このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > イギリスの安全衛生システム

7.事業場におけるリスクの制御

リスク・アセスメント

リスク・アセスメントはイギリスにおける安全衛生規制の中核となっています。 事業者はリスクを制御する場合、リスクの重大さに比例した対策を取る必要があります。 危険やそれに付随するリスクが非常に大きく、許容できるレベルまで危険度を引き下げることができない場合には、 その作業、工程、または物質の使用を禁止しなければなりません。 しかし、HSEはほとんどのリスクは制御できるとの立場を取っており、 状況が異なるのに伴なって異なる技術が適用できると考えています。

リスク・アセスメントの原則は労働安全衛生法にも暗に含まれていますが、明確に規定しているのは (既存の法規とともに)基本指令(89/391EEC)を実施に移した労働安全衛生マネジメント規則です。 HSEは指針となるパンフレット「リスク・アセスメントのための5つのステップ」を発行しています。 これは事業者や自営業者がリスクを評価し、法律上の義務を果たす上で参考になる資料です。 この5つのステップとは次のようなものです。

  • 危険を調査する。
  • だれに、どのような危険が及ぶかを調べる。
  • 危険から生じるリスクを評価し、既存の予防措置が十分か、もっと対策が必要かを判断する。
  • これらの調査結果を記録する。
  • アセスメントを検討し、必要があれば改訂する。

安全衛生マネジメントおよびリスク制御に対するイギリスのアプローチの基本的要素は次の通りです。



安全衛生政策

5人以上の従業員を雇用している事業者は、一般的な安全衛生政策を文書にまとめ、安全衛生を改善する目的、 目標を明確にし、それらの目標達成のため実施している方針を記載しなければなりません。 その内容は従業員に周知する必要があります。



協議

労働組合が認められている事業場では、労働組合は従業員に代わって安全衛生問題について事業者と協議する 安全代表者(safety respentative)を任命することができます。 労働組合が認められていない場合、事業者と従業員は安全衛生問題に協力して対処するための、独自の方法を開発することができます。 海上施設については、法律は労働者の間から安全代表者を選任することを規定しています。



安全衛生の支援

事業者は法律の規定によって、労働に起因するリスクから従業員を保護するため、労働安全衛生上の支援を提供する、 1人以上の有能な人物を任命しなければなりません。 労働衛生サービスを使って、労働衛生上の問題の助言を得たり、労働への適性を評価したり、傷害の初期的な治療や衛生の監督など に当たらせることも可能です。 これらのサービスを一般的な健康増進活動のために、任意に使用することもできます。 たとえばバランスの取れた食事や運動の効果などの意識を高めることも含まれます。 すべての労働者はファミリードクターを通じて国家医療制度の適用を受けており、 ドクターはHSEの雇用医療助言部(EMAS)と連絡を取り、患者の労働衛生問題について助言します。



認可

認可または承認制度は最も詳しく、厳格な制御の形式です。 この制度の下で、HSEの核施設監督局(Nuclear instllations Inspectorate)は核施設の設計、建設、運転開始、運転、保守、 設備廃棄を最高水準の安全性で行うように監督しています。 爆発物の製造、保管、石綿による作業なども認可の対象になります。



安全報告書、安全規定(safety cases)

重大な危険を持つ施設の安全報告書は危険を特定、評価し、有意の事故を防止、制御、 または影響を最低に抑えるためのマネジメント・システムおよび予防措置を説明したものです。 HSEは公式に安全報告書を承認したり、受理することはありませんが、監督官はそれに基づいて監督の優先順位を決めたり、 将来の監督の際に経営者の実績を判断する基準にしたりしています。 原子力施設の認可の決定は通常、安全規定の評価に基づいて行われます。 海上施設の場合、その安全規定がHSEによって承認されない限り、施設の運転はできないとの新しい規則が制定されています。 これらの安全規定には、HSEが必要に応じて行う監査、監督に加えて、各種の制度を定期的に点検する 内部監査制度の規定を含むことになっています。 鉄道の民営化のプロセスにおいても、同様の安全規定の制度が実施されました。 すべての鉄道事業の経営者は安全規定についてHSEの承認を得る必要があり、列車や駅の事業者は安全規定について それぞれのインフラ・オペレータの承認を得なければなりません。

さらにHSEは現在、鉄道において安全上重要な業務を履行する者の適性と能力の評価制度を承認する権限を持っています。