このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > 台湾 事業場の安全衛生自主管理システム

事業場の安全衛生自主管理システム

傅還然

資料出所:中華民国工業安全衛生協会発行「工業安全衛生月刊」1999年3月号
(訳 国際安全衛生センター)


要  旨

労働災害を減少させるため、政府や企業は長年、労働安全衛生法の規程に基づいて労働安全の推進に努めてきた。しかし、各業界の重大労働災害発生件数の推移を示す図に表されるように、労働災害には顕著な下降傾向は見られない。その原因は、政府の労働検査員が不足し、公権力による他律的な規制が発揮されてないほか、事業場が安全衛生自主管理能力に欠け、自律的な改善がなされないことにある。このため労働災害が高い水準にあると思われる。

事業場が安全衛生自主管理体制を整備し、企業の安全衛生管理を改善するには、安全衛生管理制度を企業の経営戦略、人事制度、請負制度、品質管理制度などに適応させることが必要である。それにより、人身事故を減少させ、企業経営効率を改善し、企業のイメージアップを図るという目的を達成するのである。  

本論は安全衛生対策、組織、制度企画、計画実施、結果審査及びシステムの評価などについて、具体的な管理行動を提案するもので、事業場が安全衛生自主管理システムを構築する時の参考にしていただければと思う。

I.前書

事業場、例えば建築業などは製品の多様性、複雑性及び環境の多様性から、もとより高いリスクを持ち、それに業務分担による何段階にも及ぶ下請けは安全管理に不都合である。他の業界にもこれと同様の危険性がある。そのため、労働災害は依然として高い水準のままである。

現行の労働安全衛生法及びその附属法規は事業場や請負業者がなすべき安全衛生管理及び必要な措置について詳細に規定している。労働災害を減少させるため、政府や企業は長年、当該法律の規程に基づき職業安全の推進に努めてきた。しかし、各業界の重大労働災害発生件数の推移を示す図に現れるように、労働災害には顕著な下降傾向は見られない。その原因は、政府の労働検査員が不足し、公権力により他律的な規制が発揮できないほか、事業場が安全衛生自主管理能力に欠け、自律的な改善がなされないことにある。このため、労働災害が高い水準にあると思われる。  

事業場が有効な自律メカニズムを構築し、労働災害の発生を防ぐには、1994年11月にイギリスで完成され、1996年4月にBS8800と命名された「労働安全衛生管理システム標準」を参考にすることができる(イギリスのBS5750、BS7750はそれぞれISO9000とISO14000国際標準となっている)。本標準では安全衛生管理が企業成績、結果管理と結び付けられ、対策、組織、制度企画、計画実施、結果審査及びシステム評価などの管理により、事業場の安全衛生自主管理の目標を達成するものである。

II.自主管理システムの構造

事業場が安全衛生自主管理体制を完備し、企業の安全衛生管理を改善するには、安全衛生管理制度を企業の経営戦略、人事制度、請負制度、品質管理制度などに適応させることが必要である。それにより人身事故を減少させ、企業経営効率を改善し、企業のイメージアップを図る目的を達成するのである 

企業の規模、組織の大小や企業の経営品目に関わらず、成功するためには安全衛生管理システムは次の基本構造を備えなければならない。表1を参照。

                表1


III.安全衛生の対策

1.企業経営者は安全衛生の意識を持つべきである 

事業場が安全衛生自主管理機能を構築できるかどうかは、経営者の意識と決定的な関係がある。経営者として持つべき安全衛生意識は次の通りである。

(1)生命尊重の意識。作業計画の作成及び生産または施工の進行に生命尊重の意識を採り入れ、事業主はどんな時でも、どんな利益よりも人命最優先の原則を堅持するべきである。

(2)事故防止は可能であることを確信する意識。労働災害は天災と違い、必ず予防できるものである。

(3)安全政策の履行を意思決定する。生産や施工の順調さ、人身安全こそ企業存続の礎であることを認識する。もし安全政策に妥協が許されるなら、企業経営はもはや賭博と同じである。

