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爆発性雰囲気

資料出所:英国安全評議会(British Safety Council)発行
「SAFETY MANAGEMENT」2002年12月号 p.14

(仮訳 国際安全衛生センター)



職場の危険物による火災・爆発を防止する法的枠組みを刷新するための新しい規則が2002年12月9日発効した。本誌が法律の主要変更点について概説する。

 今月、可燃性・爆発性の物質や雰囲気に関係して業務上生じるリスクの対策として新しい規則が導入される。
 
 英国安全衛生委員会(HSC)によると、「2002年危険物質及び爆発性雰囲気規則(Dangerous Substance and Explosive Atmosphere(DSEAR)Regulations 2002)」は、職場で使用する、或いは職場に存在する危険物質により生じる火災、爆発又は類似のリスクの対策とするために事業主がとらなければならない手段を示すものである。

 この新しい規則は、最近の二つのEU指令(化学物質指令及び爆発性雰囲気指令)の要求事項を英国の法律に導入するためと同時に、危険物質を伴った作業に対する、これまでの法的制度を刷新するために作られたものである。

 この新しい規則に関して英国安全衛生庁(HSE)原子力・危険施設政策部門長のKeith Allarsは次のように語っている:
「新しい規則は、既存のよい慣例を明確にし、火災や爆発に対しリスク管理を行うための効果的な枠組みを提供するものだ。DSEARは20以上の古い法律に置き換わるか、それらを時代にあったものにすることができる。まったく新しい要求事項というものはないので、現在の法律の要求事項を実施している事業主は、大きな違いは感じないはずだ。」

広範囲の物質

 DSEAR規則2002は、職場で普通に見られる物質を広く対象としている。例えば、ガソリン、溶剤、木材粉じん、塗料、ワニスなどである。規則は次のようなものから生じるリスクの対策が確保されるように作られている:
可燃性、爆発性、酸化性の物質
爆発性雰囲気を作る可能性のある物質
物質は異なるが、火災、爆発又は同種のエネルギー解放を起こすような作業、例えば可燃性・爆発性のダストを出す研磨、切削など

 しかし、この規則は以前の法制でカバーされていたものよりも広い範囲の作業や物質に適用される。それらは次の通りである。
自動車、建設機械及び農業機械の燃料としてガソリンを貯蔵する
溶接用に可燃性ガスを使用する
可燃性材料を含むタンク、ドラム缶上で高温作業を行う
鋳造業を含む種々の製造業で、廃棄物ダストを取り扱う又は貯蔵する
小売店で塗料やラッカーといった可燃物を貯蔵し展示する
液化石油ガスのような可燃性の高圧ガスを使用するエアゾールを充填し、貯蔵し、取り扱う
ガソリンのような物質をタンクローリーから地下タンクに送る
陸上、沖合い両方の石油化学工業

 DSEAR規則の下で、事業主は職場にある、又はありそうな可燃性・爆発性物質が労働者に及ぼすリスクのアセスメントを実施する義務がある。事業主はこのリスクアセスメントが常に最新に保たれるために確実に定期的見直しが行われるよう、またその事業所が5人以上の従業員を雇っている場合は重要な所見が確実に記録されるよう措置しなければならない。

適切なリスクアセスメント

 規則は、事業主が適切なリスクアセスメントを実施したのちに、従業員に対するいかなるリスクも、合理的に実行可能な範囲で除去されるか又は低減されることを要求している。事業主は危険のない物質に置き換えるか、新しい改良された作業方法で置き換えるかにより、リスクを除去することが出来る。

 しかしこれが不可能な場合のために、規則には、リスク低減のために事業主が行うべき階層的なリスク対策を定めている。これは事業主が次の方法により火災・爆発のリスク対策を行うことを要求している:
危険な物質の量を最低限に減らす
危険物質の放出を止めるか最小化する
危険物質の放出を根源で対策する
爆発性雰囲気が形成されないようにする。例えば適切な換気システムの使用。
放出された危険物質が、適切に集められ、安全に封入され、安全な場所へ移動されることを確実にする

 これに加えてDSEAR規則の下で事業主は、職場で爆発性の雰囲気が発生するかもしれない区域を区分する義務を負う。これは新規に稼動する職場においては2003年6月30日以降に使用に供されるものから、また同日までに既に使用されている職場においては2006年6月30日からである。事業主は同規則の下で次の点も確実に行われるようにしなければならない:
危険区域の入り口には、必要な場合、爆発の潜在的なリスクがあることを労働者に警告する標識を設置する
危険区域で作業する従業員は適切な作業衣(例えば静電気の放電が起こらないような)を提供される
最初に使用に供する前に、しかるべき能力を持った人間により職場がDSEARの基準に合致していることを証明してもらう
各容器や配管に存在する危険物質の性質と関連するハザードを明確に特定する
危険区域で使用されている機器類は安全である

 2002年12月初めに、HSEは事業主が新規則を遵守するのを助けるために、無料の手引きリーフレット、 「2002年危険物質及び爆発(DSEAR)規則:規則の簡単な手引き(The Dangerous Substances and Explosive (DSEAR)Regulations 2002 : A short guide to the regulations)」を発行した。

公認実施準則

 これに加えてHSEはDSEAR規則に関する全般的な「公認実施準則(ACoP)」を2003年春に発行する予定である。また、DSEAR規則の特定の部分(例えば、危険物質に関する安全な保全作業と安全な貯蔵)に関する公認実施準則(safe maintenance work and the safe storage of dangerous substances)も2003年夏に発行する予定である。
■ 「2002年危険物質及び爆発(DSEAR)規則:規則の簡単な手引き(The Dangerous Substances and Explosive (DSEAR)Regulations 2002 : A short guide to the regulations)」は1部であればHSE Booksから電話(01787 881165)で入手可能である。また、HSEホームページ、www.hse.gov.uk/spd/content/dsear.htmからも無料でダウンロードすることが出来る。