事実、最近の英国安全衛生庁(HSE)の調査によると、110万人の労働者が作業場で不安全な騒音レベルに暴露されていると見られている。一方2001/02年度HSEに代わって実行された新しい自己報告作業関連疾病調査(Self-reported
work-related illness survey)によると、87,000人の英国人が、作業場での酷い騒音暴露の結果、聴力障害を被っていると思っていることが判明した。しかしながら、聴力障害は一般に過小に報告されるため、この数字はもっと高いものであると思われる。例えば、1997/98年度の医学研究会議(Medical
Research Council)の調査によると、英国の50万人以上が、作業場における高レベルの騒音への暴露により、難聴を患っていると見られている。
一方、2002年、TUCによって行われた労働組合安全衛生代表者の調査では、質問した人の5分の1以上が自分の職場における過度の騒音による危険を心配しているということが判明した。最も騒音リスクが高いと思われる労働者の業種は、製造業、建設業であった。HSEによると、過度の騒音によって引き起こされた聴力障害は非常にゆるやかに進行している。毎日毎日悪化することに気付かないうちに、騒音の影響による難聴は回復しなくなる。永久的な難聴の結果、労働者は音や話し声が聞き取り難くなり、永久的な耳鳴りがし、発音が似ている言葉を区別することが困難になり、音量に対する感覚がゆがんでくる。
職場の騒音によるリスクへの認識を深めるためにHSEは2002年9月、作業による難聴から労働者を保護する方法について事業者へのアドバイスを提供するため、新しいガイダンス集を発表した。
これには、以前の4つの小冊子に代わる小冊子「事業者のための騒音に対する作業アドバイス(Noise at Work - advice for employers)」が含まれ、騒音の評価および管理、より静かな機器、機械の選択、聴力保護具の種々のタイプについて、包括的な情報を提供している。この小冊子は、労働者の聴力保護のための事業者の法的責務についても概論している。聴力検査計画がどのように行われるかについても説明している。
更にガイダンス集には、労働者向けの新しいポケットカード及びポスター「自分で聴力を守ろう。聴力を失なわないように(Protect
your hearing or lose it !)」もあり、騒音暴露のリスクを概説し、適切な聴力保護具の装着及びメンテナンスの方法を説明している。
一方2002年11月、HSEは、聴力保護に対する労働者の姿勢に影響を及ぼす色々な要素、そして企業は労働者にどの程度聴力保護具を装着させることができているかということに関する調査研究を発表した。この調査研究によると、聴力保護具を装着していない労働者の主な理由としては、与えられた保護具が使い勝手が悪く、情報の伝達が困難であったことをあげている。
保護具使用が必要な騒音レベルの場所では、保護具着用区域が明示されていることが重要である。短い時間であっても、この区域内に入る者は保護具を使用するということを認識しなければならない。
PPE使用等は、過度の騒音源をコントロールする代わりの対策とみなしてはいけない。又、健康診断は職場の騒音リスクに対して重要な役割を果たすことができる。
事実、1999年職場安全衛生管理規則(Management of Health and Safety Regulations
1999)によると、有害な騒音レベルに暴露されている労働者に対しては、健康診断の実施が求められている。 騒々しい環境下で働いている労働者に対しては、定期的に健康診断時にオージオメータによって、音の広範囲の周波数について、労働者の聴力感度を測定室で検査する。事業者は労働者に、聴力検査の結果を知らせ、その記録を保管しなければならない。事業者は、聴力障害が疑われる時には、更なる医学的診断を受診させることになる。