2、安全衛生の対策

組織の上層部により制定されるべきである。そのポイントには次の諸点が含まれる。

(1)経営理念に安全意識を採り入れること。企業の経営理念には品質、効率、コスト、信用のほかに「安全」を採り入れ、更にトップに位置付けるべきである。経営理念の明確化により、経営、人命最優先の共通認識に達する。

(2)ハイレベルの安全衛生の成果を追求すること。法規遵守は最低の基準であり、損失抑制の認識で、持続的に成果の向上をはかるべきである。

(3)対策を実行するために適切な投資をすること。

(4)安全衛生目標及び各管理規定を制定し、公布すること。

(5)上層部から第一線の管理監督層にまで、安全管理をその主要な責任とすること。

(6)全員参加の意見交換を行ない、各職階が対策を理解した上で実行する。

(7)確実に対策を実行するため、審査を行う。対策及び管理制度の実行性について定期的に検討し評価すること。

(8)各職階の人員とも必要な訓練を受け、確実に与えられた任務を遂行できるようにすること。

IV.安全衛生組織

安全衛生の対策を実現するため、企業組織は安全衛生が完全に組織の各活動に採りいれられるように、適切な措置を講じることが必要である。安全衛生組織は危険抑制、協力促進、安全衛生に関する知識の交換及び人員の適切な配置などの機能を備えるべきであり、言い換えれば、安全衛生組織は安全評価、制度企画、計画作成、参加と意見交換、責任分担、指揮実行、教育訓練、実績評価、監督指導などの多機能を備えるべきである。

1.幹部組織――安全衛生管理部門

事業場本部:優良事業の安全衛生管理部門を設立し、事業の規模により安全衛生業務責任者及び安全衛生管理員を配置する。理事長、社長は安全衛生幹部なので、会社全体の対策の策定、制度企画、計画作成、教育訓練、監督指導の評価の責任を負う。  

現行の労働安全衛生管理法及び自主管理法では、次のように規定されている。建築業を例として、労働者を百人以上雇用する場合、労働安全衛生管理部門を設立し、甲級労働安全衛生業務責任者を配置する。三百人未満の場合、別に労働安全衛生管理員を一名以上、三百人以上の場合、別に労働安全(衛生)管理技師及び労働安全衛生管理員各一名以上配置する。

作業現場:雇用労働者数が百人以上の場合、上述の規定により実行する。三十人以上百人未満の場合、乙級労働安全衛生業務責任者及び労働安全衛生管理員一名を配置する。三十人未満の場合、丙級労働安全衛生業務責任者を配置する。現場担当者は安全衛生幹部として、現場の労働安全衛生計画、巡回検査・監督、教育訓練及び組織運営などの安全衛生管理に責任を負う。

上述の方法により、労働安全衛生管理部門及び担当者の業務内容は次の通りである。

(1)労働災害防止計画を作成し、関係部門がそれを実行するように指導する。

(2)安全衛生管理規定を企画、制定し、各部門がそれを実行するように監督する。

(3)安全衛生設備の点検や検査を企画し、監督する。

(4)関係者が巡回、定期点検、重点点検及び作業環境を整備するように指導し監督する。

(5)労働安全衛生教育訓練を企画し実施する。

(6)労働者健康診断を企画し、健康管理を行う。

(7)労働災害調査やその後の措置を監督し、労働災害統計をとる。

(8)事業者に労働安全衛生管理の資料を提供し、提案を行う。

(9)他の労働安全衛生管理に関する事項。

2、衆議式(話し合いによる)組織――労働安全衛生委員会

参加と意見交換、衆知を集めるため、一定規模以上の事業を行う企業は、本社または現場に労働安全衛生委員会を設け、安全衛生業務について検討、調整して提案する。現行の労働安全衛生組織管理法及び自主管理法では、次のように規定されている。労働者を百人以上雇用する建築事業者を例として、労働安全衛生委員会を設け、委員を七人以上配置する。委員会は事業者、労働安全衛生担当者、各部署の責任者、監督者、指導者、医療関係者、土木技師及び労働組合または労働者が選んだ代表からなる。そのうち、労働組合または労働者の代表は三分の一以上とする。委員会は三ヶ月ごとに会議を開き、主任委員が議長となる。必要に応じ、臨時会議を招集することができる。

