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台湾 労働安全衛生法
(現地呼称 労工安全衛生法)

仮訳:国際安全衛生センター



第1章 総 則

第1条 

労働災害を防止し、以て労働者の安全と健康を確保する為、この法律を制定する。この法律に定めがないものについては、他の関係法律の定めの例による。


第2条

この法律で「労働者(原文:労工)」とは、事業者に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

2) この法律で「事業者(原文:雇主)」とは、事業者又は事業の経営責任者をいう。

3) この法律で「事業機構(原文:事業単位)」とは、この法律の適用範囲において労働者を使用する事業の組織体をいう。

4) この法律で「労働災害(原文:職業災害)」とは、労働者の就業に係る建築物、設備、原料、材料、化学物、蒸気、ガス、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、労働不能となり又は死亡することをいう。

第3条 

この法律で「主管機関」とは、中央においては行政院労工委員会、直轄市においては直轄市政府、県(市)においては県(市)政府とする。

2) この法律に関係する衛生事項について、中央主管機関は中央衛生主管機関と共同で処理することとする。


第4条 

この法律は次に掲げる事業に適用する。

 1 農、林、漁、牧畜の事業

 2 鉱業及び土石採取の事業

 3 製造の事業

 4 建設の事業

 5 水道、電気、ガスの事業

 6 運送、倉庫における貨物の取扱い事業及び通信の事業

 7 旅館、飲食、接客の事業

 8 機械、設備のリースの事業

 9 環境衛生サービス業

 10 大衆広報事業

 11 医療保健の事業 

 12 修理の事業

 13 クリーニングの事業

 14 国防事業

 15 その他中央主管機関が命令で定める事業

2) 中央主管機関は、前項第15号の事業については、その一部の職場又は特殊機械、設備を指定して適用することができる。


第2章 安全衛生設備

第5条 

事業者は、次に掲げる事項について、基準に適合する必要な安全衛生設備を設けなければならない。

1 機械、器具、設備等による危害の防止

2 爆発性、発火性等の物による危害の防止

3 電気、熱その他のエネルギーによる危害の防止

4 採石、掘削、積み込み、積み卸し、運搬、貯蔵、伐採等の作業中による危害の防止

5 墜落、崩壊等のおそれのある作業場所による危害の防止

6 高圧ガスによる危害の防止

7 原料、材料、ガス、蒸気、粉じん、溶剤、化学物、毒性含有物、酸素欠乏空気、病原体による危害の防止

8 放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による危害の防止

9 計器監視、精密作業等による危害の防止

10 排気、排液、残さい物等による危害の防止

11 洪水、火災等による危害の防止

2) 事業者は、労働者を就業させる職場の通路、床、階段、換気、採光、照明、温湿度調節、及び休養、避難、救急、医療その他労働者の健康と安全の確保の設備については、的確に企画し、必要な措置を取らなければならない。

3) 前2項に掲げる必要な設備及び措置等の基準は、中央主管機関が定める。


第6条 

事業者は、中央主管機関の定めた保護基準に適合していない設備、器具を設置したり、労働者に使用させてはならない。

2) 中央主管機関は、前項の設備、器具を使用する前に適切な機関に型式検定の実施を委託することができる。型式検定実施の手順、検定機関が有すべき資格条件管理及びその他遵守すべき事項は、中央主管機関が定める。


第7条 

事業者は、中央主管機関が指定した作業場に対し、中央主管機関の定めに従い、作業環境の測定を行わなければならない;危険物及び有害物に表示を掲げ、並びに必要な安全衛生注意事項を明示しなければならない。

2) 前項の作業環境測定基準及び測定者の資格、危険物と有害物の表示並びに必要な安全衛生注意事項は中央主管機関が定める。


第8条 

事業者は、中央主管機関が指定した危険を伴う機械と設備については、監督機関又は中央主管機関が指定した検査代行機関の検査を受け、これに合格しなければ使用してはならない。

