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シンガポールの職業性疾病に関する調査(2000年)
化学物質中毒と化学物質の過剰な吸収

資料出所:シンガポール人材開発省労働衛生局発行
「Occupational Health Department Annual Report 2000」
(訳 国際安全衛生センター)


化学物質中毒と化学物質の過剰な吸収

2000年には、有毒化学物質の過剰な吸収 22件と、腎臓障害を伴うカドミウム中毒が1件確認された。これらのほとんどは法定の健康診断によって発見されたものである。過剰吸収した労働者たちは、明白な病気の症状も臨床的徴候も示さなかった。

原因物質別の内訳については表4を参照されたい。


表4 化学物質による中毒患者の原因物質別分布

有害化学物質 患者数
金属 カドミウム 1*
1
コバルト 6
非金属    パークロルエチレン 5
トリクロルエチレン 3
有機リン酸エステル 2
トルエン 4
フッ化珪酸ソーダ 1
 総  計 23

* 腎臓障害による中毒

カドミウム

腎臓障害を伴うカドミウム中毒が、カドミウムを含有するフィラーを使用した銀ろう付けに従事する作業員に確認された。彼女は、カドミウム過剰吸収と診断されて追跡調査をを受けている1993年グループの一人であった。工場はその後カドミウムを含有しない銀ろう付けフィラーに切り替えた。このカドミウム含有合金の輸入、販売、使用、製造、輸送、所有ならびに保管は1995年に禁止された。


定期健康診断で鉛を過剰に吸収した作業員が発見された。彼は、鉛−すずインゴットの溶融中に鉛ヒュームに曝されていた。作業場が暑かったのでマスクを正しく着用しなかったことに加えて、作業習慣も悪く衛生にも気を配っていなかったことが判明した。正しい保護具の着用の仕方と身の回りの衛生への気配りについて作業員たちに教育するため、社内ワークショップが開催された。


コバルト

タングステンカーバイド工具の研磨を行う5つの工場から、尿中のコバルト濃度が生物学的限界値を超える作業員が6人発見された。このうち、呼吸障害の症状を示したり肺の疾病に罹ったりした者は一人もいなかった。全員が肺機能は正常で、胸部X線検査も正常であった。2つの工場で、空気中のコバルト濃度が許容暴露限界値である0.02mg/m3を超えていることが判明した。身の回りの衛生に気を配らなかったことと、支給された不適切なマスクを使用していたことが有力な要因であった。経営者は、空気汚染物質の排出を抑制し、呼吸保護プログラムを実施し、この作業に就いている作業員全員を身の回りの衛生に関して教育するよう勧告を受けた。


パークロルエチレン(PCE)

定期健康診断で、PCEを過剰に吸収している作業員が5人発見された。このうち2人は衣類のドライクリーニングに従事し、残る3人は金属部品の脱脂と乾燥に従事していた。過剰吸収の主な原因は、マスクを使用していなかったか使用法が不適切であったこと、PCEの注ぎ足し方が正しくなかったことである。会社は、作業員に正しい作業手順を必ず守らせるよう、また、適切な抑制措置を取るよう勧告を受けた。脱脂工場では、PCEを別のより安全な溶剤に切り替えることに成功した。


トリクロルエチレン(TCE)

定期健康診断で、TCEを過剰に吸収している作業員が3人発見された。金属部品の脱脂にTCEを使用している3つの金属加工会社の従業員であった。経営者は、TCEに曝される作業員全員に身の回りの衛生について教育するよう、また、マスクと手袋を厳格に着用させるよう勧告を受けた。1つの工場はTCEを別のより安全な溶剤に切り替えた。


有機リン酸エステル(OP)

定期健康診断で、OPの過剰吸収が2件発見された。

彼らはライセンスを持つ害虫駆除作業員で、OPの噴霧を行っていた。過剰吸収は、個人用保護具を正しく使用しなかったことと、偶発的に皮膚に接触したことが原因であった。経営者は皮膚吸収と吸入を防ぐための予防措置を講じるよう勧告を受けた。


トルエン

4人の作業員のトルエン過剰吸収が確認された。

このうち2人は、床の寄せ木張り作業に従事する作業員に関する進行中の調査の結果発見された。寄せ木張り床のニス塗りでは、シフト終了時の尿中馬尿酸の最高濃度は、BTLV(Biological Threshold Limit Value)である2.5mg/mlの1.5倍にもなりうる。作業員は、ニス塗りの間マスクを着用するよう勧告された。

別の2人はプリンター・ローラーの洗浄を行う印刷工場の作業員であった。2人とも、頭痛、めまい、疲労、アルコール嫌悪、いらいらのうち、1つまたはそれ以上の症状を示していた。空調された室内の空気中のトルエン濃度は暴露許容値を超えていた。マスクは支給されていなかった。トルエンを0.8%しか含有しない別の溶剤に切り替え、換気システムを改善した後、2人とも症状が消えた。経営者は、吸収缶が有機ガス用のマスクを着用させるよう勧告を受けた。


フッ化珪酸ソーダ(SSF)

水処理プラントの作業員が、身の回りの衛生にあまり気を付けなかったことと作業習慣がよくなかったために、フッ化物を過剰に吸収していることが発見された。彼の仕事はSSFの塊を粉末に砕いてホッパーに充填することであった。経営者は、よい作業習慣と身の回りの衛生に気を付けさせるよう勧告を受けた。