3.ライン式(上からの指示による)組織――各職階の責任者及び管理員、指導者、監督などの関係者

安全衛生は経営管理の一部であり、「安全衛生は一人一人に責任あり」の高い意識を持ち、安全衛生を各職階の責任者、各請負業者及び各現場作業者が実行して始めて、安全衛生活動が順調に遂行される。言い換えれば、ライン式の安全衛生組織を構築し、責任者が指揮権を行使することにより、安全衛生活動を現場で実践することが、安全衛生成功の唯一の道である。

現行の労働安全衛生法では、次のように規定されている。事業機構の労働安全衛生管理は事業者または管理権限を持つ事業者代理人が総括し、各部署の責任者が実行に責任を負う。労働者を三十人以上雇用する作業現場では現場監督者を指定する。建築業を例として、足場組立作業、シャッター・サポーター作業、型板サポーター作業、鉄鋼品組立作業、トンネル掘削作業または切断作業及び異常気圧・高圧室内作業などの第一線の作業では、施工の危険性を減少させるため、適切な訓練を受けた作業責任者が現場で直接監督指揮にあたる。

各職階の責任者及び管理、指揮、監督関係者が実行すべき事項は次の通りである。

  1. 労働災害防止。
  2. 安全衛生管理。
  3. 定期検査、重点検査、点検その他の検査に関する監督。
  4. 定期的または非定期的巡回。
  5. 作業方法改善についての提案。
  6. 安全作業基準の制定。
  7. 部下に対する安全作業基準・方法の教育と監督。
  8. 雇用主が命じた安全衛生管理に関する他の事項。

4.安全衛生協議組織

建設事業では専門業者による何段階もの請負業務がしばしば見られる。そのため、建設現場での請負関係は一段と複雑化し、元の事業場が最善を尽くして調整と統括の責任を果たさず、各請負業者が勝手に作業することを放置すれば、労働者が烏合の衆となり、無規律、指揮官不在の状態で命を危険に曝すことになる。

労働安全衛生法第十八条では次のように規定されている。事業場と請負業者、孫請業者が別々に労働者を雇用して共同作業を進める場合、労働災害防止のため、元の事業場は次の措置を取らなければならない。

(1)協議組織を設立し、現場責任者を指定し、指揮及び調整に当たらせる。

(2)作業の連絡と調整。

(3)作業現場の巡回。

(4)関係請負業者への安全衛生教育の指導協力。

(5)労働災害を防止するためのその他の必要な事項。  

事業場は2つ以上の請負業者に仕事を委託して共同作業をさせ、自らは作業に加わらない場合、請負業者の一方を指定し、前述の元の事業場の責任を負わせなければならない。  

実務的には安全衛生協議組織運営の重点は次の通りである。

(1)目的。元の事業場は労働災害防止及び施工管理責任を果たすため、調整及び指揮を取る。

(2)設立時期。危険を伴う作業場所の場合、作業前に施工安全評価チームを成立し、施工計画について事前に危害を防止するための対策を講じる。その他の場合、起工後、直ちに協議組織を設立し、関係業者は積極的にその組織に加入しなければならない。

(3)組織のメンバー。元の事業場、請負業者または孫請業者など、請負関係にあり共同作業をする者。

(4)統括責任者(Organizer)。法令では元の事業場が協議組織を設立すると規定されているので、総括責任者は現場の責任者である。

(5)指導者。法令では元の事業場が作業現場の責任者を指定し、労働災害防止のための調整及び指揮をとると規定されている。

(6)組織の特徴。  

  1. 総協議組織。元の事業場が各請負業者を召集し、組織を設立する。  
  2. 下部協議組織。総協議組織に属する請負業者が、仕事を孫請け、再々請負に出した場合、総協議組織に対し、それに属する協議組織を設立する。

