このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
国際安全衛生センタートップ国別情報(目次) > イギリス ピザハットの安全衛生世界戦略
ピザハットの安全衛生世界戦略(原題:A Slice of Life)

資料出所:英国安全評議会(British Safety Council)発行
「SAFETY MANAGEMENT」2003年3月号 p.44〜45

(仮訳 国際安全衛生センター)


ピザハットは、イギリスで最も大手のレストランチェーンの一つであり、世界中の店舗で、ピザの供給に際し安全な手順を採用している。Mardi Westphalenが、イギリスの500ヶ所のレストランと宅配チェーン店のうちの一つから報告する。

ピザハットは、我々と共に育ったファーストフードレストランの名前であるが、安全衛生に関するガイダンスのために、世界中のピザハットレストランが安全衛生の手本としてイギリスに注意を向けていることを知っているだろうか? 私は、Heartfordshire州、Watfordにある一つの店のように、ピザハットレストランが、なぜ世界的な安全衛生基準を設定しているのかその理由を知った。

マネージメント戦略

 イギリスの20,000人以上のスタッフを雇用している500ヶ所以上のピザハットレストランと宅配チェーン店は、ビジネスを成功に導くために安全マネジメント戦略に従っている。Tracy Deaconは、ピザハットUK(イギリスのピザハット)で11年間働いているが、安全衛生指導に格差があることに気づいた後、安全衛生のための「Human Resources Manager」という新しい役割を導入した。
 Deaconは、イギリス中の安全管理の責任者であり、500ヶ所以上のレストランの総支配人と地区マネージャーと直接連絡を取り合い、国内のトレーニングプログラムの実施を監視する。
 「自分が信じるものに情熱をそそぐことは簡単であり、私はまさに、自分の仕事に対して、そのような情熱を感じているのです。」と、Deaconは言う。
 「過去4年間、私達のビジネスはますます強力になり、毎年、私達の目標はより厳しくなりましたが、それを達成しています。この成功の大部分は、従業員トレーニングプログラムと、一貫したリスクアセスメントを含む安全衛生に的を絞った新しい内部運営システムのおかげだと考えています。」「この業界においてチャンピオンにならなければならないのです。清潔・もてなし・正確・設備管理・商品・スピード(CHAMPS:Cleanliness, Hospitality, Accuracy, Maintenance, Product, Speed)といったスローガンは、私達が自分たちの基準を制定し、必要に応じて行動をとるのに役立ちます。」と彼女は言う。
 過去5年間、ピザハットUKは、一つの標語の基に、CHAMPSを含む独立したシステムの大部分を一体化してきた。「私達が行うこと全てを一つに結合したわけです。従業員の能力を認めることは、顧客満足とそれに続く利益につながります。これが成功への秘訣なのです。」とDeaconは、述べている。

トレーニングプログラム

 世界中のピザハットのマネージャーが注目し、いかにして彼等自身の安全衛生基準を、ピザハットUKの成功と同じぐらい優れたものにできるかということを彼等自身に問いかけているのが、このモデルなのです。
「世界中のピザハットの店舗が、イギリスのマニュアル・基準・手順そしてトレーニングプログラムを採用しています。私達は目標の先頭に立ち、それを心より誇りに思っています。」とDeaconは言う。
 国中のレストランと宅配店舗で安全衛生基準を維持することは容易ではないが、ピザハットUKのCHAMPSプログラムは、事業が安全衛生基準を遵守し利益を維持することに役立っていることを確かなものにしている。
 5年前よりスローガンCHAMPSの下で実行されている監視プログラムには、環境安全衛生問題を調べるために、客を装った監視員が店内に入るというCHAMPSチェックがある。すべての問題点はDeaconに報告され、総支配人は注意を喚起される。それをうけて彼等は、防止策のためにCHAMPS基準書(CHAMPS Standard Library : CSL)を参照する。

作業マニュアル

 CSLは、各ピザハットUK店のための作業マニュアルである。「毎晩警報機のスイッチを切り、現金を扱うことから、安全衛生基準まで、ピザハットレストランをどのように運営するかが述べてあります。そして、マネージャーが日々必要とする店内の安全衛生管理に関する全てが記載されています。」Deaconは言う。
 めまぐるしいケータリングの環境において、すべり・つまずき・転落は、最も一般的な危険であり、これらの事故は、スタッフだけでなく客にも影響を及ぼすとDeaconは説明している。仕事の2日目にピザハットUKのスタッフは、安全衛生に的を絞った研修を受ける。従業員にこの分野における専門家になることを教え、忙しい環境内でどのように作業するかを彼等に訓練する手ほどきの期間は、危険に気づき、引き続きそれらについて考える期間である。
 キッチン内、及び出来上がりを待つスタッフは、機器の操作、熱い食べ物や化学物質の正しい扱い方、同様に、トレー・熱い鍋の運び方や正しい持ち上げ方、小さな子どもや通路にあるものを認識するなど、マニュアルに沿った取り扱い技術を教えられる。客の動きを予知することは不可能であるため、スタッフはどのような状況にも対応できるようにし、状況に応じた対処のし方を知る必要がある。

ピザの宅配ドライバー

 ピザを宅配する全てのドライバーは、安全の重要性を認識する必要がある。厳しいバイク管理、条件を満たしている許可証に加えて、国内の運転免許証を取得していなければならないし、仕事の始業時と終了時にはバイクの安全チェックを行う一方、年一回の健康診断・更なるトレーニングも必要である。「トレーニングは、起こりうる危険をドライバーに認識させ、危険を伴う恐れのある行動をとる前に考えるよう働きかける。」とDeaconは、言う。
 世界中の12,000の店舗で、400万人の客に一日130万枚以上のピザを作る時、忙しいキッチンでの切り傷・火傷の危険性は高い。しかし、引き続きリスクアセスメントに従うことにより、従業員に起こりうる危険を最小限に抑えるために予防措置が特定され、導入される。「リスクアセスメントをしているからといって、リスクはなくなりません。引き続き従業員には、リスクをチェックさせます。」とDeaconは述べている。

納入業者の保護

 キッチンは、危険ができるだけ少なくなるように設計、配置され、そして又ピザハットUK店舗への納入業者や配送業者の保護も考えられている。「配達される梱包が大きければ、経費をさらに抑えることができるが、そうはしません。配送時に安全に扱うことが出来るようにより小さなサイズの梱包物に多くの金額を支払っています。」とDeaconは言う。
 Deaconは、これまで、公的な安全に関する資格を取っていないが、英国安全評議会(British Safety Council)の専門知識とその短期コースによって、彼女は自分が必要とする専門知識にしっかりと取り組むことができると述べている。全てのデューティー・マネージャー(duty managers)は、リスクアセスメントトレーニングを終了し、今年は、「リスク認識週間(Risk Awareness Week)」を導入し、それぞれの店舗が事故防止を目指す。
 「それは、本当にわくわくするものです。」とDeaconは話を結び、「リスクアセスメントトレーニングに参加しているデューティー・マネージャーは、今度は、自分達のマネージャーに挑戦しています。ですから、私達の事業の安全衛生について真剣に議論する事が、本当に始まっているのです。」と述べた。 


訳注)原語のタイトルはA Slice of Life(人生の一片)ですが、この文章の内容がわかるように「ピザハットの安全衛生世界戦略」としました。