このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > シンガポール 職業性疾病に関する調査(1999年)

シンガポールの職業性疾病に関する調査(1999年)
その他の疾病

資料出所:人材開発省発行「Annual Report 1999 Department of Industrial Health」
(訳 国際安全衛生センター)

その他の疾病

1999年には、総計22人の患者が確認された。表は、これらの患者を職業性疾病の種類別に内訳を示したものである。

表 その他の患者の分布
 
患者の種類 患者数
ウイルス感染症 11
悪性中皮腫 6
腰痛 2
硬金属肺病 1
骨髄性白血病 1
熱障害 1
総  計 22


ウイルス(Nipah Virus)感染症

屠殺場でブタに直接接触した総計11人の労働者が、ウイルス感染症に罹っていることが確認された。

このうち9人は脳感染症(脳炎)という形で、また2人は肺炎という形で感染していた。このうち、ブタのせり手であった1人が死亡した。他の者はその後退院した。

一次生産局(PPD)は、感染したブタの輸入を防止する措置を導入している。屠殺場作業員を動物の感染症から保護するためのガイドラインが策定され、実施された。この企業は、適切な個人用保護具を提供し、化学物質に耐性を持つ作業服を着て長時間作業する必要のある作業員に充分な飲料を提供するように指示を受けた。また、作業員に対して、液体がこぼれた際の適切な緊急手順に関して教育を行なうようにとの指示も受けた。


悪性中皮腫

胸膜中皮腫の患者が6人確認された。

2人の作業員は、1960年代に勤務していた同一のアスベスト・セメント製品工場の従業員であった。

3人の作業員は、1940年代から1950年代にかけて船の上で働いている時に、アスベストにさらされていた。

1人はボイラー室でメインテナンス・修理作業を行ない、1人は一般清掃作業員で、1人はパイプ作業員であった。

残りの患者1人は、1970年代に発電所の電気メインテナンス部門に勤務していた電気工であった。


腰痛

男性作業員が自動車部品の箱詰め手作業から腰痛になった。彼の仕事には、部品(重さは数キロから20キロの範囲内)を床から持ち上げ、箱に詰める作業が伴った。この企業は、昇降装置の使用など、持ち上げ作業の危険を減らすための措置と正しい持ち上げ方に関する研修について助言を受けた。

また、エレクトロニクス工場のある作業員(女性)は、電気通信部門へと異動になった後、背中と右肩の痛みが悪化するのに苦しんだ。新しい仕事には、オーバーヘッド・トルクを使用し、1勤務時間帯当り、約750台の携帯用無線電話機にそれぞれ4本のネジを差し込む作業を伴った。事業者は、痛みがさらに悪化するのを防ぐために、彼女を以前の職場に戻すように要請された。


硬金属肺病

過去10年間、木材加工機械用に先端に炭化タングステンを使用した裁断機やのこぎり刃を製造する企業に勤務していた機械製作工に、硬金属肺病の事例が確認された。これはシンガポールで文書に記録された患者としては最初のものであった。この作業員は、コバルトとタングステン(炭化タングステンにはコバルトが約10%含まれていた)を含む冷却水のミストにさらされていた。同じ工場内の他の作業員について検査を行なったが、彼女の他には患者は見つからなかった。大気を検査しても、コバルトのレベルは許容暴露レベルをはるかに下回っていることが示された。個人の感受性が重要な要因であった。この作業員は永続的措置として他の部署に配置転換となり、会社は局所排気装置を取り付け、呼吸用保護具の使用を励行してきた。また、この工場を対象に医学的検査プログラムが実施された。


骨髄性白血病

非破壊検査検査員として勤務していた42歳のベテラン作業員が、電離放射線に9年間さらされた後、急性骨髄性白血病を発症した。彼の累積放射線線量は0.16 Svで、白血病を発症するリスクは10万分の64であった。これは平均的なシンガポール系マレー人男性のリスク10万分の2.8より著しく高いものであった。放射線の危険に対する監督は、放射線保護検査局(RPI)の職務範囲となっている。この種の作業員を対象とした研修講座の開発について、RPIとの間で話し合いが持たれた。


熱障害――塩類欠乏

酸とアルカリの配送会社の作業員(1人)が、塩類欠乏と一致する症状に苦しんだ。彼は以前、塩酸がこぼれた際に、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)で中和することで処理しようとしたことがあった。彼はこぼれた塩酸を処理する際に化学物質に耐性を持つPVC製作業服、呼吸用保護具、手袋を着用していたことから、この作業服の内側で多量の汗をかいていた。約1時間半後、彼は疲れを感じ、めまいがして、嘔吐した。その後、彼は回復している。


労働衛生クリニック

労働衛生局の医師と看護師は、1ヵ月に一度、保健省のアンモーキオ総合病院とゲイラン総合病院の2ヵ所で、労働衛生クリニックを開設している。これにより、労働者は職業性疾病に対する医療をもっと容易に受けることができるとともに、業務関連疾患を一層迅速に通知することができるようになっている。

また、労働衛生局は3ヵ所で専門クリニックも運営している。職業性皮膚病クリニックは国立皮膚センターと共同で運営されており、残りの2ヵ所の職業性肺疾患クリニックはタントクセン病院とシンガポール総合病院内で運営されている。後者は1999年1月に営業を開始した。

1999年には、これらの5ヵ所のクリニックで総計211人の患者が検査を受け、そのうち96人の患者が職業性皮膚炎、2人が職業性喘息患者、2人が石綿肺患者、3人が珪肺患者、1人が硬金属肺患者、3人が化学物質による中毒患者(コバルト、鉛、トルエンが各1人づつ)と確認された。