(7)協議組織運営機能。  

  1. 協議会議。定期会議、非定期会議及び毎日の施工安全会議。  
  2. 連絡調整。毎日の巡回より発見された問題点を連絡し改善する。  
  3. 作業現場巡回。安全当番制度、作業責任者、現場監督及び各責任者による巡回。  
  4. 教育訓練。安全教育訓練の実施に協力し指導する。  
  5. 立ち入り許可。危険作業現場立ち入り許可の基準。  
  6. 共同検査。各請負業者が共同で安全検査を行う。  
  7. 指揮権の行使。作業停止、料金値引き、罰金、料金計上中止または解約などの指揮権機能。

5、安全評価チーム

工事の危険性を減少させるため、企画設計、計画の段階で安全評価チームを組織する。計画実施に伴う作業手順について、逐次(Step by Step)その危害を予想し、予防の為の対策を講ずる。このチームは作業前に各専門家によりシュミレーションを行ない、安全手順を打ち立てるための組織である。  

労働検査法では次のように規定されている。中央主管機関に指定された危険性の伴う工事の施工現場では、労働検査機関が審査し合格と認定した場合を除いては、労働者に作業をさせてはならない。危険作業場所は甲、乙、丙、丁に分類される。丁類危険建設場所を例として、中央主管機関は次のように定義している。

(1)建築物の天井の高さが50メートル以上の建設工事。

(2)橋脚の中心と橋脚の中心の距離が50メートル以上の橋梁工事。

(3)高圧ガスを使用する工事。

(4)長さ1000メートル以上または15メートル以上の竪穴を掘る必要のあるトンネル工事。

(5)掘り込み深さが15メートル以上、または地下が四階以上、かつ掘り込み面積が500m2に達する工事。

(6)工事の型板サポーターの高さが7メートル以上で面積が100m2以上、かつ当該階の型板サポート面積が60%以上の工事。

(7)中央主管機関が目的事業主管機関と協議して指定された他の工事。  

丁類作業場所は事前に次のメンバーより施工安全評価チームを組織し評価する。

(1)作業現場責任者。

(2)専任技師。

(3)労働安全衛生管理員。

(4)作業現場作業担当者(請負業者の担当者を含む)。

(5)施工安全評価訓練に合格した人。

V.安全衛生制度

事業場に対する詳細な作業規定及び厳格な品質保証制度がありながら、安全衛生規程がなければ、現場の関係者は必然的に「物」の品質を重視し、「人」の安全を軽んじるようになる。安全第一という安全宣言も単なるスローガンに過ぎないものとなる。  

理事長または社長の安全衛生専門幹部として、安全衛生管理業務責任者及び担当者の最も重要な仕事は会社全体に適用する安全衛生管理規定を企画、制定し、各職階の責任者を指導し実績をチェックすることである。また、関係者がそれを実施するように管理、指揮監督しなければならない。表2を参照。

                                                 


表2    

当該安全衛生管理規定には安全衛生政策、管理体制(組織)、教育訓練、自主管理、応急措置、健康管理及び請負業者の管理などの事項が含まれる。

1.安全衛生管理責任

(1)元の事業場の職責  

  1. 作業計画を作成し、安全評価を実施する。作業の各工程または手順にふくまれる潜在的な危険性を認識し、予防対策を講ずる。  
  2. 安全衛生組織と管理計画を打ち立て、安全管理能力を保持する。  
  3. 専業の請負業者を慎重に選び、指導する。請負の資格としては安全衛生資格及び実行能力を求める、請負業者の施工方法を確認すべきである。  
  4. 協議組織の運営を確保し、共同作業の各請負業者が労働災害防止事項を実行するように調整及び指揮をとる。  
  5. 安全衛生教育訓練を実施し、作業者が、例えば、クレーンの操縦、足場の組立や取り外し作業などの免許を取得することを徹底させる。  
  6. 特殊作業現場の立ち入り及び危険作業の許可制度を設ける。安全衛生の効果を確認する。

(2)請負業者の職責  

  1. 作業の危険性・リスクを予測し、元の事業者に通知しその対策を練る。  
  2. 元の事業者に作業手順などの関連資料を提供する。  
  3. 元の事業者及び他の請負業者と協力する。  
  4. 元の事業者の安全管理計画を遵守し、その指揮監督に従う。