2) 事業者は、定められた使用期間を過ぎ、引き続き使用する場合には、再検査を受け、これに合格しなければ、継続して使用してはならない。 

3) 前項の危険性を伴う機械或いは設備の検査に対して、検査費用を徴収することができる。

4) 検査代行機関は、この法律及びこの法律に基づいて公布した命令に従い、業務を執行しなければならない。

5) 検査費用の徴収基準及び検査代行機関の資格条件と担う責任は、中央主管機関が定める。

6) 第1項でいう危険を伴う機械と設備の種類、容量とその検査の手順、項目、基準及び検査合格許可の有効使用期限等の事項は、中央主管機関が定める。


第9条 

作業場の建物は、法律に基づいて登録を受けた建築士が、建築法令及びこの法律に基づいて公布した命令に従って設計しなければならない。


第10条 

作業場に危険が存在する場合には、事業者或いは作業場の責任者は、直ちに作業を中止し、労働者を安全な場所に退避させなければならない。

2) 前項の危険の基準は、中央主管機関が定める。


第11条 

事業者は高温場所で作業する労働者に対し、1日6時間を超える作業をさせてはならない;異常気圧における作業、高所作業、精密作業、重筋力作業その他労働者に特殊な危害を与える作業については、労働時間の短縮を定め、労働時間中に適当な休憩時間を設けなければならない。

2) 前項の高温、異常気圧、高所、精密、重筋力及び労働者に特殊な危害を与える作業の時間短縮と休憩時間については、中央主管機関と関連機関が合同で定める。


第12条 

事業者は、労働者を雇う際、労働者に対し、身体検査を行わなければならない;在職中の労働者に対し、定期的に健康診断を行わなければならない;特別危害を与える作業に従事する労働者に対し、定期的に特定項目の健康診断を行い、及び健康診断手帳を作成し、これを労働者に交付しなければならない。

2) 前項の検査は、医療機関又は当該事業機構が設けた医療衛生部門の医者に行わせなければならない;検査記録は保存しなければならない。健康診断の費用は事業者が負担しなければならない。

3) 前2項に係わる身体検査、健康診断の項目、期間、検査記録の保存及び健康診断手帳並びに医療機関の条件等の基準は、中央主管機関が定める。

4) 労働者は、第1項の検査を受ける義務がある。


第13条

身体検査において事業者は、労働応募者がある種の作業に適応しないことが分かった場合、当該応募者をその作業に従事する労働者として雇うことはできない。既に雇われている労働者に対する健康診断において、職務が原因で現在の作業に適さなくなったことが分かった場合、治療以外に当該労働者の作業場所、作業内容の変更を行い、当該労働者の作業時間を短縮するとともにその他適切な措置をとらなければならない。



第3章 安全衛生管理

第14条 

事業者は、その事業の規模、性質に応じて安全衛生管理を実施しなければならない。また中央主管機関の規定に基づき、労働者の安全衛生組織、人員を設置しなければならない。

2) 第5条第1項の設備及びその作業について、事業者は定期検査計画を立て、定期検査を実施しなければならない。

3) 前2項の労働安全衛生組織、人員、管理及び定期検査の方法については、中央主管機関の定めるところによる。



第15条 

中央主管機関によって危険性があると指定された機械或いは設備の操作人員については、事業者は中央主管機関に認可された訓練を受けた者或いは技能検定に合格した者を雇わなければならない。


第16条 

事業機構は、事業下請けの募集をする際、応募する側にそのプロジェクトについて本法の定める事業者の責任を負わせなければならない。また募集する事業機構は労働災害の補償について、引き続き事業の請負業者と連帯責任を負わなければならない。請負業者が、さらに事業下請けの募集を行う場合も上記のことが適用される。


第17条 

事業機構は事業の全部又は一部分を発注する場合、請負業者に対し、その事業の作業環境、危害要因と本法及び関連安全衛生法令の定めにある措置を事前に説明しなければならない。

2) 請負業者は、請負った全部或いは一部分をさらに請負業者に請負わせる場合、前述の規定に基づいて同じく請負業者に説明しなければならない。


第18条 

事業機構、請負業者と二次請負業者がそれぞれに労働者を雇い、混在して作業を行う場合、労働災害を防止するため、元請負業者は次の必要な措置を取らなければならない:

1 協議組織を設けると共に、現場責任者を指名し、指揮及び調整の仕事を行わせる。

2 仕事の連絡と調整。

3 職場の巡視。

4 関連する請負業者間の安全衛生教育の指導及び協力。

5 労働災害を防止するためのその他の必要事項。


2) 事業機構が2つ以上の請負業者に仕事を委託して共同作業をさせ、自らは作業に参加しない場合、請負業者の一つを指定して前項の事業機構の責任を負わせなければならない。


第19条 

二つ以上の事業機構がそれぞれ出資してジョイントベンチャーとして請負う際には、代表者を1人出さなくてはならず、この代表者は当該工事の事業者として、この法律の労働災害防止の責任を負わなければならない。


