国際安全衛生センタートップ ＞
国別情報（目次） ＞
イギリス 建設業設計者の安全意識の向上（HSE調査）
|
建設業設計者の安全意識の向上（HSE調査） 建設業設計者の間で、建設現場の構造物を、その建設・修理にたずさわる労働者の安全衛生にリスクを及ぼさないような設計にすることは自分たちの責務であるとの認識が高まっている。これは、英国安全衛生庁（HSE）が最近提唱したイニシアチブに基づく調査で明らかになったことである。 同イニシアチブは2003年に実施した同様の調査に次ぐものだが、これには、「高所での作業で問題視される安全衛生上のリスクを設計段階でいかに効率的に管理したか」を評価するために、2004年4月、HSE建設部門監督官がスコットランド、イングランド北部の122の建設現場で働く有力な建設業設計者への面接を実施した。 安全リスク管理 1994年建設（設計および管理）規則（Construction (Design and Management) Regulations 1994 (CDM））の第13条では、建設作業や保守作業に携わる人々の安全衛生リスクに確実に対処するために建築設計者に法的責務を課しているが、同イニシアチブでは、CDM13条にうたわれている自らの責務について精通している設計者の割合が、2003年の33%から2004年は60%へとほぼ倍増したことが明らかになっている。 さらにHSE監督官によると、面接した設計者の62%は、建設作業または保守作業中に高所からの墜落リスクが最少限に抑えられる安全衛生対策の実施に成功したことが明らかになった（例えば、総合的な昇降設備、又は建物の構造物へ墜落防止システムと取り付けポイントを備え付ける）。墜落防止対策を実施した設計者が建設作業で34%、保守整備作業で33%だった2003年の調査結果に比べ、かなりの改善である。 しかしHSEは、依然として設計者が改善を要する事項を指摘している。特に監督官が明らかにしたことは、作成されたリスクアセスメントの半数はアセスメントとしては不十分であった。たとえば、設計者の多くは全般的なリスクアセスメントを実施し、作業ごとの詳細なアセスメントを考慮していない。つまり労働者の安全確保のためには、このようなリスクアセスメントは役に立たないとHSEは指摘している。 またHSEは、設計者がリスクアセスメントの更新、改定を怠っているために、建設プロジェクト全工程を通じて適切なアセスメントが確実に実施されていない例があることも明らかにしている。その結果、設計が原因となる潜在的なリスクの予防にあたっては、請負業者がその場でアセスメントを実施して急場を凌ぐ必要がある場合が多いとHSEはコメントしている。 体系的な研修 これらの調査結果を受け、HSEは多くの勧告を提示して、CDMにうたわれている法的責務への設計者の認識、理解の向上を図っている。特に、王立英国建築家協会（Royal Institute of British Architects）などの設計業界は、その会員に対してさらに体系的な研修を導入し、ベストプラクティスを際立たせることで、責務に対する認識を深めさせなければならないとHSEは語っている。 またHSEは、建築物は建設及び保守作業者の安全確保を考慮に入れて設計しなければならないとする協定ルールを、地方計画局や政府諸省庁と協力して確立するとしている。 同イニシアチブについて、HSE建設業担当主任監督官ケビン・マイヤーズは、次のようにコメントしている。「安全衛生の法的責務を認識したり、優良事例（good practice）を実践したりする建築設計者の存在は知られているが、幸いなことに、今回のイニシアチブによる調査結果から、彼らの自覚と行動が設計業界全体に広まり始めていることが明らかになった。設計者の成果の分析結果から、2003年3月に行った同様のイニシアチブとの比較において、今回のイニシアチブでは著しい向上が見られたことが示唆されている。特に、遵守するべき法、実行すべき研修、現場のリスク低減のために順次進むべき実践的なステップに対する設計者の知識の向上については飛躍的な進展が見られる」 ■ 「Designer Initiative 2004, HSE (Construction Division) Scotland, North West and Newcastle Offices」は、次のHSEのサイトからダウンロードできる。 www.hse.gov.uk/construction/designers/report.pdf
|
ページの先頭へ