(3)請負業者労働安全衛生管理員の職責  

  1. 作業場所の安全衛生総責任者(Overall Safety and Health Controller)と緊密に連絡を取り、総責任者から得た情報を他の関係者に知らせる。  
  2. 請負業務において総責任者の指示に従う。  
  3. 共同作業において発生する重大な危害の状況を完全に把握する。  
  4. 孫請業者の安全衛生管理員と連絡を取り、協力する。

(4)作業責任者、作業班長または作業監督者の職責  

  1. 作業方法を決定し、労働者を指定位置に配置し、現場で労働者の作業を直接監督する。
  2. 材料に欠陥がないかまた、器具・工具を検査し、不良品を取り除く。  
  3. 労働者がヘルメットや安全ベルトなどの安全用具を着用するように監督する。

2、安全衛生管理制度

(1)協議会議の運営:定期会議、作業前の打合せ、工事会議など。

(2)作業許可制度。建設業を例として、クレーンに合格証がない、作業者や玉掛け係に訓練合格証明書がない、またはヘルメット、安全帯などの安全用具未着用、あるいは足場組立て、鉄鋼品組立て、型わく支保工、土どめ支保工、トンネル掘削、異常気圧作業等において作業責任者が現場にいない場合、作業許可を出さない。

(3)安全確認当番及び共同検査制度。共同作業の各請負業者の安全衛生管理員が協議して安全確認当番を決め、定期的に巡回し、検査する。

(4)安全管理体制。作業安全規則または日常の安全衛生管理。

(5)危険作業の為の作業基準。建設業を例として、鉄鋼品組立て、足場組立て、型わく支保工、土どめ支保工、クレーン吊り上げ及びエレベーター取付けや取り外しなど第一線の危険作業では安全作業基準がなければならない。

(6)自主管理体制。機械、設備及び作業について、年、月、週毎及び毎日の検査、点検、巡回、監督のメカニズムを機能させる。

(7)教育訓練。現場で作業する労働者はいずれも必要な訓練を受ける。

(8)協議組織指揮権の行使。作業停止、料金値引き、罰金、料金計上停止または解約など指揮権行使の体制を設ける。

(9)危険場所の安全評価体制。事前に危険性・リスクを予測し、対策を講ずる。

(10)安全衛生防災重点計画。年間または月間の転落防止や感電防止などの重点計画。

(11)応急及び救急医療計画。

(12)請負業者安全衛生能力評定制度。請負業者選択の重要な判断基準とする。

(13)現場安全衛生賞罰制度。これによって各部門主任の業績を審査し、昇格、降格を決める。

(14)安全衛生の成果監視制度。労働災害統計分析のような監査体制及び現場査察のような事前監査体制を含む。

VI.安全衛生計画・実施

1.本社の安全衛生計画

(1)計画の目的。目標(OBJ)を定め、全体の安全衛生目的(AIM)をサポートし、実行目標を定め、成果を評価する。

(2)目標を設定。建築業の安全衛生目標は進行状況により三段階に分けられる。

  1. 初期目標。例えば、対策決定、安全衛生システム構築、危険防止システムのための担当者を決定するなど。  
  2. 中期目標。危険防止の強化、例えば、安全管理規則の制定、教育訓練の実施、ハード設備の改善及び検査、評価制度を整備する。  
  3. 最終目標。システムを発展させ維持し、更に危険防止の為の基準を高める。

2.安全衛生実施計画

安全衛生実施計画は会社の安全衛生計画目標を達成するためのものである。中期目標を例にして、その実施計画には少なくとも次の項目が含まれるべきである。

(1)安全衛生組織と人員  

労働者の作業人数、規模を予測・設定し、組織図の形で表示する。  

  1. 労働安全衛生組織。労働安全衛生管理部門、労働安全衛生委員会。  
  2. 労働安全衛生管理担当者。  
  3. 労働安全衛生業務責任者。  
  4. 労働者安全管理員。  
  5. 労働者衛生管理員。  
  6. 労働安全衛生管理員。  
  7. 各部署の責任者及び管理、指揮、監督関係者。  
  8. 作業現場責任者。