第20条 

事業者は年少者を次の危険又は有害な作業に従事させてはならない。

1 ピット内の作業。

2 爆発性、引火性等の物質を処理する作業。

3 鉛、水銀、クロム、砒素、黄燐、塩素、シアン化水素、アミノベンゼンなどの有害物が拡散する場所における作業。

4 有害放射線の拡散する場所における作業。

5 有害粉じんの拡散する場所の作業。

6 運行中の機械又は動力転送装置の危険部分の掃除、給油、検査、修理又は装置のベルト、ロープの交換等の作業。

7 220ボルトを越える電力線結線の作業。

8 溶解した鉱物又は鉱滓を処理する作業。

9 ボイラーの燃焼及び操作。

10 削岩機又はその他の機械で著しい振動を発生する作業。

11 一定の重量を超える重量物の取扱い作業。

12 クレーン、デリック運転作業。

13 動力ウインチ、動力搬送機又は索道の運転作業。

14 ゴム化合物又は合成樹脂の圧延の作業。

15 その他中央主管機関に指定された危険又は有害な作業。

2) 前項の危険又は有害な作業は中央主管機関が定める。


第21条 

事業者は、女性労働者を次の危険又は有害な作業に従事させてはならない:

 1 ピット内の作業。

 2 鉛、水銀、クロム、砒素、黄燐、塩素、シアン化水素、アミノベンゼンなどの有害物が拡散する場所における作業。

 3 削岩機又はその他機械で著しい振動を発生する作業。

 4 一定の重量を超える重量物の取扱い作業。

 5 有害放射線が存在する場所における作業。

 6 その他の中央主管機関に指定された危険又は有害な作業。

2) 前項第5号の作業は、生殖能力のない女性に対しては適用しない。

3) 第1項の、危険又は有害な作業は中央主管機関が定める。

4) 第1項の作業は、管理、研究或いは緊急処置に従事する女性に対しては適用しない。


第22条 

事業者は、妊娠中或いは出産後1年未満の女性を、次の危険又は有害な作業に従事させてはならない。

 1 溶解した鉱物又は鉱滓を処理する作業。

 2 クレーン、デリックの運転作業。

 3 動力ウインチ、動力搬送機及び索道の運転作業。

 4 ゴム化合物及び合成樹脂の圧延の作業。

 5 その他の中央主管機関に指定された危険又は有害な作業。

2) 前項の危険又は有害な作業は中央主管機関が定める。

3) 第1項各号の作業に関し、出産後満6ヶ月以上の女性労働者が医師の健康証明書類を添付して事業者に申請書を提示し、自ら望んで作業に就く場合は前項の規定を適用しない。


第23条 

事業者は、労働者に作業及び災害予防に関する必要な安全衛生教育、訓練を実施しなければならない。

2) 前項における必要な教育及び訓練事項と訓練部門の管理に関する規則は、中央主管機関が定める。

3) 労働者は、第1項の安全衛生教育、訓練を受ける義務がある。


第24条 

事業者は、この法律及び関連安全衛生規定を労働者に知らせなければならない。


第25条 

事業者は、この法律及び関連規定に基づき、労働者の代表と共に労働者に必要な仕事に関する安全衛生規程を作成し、これを監督機関に報告し、審査を受けた後、公表し実施しなければならない。

2) 労働者は、前項の仕事に関する安全衛生規程を適切に守らなければならない。


第4章 監督と検査

第26条 

主管機関は関連機関の代表と学識、専門家を招聘し、労働安全衛生を改善するための勧告事項を検討するために労働安全衛生諮問委員会を設けることができる。


第27条 

主管機関及び監督機関は、各事業機構の職場に立ち入り検査することができる。規定に適合しないものについては、違反している法令条項を通知し、改善を命ずることができる。期限が過ぎても改善が見られない場合、労働災害が発生した場合、又は労働災害発生の恐れのある場合には、部分的に又は全面的に操業停止を命ずることができる。操業停止中の労働者の賃金は事業者が支払わなければならない。


第28条 

事業機構の作業場で労働災害が発生した場合には、事業者は直ちに必要な救急、応急措置をとるばかりでなく、災害の調査、解析を実施しそれらの記録を作成しなければならない。

2) 事業機構の作業場で次の挙げる労働災害が発生した場合、事業者は24時間以内に監督機関に報告しなければならない:

