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英国下院:建設現場の安全努力を促す
MPs urge more effort on site safety

資料出所:Job Safety Management
February 2005 p.6
(仮訳 国際安全衛生センター)



 下院の特別調査委員会の新しい報告書によると、HSE(Health & Safety Executive)は建設業に対し、予告しない抜き打ち監督を実施し、設計者が計画段階において安全を重視するように奨励することにより、建設安全基準の改善努力をしなければならないとのことである。


 下院の特別調査委員会の新しい報告書によると、HSEは、建設業での死亡災害及び重大災害の発生率を下げるために、より一層努力しなければならないとのことである。
 公認会計士による調査委員会の、政府に対する報告書によると、建設業の安全衛生基準の改善に関し、HSEの有効性を検証し、今後建設業での災害率を低減する方法について多くの勧告を出している。下院特別調査委員会の議長であるエドワード・レイ下院議員は、次のように語った;‘英国の建設業の労働災害記録を見ると、依然として他の産業よりずっと悪化している。毎年70人の建設労働者が死亡しており、更に何千人もの労働者が重大な傷害を被っているということは、単純に受け入れられないことである。’

様々な対策

  彼は更に次のように語った:‘HSEは更に努力しなければならない。抜き打ち監督に対しても、色々なアプローチを試み、災害発生率動向を考えたインパクトのある、より良いアセスメントを作成し、そして長期的には、顧客及び請負業者が、建設設計に密接な関係を持つようにしなければならない。
 英国での労働災害による死亡災害の1/3を建設業は占めており、2002年度は71人の死亡者数、2003年度は70人の死亡者数となっている。
 この報告書の主要な勧告の1つに、HSEは、抜き打ち監督制度に対し、多くの新しいアプローチを試みることの必要性が挙げられている。
 現在のシステムではHSEは、国内の建設現場の監督に際しては、安全衛生事項だけを監督目標としており、更に事前予告無しで多くの建設現場を訪問するということを地元のニュースとして発表している。
 報告によると、この方法の効果に関するフィードバックを見ると、良好であるとなっているが、HSEでは、緊急抜き打ち監督情報を提供すると、悪い作業方法を隠す機会を企業に与えかねない旨心配している。
 従って特別委員会は、HSEが悪い作業方法を発見するのに予告しない抜き打ち監督が効果的であるかどうかを検証するために、完全に予告しない抜き打ち監督を試みることを提案している。
 又、この報告書では、基準が引き続き守られていることを確認するため、抜き打ち監督後に、予告しない再監督を勧告している。
 この報告では更に、HSEが建設業界の労働災害動向をモニターする方法について改善し、そして建設業界が自ら、問題に取り組むために、詳細な分析を活用することを要求している。

労働災害率

  特に特別委員会は、HSEが建設業でのアドバイス及びキャンペーンの効果について評価するため、高所からの墜落災害及び作業場での車両災害というような主要リスクによる災害率について測定し、且つ報告を始めるべきであると提案している。
 このようなデータが、どの程度有効であるかという例として、HSEによるクラッシュ・デッキ及び移動式作業床の使用促進キャンペーンにより、ここ2年間鉄骨建て方作業時の墜落死亡災害が無かったことを報告書は指摘している。
 この報告書によるとHSEは、建築物設計時に…例えば長期間にわたってメンテナンス・コストが、より低くなるというように、企業が恩恵を得ることができることを強調することにより…発注者、建設業者及び設計業者が長期にわたって安全衛生と密接な係わり合いを持つように努めなければならない。又、下院議員達は、高層ビル建築にかかる安全記録を公表するようにHSEは検討するべきであるとも述べている。
 更に報告書は、HSEに対して以下の点を勧告している:

  • 政府が発注者である場合、工事の各段階で重要なリスクをチェックするためのチェックリストを提供すること等により、安全衛生要件を満たすことを最優先とするように努めること。このチェックリストは、請負業者が重要なリスクをどのように管理しようとしているのかについて、発注者が請負業者に尋ねる際に活用できるものである。
  • 傷害を被りやすい労働者の作業負荷と、建設業での傷害事故との間に何らかの関係があるかどうかについて、答えをだすようにすること。
  • 建設業での安全問題に対する事業者及び労働者の対応を検討する調査を毎年実施し、そして、彼らの対応がその都度どのように変わっているかを知るようにすること。
  • 不法就労者及び暴力団と作業する危険について事業者に警告すること。警察及びこの他の部署と共同して、これら集団の情報を得るようにすること;
  • 大企業が系列企業に大きな影響を及ぼすことになるので、大企業を監督活動目標とすることの見解に対する確固たる証拠収集を行うこと。

  最終的には報告書では、安全面における有罪判決の現在の罰金水準を調べてみて裁判所は、適用可能な最高罰則を課さない傾向にあるとしている。送検が抑制効果を増大させるために、報告では、HSEが内務大臣に判決審問評議会(Sentencing Advisory Panel Council)に問題提起することを求めている。この評議会が、安全防護という点で有罪判決のガイドラインを策定したならば、裁判所によって言い渡される罰金額のレベルにインパクトを与えるものと思われる。
 HSEの建設業主任監督官、ケビン・メイヤーは、この報告書に次のようなコメントを述べた:HSEは、この報告書が建設業に対するHSEの規制からみて時宣を得た独立した評価となっている点を歓迎している。このことは、HSEの仕事が、これからの開発、評価という点で、多くの建設的な勧告をすることにつながる。今後、この詳細な勧告にどのように答えるかということは、政府が考慮すべき点であろう。