(2)労働安全衛生協議組織  

事業場と請負業者、孫請業者が共同作業をする時、労働安全衛生法第十八条の規程に基づき「協議組織」を設立し、作業現場責任者を指定する。協議組織には会長、副会長、秘書及び関連会社や担当者を含み、組織図の形で表示することができる。計画内容には少なくとも以下のことが含まれるべきである。  

  1. 協議目的。共同作業による労働災害を防止すること。  
  2. 協議事項。例えば、クレーン操作信号、作業場所に標識を設置すること、有害物質容器の保管、警報、緊急避難、安全衛生設備などの事項及び共同作業による労働災害発生を防止するための作業許可、安全勧告、巡回、是正、料金値引き、罰金、作業停止、解約及び教育訓練などの安全指揮体制。  
  3. 協議方式。例えば、協議会議、現場協議など。  
  4. 協議時期。作業前、作業中、作業後に毎日の管理会議及び定期会議。

(3)労働安全衛生教育訓練計画  

  1. 教育訓練計画の内容。   
    a. 教育訓練の目的。   
    b. 教育訓練の種類、時間数。   
    c. 教育訓練の対象、人数。   
    d. 教育訓練の実施担当部門。   
    e. 教育訓練の時間、場所。   
    f. 教育訓練のカリキュラム、講師及び講義要綱。  
  2. 教育訓練項目。   
    a. 労働安全衛生担当者:甲、乙、丙種労働安全衛生業務責任者及び労働安全管理員、労働安全衛生管理員。   
    b. 作業責任者及び監督者:建設業を例として、足場組立作業、鉄鋼品組立作業、型板サポーター作業、シャッター・サポーター作業、トンネル掘削、切断作業、異常気圧作業などの作業の責任者及び現場安全衛生監督者。   
    c. 危険性機械設備操作者:吊り上げ重量が五トン以上のクレーンの操作者、玉掛け作業者、及びフック、高圧ガス容器及び特定設備操作者。   
    d. 特殊作業者:吊り上げ重量五トン以下のクレーン操作者、玉掛け作業者及び高圧室内作業者など。   
    e. 一般作業者:救急隊員、新規雇用者、転属者、各部署業務責任者の安全衛生教育訓練。

(4)自主管理計画  

  1. 自主管理計画には次の内容が含まれるべきである。検査項目、検査サイクル、時期、検査担当者、検査結果の処理(改善策を含む)、及び自主管理結果の監督(監督制度、担当者、方式、記録など)。  
  2. 項目別危険作業の安全衛生重点検査。  項目別作業の順序に従い、比較的危険な作業について墜落・転落、感電、倒壊・崩壊、飛来・落下、酸欠などの労働災害を防止するための検査項目。  建設工事を例として、連続壁作業、土木作業、土どめ支保工作業、足場組立作業、型板作業、鉄鋼品組立作業、外壁装飾作業、エレベーター取付け作業、タワークレーンの組立て、取り外し作業及び電気安全作業などの検査表に従い、安全手順、設備、措置、個人の保護などの防災重点について検査を実施する。  機械設備の検査:機械、設備、車輌の定期検査、重点検査及び作業点検。   
  3. 巡回、監督などの検査。

(5)従業員健康管理計画  

法令による従業員の身体検査・健康診断に基づき計画を立て、検査結果の処理、記録の保存などについて説明する。その内容には次の項目が含まれる。  

  1. 種別:新入社員の健康診断、在職労働者定期健康診断及び特別危険作業者の健康診断。  
  2. 検査結果の処理:雇用条件、作業内容の変更、勤務時間の短縮、食事手当てなどの適当な措置を含む。  
  3. 検査報告書:報告書の保管方法及び記録の整理などの計画。

(6)危険物、有害物管理計画  

作業場所で使用される法定危険物、有害物質の名称、数量、保管方法及び安全教育などを計画し、化学物質安全性データシート(MSDS)を作成する。その内容には次の項目が含まれる。  