 1 死亡災害の発生。

 2 被災者数が3人以上の場合。

 3 その他中央主管機関が指定した災害。


3) 監督機関は前項の報告を受けた場合には、直ちに調査官を派遣しなければならない。

4) 事業機構に第2項の労働災害が発生した場合、必要な救急、応急措置をとる以外に、事業者は司法機関或いは監督機関の許可を得ず事故現場を変更し又は破壊してはならない。


第29条 

中央主管機関に指定された事業に関し、事業者は毎月規定に基づいて労働災害統計をとり、これを監督機関に申告しなければならない。


第30条 

労働者は、事業機構がこの法律又は安全衛生関係規則の違反を発見した場合、これを事業者、主管機関又は監督機関に申告することが出来る。

2) 事業者は、6ヶ月以内に十分な理由無く前項の申告を行った労働者に対して解雇、異動或いは他の不利益な処分をしてはならない。



第5章 罰則

第31条 

第5条第1項又は第8条第1項の規定に違反し、第28条第2項第1号の労働災害を発生させた者は3年以下の懲役(拘留)若しくは新台湾元15万元以下の罰金、又は3年以下の懲役(拘留)及び新台湾元15万元以下の罰金に処する。

2) 法人が前項の罪を犯した場合、その責任者を罰する他、その法人に対し前項の罰金に処する。


第32条 

次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役(拘留)若しくは新台湾元9万元以下の罰金、又は1年以下の懲役(拘留)及び新台湾元9万元以下の罰金に処する。

 1 第5条第1項又は第8条第1項の規定に違反し、第28条第2項第2号の労働災害を発生した者。

 2 第10条第1項、第20条第1項、第21条第1項、第22条第1項又は第28条第2項若しくは第4項の規定に違反した者。

 3 第27条の規定により主管機関或いは監督機関が命令した操業停止の通知に違反した者。

2) 法人が前項の罪を犯した場合、その責任者を罰する他に、法人にも前項の罰金に処する。


第33条 

次の各号のいずれかに該当する者は、新台湾元3万元以上15万元以下の罰金に処する。

 1 第5条第1項又は第6条の規定に違反し、改善期限を言い渡されているにもかかわらず期限内の改善がみられない者。

 2 第8条第1項、第11条第1項、第15条又は第28条第1項の規定に違反した者。

 3 この法律に基づく検査を拒絶、回避又は妨害した者。



第34条 

次の各号のいずれかに該当する者は、新台湾元3万元以上6万元以下の罰金に処する。

 1 第5条第2項、第7条第1項、第12条第1項、第2項、第14条第1項若しくは第2項、第23条第1項、第25条第1項又は第29条の規定に違反し、改善期限を言い渡されているにもかかわらず期限内の改善がみられない者。

 2 第9条、第13条、第17条、第18条、第19条、第24条又は第30条第2項の規定に違反した者。

 3 第27条の規定に基づき支払われるべき賃金を支払わない者。



第35条 

第12条第4項、第23条第3項又は第25条第2項の規定に違反する者は、新台湾元3000元以下の罰金に処する。


第36条 

検査代行機関が職務を執行する際にこの法律或いはこの法律に基づく命令に違反した者は、新台湾元3万元以上、15万元以下の罰金に処する。違反内容が深刻な場合、中央主管機関は、検査代行業務を一時的に中止させること、或いは検査代行業務を取り消す処分をすることができる。

第36条の2

訓練部門の設置、職務執行、人員配置、費用の徴集及びその他の遵守すべき事項で、中央主管機関が第23条第2項によって定めた規則に違反した者に対し、警告或いは新台湾元3万元以上15万元以下の罰金に処すると共に、期限内に改正するよう命じ、期限内に改正しない者に対しては、一定期間部分的又は全面的な操業を停止をさせる。

第37条 

この法律に基づいた科料通知を受けた期日内に納金しない場合、裁判所に移送し強制執行することが出来る。



第6章 附則

第38条 

労働災害の効率的な防止、労働安全衛生状況の促進、労働安全衛生のための人材育成のために中央主管機関は奨励方法を打ち出し、事業機構及び関連団体を指導して、奨励方法に基づいて処理することが出来る。


第39条 

この法律の施行規則は中央主管機関が定める。


第40条 

この法律は公布の日から施行する。



こちらでご紹介しました「労働安全衛生法」の原本(中国語)は国際安全衛生センターの図書館が閉鎖となりましたのでご覧いただけません。