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電磁場には健康への危険はない
スウェーデンの長期的調査で明らかに

資料出所:European Commission発行「JANUS」第27号 p.24
(訳 国際安全衛生センター)



 電力会社の労働者の7人に1人は健康の悪化を経験している。その原因は主に職場での騒音にある。また架線工も腰痛や膝の痛みに苦しむことが多い。しかし、磁場にさらされることと健康への影響との間には、相関がないことが調査で分かった。また磁場には生殖機能を冒し、胎児に危険を及ぼすリスクもないことが判明した。

 スウェーデン電力産業の内部のユニークな研究プロジェクトが、ストックホルムのスウェーデン労働生活研究所によって行われた。研究者は、将来を予想した研究をした。いわゆるコホート(統計上、同一性質を持つ集団)として、選択された従業員グループが、長期に渡り調査された。

 発電所の従業員や架線工を含む700人の労働者が1981年から85年にかけて会社によって募集され、調査の対象になった。3年置きに健康診断が行われ、それと同時期に従業員が経験したことについてのアンケート調査も行われた。この調査に基づいて、労働者の労働条件が判定、評価された。各種のリスク要素、たとえば化学品、騒音、電界、磁場などが、技術の専門家によって測定された。プロジェクトは1995年に終わったが、その時には約460人の労働者が調査グループに残っていた。

早期の警告

 電界や磁場が健康に危険を及ぼすかどうかの問題は、長い間、特にメディアで論議のタネになっていた。最初の研究成果は1970年代にスペインおよびロシアの科学者によって発表された。

 そのため、スウェーデンの研究者はこうした暴露が特定の症候群、たとえば不安、抑鬱症、めまい、頭痛、いらだち、倦怠感、胃痛、不眠症、疲労などと関係があるかどうかを調査した。

 この調査によると、電界と抑鬱症、頭痛、不眠症との間には何の関係もないことがわかった。しかし、磁場は不安、不安定、疲労のリスクを高める可能性があるとされている。症候群を早期に発見することが重要であるため、労働者の血液およびホルモン(コルチゾールやプロラクチンなど)、生物指標(組織のポリペプチド抗原=TPAなど)が分析された。この抗原は腫瘍を早期に発見する上で有効である。

 調査では、電界が体内のコルチゾールやTPAの生産を増やす可能性を指摘していたが、こうした結果はごく慎重に解釈する必要がある。さらに電界や磁場との接触が生殖機能に影響する証拠は何も見出せなかった。

騒音が問題に

 架線工の仕事は重労働で、風や悪天候の中でも作業しなければならない。この業務に長年にわたって従事した場合、労働者の7人に1人は腰痛に苦しめられる。さらに8人に1人は膝、首、肩などに症状が見受けられた。

 全体として、調査対象グループで最も多い症候群は腰痛、頭痛、胃病、肩痛などであった。労働者自身が労働条件の中で最も問題なのは騒音だということを指摘していた。毎日の作業の中で騒音レベルはスウェーデンの閾値を超えていた。騒音の原因はコンプレッサ、穿孔機、掘削機、電動鋸、雪上車などであった。騒音レベルを引き下げるためには、そのための対策プログラムが必要であることが指摘された。

 「この調査プロジェクトの期間中における労働者の健康、福祉は非常に良好だった。電力産業の労働者は他の職種の労働者より病気や災害が多いということはなかった。さらに電界や磁場に起因する症候群は見出せなかった」と、プロジェクトの調査員のシブ・トルンキストは語っている。


*)
コルチゾール−−−−ヒドロコルチゾンとも言う。糖質副じん皮質ホルモン
プロラクチン−−−−黄体刺激ホルモン