  1. 安全資料・安全標識。  
  2. 使用量、残量の記録。  
  3. 安全設備。  
  4. 応急対策の計画。

(7)事故対策、救急医療及び調査記録。

3.安全衛生の実施――管理制度  

毎日の安全衛生管理の実施により、安全衛生実施計画が徹底され、現場作業に残された潜在的リスクをなくすことができる。その構造は表3の通り。    

                表3


(1)作業前の打ち合わせ  

毎日始業前5分か10分程度、各関係主任は現場で作業責任者、監督者、班長、請負業者班長などを集め、当日の作業内容の確認、危険箇所の通知、安全対策の規則及び前日からの改善点などについて、指示を出す。目的は現場の作業者の健康と安全を確保する為である。

(2)作業前検査  

作業前に作業現場の環境(入口、酸欠箇所、足場……)及び機械設備、材料などの状況を確認し、各指定担当者は点検表を使って各作業場所を確認する。それを請負業者に引き渡し、責任を持って点検管理するように指導する。班長の安全対策への意識を高め、安全を確保する。建設業はとりわけ大雨、地震、強風、組立、変更、取り外し作業の後などは、厳密な検査を行ってから、作業にかかるようにする。

(3)責任者の安全巡回  

各主任、安全衛生責任者及び担当者が毎日数回、全作業現場を巡回する。主に監督者、班長及び作業責任者の指揮監督状況、作業者の安全が保たれているか、機械設備の状況、打ち合わせどうりに、作業内容が確実に実行されているかを確認する。巡回結果は、翌日までもちこさず、その場で是正するほか、撮影、記録する。

(4)作業責任者(班長)による指導、監督  

建築安全衛生設備基準の規定を例として、足場組立作業責任者、型わく支保工作業責任者、土どめ支保工作業責任者、鉄鋼品組立作業責任者、トンネル掘削、覆工作業責任者及び異常気圧作業責任者、酸欠作業責任者などは、作業現場で直接指揮監督をしなければならない。他の作業、例えば、露天掘削作業、クレーン吊り上げ作業、クレーン組立て、取り外し作業及び労働者三十人以上を要する作業の場合、監督者を派遣し現場で監督に当たる。作業中の指導、監督は第一線の作業者のための最も重要な仕事で、「思いやりの心」「丁寧さ」及び「安全に妥協はない」という意識を持ち、全力を尽くして職責を果たす。

(5)安全会議  

毎日、決まった時間に各主任が作業責任者、技師、協力メーカー及び各安全衛生担当者を集め、当日の作業状況を検討し、翌日の工事、安全、品質、進度について協議し調整する。  

現場の整理整頓は毎日作業終了5分か10分程度前、協力メーカーが作業現場で材料、工具を整理整頓し、安全な設備・環境を整える。  

作業後の確認。現場監督技師、協力メーカー責任者または班長は作業終了後、全作業現場を巡回し確認する。  

  1. 整理整頓状況。  
  2. 安全設備状況。  
  3. 電源、重機、火の元、施錠などの確認。  
  4. 翌日の作業手配の確認。  
  5. 公共安全措置の確認。

VII.成果の評価

1.目的:安全衛生実行基準を維持し改善する。

2、方法:事前監査及び事後監査。

3.事前監査。監査計画の効果及び基準に符合する度合。

(1)検査。検査サイクルはリスクにより異なる。検査は計画的であること。

(2)監査方法。  

  1. 定期監査。  
  2. 作業工程の監査(レポート提出が必要)。  
  3. 現場責任者の検査。  
  4. 系統的な安全監査。  
  5. 検査、照合。  
  6. 巡回。  
  7. アンケート調査。

 事後監査:事故、病気、傷害及び死亡事例の監査。

VIII.システム評価

1.目的  

安全衛生システムの問題点を判定し、改善措置をとり、システムを持続的に発展させ、安全対策についての高い意識を持つように導き、成果の評価基準を改善する。

2、評価の重点

欠点是正制度、責任者の明確化、日付及び追跡。

3.評価の実施  

計画外評価は、責任者が随時に観察する時、または事後監査で基準に達していない時に行われる。計画的評価は、事前監査で基準に達してない時、または定期的な事前評価の結果が残ってない時に行われる。