達成する」ことを、重要な優先的労働政策の一つに掲げた。

ラグエスマ氏は「企業家と労働者の双方に平等に適用される安全衛生カルチャー」を目標に挙げた。 「このカルチャーは職場のリスクを認識し、それらのリスクに対応する準備を整えるものであり、傷害や疾病から労働者を守り、 労働者の自由の基本になる福祉の概念を確立するものだ」と述べている。

同相は労働安全衛生(OSH)は社会的価値の一つであり、あらゆる価値と同じく、家庭、学校、地域社会からスタートし、 ビジョンを達成するのが最善の道だと信じている。若い世代、教師、地域社会の組織と協力を深める必要がある。また労働者や 雇用者との協力も、自身の生活、健康と安全に配慮する形で促進しなければならない。メディアやその他の近代的通信は教育、 訓練の強力な手段となるだろう。

同相はさらに、「事業者にとってOSHについての考え方を変え、OSH設備をコストではなく、労働者が中長期的に生産性の向上で 埋め合わせていく投資なのだと考えるのは、なかなか難しいことだ、それはそうした安全の意識はこれまで産業界で重視されて いなかったからだ、」と述べている。


注1) 労働雇用省(DOLE)はフィリピン労働者の保護、福祉、生活向上などに関する政策、計画、プログラムの策定、管理を行う中心的政府機関である。